hiroshi hara: saxophoniste

日々の思考の断片

ベリオ

2006-09-29 23:52:00 | sax関係
金曜日も洗足でレッスン。
まず午前中は洗足高校の「演奏法」という授業を行う。
授業と言ってもサックスの生徒三人を与ってるだけなので、グループレッスンのような感じ。
午後はブラスの授業があり、そこでトレーナーを行う。ファンファーレバンドというおもしろいバンドを指導してます。
その後16時半から副科一人、3年生一人のレッスン。
今日は更に明後日に洗足を受験する生徒一人と、大学院生を一人レッスンした。

その大学院生は修了試験に備えてルチアーノ・ベリオ作品に取り組んでいるそうで、今日はセクエンツァ7bを聴かせてもらった。
私がこの曲を初めて演奏したのはもう10年ほど前になる。
管打楽器コンクールが終わった直後に楽譜を購入し、その数ヶ月後に芸大リリア、尚美の試験などで演奏した。
当時は楽譜が出版されたばかりで、オーボエのバージョンも含め至極困難なこの作品を演奏できる人は世界中でも数少なかったように記憶している。

10年経った今でも難曲には変わりないが、徐々にスタンダードなレパートリーになりつつあるから恐ろしいものだ。
今日、久しぶりに楽譜を引っ張り出し、その院生とともに練習してみたが、とても研究熱心な学生で感心した。

この作品の独特の小節割りは、緊張と緩和の起伏を数値で現しているものと解釈していたが、実は日本古来の拍子木のリズム(歌舞伎や相撲などで「拆(き)を入れる」といい、同一音で徐々に速くなるリズム)に由来していて、ベリオの二人目のご夫人が日系人だったということにも関係しているという。

その「拆を入れる」拍子の中、"H"音のバックグラウンドとともに点から線へ、そして高さへと移行し、すなわち1Dから3Dへという立体感、遠近感を創りだしているのではないだろうか。

この曲に限らず、ベリオ作品は感情の起伏が激しく、緊張を保つことがとても難しい。
その院生から、逆にこちらが教わることもあり、とても有意義なレッスンだった。
おかげで帰宅してもまだ元気。