goo blog サービス終了のお知らせ 

事務職員へのこの1冊

市町村立小中学校事務職員のたえまない日常~ちょっとは仕事しろ。

「WALL・E」(2008)

2009-01-03 | アニメ・コミック・ゲーム

Walle  29世紀。廃墟となった地球上で、一体のロボットが清掃作業を続けている。彼の名はウォーリー。

唯一のともだちは“決してつぶれることのない”コオロギ(ゴキブリかも。でも一応ディズニー作品だからクリケットにしておきましょう)。そして楽しみは、700年前に人類が残したミュージカル映画「ハロー!ドーリー」を再生することだった(ビデオはベータマックス)。そんな七百年の孤独を過ごすウォーリーの前に、探査ロボット“イヴ”があらわれる……

 背景にあるのは辛辣な文明批判だ。廃墟に残されたスーパーマーケットには

Buy N Large」(でっかく買おう)だの

We got all you need, and much more

なんてキャッチフレーズがペイントされていて、結局のところ大量消費、大量廃棄を重ねたあげくに地球から逃避していった人間たちを皮肉っている。逃げ出せた人類はいいとして、他の生物は?それに贅沢ざんまいだったのはアメリカ人だけで……ま、今回その話はいいか。

 つまりはわがままな人類がノアの方舟で脱出したあと、健気に地球をクリーンナップしてくれたロボットの純愛物語なのだ。応援したくなるじゃないですか。

 名前からわかるように“最初の女性”でもあるイヴはしかしなかなか攻撃的で(笑)、異常を察知するといきなり爆撃してしまい、ウォーリーを心底びびらせる。このあたりは笑わせたなー。彼は「ハロー!ドーリー」の貧乏な青年のように(I Love Youは言えないけれど)彼女と手をつなぎたいだけなのに。

 そしてウォーリーはある“宝物”を彼女にプレゼントする。イヴはその宝物をお腹に入れた途端にフリーズする(妊娠のメタファ)。宝物とともに連れ去られたイヴを救出するために、ウォーリーの活躍が始まる。後半に登場する清掃ロボットはフィギュアで売れるだろう。異物を徹底的に排除するその姿勢が、全体主義的である未来社会を象徴し、同時にウォーリーたちを助けるお得な役にもなっているので。

 CGアニメのトップランナーであるピクサーのことだから、毎度とんでもない映像を見せてくれる。銀河をかすめて飛ぶシーンや、造物主である人間がつくりあげた摩天楼を、ウォーリーが廃棄物で模すあたりの画面には震えがくるほどだ。2-D中心のジャパニメーション関係者は、この画像をどう思って観ていただろうか。だいたい、この作品を“人生で最初の映画館で観た映画”にしてしまった子どもたちにわたしたち親の世代ができることは、『崖の上のポニョ』の興行収入を全部ぶちこんで、初めて達成できる表現なのだと説明する程度のことでしかない。

 しかしこの会社がしっかりしているのは、むしろストーリーが常に練り上げられていること。今回も泣かせる。700年後のアダムとイヴが、異形のデバイスで“手をつなぐ”あたり、周到。彼らの“キスシーン”に感動しない人はいないと思う。露骨な「眠れる森の美女」のツイストでもある。

 おまけに昔の映画のエッセンスがたくさんちりばめられていてうれしい。コンピュータの声をシガニー・ウィーバーにやらせたのは「エイリアン」へのオマージュだし、ある場面で「ツァラトゥストラはかく語りき」が流れるのは重要なヒントだ。ちょっとネタバレだが「マトリックス」へのピクサーの返歌であるシーンも存在する。

 手をつなぐという物理的なコンタクトで恋に落ちる未来人の名がジョンとメリーなのは偶然じゃないし、エンディングで新たな創世記(ジェネシス)が描かれるバックにピーター・ガブリエルとは……いかん、マニアックすぎましたか。音楽はこの映画で(ディズニーはいつもだけど)重要なファクターで、サッチモの「バラ色の人生」も効果的に使われている。

 もちろん欠点もある。方舟の帰還にはそれなりのドラマが描かれるべきではなかったか、とか。一種の楽園からの追放でもあるわけだし。いっしょに観た娘もそのあたりを気にしていた。聖書が基礎になっている国民とは、受け取り方に差があって当然かもしれない。

 しかし小屋主たちには悪いが、ハリポタが公開延期になって結果的にはよかったかも。おかげでこの映画の観客動員が歴然と増えたのだから。

 ほとんど無声映画なのに、機械の一挙手一投足で(足はないけど)泣かせてみせる手管だけでも一見の価値あり。特に目の液晶画面でしか感情表現できないイヴにはおそれいった。キリスト者ではないわたしは、それでもこの映画をひたすら愛するしかない。傑作!

