最寄りの電停は公立の大きな病院の名前になっていて、
電車を降りててくてく歩いていくとその病院があって、
さらに大きな郵便局の前を通りすぎたところに職場があります。
そんな職場の正門前で、おっちゃんに声をかけられました。
「すんません、この辺に警察署があるって聞いたんだけどどこだか分かりますか?」
トレーニングウエア上下にスニーカー。
ダウンのベストを羽織って、見たところスポーティな若々しいおっちゃん。
近所に警察署は思い当たらないけど、
用があって、でも道に迷った、てことかなと思ったので、
iPhoneで警察署を検索。
案の定、示されたマップを見ても近いところに警察署は見当たらず。
――そこの、すぐお向かいにあるのは消防署なんですけど、近くに警察署は・・・、何かお困りですか?
「そこの病院に行こうと思って、車でここまで送ってもらったんだけど、
財布も保険証も携帯電話も、持ち物を全部置いたまま降りちゃって、
警察署で電話を借りようかと思って。」
――(え。。。)
軽く訊いてみたらびっくりするほど他愛もない理由だった。
自分のiPhoneを電話画面にして、どうぞ、てその場でご家族に電話してもらった。
目の前に大きな郵便局も、その、行こうとしている大病院もでーんとあって、
そこにはいろんな人が何人もいるのに。
電話貸してください。
ただそれだけのために、警察署を探さないといけないなんて。
職場で確定申告書を封筒に詰めてそれ出しに郵便局に行ってそのまんまぶ~らぶ~ら帰ってきた、
花粉で両目を真っ赤に腫らした謎のマスク女に、
電話貸してじゃなくて、警察署どこですかって尋ねなきゃいけないなんて。
どんだけ世知辛い世の中なんだ。
そして、おっちゃんどんだけ謙虚で礼儀正しいんだ。
いろいろ考えちゃうなあ。
世の中もっと、江戸の長屋っぽいゆるさがあってもいいと思うんだけど。
高く評価されようとか。
言い換えると。
意図的に、自分をよく見せようとか、すごいと思われようとか。
まあそういう類のことが、ニガテというか、はっきり言ってキライなんだけども。
それを毎年毎年やらなきゃいけないんですよねえ。
雇われの身である限りは。
どうやら、当たり前だと思って黙ってやっていることの中に、
本来評価ポイントになることがいくつもあったらしい。
でもそれがどうしてそういう観点での評価項目になっているのかが、
まったく理解できないようなシステムになっているので。
クビになるんじゃなければ別に低評価でもいいやと投げやりに生きてきたのに、
加筆しろと言われてどう加筆するかに悶々。
加筆できなくて評価が低すぎてクビになって江戸にすごすご戻るっていうのでも、
それはそれでまた次の人生を考えるけどなー。
雇われて生きてくって、ほんとめんどくさいな。
コンタクトレンズの保存液が残り数滴だなとか。
シャンプーかリンスのどちらかが空っぽだとか。
使い捨てカイロが最後の一個だなとか。
歯磨き粉のチューブをもうこれ以上は絞れないなとか。
クローゼットの中の除湿剤がもうたぷんたぷんだなとか。
トイレットペーパーが、
箱ティッシュやポケットティッシュが、
キッチンペーパーが、
拭き掃除シートが、
ラップだの各種洗剤の類だの排水口ネットだのごみ袋だのがピンチだとか。
家ん中で何かしらやりながら気づくわけですよ。
ああ、買ってこなきゃ、て。
それもたいてい、同じことを何日も何日も繰り返し気づいてるわけですよ。
ああ、いいかげん買ってこなきゃ、て。
それで、仕事帰りにドラッグストアに寄るってことは忘れずにできるわけですよ。
買わなきゃいけないものがあったな、て。
でもじっさい帰ってから買ってきたものを見てみると、
買わなきゃいけないものたちが一度で全部そろってたためしが皆無。
まあ大体は、買わなきゃいけないものたちのうちの一個だけは買ってあって、
そのほかはいくつもストックがあるアンパンマンお野菜ビスケットだったりホワイトロリータだったり葛根湯だったりして。
なんなんですかねー。
われながらほぼほぼ怪奇現象なんですよねー。