事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

わたし怒ってます~派生需要PART1

2009-02-24 | 社会・経済

Hakennmura01  休日の午後、わたしはひとりでラーメン屋に入り、ワンタンメンの大盛りに食らいついていた。“何かを読みながらでないと食べられない”悪癖をもつわたしは、相席なので朝日新聞を小さく折りたたんで読む。『耕論』という特集ページで、派遣切りについて、労組代表者、会社経営者、経済学者の三者がそれぞれ主張を。

 そのなかで、島田という千葉商科大学学長の主張を読みながらわたしは目を疑った。こんな論旨だったのだ。

・企業は経済環境の変化に対応し、必死に生き延びるために雇用調整を急いでいるのであって、その経営判断は全く適切だ。

・世界規模でコスト競争を迫られている企業にとって、非正社員の存在は、経営の柔軟性を確保するために欠かせない。

・企業が蓄えている内部留保を雇用維持にあてることにも反対だ。雇用維持に使われるようなことがあれば、成長性を疑われ、株価が下がってしまうだろう。

・生産があるから雇用が生まれるのであり、雇用というのは生産の「派生需要」に過ぎない。つまり企業にとって最大の社会的責任と使命は、生産性を上げて競争に勝つ以外にない。それができなければ生き残れず、新たな雇用創出もできない。

・企業が今やるべきなのは、雇用調整と同時に、競争に勝つ戦略を立てることだ。

・雇用問題の矛先を企業に向けるのは筋違いで、政府の施策が生ぬるいことが最大の問題だ。 企業の生産基盤を強化するのも国の責務なのに、法人税率引き下げや、海外からの投資が入りやすい環境整備は一向に進んでいない。政府の怠慢は目を覆うばかりだ。

わかりやすっ!つまり経営者たるもの、企業の社会的責任などという戯言に耳をかたむけるな、どんなタクティクスを使ってもいいからとにかく競争に勝て!今がひどい状況なのは“規制緩和がまだ中途半端だから”だ、つくれ!売れ!成長しろ!……派遣切りに対する世間の怒りや、派遣村への同情的な報道にいらついていた層は、この主張に溜飲の下がる思いだったろう。

実際、ネットでは「当然のこと」「やっとまともな論議になる」と歓迎する向きが多い。しかしちょっと待て。

以下次号

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古畑任三郎を全部観る Vol.27「黒岩博士の恐怖」

2009-02-24 | テレビ番組

Ogataken03 第26話「古畑任三郎 VS SMAP」はこちら

サードシーズン開始。歴然と、今までよりも金がかかっている。画面に深みがあるというか。演出も気合い入りまくり。ただ、これまでのチープさも失礼ながら捨てがたいのだが。

オープニングで西園寺刑事登場。今泉と違い、みんなから愛されていることがよくわかる。彼が招集されたのは、いまは現場を離れている古畑任三郎を呼び戻すこと。

え、古畑が現場を離れている?

ご心配なく。悪のりしたスタッフが、単に古畑にハンニバル・レクターのパロディを演じさせたかっただけなので。今回は、そのハンニバルばりの猟奇犯罪。死体の肛門に、おみくじが挿入された“殺人”事件が連続する。犯人はどんな意図があって、そして“どの時点で”おみくじを仕込んだのか……

犯人が検死医の緒形拳であることで、この犯罪の“WHEN”は視聴者にもすぐわかる仕組み。問題は“WHY”と、古畑がどうやって立証するかだ。

実はこれがちょっと弱い。“最後の殺人”で、なぜ殺す前におみくじを入れなかったかの理由が「衝撃ではずれるかもしれない」は苦しいし(見せかけの犯人の立場からすればそれでもかまわないはず)、立証も偶然に頼りすぎている。ただ、だからこそ今泉慎太郎が古畑には必要なのだという理由に持っていったあたりはしぶとい。今泉は湘北高校における桜木に該当する不確定要素だったわけだ。

しかし、多くの欠点を内包しながらも、緒形拳と田村正和のかけ合いがすべてを吹き飛ばす。研究室で、アルコールランプでスルメをあぶる黒岩博士と、茶々を入れる古畑。全シリーズを通してのベストシーンだ。

黒岩:たいした男だよ古畑。ただ、刑事にしては少し頭が切れすぎる。

つくづく、惜しい役者を亡くしたものだと思う。

タイトルどおり恐怖映画の手法をふんだんに使い、それだけでは息苦しいので古畑の推理はひたすら明るいファミレス(マネージャーの八嶋智人が絶妙の合いの手を入れる)で行われるなど、気配りの回でもある。おみごと。

第28話「若旦那の犯罪」につづく

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