事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

わたし怒ってます~派生需要PART3

2009-02-25 | 社会・経済

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 ちかごろわたしが気になっているフレーズに「前年比」あるいは「前年同月比」がある。売り上げ、利益の大幅な落ち込みを形容するのによく使われる。「100年に一度の経済危機ですねー」と再確認するのにまことに便利。でもちょっと待って。肝心のその“前年”というのは、企業が空前の利益を上げていた年じゃなかったっけ?下の共同通信の記事を読んでもらおう。

大手製造業、株主重視で人員削減 内部留保、空前の33兆円
2008年12月23日 22:08

大量の人員削減を進めるトヨタ自動車やキヤノンなど日本を代表する大手製造業16社で、利益から配当金などを引いた2008年9月末の内部留保合計額が、景気回復前の02年3月期末から倍増し空前の約33兆6000億円に達したことが23日、共同通信社の集計で明らかになった。過去の好景気による利益が、人件費に回らず巨額余資として企業内部に積み上がった格好。08年4月以降に判明した各社の人員削減合計数は約4万人に上るが世界的な景気後退に直面する企業は財務基盤の強化を優先、人員削減を中心とするリストラは今後も加速する見通し。

 08年度の純利益減少は必至の情勢だが配当水準を維持、増やす方針の企業が目立ち株主重視の姿勢も鮮明だ。派遣社員などで組織する労働組合は「労働者への還元が不十分なまま利益をため込んだ上、業績が不透明になった途端、安易に人減らしに頼っている」と批判している。

 集計によると内部留保の合計は01年度末の約17兆円から08年9月末に98%も増加。この間に米国の金融資本主義が広がり「株主重視」の経営を求める風潮が日本でも強まった。増配や自社株買いなどで市場での評価を高める経営手法がもてはやされた。

……ね?明らかに儲かっているんですよ。で、この積み上がった内部留保がありながら、どうして雇用確保に使わないんだという論議は当然出てくる。わたしだってそう思った。

でも構造改革派は「これだから経済を知らない人間は困る。内部留保といったって企業が現金をかかえているわけがないじゃないか。」てな感じ。おいおい違うだろ。

以下次号

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わたし怒ってます~派生需要PART2

2009-02-25 | 社会・経済

Shimadaharuo01 PART1はこちら

 さて、雇用とは生産の派生需要にすぎない、と主張した島田晴雄とはどんな人物だろう。前にプリウスのCMに出ていたし、コメンテーターとしても売れっ子だったから、顔はご存じの読者も多いと思う。小泉内閣のときに内閣府特命顧問として、もっとはっきり言うと小泉文化人として構造改革を支えてきた人なのだ。

 そう考えれば、「100年に一度の経済危機」(このフレーズはさまざまな人の責任逃れに最適)のなかで、小泉構造改革への批判が高まっているからといって簡単に“転向”はできまい。むしろ竹中平蔵と同じように構造改革をもっと推進することで成長に転ずることができると主張し続けなければならないわけだ。

 確かに彼の意見は、小泉ワンフレーズ首相と同じようにひたすらわかりやすいし、責任は評判の悪い麻生政権にあると主張することで耳に心地いい。

 しかし。

 彼の路線の行き着いた果てがこの始末だ。小泉政権下、規制緩和の名のもとに製造業への派遣労働が認められ、確かに“雇用の場”は増えた。素晴らしいことだ。が、それではなぜ、今までこんな素晴らしいことが行われなかったのだろう。それは、この国が“歯止めのきかない国”だからではないのか。せめて製造業への派遣を認めない旧制度が、かろうじてこんな最悪の事態への道をふさいでいたのではないか。おかげでもっと古い『口入れ屋の搾取』の世界に舞い戻ってしまったのだ。いったい旧制度はどっちだ。

 しかも、島田の論に決定的に欠けているのが、労働者もまた消費者であるという発想。「雇用は生産の派生需要」をつきつめていけば、終着点は「民が滅んで企業が残る」であり、民が滅ぶ以上、企業が生き残れるはずもない。まして、格差社会の到来で治安の悪化、生活保護受給者の増加といった社会的コストが増大していることを考えれば、国も滅ぶことは自明ではないか。あ、そうか。グローバルカンパニーたちはそれでかまわないってことなんだね?

以下次号

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