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人生に、上下も勝ち負けもありません

2019-04-21 14:59:35 | 

 老子は難解で理解しがたい。しかし、精神科医院を訪れる患者さんには老子の言葉がまさに打ち出の小槌の如く、妙に心に刺さる。精神科医の著者は患者さんの悩みに合わせて、老子の言葉を選定し、それを即座に思い出せるように、「〇〇の思想」と表現しています。

 例えば、他人と比べ、「自分は何も残せていないなぁ~」と悩む人には、「昆布の思考」を提示しています。これは、「昆布の味だ」と言われるよりも、「なんかおいしいね」と言われることのほうが素敵だということです。昆布という功績を残すのではなく、存在そのものがえぇ味出していると自ら評価することです。

 このように32の思考を提示してくれている本書は読む精神安定剤です。それは、人間は人と比べて、焦り、落ち込み、羨む状態に陥ります。しかし、著者は「ジャッジフリー」である老子の言葉を薬として飲ませてくれます。その効用は、「無為自然」、つまり、比べるよりも自然の状態が素晴らしいという教え。有名な「上善如水」の通り、水は気体にも固体にも成り得るし、その力は集まると岩をも穿ち、大海に至れば、多くの生物の宝庫にも成り得る。水は下に下に流れるさまは謙虚でもあり、一滴でも喉を潤すことができます。視点を変えれば、評価なんて意味のないこと。人間も自然の一部ですから、自然に学べというのが老子の知恵です。

 悩み事があれば、それに合う老子の調剤があなたを待っています。

『人生に、上下も勝ち負けもありません 精神科医が教える老子の言葉』(野村総一郎著、文嚮社、本体価格1,350円)

 

 

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