◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「社長はお客様をもてなされております」って?

2007-05-07 12:02:16 | めちゃくちゃな敬語
             いつもより多く回しております
 社長に用があって社長室に来た専務に社長秘書が「社長は、海外からの大切なお客様をもてなされております」と言ったら、おかしいですか、おかしくないですか。こういう言い方はとてもよく聞く、というより、放送業界ではほとんどこういう言い方になってしまっているようで、これを「おかしい!」と言い切るにはちょっと勇気が要りますが、私は、この言い方にはかなり違和感があります。それに、一般の人の講演などではあまり聞かれない言い方ですから、単純に、スマートに、「もてなしていらっしゃいます」と言えばいいのではないでしょうか。さらりとこう言えたら格好いいと思いませんか? これではちょっと物足りない、最上級の尊敬語でということなら、「おもてなしになっていらっしゃいます」です。
 ここでちょっと考えてみていただきたいのですが、「おります」はどういうときに使いますか。「商売をやっております」「勉強しております」「はい、おります」のように、丁寧語というより、自分の側のことについて謙譲の意を込めて使うことが多くありませんか。もちろん、単なる丁寧語として使ってもいいわけで、実際、よく使われていますが、「現在、激しい雨が降っております」といった表現ならともかく、尊敬語に続けて言うとどうもおかしい、せっかく持ち上げたものがガクッと落ちたような感じになるのです。よって、「もてなされております」とは言わないほうがいいでしょう。「もてなしておられます」という形は言いやすいので、一般でもかなり広く使われ、抵抗感もだいぶ薄れていますが、尊敬語としてのランクはだいぶ落ちます。
 何でもかんでも「れる・られる」で済ませていると「もてなされて」としか言えなくて、「もてなされています」ではいま一つ敬語っぽくない、そこで「います」を「おります」にしてさらに丁寧に言ったつもり、というのでは、やがてちゃんとした敬語を使えなくなりますよ。
コメント
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