散歩から探検へ~個人・住民・市民

副題を「政治を動かすもの」から「個人・住民・市民」へと変更、地域住民/世界市民として複眼的思考で政治的事象を捉える。

この一年間の格差拡大を推定する~経済統計を読む(7)

2014年09月08日 | 経済
厚労省の勤労統計調査は4,700万人の勤労者をカバーしている。GDP云々とは言っても、生活者にとっての生活実感は、先ず、実入りと買い物とのバランスであるから、給与と物価の関係が指標になる。

給与のデータとして、47百万人の一人平均が、例えば7月速報として369,846円として報告されている。ボーナスが6,7月にかけて出されるから、平均的に総額は高くなる。しかし、大企業の経営者は、固定給よりも変動給を上げようとしたから、それを含めて検証がどの程度できるか、振り返ってみよう。

先ず、昨日も紹介した「月間現金給与額(前年同月比)」7月速報のデータだ。これは第1表として掲載されている。
*事業所規模    5人以上      30人以上
 ・全調査産業合計 370千円(2.6%増) 423千円(4.1%増)
 『物価上昇>賃金増、企業間格差も拡大140906』

ここで、事業所A(30人以上)と事業者B(30人未満)の勤労者数がわかれば、その間の賃金格差を出せる。これが第3表にある。
*事業所規模    5人以上      30人以上
 ・全調査産業合計 47百万人(1.6%増) 27百万人(0.3%増)

事業者B(30人未満)の勤労者数は20百万人で全体の42%を占める。中小企業が300人以下、零細企業が10人以下を一つの目安とするから、零細企業に近い処で多くの勤労者がいる。

簡単な計算から、事業所Bの月額給与は297千円で事業所Aの70%だ。
次に1年前の7月について比較すると、上記の値は72%で格差拡大だ。
2013/7 事A 407千円(27百万人) 事B 292千円(19百万人)
2014/7 事A 423千円(27百万人) 事B 297千円(20百万人)

上記の傾向は大企業対中小・零細企業だけでなく、正規労働者対非正規労働者、フルタイマー対パートタイマー、製造業対医療・福祉業など非対称的な勤労者構造においてパラレルに進行しているのだ。

しかし、昨日の記事でも述べたが、実質賃金の前年同月比は「1.4%減」であり、春闘の際に、政府の肝煎りで賃金を引き上げた大企業は、日経あたりが、鳴り物入りで報じたが実際の人数規模では、産業界全体に影響を及ぼすまでにはとても至らない。従って、じりじりと生活水準を切り下げていく人たちも多いだろう。

円安によって輸出拡大に期待した安倍政権は、思惑が外れ、貿易赤字が嵩んで対応ができなくなっている。公共・建設投資によって辛うじて経済を維持する以外に知恵がないようだ。

そして更に、地方創生という統一地方選挙対策に、アベノミクスに続いて幻想(期待感)をまき散らす政策が俎上に挙がっている。しかし、先の民主党の様に、期待感をばらまいてそれが刈り取ることの出来ないネタになってしまうと、反動によって負のエネルギーが引き出されるかも知れない。