◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「監督さんが丁寧に教えていただいて」って?

2007-05-10 10:38:43 | めちゃくちゃな敬語
                 だれだよ!?
 このセリフの主語はだれでしょうか。「監督さんが」ですから、監督ですね。では、監督はだれから何を教わったのでしょうか。実をいうと、これは、ある若い女優が「初めての役で、監督さんが丁寧に教えていただいて・・・」と言っていたわけで、そう、お分かりですね、監督が教わったのではなく、この女優にいろいろ教えたのです。今、10人中9人がこういう言い方をしますが、いつまでもこれでいいのでしょうか。そもそも助詞を間違えているのですが、尊敬語と謙譲語をきちんと区別していないので助詞の間違いに気づくことができないわけです。「教えていただいて」は尊敬語ですか、それとも謙譲語ですか?
 主語を監督にするなら、監督の行為に対して敬意を込めて尊敬語を使い、「監督さんが丁寧に教えてくださって」と言わなければいけません。「教えていただいて」は謙譲語であり、自分の行為をへりくだって言う言葉、つまり、自分が主語でないといけないのですから、「初めての役ですから(私からお願いして)監督さんにいろいろ教えていただいて」となります。主語、助詞、述語、尊敬語、謙譲語、監督が自ら進んで教えてくれたのか、自分が監督に依頼して教えてもらったのか、そういうことを全く何も区別せず、ただ単に「いただいて」を語尾に付けさえすればいいという話し方ですが、ほとんどの人がこうなのでそれほど目立ちません。でも、これは明らかな間違いですから、まず、このことをしっかり認識していただきたいと思います。
 さて、尊敬語「くださる」と謙譲語「いただく」を比較して、どちらがより敬意の度合いが高いと感じますか。人に何かを依頼するときは、「~いただけませんか」「~いただけますか」「~くださいませんか」「~くださいますか」「~ください」という順番になりますが、依頼したのではなく、その人が自らの意志で何かをしてくれたという場合は「~くださって」と言うのが自然です。この「~くださって」を、昨今はほとんど聞くことがありません。上記の女優のように何でもかんでも「~いただいて」だから聞かれないのか、現実に、頼まなければ何もしてもらえないから、「~くださって」と言いたくても言えないのか、果たしてどちらでしょう? 嫌々やっている人に「~くださって」は確かに嫌味ですけれどね(^^;)。
コメント
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