どれもこれも遭遇しないであろうと思いつつも、その場に置かれたら、自分ならどう考え、どのようなアクションを起こすのかと想像してしまう6つのシーンを描く短編集。不妊、離婚騒動からの実家への帰宅、乳幼児の不審な死亡事例、実兄を殺された犯人と文通をする妹、娘がLBGTQになった父、そして、最初の物語の延長線上のストーリーと、どう答えを出していいのかわからないが、正面を向いて生きている感は十分に触れることが出来ます。
私には、「魔王の帰還」がとても面白かった。気の弱そうな男と結婚した姉は近所の子供たちに「魔王」と呼ばれるぐらい身体も大きく、豪快な性格の持ち主。魔王は離婚する気で実家に戻ってきたが、弟と彼の同級生の女の子と金魚すくい選手権大会に参加する過程で、「気持ちで勝つ」ということを学び、夫のもとへ戻ります。魔王の心の波は高く時化ていましたが、気持ちを穏やかにし、集中することを発見したのでしょう。
エゴを出せば、周りとの関係は荒れますが、今の自分は何をすることが最善なのか常に考えて生活しなければいけません。
『スモールワールズ』(一穂 ミチ著、講談社、本体価格1,500円、税込価格1,650円)
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