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あいちアートトリエンナーレ2010・瀬戸内国際芸術祭2010報告(3)

2010年10月05日 20時53分33秒 | 読者からの投稿
承前

9月5日(日)

瀬戸内国際芸術祭2010~アートと海を巡る百日間の冒険~概要(7月19日(海の日)から10月31日)
 第1回「瀬戸内国際芸術祭2010」は海の復権をテーマに、ベネッセの福武總一郎氏がプロデューサー、越後妻有大地の芸術祭などで活躍の北川フラム氏がアートディレクターを努める。直島、豊島、女木島=写真は女木島からの眺め=、男木島、小豆島、大島、犬島の7つの島と高松港周辺で展開されている。18の国と地域から75組のアーティスト、プロジェクト、16のイベントが参加している。美しい海と島の自然。島時間と言う言葉があり都会では味わう事が出来ない贅沢な時間をアートと共に過ごす事ができる好企画である。


瀬戸内国際芸術祭 直島(人口3400人)

◎「家プロジェクト」
 本村地区の「家プロジェクト」は古い家屋を改修してアーティストが家の空間そのものも作品としたものでる。内藤礼の「きんざ」は1日18人、1人15分の限定で予約が取れなかった。地域を巡りながら6カ所を見ることができた。宮島達男「角屋」、ジェームズ・タレル(安藤忠雄設計)「南寺」杉本博司「護王神社」、千住博「石橋」、須田悦弘「碁会所」、大竹伸朗「はいしゃ」がある。2回目の訪問であるが新たな発見もある。

◎「地中美術館」
 地中に作られた美術館の建築は安藤忠雄。この美術館はクロード・モネ、ウォルター・デ・マリア、ジェームズ・タレルの三人のための美術館である。天井から間接的に取り入れられた自然光によってモネの「睡蓮」は神々しい威厳を発していた。ジェームズ・タレルの空を見る「オープン・スカイ」や脳の作用によって補色の反転作用に取り込まれる作品、ウォルター・デ・マリアの大聖堂の内部空間を思わせるインスタレーションなど素晴しいコレクションと空間からなっている。整理券が発券され混雑していた。




◎「李禹煥美術館」
 もの派の巨匠、李禹煥の美術館は今年開館した。建築は安藤忠雄。ものとものの関係項を築く李禹煥の名作や新作が展示され新たな名所になることが期待される。新たな挑戦といえる映像と石を組み合わせての作品や安藤忠雄の空間に李禹煥が作品でコメントするといった真剣勝負が清々しい。李禹煥は来年、グッケンハイム美術館で個展が予定されて、国際的にももの派の再評価の現れであろう。

◎「ベネッセハウスミュージアム」
 ベネッセハウスミュージアムは安藤忠雄によるホテルと美術館、海岸線の野外展示からなっている。美術館には杉本博司、リチャード・ロング、ブルース・ナウマン、ヤニス・クネリス、大竹伸朗、柳幸典などその場に合わせた作品が設置されて質の高いコレクションである。海岸にある野外彫刻は草間彌生、ダン・グレアム、ニキ・ド・サンファル、大竹伸朗など景観と調和した作品が多い。ベネッセパークには本国際展の新作テレジータ・フェルナンデス「ブラインド・ブルー・ランドスケープ」は15000個のガラスキューブがランドスケープを映し出していた。

◎「直島銭湯I〓湯」
 大竹伸朗とgrafの直島銭湯が人々を裸で繋ぐアートとして一番愛される事例を作ったと言える。外装から内装まで大竹伸朗のアートの神髄が注ぎ込まれている。見所も多い。定山渓秘宝館の象「定子」が浴室の壁の上で出迎えてくれる。身体も心も癒される最高のアートを提供してくれた。地域の人の自慢の銭湯で地域貢献度は高い。福武總一郎氏の地域の人々に対する想いが伝わってくる。

(ヤナイ註:〓はハートマーク)




9月6日(月)

瀬戸内国際芸術祭 犬島(岡山市・人口60人)

