東京の土人形 今戸焼? 今戸人形? いまどき人形 つれづれ

昔あった東京の人形を東京の土で、、、、

丸〆猫(まるしめのねこ)⑬

2010-03-31 18:11:45 | 今戸焼招き猫(浅草 隅田川)

2007_0101_000000p1010266 HPの内容と重複してしまうのですが、、、。

人形玩具学会のAさんからの情報提供で、新たな丸〆猫の土人形の出土を知りました。出土地は文京区千駄木。ただし、この出土品は裏面だけです。

今戸焼の人形に限らず、昔から土人形には手捻りによる成形もあるものの、多くは2枚型といって、前後を合わせて接合します。鯛焼のようなものですね。この丸〆猫は、ちょうど、前後の合わせ目の裏半分だけ残っていた訳です。これまで見たことのない「本丸〆」の陽刻です。前面が残っていないのがひどく残念ですが、裏面だけでも発見されたということは幸いでした。

おそらく、「本」は「元祖」とか「本家」とかいった類の本家争いから生まれたものでしょう。これまでの記事の流れから推量していただけると思うのですが、三社様の門前でお婆さんが売っていた丸〆猫ですが、その能書き的な物語が2つ確認できました。(武江年表と藤岡屋日記)そして丸〆猫の霊験あらたかなの効能も山と記されていて、我も我もと丸〆猫を求め、布団を敷いて心願したようですね。大ブームです。売れるとなれば、今戸焼のほうではおそらく複数の丸〆猫作者が出てきても不自然ではなく、お婆さんを売り子とした床店(仮設店舗)は何軒もあったかもしれません。そうなると、「本家」「元祖」といって商品価値を高めるなど、競争になります。そうした背景を想像することができると思います。

さて、この「本丸〆猫」ですが、裏面のよだれかけや右足から腰にかけてのモデリングからすれば、新宿水野原遺跡出土の丸〆猫とほぼ同じで丸〆印が違う。おそらく、水野原の型から型どりして、刻印部分だけ修正したものではないかと思うのです。刻印と同時に前面を修正したものであった可能性もありますが、そうでない可能性もあり半々です。昔の土人形は、先行する型をもとにぱくって、部分的修正を施し、新型を作ることはよくあることなのです。

写真の「本丸〆猫」は裏のモデリングがほぼ同じであることから、水野原遺跡の丸〆猫を再現した型に手直しを施して、前面はあまり変えないで再現を試みました。

配色ですが、水野原の丸〆猫の再現と同じ配色でも構わないかとも思いますが、別の作者だったら、配色をもっと派手にしようとか、何とかして目立たせて売上を上げようと工夫することも想像できるので、敢えて配色を変えてみました。前面のモデリングといい配色といい、想像の域ですが、ひとつの試行として見ていただけたら、と思います。

「本丸〆」の「丸〆」は「一文字に点」という形ですね。丸〆猫(まるしめのねこ)①の画像の印と共通します。「本丸〆」の「丸〆」は①の猫への過渡期的な形だったのか、或いは、①の「丸〆」の形は同じ時期からあったのか、、謎です。

いずれにしても、「本丸〆猫」が他にも完全な姿で出土するのを心待ちにしています。その時にはより確証を持って修正していけると思います。

招き猫の実物としては、新宿区水野原遺跡出土の丸〆猫と並んで、この本丸〆猫が現在のところ最も古い最古のものではないかと考えています。

丸〆猫に関する記事は①から⑭まであります。お時間ありましたら通してご覧くださると幸いです。


最新の画像もっと見る

4 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
いまどき様 (YUM)
2010-03-31 19:07:44
返事が遅くなり大変申し訳ありません。
ブログを拝見させて頂きました。人形に纏わる面白いブログですね!
ちなみに私は山形県出身ですが、父が東京都台東区の出身で、母が埼玉県浦和市の出身です。
ですから子供の頃から東京にはちょくちょく遊びに行っていました。両親の故郷というのは、何となく思い出深いものがありますよね。
いまどきサンにとって、猿羽根山はとても懐かしい場所のようですが、昔のような遊園地はなくなったものの何も変わっておりません!
人形と繋がりがあるか分かりませんが、舟形町は土偶の町でもありますから、機会があったら是非遊びに来て下さいね。

返信する
YUM様 (いまどき人形)
2010-03-31 20:23:02
お越しくださりありがとうございました。
父の実家は長者原なんです。小国川でよく泳ぎました。
素手で魚を捕まえられますよ。懐かしいです。舟形駅前の猿羽根屋旅館とか農協ストアとかまだありますか?小国川でまだ泳げますか、、?私は反対に東京の生まれなんですけど、昔毎年のように行って
いたので懐かしくてたまりません。言葉も耳に焼きついています。「めくさい」とか「あべ」とか「ごしゃかれる」「はいっとう」とか、、、。まんずまんずありがどなっす。
返信する
こういう丸〆猫もあったんですね。我が家にもお招... (tomi)
2010-07-08 19:43:49
こういう丸〆猫もあったんですね。我が家にもお招きしたいです。今も製作されているのですか?欲しいのですが、どうしたら入手できますか?
返信する
tomiさま (いまどき人形)
2010-07-09 00:32:23
コメントをありがとうございます。
この本丸〆猫は背面だけ出土したもので、前面はわからないのです。しかし、背面のモデリングの感じから他の遺跡から出土の丸〆猫とほぼ同じ感じであると仮定して作ったものですから、想定の上でのモデリングや配色です。拙作の人形にご関心を寄せていただき、ありがとうございます。このブログの右に「玉手箱」という囲みがあり、そこから私のHPのトップページにリンクしています。トップページにメールの表示がありますので、そこから直接メールをいただけますと幸いです。なかなか能率よくいきませんが、今も人形は作っています。ただ、できあがった状態のものは今手元になく、また夏場は絵具に混ぜる膠がいたみやすいので、色塗りできず、もっぱら土で型抜きしています。この本丸〆猫もいくつか抜いて干していますので、素焼きをして涼しくなってきたら色塗りを再開しますのでお時間はいただきますがご了承いただければと思います。
返信する

コメントを投稿