著者の石川真理子さんは、米沢藩士の厳格な武家の娘として育てられた祖母と12歳まで一緒に暮らしました。明治から昭和の激動の時代を生きた祖母の生きる思想は「武士道」でした。武士である夫を援ける妻の極意を55のエッセンスにまとめられています。そして、1つ1つの教えには、関連する論語を付加しており、理解しやすくなっています。
武士道の根幹は、「何事が起きても、常に心を平静に保つ」ことです。外的環境の変化にも動じない、強い「克己心」を養成し、いつでも明るく陽気でいることが求められます。夫が大事を迎えた時、夫を支える妻も付和雷同然でいるのはなかなか難しいものですが、「夫の窮地こそ女は強くあれ」と伝え、「心が強くなれば、自ずと穏やかになる」と祖母の教えは説きます。55のどの言葉も読む者を勇気づけ、危難に立ち向かう魂を作り上げます。
現代の日本人には武士道が精神的背骨が必要であると考えながら、最終頁を閉じました。
『女子の武士道 武士の娘だった「祖母の言葉五十五」』(石川真理子著、致知出版社、本体価格1,400円)