昨年、兵庫県書店商業組合で講演会をしてくださった、くすのき先生。懇親会の時に、大人向けの絵のない短編集を書いているとおっしゃておられました。絵本作家であるという強い先入観を払しょくする、読者を真綿で包むような、とても清々しい物語ばかりです。
物語が始まる冒頭、「人は、自らの人生を俯瞰するとき そこに何を見るのでしょうか。」と問いかけています。そして、
海の見える丘 -「幸せ」は 自分が決める
少年の太鼓 -「希望」は 伝えられる
星のなる木 -「豊かさ」とは 何か
のら猫のかみさま -「優しさ」は 受け継がれていく
あたたかい木 -「生き方」が 人生になる
と5つの話が続きます。
それぞれの物語の副題はよき人生に対する、自らの考え方をまとめるテーマになっていますね。私は、冒頭の問いに対して、家族、友、仕事、地域でどうかかわって生きていくか、そして、そこに「優しさ」「幸せ」「恕」があれば、棺桶に入るときに「いい人生だった」と言えるかなぁと思います。だからこそ、「あたたかい木」のように、日ごろの生き方こそがその人の人生を規定し、その存在を際立たせると考えます。何度でも読み返したい作品です。
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