◎犬島アートプロジェクト「精錬所」
 90数年前に操業を停止した銅の製錬所跡地を保存、再生して2008年4月に犬島アートプロジェクトとして近代化産業遺産を公開した。建築家三分一博志が自然の熱エネルギーを利用した空間に再生し、柳幸典がアートワークを行った。ガイドツアーで往時の状況と現在、アートワークや自然の熱エネルギーのシステムも理解できた。ベネッセの福武總一郎氏の企画で、三島由紀夫の松濤の家を買い取り保存したものが、近代化に対する申し立てとして柳幸典のアートワークとして結実している。産業遺産を保存再生させ活用する所に未来が開ける事例として、美しい海の光景と相まって印象的であった。

◎ 犬島「家プロジェクト」:F邸、S邸、I邸、中の谷東屋
 長谷川祐子がアートディレクターを努め世界的に評価の高い妹島和世の建築と柳幸典による作品とのコラボレーション。「F邸」「S邸」「I邸」の3つのギャラリーと、「中の谷東屋」を制作。そのギャラリーに柳幸典による作品「山の神と電飾ヒノマルと両翼の鏡の坪庭」「蜘蛛の網の庭」「眼のある花畑」がそれぞれ犬島に4つの建物を点在させ島を巡った。


瀬戸内国際芸術祭 豊島(人口1000人)

◎唐櫃浜地区:オラファー・エリアソン/クリスチャン・ボルタンスキー/大阪芸術大学豊島ラボ
◎甲生地区:塩田千春/キャメロン・ロビンス/クレア・ヒーリー&ショーン・コーディロ/スー・ペドレー

 豊島(てしま)は産業廃棄物の不法投棄で問題になり、弁護士中坊公平氏が奮闘し再処理が進んでいる。豊島は時間の関係からまず半分の地区をまわる事にした。地区をオリエンテーリングのように地域の海岸風景や田園風家の中を巡った。クリスチャン・ボルタンスキーは美しい海岸に「心臓音のアーカイブ」は世界中の心臓音をアーカイブする施設である。登録者の心臓音を録音して公開している。誰一人同じ心臓音がないことをインスタレーション作品で見せていた。他に、大阪芸術大学豊島ラボの大学の活躍も目覚ましい。甲生地区の村を巡りながら、その場の空間と対話する塩田千春他を見た。


9月7日(火)

瀬戸内国際芸術祭 小豆島(人口32000人)
安岐理加/河口龍夫/岸本真之/栗田宏一/スゥ・ドーホー/ダダン・クリスタント/丹治嘉彦/豊福亮/王文志

 小豆島の中山から常盤橋までのルートを下って各々の作品を巡った。美しい棚田の田園風景を背景に王文志の「小豆島の家」は存在感を示していた。5千本の竹を編んで直径18メートル、高さ15メートルのドーム状の家は棚田での稲作と対になる米蔵をイメージした。ドーム内は広く来場者は寝転んでくつろぎ隙間から差す光と島時間をゆったり堪能する事ができる。栗田宏一の「土と生命の図書館」は瀬戸内沿岸および瀬戸内に流れ込む河川に沿った町から採取した600種類の土は美しい顔料が並んでいるようであった。土によって風土をあぶり出していた。


瀬戸内国際芸術祭 豊島(人口1000人)

◎ 唐櫃浜地区:戸千世子/青木野枝/安部良(島キッチン)/藤浩志/ジャネット・カーディフ&ジョージ・ビュレ
ス・ミラー
◎ 硯地区:森万里子
◎ 家浦地区:トビアス・レーベルガー/木下晋/横尾忠則

 前日の豊島は半分しか見る事が出来なかったので残りの半分を見る。唐櫃浜地区では湧き水が出る神社を背景に棚田の地域で開催された。戸千世子は水田用の貯水池に風のオブジェを設置。安部良の島キッチンは地元の食材を用い有名シェフと村人が運営するおもてなしの場である。村人に生き生きとした職場を提供している。森万里子はスーパーカミオカンデとリンクさせ超新星が爆発すると光る作品を制作山の中の静かな沼に妖艶な姿を示していた。家浦のトビアス・レーベルガーも食事し語らう場として機能している。


続く


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