◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「その便所に行ってきたら」って?

2013-08-11 09:58:22 | 言葉についてあれこれ
                               今はこの辺が便所

 ディクテーション(音声おこし)で、話し手が「その辺上手にできたら」と言っているところで「その便所に行ってきたら」と聞こえ、そう書いたら、当然、話の前後がつながらないのでおかしいとすぐに分かります。でも、ディクテーションを仕事としてやっているにもかかわらず、おかしいと感じない人もいるのです。
 本当ですよ! これは実例(ある人が入力作業をして持ってきたもの)なのですから。この人は、自分が入力した文章を一度も読み返さないのでしょうか。一度でも読めば、いきなり「便所」はおかしいと分かるはずです。書きっぱなし、読み返さない、仕事でそれは許されないでしょ!
 アメリカのゴア元副大統領のTEDスピーチを聞いたところ、「講演で、『昨日、自分で車を運転して近くの農場へ行き、妻と一緒にファミレスで食事をした』と話したら、『ゴア元副大統領がファミレスを自ら経営すると発表した』という記事が新聞に載った」と言っていました。これは・・・わざと?
 内容を変えるという意図なんかなくても、早とちり、勘違い、聞き間違いはありえます。また、ディクテーションの納品物で、話し手が言っていることと正反対のことを書いてある文章を見たことがあるのですが、それは聞き間違いというレベルではなく、いいかげんなやっつけ仕事をしていて直すのが面倒だったのだろうと思います。
 クリアな音声でちゃんと聞こえるものでさえ、聞く人に聞き取る力がなかったら全く違うものになるのですから、録音は極力いい条件で、くっきり聞こえるように、ということが大切なのですが、なぜこんなものでディクテーションをしろなんて言えるのかと思うほどひどいものもあります。いや、むしろそういうもののほうが多いのです。
 体育館で講演という場合、反響がひどくて、スピーカーから出る音をICレコーダーで録音するだけでは、ほとんど何を言っているか分からないぐらい、ひどいものになります。「爆笑問題」は「学習問題」と聞こえます。「1年もたったのですよ」と言っているのか「1年もたってないんですよ」と言っているのか、どうしても判別できません。「3番を見てくれますか」と聞こえるけれど、話の流れからあれこれ想像して何度も聞き直すと「サウナに入ったことはありますか」と聞こえる、こういう感じです。
 VTR中の声はちゃんとテレビ局の音声スタッフが録音しているのでしょう、いつも比較的聞き取りやすいと感じますが、それでも、ちゃんと聞き取るにはちゃんと聞き取れる力が必要なのです。「うまいですよ」と聞こえるのに「大丈夫ですよ」というテロップ、明らかに「このくらいでできますよ」と言っているのに「このくらい計算できますよ」、「来店頻度」なのに「来賓頻度」、「不摂生といわれるものは避ける」なのに「不摂生と呼ばれるものは避ける」、書いてすぐにおかしいと感じてもよさそうなものですが、そのまま画面に出してしまう神経が分からない~~~( ̄ ̄)。

 ※8月いっぱい更新を休みます。
コメント (4)
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「すっかり朝晩はようやく秋の気配が」って?

