◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

「ご(お)~する」が謙譲語の基本。

2007-05-11 11:17:07 | めちゃくちゃな敬語
                訳を申せ、訳を。
 社長に用があって社長室に会長が来たら、社長秘書のあなたはどうしますか。いちばん上に会長がいて、その下に社長と秘書がいる、会長に対して、社長と秘書は同じ側、内側の人間には謙譲語を使いますから、「社長は、海外からの大切なお客様をおもてなししております」ですね。これからお客様がいらっしゃるという時点での会話なら、「社長は、これから海外からの大切なお客様をおもてなしします」「うん、そうか、抜かりはないね、頼むよ」「はい、十分な準備をいたしましたのでお任せくださいませ」、ま、こんなところでしょうか。でも、会長と社長が兄弟や親子といった親密な間柄なら、会長も社長も秘書から見て外側になりますから、「社長は、海外からの大切なお客様をもてなしていらっしゃいます」のほうがいいですね。
 要は気持ちの問題です。人間関係さえ明確になっていれば、そのときそのときの素直な気持ちで敬語を使えばいいわけで、尊敬語と謙譲語の区別ができていれば簡単なことです。では、社長に用があって来たのが得意先企業の副社長だったらどうしますか。当然、その副社長は外側の人ですよね、したがって、社長は内側、下げればいいのですから、社長の名前が鈴木なら、「鈴木は、ただいま、海外からのお客様をおもてなししておりますところで、まことに申し訳ありませんが・・・」となります。肩書きは敬称にもなるので、外側の人に対しては使えません。ただし、「まことに申し訳ありませんが、専務の佐藤がご用件を承りますので、こちらへどうぞ、ご案内いたします」という言い方ならしてもいいですね。
 さて、ここで質問です。「社長が申されまして」はおかしいですか、おかしくないですか? 先日、NHKの「日本語塾」で、「おかしくない」が49%、「おかしい」が39%という調査結果があるというのを聞いてびっくりしました。言うまでもなく「申す」は謙譲語ですから、「れる・られる」を付けたから尊敬語だなんて言っても通りません。「申されまして」は間違いです。ただし、「殿様が申されまして」となると話は別です。昔は荘重な言い方として「申す」があったわけで、謙譲語として使っていたわけではないからこれでいいのです。今でも、申し込み、申し越し、申し出など、謙譲の意を持たない言い方が幾つか残っています。
 殿、私は反対だと申し上げているのです。藩主のわしがいいと申しておるのだからいいではないか、そちは何故反対なのじゃ、訳を申せ、訳を。はっ、では、恐れながら申し上げまする、殿は以前かように申された、民の幸せを・・・。うーん、そうなんだけど・・・、時代劇の「申されまして」が現代人の感覚をおかしくしているかと思うとちょっと残念です。「仰せになって」とでも言えばいいのに、そうすれば49%だなんていうひどい結果にはならなかったかも・・・。正しくは、単に社長を上げればいいのなら「社長がおっしゃって」、外側の人に対して言うのなら、社長を下げて「社長の鈴木が申しまして」ですね。
コメント
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