第10話「矛盾だらけの死体」はこちら。
今回の犯人は、桃井かおりが例によってけだるく演じるDJ中浦たか子。
ディスクジョッキーという言葉は死語になりつつあるけれど、桃井のDJ役にはわたしは思い入れがある。
七十年代末、TBSの木曜座の枠で放送された「たとえば、愛」(脚本倉本聰。主題歌は豊島たづみの「とまどいトワイライト」名曲だったなー)というドラマが大好きだったから。
主演は大原麗子と原田芳雄。大原がリスナーに語りかける“昔ながらの”DJを演じていて素敵だった。
しかし彼女は最終回で軽薄なタレントに番組をうばわれてしまう。そのチンピラタレントをやったのが桃井。生放送直前まで「できないわよっ!あたしには絶対できない」とゴネながら、いざ本番になると流暢に語り始める調子良さで本領発揮。
三谷幸喜がそのドラマを観ていたかはわからないが(観ていたに決まっている。タイトルまで韻を踏んでいるではないか)、当時のチンピラがすっかり大御所DJになったこの回は、まるで「続・たとえば、愛」だった。
迷路のような(実際に古畑は迷子になって登場する)放送局を、けだるい風情から一転して靴を脱ぎ、全力疾走する桃井がすばらしい。しかも恋人をうばったアシスタントを殴りつけ
「エリちゃん、痛い?」
と確かめる邪悪さなど、“日本の核弾頭”桃井かおりの魅力爆発だ。
古畑:実はわたし、警部補なんです。
中浦:えっ?警部にも補欠とかあるんですか?
新人時代の宇梶剛士がディレクター役で、杉本哲太夫人としてめったにオモテに出なくなった神津はづきが放送作家役でいい味をだしております。特に神津。いい女優なんだからもっと現場に!
第12話「最後のあいさつ」につづく。