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今回特集する「今宵、フィッツジェラルド劇場で」は、ロバート・アルトマンの遺作。ディスカスでDVDをレンタルし、日曜の午前、とっぷしと楽しむことにする。途中からやってきた妻はテレビの前にペタンと座り、結局は最後まで観ていた。
「すごいわね!これ」
「うん。オレもこれほどすごいとは思わなかった。」
すばらしい作品だったのである。
原題はA Prairie Home Companion。実在する同名のラジオショーが舞台になっている。打ち切りが決まったその公開生番組(実際の「プレーリー・ホーム・コンパニオン」はまだまだ続いている。FENで聴けるらしい)のラストショーの日。出演者たちの人間模様が舞台と楽屋で描かれるうちに、劇場に白いトレンチコートの女があらわれる……
長いことラジオの構成をやっていて、映画にも出演しているギャリソン・キーラーがとにかくいい。ショービジネスのなかでしか生きられないことがわかっていながら、最後の日ですら余裕綽々で過ごすオトナぶり。アルトマン映画の常連、リリー・トムリンとメリル・ストリープが姉妹デュオを演じ、ラストでは生意気なメリルの娘もショーに参加する。演じているのはなんとリンジー・ローハン!
数多くのキャストを(しかもワンカットで)自在にあやつり、観客を幻惑させるアルトマンの名人芸を発揮する意味で、今回の設定は最高だった。すでに身体がきつくなっていた彼をささえたのは、やはり群像劇が得意なポール・トーマス・アンダーソン。アルトマンのタッチは、彼を通じて生き続ける。そのことを確信できただけでも観た甲斐はあった。合掌。
次回は「ザ・プレイヤー」