あなたの本の世界を変えましょう!

板宿の書店主から見た、本・まち・環境を語ります!

逝きし世の面影

2019-04-01 17:29:46 | 

 朝日新聞による、「平成の30冊」にも選定された1冊。江戸、明治期の日本の文明とは何だったのか?開国することはやむを得なかったとは言え、日本の良き文明の消えゆくことの意味は何かを問うています。

 江戸、明治期に訪日した欧米人の手記、日本、また日本人に関する内容を読み込んだ著者は、項目ごとに考察し、彼らの感じたこと、考えたことを整理しました。例えば、第二章「陽気な人びと」では、「日本人はたしかに満足しており幸福である」とか、第三章「簡素とゆたかさ」には、「ほんものの平等精神、われわれはみな同じ人間だと心底から信じる心が、社会の隅々にまで浸透している」や、第四章「親和と礼節」には、「『挙動の礼儀正しさ、他人の感情についての思いやり』は、日本人の生まれながらの善徳である」など、欧米人の目から見て、日本人は幸福な人生を歩む人種として捉えられています。

 日本は、欧米諸国から開国を要求され、さもなければ植民地支配への道が待っているため、開国し、富国強兵・殖産興業することにより、自立した国家になることを目指しました。当時の日本の支配層は文明的劣等感を持ち、欧米人の日本への眼差しは「恥」としか考えられなかったようですが、文明的優越感のある欧米人は、科学技術の発展により、 自ら喪失したものを日本に発見したこと、つまりは、近代西洋文明への反省の念を持っていました。文明化は、人間の人生を考える上で良いことなのかどうか?

 これから繰り広げられる科学技術の発展は本当に必要なのか?人間、地球、宇宙にとってもどういう意味を持つのか、考え続けていかなければなりません。

『逝きし世の面影』(渡辺京二著、平凡社、本体価格1,900円)

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする