散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

議会は自治体経営へ参加可能か~栗山町議会の先端的事例を巡って

2015年08月04日 | 地方自治
改めて木下斉氏の「地方議会は自治体経営の議論を深める存在、…しかし、有権者側もそのことを深く認識していない…」に戻る。しかし、議会改革といっても、僅かな例外を除いて、肝心の“自治体経営”に正面から取組み、首長と議論することによって、存在感を見せる地方議会は無い。
 従って、「議会改革」の僅かな例外として著名であり、初の議会基本条例を施行した栗山町議会に戻らざるを得ない。
 『“議会改革ゴッコ”が終わる時~住民の見方は変わらない150730』

先ず、栗山町議会は、議会を討論の広場として、自由かっ達な討議をとおして、自治体事務における論点、争点を発見、公開することが議会の第一の使命、と議会基本条例の前文で規定する。

従って、自治体における基本計画を重要視することになる。そこで「第4章 町長と議会の関係」において、地方自治法第96条第2項の議決事項に関して次の5項を定めている。
(1) 栗山町における基本構想及び総合計画
(2) 栗山町都市計画マスタープラン
(3) 栗山町住生活基本計画
(4) 栗山町高齢者保健福祉計画・介護保険事業計画
(5) 栗山町子ども・子育て支援事業計画

この96条第2項の議決事項を具体的に定めることが、自治体の重要な事項を議論し、論点・争点を発見し、公開する上での大切な手段となるのだ。形式的な承認だけの議決であるならば、意味をなさないからだ。因みに、川崎市議会基本条例の規定では、具体的なものは何も書かれていない。

更に、栗山町議会は「総合計画」に関し、行政側案の対案として、地方自治法100条の2による「専門的知見の活用」を積極的に使い、総合計画議会案を作成した。その後、2008年2月に臨時会を開催にて総合計画を修正可決に至る。

総合計画は、その自治体の胆だ。それを議会において議論し、修正案を作成し、可決することは、自治体経営への積極的参加というよりは、経営者そのものとしての活動だ。

これを住民がどのように評価しているのか。基本条例には「全議員出席のもと、町民に対する議会報告会を少なくとも年1回開催」するとの規定がある。当然、議会報告会においても経過も含めて報告があったはずだ。住民が少なくとも、議員と同等の識見を持つならば、議論は沸騰したかもしれない。筆者は結果をフォローしていないので、何とも言えない。住民も自らの政治的資質を向上する機会を活用していることと想像したい。

さて、住民投票条例を制定する自治体が10年前位から多くなってきている。最近、住民側から積極的に住民投票を請求する例が増えている。卑近では、つくば市の「305億円の運動公園計画」が住民投票で8割反対の結果が出ている。つくば市長は計画撤回も含めて白紙に戻すとの見解を表明した。議会は一票差での予算採否を行っていたとのことだが、住民への説明は実施していたのだろうか。

栗山町に戻って、基本条例には次の様な住民投票の規定がある。
「議会は、議会の権限に属する重要な議決事項につき、必要があると認めるときは、当該事項に関する十分な情報公開のもとに、町民による投票を行い、その結果を尊重して議決することができる。この場合において、町民による投票に関する実施の要領は、別に条例で定める。」

別の条例とは、栗山町自治基本条例(H25/4/1施行)である。住民側の手段として、自治法の直接請求権(有権者の1/50)に基づく、個別の住民投票請求になる。但し、その条例を制定するのは議会の権限であるから、住民の署名で直接、住民投票を実施することはない。

住民自治の立場からは、上記の栗山町の住民投票規定は遅れているとも云える。一方、議会から云えば、自らのミッションを最大限に発揮することで、結果として住民自治に貢献できるとの考え方が読み取れる。

確かに、住民投票は住民を二分しての争点になり、それを巡って泥仕合になる可能性を持つ。様々な情報に晒され、忙しい生活の中で、定めるのに苦労する。結果として、棄権、無関心もある。単純に住民投票が良いとはならない。

以上の様に、栗山町議会の活動は、ある程度まで自治体経営に議会が経営者として臨むことが可能であることを示している。但し、稀有の、あるいは唯一の例かもしれない。

      
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