Asian Railway Plaza

アジア各国の鉄道やJR南武線の話題などをお届けします

RotemのDMUでAlabangへ

2017年06月11日 17時22分20秒 | フィリピン
昨日、JICA横浜国際センターにおいて、「日本の鉄道、アジアを走る」と題して、この分野では雑誌や本などで数々のアジア各国の鉄道中古車両の活躍するレポートを執筆している斎藤幹雄氏と、アジアの地下鉄、都市鉄道や地球の反対側のアルゼンチンの首都ブエノスアイレスなどの鉄道について詳細にレポートしている「西船junctionどっと混む」の管理人である杉林佳介氏によるトークイベントが開催され、私もお二方のトークと演出を楽しみ行って参りました。
お二方が作成された動画や写真を通して、ミャンマーをはじめ、マレーシアやインドネシア、フィリピンなど、日本の鉄道中古車両の活躍する姿を説明されておりましたが、90分という短い時間の中で、会場に来られた方々にわかりやすい演出が実施され、非常に面白いものでした。終了後は杉林佳介氏が作成された日本の中古車両の鉄道模型の運転会、来場された方々の名刺交換及び雑談会などとなったのですが、中には実際に中古車両の仕事に携わっている方や私の何百倍もコアな方も多くおり、私がこの場に居ることが恥ずかしいばかりで、私のブログ名も一掃のこと別の名前に変えたいという心境にもなったしだいです。
まあ、今さらブログ名を変えるということはさておいて、斎藤氏や杉林氏のように地域を広げて、かつ詳細にまとめるということは私にとっては非常に難しいのですが、私の第2のふるさととでも言うべきフィリピンや205系が活躍するインドネシアだけでも、今後においても訪問し、時間と資金がある限り、1人の趣味人ということでレポートを続けていきたいと思っております。

さて、前置きが長くなってしまいましたが、前回の続きで今年2月下旬〜3月上旬にかけて、マニラ、ジャカルタに行って来ましたが、今回はマニラ編ということで、PNR(フィリピン国鉄)に乗車しましたので、簡単にご紹介したいと思います。
と言ってもマニラではいつものことで、PNRへの本社訪問並びに車庫での撮影、そしてTutubanからAlabangまで乗務員室に乗車させていただきましたが、順を追って説明したいと思います。
3月2日にジャカルタからマニラに戻り、翌3日午前にPNR本社に訪問することにしていましたが、私もフィリピンに居ると、ついフィリピンタイムとでも言うのでしょうか、時間に縛られてまで行動することは大変ですし、今回は家内と子供といっしょということもあり、マニラから南方30kmに位置するSta.Rosaの自宅を出発したのは正午でした。
バスでVito Cruzまで向かい、そこからLRT1号線とジープを乗り継いで、PNRの本社があるTutubanへと向かったのですが、到着するやいなや腹がペコペコということもあり、Tutuban Centerのモールで昼食を取りました。日本出発前にPNRの幹部の方に3日の午前中に訪問することを伝えていましたので、もしかすると不在なのかもしれないと思っていましたが、昼食後すぐにPNRの本社に訪問すると、その幹部の方は既に午前中で退社されてしまったようで、お会いすることができませんでした。お会いできないということは何を意味するかというとTutuban駅構内と車庫に留置されている車両の写真を撮影できないということであり、10年ぐらい前でしたらこの駅には警備員はおらず、撮影もジャカルタと同様に自由でしたが、世界中で発生しているテロやイスラム過激派に対しての警戒感から、現在では撮影する際にはPNR社員から許可証が必要となっています。
表向き撮影はできないものの、子供の写真であればちょっとは隠れて撮影が可能ということもあり、駅構内に留置されている車両を撮影しましたが、駅構内には203系をはじめ韓国RotemのDMUや科学技術庁(DOST)のハイブリッドトレインが留置されていました。

まずはDOSTのハイブリッドトレインですが、以前も紹介しましたように5両編成の車両で、本線上において試運転を何度か実施したようですが、最大の難点がいくつかあり、低速での走行しかできないことと、ホームと車両床面の高さに大きなギャップがあることです。低速での走行に限るとは連結器に問題があり、縦や横の力に対しては問題がないものの、斜めにかかる力に対して弱いことが判明しており、ホームに対して車両床面のほうが約30cmほど高く、子供やお年寄りが乗降する際には不便さを強いられる結果になっています。
以前、PNRの車両担当の幹部がこのハイブリッドトレインを営業運転させることを述べておりましたが、実用化する上ではこれらの問題をクリアさせなければなりませんので、この車両での営業運転は難しいのかもしれません。


続いて203系ですが、Metro Manilaのコミューター区間であるTutuban〜Alabang間の主力形式であり、朝と夜に運行されているTutuban〜Mamatid間に運転されている1往復についても203系が使用されています。1編成が基本的には5両編成で組成されており、DL牽引で運行されていますが、終点のAlabangにおいてDLの機回しが実施され、RotemのDMUに比べて折り返しに多少時間を要します。


最後に韓国Rotem製造のDMUで、元々3両編成×6編成が在籍し、当初の計画ではその後のSucat〜Calamba間のリハビリにおいても、Rotem製の車両を増備する予定でありましたが、その計画はフェーズ1までしか実行されず、車両の増備も結果的に実行されず、現在、運用に充当されているのは2編成のみのようです。(他の4編成は故障中)


時間的には夕方の5時近くとなり、自宅のあるSta.Rosaに帰ることにしましたが、夕方のラッシュ時にマニラからバスで帰るのも大変なことですので、AlabangまでこのPNRに乗車し、Alabangからジープで帰ることにしました。17時7分発の列車は上の写真で紹介しましたRotem製のDMUでしたので、3両編成では車内は大混雑が予想されますので、子供達には苦痛にならないよう乗務員室に乗車させていただきたく、PNRの幹部らしき方にお願いしてみたのですが、あっさりと許可をいただくことに成功しました。
Alabangまでの切符を購入後、幹部の方とともに前方の乗務員室に入り、幹部の方から乗務員に対して私達の乗務員室への立ち入り許可の説明をいただき、我々家内と子供はAlabangまで乗務員室に乗車できたのですが、とても混み合う客室に乗車することは避けられたものの、乗用車などと衝突事故を起こしたらどうしようとネガティブなことを考えてしまいました。PNRにおいてはかつてのように70km/h以上のスピードで走行することも少なくなり、60km/h以下のスピードで走行することがほとんどですので、万が一、踏切で乗用車と衝突事故が発生しても大惨事にはならないと確信し、腹をくくって乗車しました。
乗車した列車は定刻17時7分に出発し、約28km先の終点Alabangを目指しました。各駅では高床のホーム延伸工事が進行中で、3両から6両対応すべく長さ120mのホーム整備が実施されており、203系のような5両編成でも対応できるようになっています。下の写真にはタガログ語で「Bawal dumaan」と書かれていますが、これは「通るな」という意味です。


列車は40km/hぐらいのスピードで快調に進みますが、各駅で多くの乗客を拾っていきますので、客室内はすし詰め状態を呈しています。なお、毎回のように説明しておりますが、進行方向の先頭車両は女性専用車になっておりますので、Rotem製の3両編成においては男性は2両目もしくは最後尾の車両しか乗車できず、時には乗る事ができずに次の列車を待つということも強いられることが時々あります。



途中、Vito Cruz駅南側の踏切においては、私の知り合いで鉄道マニアであるマーク君が踏切の番人をしていますので、乗務員室の窓から大きな声で「マーク」と叫ぶと、マーク君も気がついたのか手を大きく振ってくれました。勤務が入っていなければTutuban車庫での撮影やPNR本社訪問にも付き合ってくれる良い青年なのですが、マーク君の勤務する日と私のPNR本社訪問日が重なってしまったものの、一瞬だけ挨拶できただけでも良かったのかもしれません。
列車はAlabangに向けて南下しますが、Buendia〈Gil Puyat〉駅まで来ると、混雑率はいっそう拍車をかけ、250%に近い乗車率となりました。
このBuendia駅においても6両ホーム対応工事が実施されているのですが、以前も述べたように元々Buendia駅のホームは北側にBuendia Ave.という大通りとホーム南側にはDela Rosa St.の2つの踏切に挟まれたところに位置します。Rotem製DMUの3両編成であれば問題なく対応できるものの、203系では基本的に5両プラスDLとなりますので、どちらかの踏切を閉めたまま列車が停車しますので、朝夕においては渋滞の元となるので、5年ぐらい前の高床ホーム整備時に予めBuendia Ave.北側、もしくはDela Rosa St.の南側にホームが整備されることが望まれていたわけなのですが、今頃になって下の写真のように結果的にはDela Rosa St.南側に6両対応のホームが整備され、無駄遣いになってしまったようです。
また、SLEXの延長線上にあるOsmeña Ave.がRNRの西側に平行して位置していますが、この道路の上空にSky wayと呼ばれる高速道路が建設中で、マニラ中心部においてはこのSky way〈南北連結高速道路〉がPNRの脇に確保されていた標準軌用の用地と一部PNRの上空に建設されるとのことで、今後のPNRの連続立体化と電化計画に大きな影響が出るのかもしれません。

下の写真は現Buendia駅(Gil Puyat駅)ホームからAlabang方向を臨んだところで、新ホームがDela Rosa St.踏切の南側に建設され、Osmeña Ave.の上空にSky wayと呼ばれる高速道路が建設されています。


列車はBuendia駅を発車し、次のPasay Rd.駅に到着すると列車の混雑率は最高潮となります。また、Rotem製のDMUは1両に2扉しか付いておらず、乗降の際には時間がかかるのですが、この車両が配置される前から乗車率がわかっていましたので、なぜ、乗降には時間のかかる2扉の車両を採用したのか、実情にあった車両を投入すべきかと思いますが、たまたまJR東日本から無償譲渡によって配置された203系はTutuban〜Alabang間の区間においては最適ではとあらためて感じております。


下の写真はPasay Rd.駅で擦れ違う3両編成のRotem製DMUと203系第5編成で、203系のほうが主力形式になっています。近年においては203系の冷房装置に支障があるのか、冷風の温度が高く、サウナ状態の車両が多いようです。


列車はEDSA駅(Magallanes駅)を過ぎると乗車客より降車客のほうが多くなり、徐々に混雑率も解消されていきますが、2扉の車両では乗降に際して時間がかかり、少なくとも2分の停車時間は強いられます。
列車は複線区間の末端駅であるSucat駅に少々遅れながら到着したものの、AlabangからTutubanへ向かう対向列車が遅れており、結果的にこの駅で15分前後の停車が強いられました。

下の写真は夕闇が迫るSucat駅で停車中のAlabang行きの車両とTutuban方面の列車を待つ乗客たちです。


対向列車が到着するや否や我々を乗せた列車は次の終点駅であるAlabang駅に30分程遅れて到着しましたが、緯度が低いせいか日はとっぷりと暮れてしまい、あっという間に闇夜となりました。
乗務員に御礼を告げて降車したのですが、乗車してきた列車は機回しの必要のない203系とあって、遅れを取り戻すかのように早々に折り返し、乗務員たちは我々に手を振ってTutubanへと発車していきました。


以上が今回のPNRレポートであり、あまり大した取材などができませんでしたが、つい最近の現地マニアからの情報によりますと、キハ350第3編成の2両を使用して、Tutuban〜Pasay Rd.間においてシャトル列車が設定される予定や国鉄色のキハ52の3両が先日8日にDL牽引の元で試運転が実施されたとのことで、キハ350やDL牽引による国鉄色キハ52をマニラ首都圏で見ることができるのかもしれません。
また、Bicol方面関連ですが、2015年9月より運転再開されたNaga〜Legazpi間のキハ350によるコミュータートレインは2016年5月より運転休止となり、現在、Bicol地域におけるコミューターの運行区間はSipocot〜Naga間に限られており、この区間はDL牽引によるキハ350が使用されているとのことです。
この他、PNR色に塗られた元新潟色のキハ52の3両はNaga駅に留置されたままのようで、使用されていないようですが、マニラ〜ビコール間の14系、キハ59こがねによる運転についても今のところ再開の予定は残念ながらないようです。
PNRの全体の状況については以上のとおりで、あまり明るいニュースがなく、今後の展望も開けない状況で、PNR南方線の整備にあたって予定されていた官民連携事業〈PPP〉による入札も実施されておらず、一時、中国が支援するのだとか、メガ・マニラ地下鉄を日本政府のODAにより整備するというニュースもありましたが、メガ・マニラ地下鉄の整備には巨額な費用と時間がかかることが想定され、実現化されるまでにはほど遠いことであります。フィリピン国鉄南方線のTutuban〜Alabang間ないしCalamba間の整備が時間的にもコスト的にも難しいことではないと推測されますので、個人的には最優先で整備すべきことではないかと思うのですが、いつになったらフィリピン国鉄の南方線の整備が最優先の事業として見直されるのか私としても大きなジレンマを抱えております。