虎尾の会

幕末の草莽の志士清河八郎の会の名を盗用しています。主人は猫の尾も踏めません。

追われゆく坑夫たち

2005-12-07 | 読書
今、図書館から岩波新書「追われゆく坑夫たち」を借りて読み直している。

1960年第1刷とある。
今、読み直しても衝撃力は変わらない。
「だれも書きとめず、したがってだれにも知られないままに消え去ってゆく坑夫たちの血痕を、せめて一日なりとも一年なりとも長く保存しておきたい」というひそかな願いからであり、そうせずにはおれなかった」(あとがき)上野英信の志が胸に突き刺さる。

1960年といえば、日本は、「貧困」の解決がまだ最大の問題だった時代で、特に炭鉱労働はその過酷さ、非道さは特別といえばいえるけど、しかし、少しも別世界のことではなく、本質は今もちっとも変わっていない、という気がする。

今、姉歯設計士のことで、マンションが危ないというニュースが連日報道されているけど、企業が利益を得るには、賃金を下げるか、コストを下げるかするのは常套手段。人命軽視は、食品業界でも運輸業界でもいわれたことだ。

建築業界って、みんなこうではないのか?調べたらほとんどの民間住宅は欠陥があるのではないか、というのは、市民みんなが持っている疑いではなかろうか。

マスコミがこの問題をどこまで追及するか。大資本、政府はこの問題の早急な沈静化にたぶん、やっきになって取り組むだろう。マスコミも適当なところで、うやむやにしてしまうかもしれない。

「追われゆく坑夫たち」に描かれる坑夫たちは、非道な経営者に対しておとなしく、無気力でさえある。わたしたちと同じだ。