Asian Railway Plaza

アジア各国の鉄道やJR南武線の話題などをお届けします

RotemのDMUでTutubanへ

2016年03月06日 22時30分53秒 | フィリピン
前回9月のマニラ訪問時の続きで、昨年10月の記事で乗務員室添乗レポートをお届けしますと言っていながら今頃になりますが、昨年9月10日にAlabangから起点のTutubanまでを韓国Rotemの気動車の乗務員室に乗車し、戻りもTutubanからAlabangまでを203系を牽引するDL(ディーゼル機関車)に乗車させていただきましたので、本日はAlabangからTutubanまでの添乗レポートを簡単ながら報告したいと思います。
前日の9月9日早朝、ジャカルタからマニラに到着し、8:45に元関東鉄道のキハ350がマニラからビコール地方の中心都市Nagaへ回送で持って行くということを事前に聞いていたものですから、是非、その列車に乗せてもらい次の日にマニラへ戻って来ようと考えていたものの、投石避けのネットが設置されておらず、Nagaへの回送はキャンセルされてしまいました。
ということで、もう一度、マニラ首都圏だけで良いので乗務員室に添乗したいと思っていましたので、翌日の10日に家内の許可をもらいSta.Rosaの自宅を出発しました。以前であればSta.RosaにはCalambaまでの203系によるCommuterとキハ59こがねによるPremiere trainが運行されていたのですが、現在ではAlabang以南は運行されておらず、Alabangに行かざるをえませんでした。
フィリピンの代表的な公共交通であるジープニーでAlabangに到着すると時刻は10時30分になりかけていましたが、0分、30分の切りの良い発車時刻ということもわかっていましたので、なんとか10:30発の列車に乗車できないかと駅まで走ってみたところ、ちょうど10時30分にホームに到着し、韓国RotemのDMUは発車する直前でした。切符を買わないままPNRの幹部から事前にいただいた許可証を乗務員に見せると、その列車の乗務員室の中に招かれ、添乗させていただくことができました。


列車は私が乗り込んだとたんに発車し、列車は50km/hほどのスピードで快調に走りましたが、以前のようなもう少し早いスピードは出さなくなりました。というのは昨年4月29日に発生したレール盗難により100名ほどが負傷するという脱線事故が発生し、事故前はTutuban~Alabang間約28kmを55分で結んでいたものの、事故後のダイヤでは安全重視の観点からこの間を約1時間30分で結ぶことになり、その後ある程度の安全が確認できたので、この時点で同区間を1時間12分と少々スピードアップしました。
また、前方の乗務員室には車掌も同乗しており、ドアの開け閉めはこの乗務員室のスイッチを使用し、次の停車駅の車内放送の案内も実施されていました。


ビジネスエリアの玄関口であるEDSA(Magallanes)はMakatiへの最寄駅であり、かつMRT3号線の乗換駅であるため、多くの乗客が乗り降りしますが、この駅は珍しく高床ホームが整備されておらず、女性専用車の停車する車両部分のみコンクリート製の階段が設置されています。
また、このDMUは3両編成であり、進行方向先頭車1両は終日女性専用車になっていますが、他のLRTやMRTも同様で進行方向の先頭車寄りの車両は女性専用車になっていますので、マニラで鉄道を利用する際にはこのような感覚を身につけなければなりません。


列車はBuendia(Gil Puyat)を過ぎるとSLEXに接続するSky Wayと言われている高速道路は途切れますが、遠くはPangasinanまで結ぶNLEXと接続するため、南北連結高速道路の建設工事が下の写真のとおり実施されており、マニラの母なるPasig Riverを渡ったあたりから、元々PNRの線路に沿って標準軌用の新線建設用として確保されていた敷地は、PNR軌道の上空も含めてこの高速道路の建設に利用されるようで、PNR南方線の今後の連続立体化と電化計画と整合性が取れるのか疑問であります。


Paco駅のあたりから北側ではスケーターと呼ばれるお手製のトロッコでお客を運ぶ姿をよく見かけるようになりますが、列車が絶えず警笛を鳴らしているため、列車が近づくといとも簡単にそのスケーターを持ち運び、一時的に避難させています。


Sta.Mesaまで来ると、乗車よりも圧倒的に降車が多くなり、列車の中は少しずつ混雑が解消していきます。
線路の奥のほうに見える高架橋はLRT2号線であり、Pureza駅が乗換駅となりますが、マニラにおける鉄道と鉄道の乗換が非常に不便で、駅と駅が近接していない場合が多く、ある程度の距離を歩かされます。LRT駅同士、またはLRT駅とMRT駅の乗換駅であるDoroteo Jose駅とRecto駅、EDSA駅とTaft Ave.駅においてもこの駅間の通路はあるもののある程度距離があり、しかも乗車券の通しでの利用はできず、再び購入する必要があります。


下の写真は通行票のようなもので、フィリピン国鉄ではタブレットのようなものになっていますが、各駅で駅員からこの通行票をもらわなければなりません。
通行票の左下には40KPH PD-SAと書かれていますが、PDとSAは略号でそれぞれPandacanとSta.Mesaを指し、この間の最高速度が40km/hを意味しています。


Españaでもかなりの乗客が降車し、車内はほぼ全員の乗客が座れる程度となりました。
また、この駅名の由来はおそらくフィリピンを最初に植民地支配したスペインのことでありますが、フィリピンの地名やファミリーネーム、ミドルネームの中にはスペイン語から由来するものが多くあり、かつ、タガログ語にないÑ(エニェ)が付く地名があります。ちなみに私の家内のファミリーネームもEsquierdo(左という意味)を名乗っています。


そのEspaña駅のTutuban寄りにはQuiapoとQuezon Cityを結ぶ大きな通りであるEspaña Blvd.が横切ります。
先程の話で南北連結高速道路がPNRの上空に建設される予定ですが、鉄道のほうも将来的には整備され大増発が予測されるのですから、将来的にも鉄道はこのような幹線道路といつまでも平面交差するのは大渋滞の元になりますので、高速道路と連携、もしくは一体的に鉄道も整備されることが望まれるのですが、どのようにして鉄道を立体化するのか気になるところです。


España駅のTutuban寄りには渡り線がありますが、他の駅でもこのような渡り線が所々に設置されており、何かしらの障害発生時に臨機応変に対処するためのものかと思われます。2010年9月まで左側通行でしたが、その後、原則右側通行に変更されています。


LRT1号線の接続駅であるBlumentrittに到着しました。奥に見えるのがLRT1号線のBlumentritt駅で、ここは駅が近接していますので乗り換えが容易です。
2000年12月にLRT1号線のこの駅で爆破事件が発生し、20名以上の方々がお亡くなりになったことは記憶に新しいところです。
また、LRT1号線の高架下には幹線道路のRizal Ave.が通っていますので、必然的にPNRはLRTとこの幹線道路と立体交差することが将来的に望まれるのですが、DOTC(交通通信省)の南北鉄道南方線の計画を見ますとこの南方線が高架でオーバークロスし、グランドレベルから軌道面の高さが23.625mもあり、結構な高さの構造物となるようです。


列車は終点Tutubanに向けて発車すると、方角的には真西に向かっていたところから90度左にカーブし真南へ向かいますが、Caloocan方面に延びる単線の線路がそれとは逆に北に向けてカーブし、やがてTutubanからCaloocan方面へ向けて延びる線路も見え、ここではデルタ線が形成されています。
昨年、PNRの幹部にTutuban~Caloocan間の運転再開について伺ったところ、2015年末には再開すると述べていたと思うのですが、運転が再開されていないところをみると、Tutuban~Malolos間の整備まではやらないのではないかと個人的には感じており、せっかく軌道強化と高床ホームの整備ならびに新駅設置を実施したにもかかわらず、なんともこれらの施設が活かされないのはもったいないような気がします。
下の写真はTutuban方向からCaloocan方面を見たところです。


やがて終点Tutuban駅に近づくと、進行方向右側にTutubanヤードが見えてきます。


ヤード内にはPNRのコーポレートカラーで塗られたブルートレイン色のRotem製のDMUや203系などが留置されており、塗られていない車両は運用に入らない離脱している車両です。


Tutuban駅は行き止まり式のため、あらかじめスピードを落とし、慎重にブレーキを操ります。
203系については機回線が駅構内にないため、一旦、列車丸ごと引き上げなければならず大変ですが、このようなDMUであればそのような面倒くささもなく、かつ安全ですので、本来であれば日本の中古気動車があると助かるのかもしれません。


今回、お世話になった運転士と車掌さんで、この運転士は双子の兄弟がおり、その兄弟もこのPNRで働いているとのことでしたが、現在はその兄弟はサウジアラビアで鉄道の運転士を担っているようです。


最後にTutuban駅本屋の上にあるPNRの事務所に寄り、PNRの方々にご挨拶させていただきましたが、2階の事務所には指令所があり、この女性が各駅からの列車の状況の報告を受け、1本1本の列車の状況や時間を記録しているとのことです。


次回は203系を引くDLに添乗させてもらい、TutubanからAlabangへ行きましたので、そのレポートをお送りしたいと思います。