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続・追徴4 ~ 最終回

2009-01-03 | 社会・経済

Photo PART3はこちら

「土地改良区費は……40万ぐらいですね。なんか今年から下がったみたいで」

「下がった?うーん、耕作者が水回り関係で支払うことになったってことかなあ」

よくわかんないけど。

「差し引き40万ぐらいですか。父が畑をやってるもんで、種苗費とかけっこうかかるんですけどね」

「いやホリさん、畑の作物を出荷したりはしてないでしょ?だからね、必要経費として計上できるのは

・土地改良区費
・農地の固定資産税

だけなんです。」

「……ってことは農機具代とか軽トラの燃料費とか肥料代とか農薬代とか……」

「全部該当しません!」

「そ、そうですか」

「実はね、差し引き20万円以下だと、税務署は見逃すんですよ。」

「は?」なんだそりゃ。

「でもウチは違いますよ。ちゃんと申告してもらいます」

「あのー、ぶっちゃけた話、みんなちゃんと申告してるものなんですか?」

思えばすごい質問。

「してますよー」

「あ、そうですか。」そりゃ、そう答えるよな。

結局昨年分の農業収入を給与収入に加算し、追徴額は3万円強。ふう、まあこんなもんか(3年分さかのぼるのかと実はひやひやしていた)。

帰り際にPTA副会長は「終わった?」ときいてくる。

「これでオレは犯罪者じゃないぞ」

「んー立派な納税者だよねぇ」

でもわたしは内心、みんなホントにキチンと納税しているのか、酒を飲んだときに彼にきいてみようと決意していたのだった。懲りてねー。

※実は話はこれで終わらなかった。所得税はこれでいいとしても、どんな具合か住民税の方が思いっきり増えてしまい、おかげでゼーゼー言っている(シャレじゃないっす)のである。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

続・追徴3 ~カウンターにて

2009-01-03 | 社会・経済

PART2はこちら

 さて、指定された日がやってきた。“農業収入の所得算定の基礎となる資料”ってなんだ、と考えこみ、思いつかないので営農口座の通帳をそのまま持っていくことにした。なんつっても名目は申告の“相談”なんだから。

 出かけた先は市役所の二階。いちばん奥まった場所が税務課だ。待ち時間があるのかな、と思っていたが、納税係のカウンターには誰もいない。

「あのー、申告の相談にまいったんですが……」

近くにいた職員に声をかけたら、向こうから見知った顔がやってきた。

「おやおや、ホリセンセー。何の用?」

うわ、ウチのPTAの副会長じゃないか(T_T)。税務課に異動してたのかっ!

「なんかさぁ、オレ、脱税してるらしくて」

Gasho01 おまけに後ろからは

「おー、ヒロシー。何し来たー

うわ。高校の同級生だ。わたしを見かけたので隣の課から仕事中なのに“見学”に来たらしい。

「うるせー、気が散る。あっち行けよ頼むから!」

 対応してくれたのは幸いなことに副会長ではなくて、如才ない感じのおっさんだった。

「あれでしょ、税務署の方からなんか来てませんでしたか?」

「え?いや、別に」

「おかしいなあ」と言いながらもたいして深刻にとらえているわけでもないみたい。

「いちおう営農口座の通帳は持ってきたんですけど」

「現在どの程度の農業経営なんです?」

「経営、というか全面委託なもんですから」

「なんだ、委託なんですか。じゃあ簡単ですよ」

「簡単……なんですか」

「はい。委託料はどの程度去年あったんですか?」

「メモってきました。83万円ですね」

「で、土地改良区費は?」

ほらきた。以下次号

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする