◆ちゃんとしゃべれ!治納由気(はるなゆき)◆

変な日本語、敬語もどき、崩れていく日本語、そして、正しい日本語とハムスター。

自分の「お仕事」って?

2007-05-17 09:48:54 | めちゃくちゃな敬語
                今日は休みます
 真面目な顔で「お仕事はキャンセルさせていただいたのですけれど」って言う人、成人男性なのに。うんと謙遜して「これはご質問ですが」って言う人、国会議員なのに。きれいな声で「本日参加のご団体から」って言う人、プロの司会者なのに。子どもっぽい話し方で「お勉強しながら、戻ってきてからまたお店でお仕事するので」って言う人、頑張っているキャリアウーマンのはず、なのに。テレビCMで「ご利用できません」って、敬語がめちゃくちゃ、そっちの都合で利用客に迷惑をかけているのに。何でも「ご」や「お」を付ければそれでいいと思っている人は大勢います。これが日本語の現状です。
 自分の仕事は「仕事」、「仕事はキャンセルさせていただいたのですけれど」です。自分が質問するのだから「質問」、「これは質問ですが」で、「ご~する」という謙譲表現にするなら「ご質問いたしますが」です。「5団体」かと思ったら違いました。誤解を避け、丁寧に言いたいなら、「本日ご参加の団体から」です。「勉強しながら、戻ってきてからまたお店で仕事をするので」、お店だけはそのままでいいでしょう。「利用できません」は単なる丁寧語であり、客に対して失礼です。「ご~なる」という尊敬表現を可能表現にしたい場合は「ご~なれる」ですから、その否定形、「ご利用になれません」です。どうですか、間違いを正しく修正できましたか?
 さて、「ご案内していただきますのは」「お迎えしていただいて」「ご確認していただこうと」「ご紹介してくださいますのは」について、敬意を込める対象、へりくだる主語、ということで前に説明しましたが、これを美化語で説明することもできます。つまり、「ご案内をしていただきますのは」「お迎えをしていただいて」「ご確認をしていただこうと」「ご紹介をしてくださいますのは」の「を」を省いただけ、というふうに考えることもできるのです。これには、ベースになる妙な現象があります。『ちゃんとしゃべれ!』で書いている「何でも名詞化」ですが、例えば、「ご相談をいたしております」「お答えをさせていただきます」「お会いをさせていただきたい」というような表現が増えているのです。
 動詞で言えばいいものをわざわざ名詞化し、さらに、頭に「ご」「お」を付けて美化語にする、「ご相談を」「お答えを」「お会いを(おいおい、無理やりだよぉ。`д´)」、こういう「ご(お)○○をする」という言い方をよく聞くので、ついつい何でも頭に「ご」「お」を付けてしまうというわけです。それで、とりあえず「ご」「お」を付けたけれども、やはりくどいので「を」を省いてしまう、こういう流れはありうることです。会議や講演で一般の人が話すときは比較的ゆっくりなので「を」を省きませんが、アナウンサーは、それとは比べ物にならないほど早口ですから、「を」を省くのはむしろ自然な成り行きです。それで変な表現になったとしても、それについて振り返る時間はないのでしょう。
コメント
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