2013-08-07 21:21:29 | 言葉についてあれこれ
                               ひんやり寝床もあります

 暑い! 春と秋だけの国に住みたい! 秋までまだだいぶありますねぇ( ̄_ ̄)。昨年秋、北陸朝日放送の牧野アナが「すっかり朝晩はようやく秋の気配が感じられるようになりまして」なんて言ってましたっけ。先輩がこうだから恩田アナも橋本アナもいつまでたってもちゃんとしゃべれないんだなぁ。「すっかり」か「ようやく」か、感じ方は人それぞれですが、どっちかにして( ̄д ̄)! いや、もっと言えば、「気配」ですから「ようやく」でしょ、やっぱり。
 「どういったトラブルがあったのかどうか」という言い方をする人は、小倉智昭をはじめとして意外に大勢いますが、一体どういうつもりなのでしょうか。「どういったトラブルがあったのか」なら、トラブルはあった、それがどういったものだったのか詳しくは知らない、ということになります。「トラブルがあったのかどうか」だと、トラブルはなかったのかもしれません。どっち?
 「命に別状はないものの、10日ぐらいで退院できるのではないかと」と「とくダネ!」リポーターが言ったときは、なぁ~んかむかっとしましたよ。「命に別状はないものの」と聞けば、死にはしないけれど重篤なんだろうなぁと思いますよね。そういう言葉が続くのだろうと思ったら「10日ぐらいで退院できるのではないかと」ですからね。心配して損した、たった10日で退院ですか!
 「仕事が思うようにうまくいかないこともあって」は「思うようにいかない」と「うまくいかない」のミックス。普通は「仕事が思うようにいかないこともあって」と言いますね、あるいは「思うようにはかどらない」とか。この人の仕事は、はかどらないなどという程度ではなく、「思ったよりうまくいかない」のでしょう。
 「よく風邪をひきやすくなる」は「よく風邪をひくようになる」と「風邪をひきやすくなる」のミックス。1年間に風邪をひく回数は全国平均で2.34回らしいですから、「よく風邪をひくようになる」なら5~6回でしょうか。「風邪をひきやすくなる」なら、3~4回か、ぎりぎり風邪気味ぐらいで治まることも多いような・・・。ちなみに、私は、若いころは年8回ぐらいでしたが、今は3~4年に1回です。
 「何もよく分からない」と言った人は、全く分からないのか、少しだけ分かるのか、一体どのくらい分からないのでしょうかね。日本人どうしの会話でも、どうもよく分からない、すでにそういう状況ですよ~o(`д´)oドウカシテル!
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「おいしくないと評判の料理」って?

2013-08-04 09:20:31 | 気になる言葉、具体例
                               ハムやんでもできる

 「申し訳ない姿勢は伝わらない」というテロップを見たことがあるのですが、おかしいですね、「という」はどこへ行った? 「申し訳ないという姿勢は伝わらない」と書かないといけません。つい先日も、「日本人が巻き込まれた情報はなし」というのをTBSのニュース番組で見ました。ナレーションは「日本人が巻き込まれたという情報はありません」だったのですが。
 テロップはなぜこうも必要な「という」を省いてしまうのでしょうか・・・、書かないとおかしくなってしまうのに。以前、「女性が先物取引で多額の損失を出した情報を入手」「安定的な維持・管理を図る理由に年間2500万円で国が賃借」「ある役を演じると祟りに合ううわさが」というテロップについて書いたことがありますが、ほかにも「予防接種がまだないことはあるが」「選挙のときだけ頭を下げればいいものではありません」など、けっこうあるのですよ。
 「女性が先物取引で多額の損失を出したという情報を入手」「安定的な維持・管理を図るという理由で年間2500万円で国が賃借」「ある役を演じると祟りに遭うといううわさが」「予防接種がまだないということはあるが」「選挙のときだけ頭を下げればいいというものではありません」が正しいのです。「という」はなくてもいいだろう、なんて思ったら大間違いです。
 「測定値が3回連続で下回った場合、解除する基準を示しました」は「めざましテレビ」のナレーション。そう、テロップだけではなく、ナレーションでも「という」が抜けているのです。原稿を書いた人が何も考えないで省いたのでしょうけれど、正しくは「測定値が3回連続で下回った場合は解除するという基準を示しました」です。「という」があって初めてちゃんと通じる日本語になります。
 さて、NHKの番組で聞いた「おいしくないと評判の料理」というナレーション、おいしくないのに「評判」って? 「評判」の意味は、世間の人がつける点数(評価)、世間によく知られて話題になること、よく知られたうわさ。「Aは評判がいい」「Bは評判が悪い」「Cは大評判だよ」「近ごろ評判のD」「Eはレベルが高いと評判だ」「Fは問題があるという評判だ」、A~Fを「良い」と「悪い」に分けるとどうなるでしょうか。
 A、C、D、Eは良い、B、Fは悪い、ですね。特に、CとDは良いとも悪いとも言っていないのですが、どちらかというと「良い」なのです。Eも「良い」なのです。ですから、「おいしくないと評判の料理」には違和感を覚えます。「おいしくないという評判の料理」なら、この「評判」は単純に「点数(評価)」の意味になりますからおかしくありません。あのね、「という」は必要なのですよ。
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