今夏,勤務施設にやって来る子ら数人から,クヌギの葉に付いた“虫えい”のことで「あれって,何?」と度々問われました。虫えいは別名“虫こぶ”と呼んでいます。
この虫こぶが,敷地の裏にあるクヌギに大量に付いていたのです。それはもう驚くばかりに。そのとき,虫こぶの説明をして,中を切って見せました。クヌギエダイガタマバチの卵か幼虫が入っているとばかり思っていたのですが,肉眼では姿は定かではありませんでした。子らには,とてもふしぎなものに見えたでしょう。わたしにもすっきりしないままに終わったのでした。
話は変わります。わたしの印象に残る虫こぶは,少年期の記憶にさかのぼります。
雑木林に行ったとき,クヌギ類の切り株から育った枝に大きな球形のこぶができていたのです。あちこちにありました。おかしなものだなあと思いながら,「ちょっと割って,中を確かめてみよう」という気持ちになりました。それで,割ると大きな家に小さな部屋が一つ。その中に,白い小さな幼虫がからだを曲げて,ちょこんと入っていたのです。
それを見たときは驚きました。それで,どんな虫が卵を産みつけて,どんなふうにしてこぶができたのだろうか,木には迷惑な仕業ではなかろうか,そんなふうにほんとうにふしぎに思った記憶があります。おとなになってわかったのですが,仕掛けた虫はクヌギエダタマバチだったのです。
子どもたちから質問を受けて,それ以来,虫こぶのことが気にかかっています。それで,歩いていても目にとまるようになりました。ヨモギの虫こぶはありふれています。種類はいくつかありますが,わたしのような初心者はそういうことは余り気にせずに観察すればいいと思っています。
ヘクソカズラの茎が紡錘型に膨らんだものもよく目に付きます。この正体はヒメアトスカシバです。
虫こぶはその他いろいろあります。わたしにはわからないものばかりです。入門書があれば腑に落ちる手がかりが得られるかもしれません。手がかりが得られれば,追求のしかたが消化不良のままになる心配が少なくなります。そんなつもりで,買い求めたのが『虫こぶハンドブック』(薄葉重著,文一総合出版刊)。これがまた実にコンパクトで,役立つのです。ありがたい,ありがたい。
ネット検索もいいですが,本のページをめくるたのしみはそれには代えがたいものがあります。
こんなわけで,これからは虫こぶにも目を向けていこうと思います。