語られる言葉の河へ

2010年1月29日開設
大岡昇平、佐藤優、読書

【食】中国産ウナギ肝から国際基準の1.5倍のカドニウム

2013年09月05日 | 社会
 (1)中国産ウナギ肝焼き(東京都中央区のスーパーが販売)から、3.07ppmのカドニウムを渡邊泉・東京農工大学環境資源科学科准教授は検出した。国際基準の1.5倍だ。
 このウナギ肝焼きを最終加工したのは、静岡県の水産加工会社で、その社長はひたすら驚くばかりだった。
   
 (2)中国の急速な近代化は、繁栄と同時に土壌の重金属汚染や危険な飲用水問題を引き起こした。
 重金属には、動植物の生育に必要な必須元素と、生育を阻害する非必須元素がある。鉄、胴、亜鉛などは必須元素で、人体にも必要だ。他方、カドミウム、鉛、水銀は非必須元素で、食物中の値は限りなくゼロに近い数値が望ましい。
 「肝」には、重金属に限らず、さまざまな薬品などの有害物質が滞留しやすい。食への安全意識が高まる日本では、中国からウナギ肝を出荷する業者は減っている。肝は、安全に自信のある会社しか出さない。
 (1)の静岡県の業者は、かのウナギは中国で加工した後、タレを塗るなどして売っていた。中国南部の福建、広東両省の2社から輸入した(いずれのウナギが1.5倍なのかは不明)。
 いずれも商品の出荷段階で検査を済ませていた。カドミウムについては0.1ppmという基準を設けていた。にもかかわらず、高い値のカドミウムが検出された要因は何か。

 (3)要因その1、中国国内のウナギの生育環境。
 今回の検査結果で、ウナギ肝はカドミウムだけでなく、鉛、水銀も高い。おしなべて高いということは、餌や育った水の環境事態が重金属に汚染されている可能性が高いということだ。
 広東省で飼育されているウナギは、露地で養殖されている。今回のウナギが仮に広東省のものであるならば、化学工場などからの重金属を含んだ排水で土壌が汚染され、その影響で高カドミウム肝になった可能性がある。

 (4)要因その2、飼料。
 中国では、養殖の際に鶏の肉骨粉が使われる。それぞれの骨粉を飼料として与えられた魚肉類は、食用として販売される。だが、売られなかった魚肉類は、さらに骨粉となって他の魚肉類の餌になる。
 こうした仕組みなので、どこかで重金属が紛れ込めば、生態濃縮が進み、汚染が広がってしまう。

 (5)要因その3、国内要因。
 日本では、重金属に関する検査は十分に行われていない。米が輸入される際にはカドミウムの検査を厚生労働省が行っているが、野菜や魚介類などについては行っていない。
 カドミウムに係る基準値が定められているのは、米(0.4ppm)と清涼飲料だけだ。

 (6)さらに、盲点もある。
 これまで魚の重金属汚染は、もっぱら天然の海水魚、わけても大型魚について論じられてきた。大型魚は食物連鎖の上位にいるため、水銀などの重金属を含んだ魚を食べることによって、体内に蓄積されていくからだ。
 しかし、それ以外の魚介類は「落とし穴」で、わが国の検査をすり抜けてしまう。(1)のウナギ肝がそうだ。

 (7)人間がカドミウムを摂取すると、腎臓に溜まり、最悪の場合は腎不全を引き起こす。
 イタイイタイ病もカドミウムが原因で、亜鉛鉱山の下流に位置する富山県神通川流域で、骨がボロボロになる患者が多発した。
 イタイイタイ病発生地区の米に含まれていたカドミウムの値は最高で350ppmと桁外れだったが、他方、当時の神通川水系の米は0.6ppmと高くはなかった。それらと比べると、0.6ppmは高い。
 しかも、カドミウムは魚肉類から摂取すると、吸収される可能性が高い。子どもには食べさせられない。

 (8)(「AERA」誌による今回の調査は、都内スーパーの店頭に並んでいる食品から、野菜や山菜を中心に15食品、中国で加工されることが多い練り物のため安全性を疑問視されることもある焼売、餃子をネット通販で6食品、ファストフード4店で中国産と明示してある「うな丼」、さらに「豚丼」「牛丼」を含む5食品を対象とした。
 小エビは、中国南部の杭州近辺で水揚げされたものだ。鉛が0.245ppm、水銀0.035ppmだった。乾燥品なので、濃度が高めに出た可能性はある。
 鉛は、多量に摂取すると、末梢・中枢神経障害を引き起こす。乳幼児など発達途上の者は特に注意すべきだ。
 ゼンマイはカドミウムがやや高かった。産地は、おそらく中国南部の安徽省だ。
 日本人向けの米を作っている東北部は汚染が深刻化していない一方、南部は大規模な鉱山採掘が多数行われていることなどにより、汚染が深刻だ。
 おおざっぱな「中国産」では、安全は担保されない。より詳しい産地の表示が必要だ。

□岩田智博・福井洋平(本誌編集部)「「グレー」の中国産を正しく怖がる」(「AERA」2013年9月9日号)

 【参考】
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【食】中国産から身を守るためのQ&A ~中国食品を見破れ(2)~
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【食】中国猛毒食品(2) ~アサリ・エビ・ピーナッツ・漬物・ウナギ~
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