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 「人生に計画をたててはなりません」ヘッセの手紙残像となる

枕草子

2007-01-14 15:20:04 | 気になる動物・植物
 図書館でジュニア版の「枕草子」を借りてきました。
ぱらぱら見ていたら、去年ブログに、俳句の季語に「蓑虫鳴」がありますが
【清少納言の枕草子に『蓑虫、いとあわれなり。鬼の生みたりければ、親に似てこれも恐ろしき心あらんとて・・・・八月ばかりになれば、「ちちよ、ちちよ、」とはかなげに鳴く、いみじうあわれなり」
と書いてあるところかららしい。】を引用しましたが
その部分が出ていたのです。

読んでみると、清少納言はなかなか面白いお嬢さんで・・・
この本の現代語訳が楽しいタッチで訳されているからなのでしょうが
楽しくてどんどん読めてしまいます。
その「蓑虫」の部分を紹介したいと思います

全文をここに書いてもいいのかしら?でも書いてみます
読んで見てください

 大型版 これなら読める やさしい古典
枕草子 長尾 剛著  汐文社発行

 ごあいさつ

読者のみなさま、はじめまして。
私、清少納言と申します。
もちろん、これは本名ではありません。いわばペンネーム。
私の実家は、由緒正しく高貴な家である「清原家」です。
なにしろ私の父は、和歌の名人として名高い、
あの清原元輔(きよはらのもとすけ)です。そしてお勤めしている「御所」
でいただいているお役目が「少納言」。それで、清原家の娘で
少納言というわけ。シンプルなネーミングでいて、言葉の響きがよろしいでしょう。

 虫のアレコレ

 虫は面白いですね。それぞれに特徴があって、
それぞれに興味深い。そんな虫のアレコレです。

 ミノ虫も、たいへんにユーモラスですね。
あの独特のすがたかたちは、かなしいドラマを想像させます。
 あれは、ミノガの幼虫です。枯れた木の葉や小さな枝を
からだにまとわりつけています。その姿が、蓑を着込んでいるようだから
「ミノ虫」とよぶんですね。

 ミノ虫は、自分で吐いた糸で木の枝にぶらさがっています。
そして風に吹かれて、フワフワしている。
若葉が芽吹く頃から秋にかけて、よく目にする虫です。

 耳を澄ますと、時折「チチヨ、チチヨ・・・・」と鳴く声が
聞こえます。さびしげな声ですね。
枯れ葉や小枝の「蓑」にからだをスッポリと包まれて
なかでジッとしたまま、いったいなにを考えてすごしているかしら・・・・。
ミノ虫を見かけると、いつもフッとそんな疑問が心にうかびます。


 ミノ虫は、きっと鬼が生んだ子なんです。
 鬼は自分が生んだ赤ん坊を見て、わが子ながら急におそろしく
なったんですね。「この赤ん坊は、育っていけばやがて、
私ににた気性のおそろしい鬼に成長するだろう」と。
そして、わが子をすてたくなった。
 鬼は、赤ん坊に粗末な服をきこませて、こうだましました。
「これから季節が変わって、そのうちに秋風が吹いてくる。
そのころになったら迎えに来てやる。だからそれまで、
ここにぶらさがっておとなしく待っておいで」と。

そうして鬼は、にげてしまったのです。
赤ん坊はそうともしらず、親鬼がもどるのを待ち続けます。
ずっと独りで、心細い気持ちを我慢しながら。
 そして八月。涼しい秋風が、木の枝にさがった我が身を
ゆらすようになる。着せられた服にスッポリ身をかくされている
赤ん坊ですが、風の音を聞きつけて、もう秋になることに気付きます。
「ようやく親が迎えにきてくれる・・・・」

赤ん坊は、今日か明日かと、待ちこがれる。でも、
親鬼は決してもどってこない。
だからミノ虫は、かすかな声で、チチヨ、チチヨ・・・・と
鳴くのです。親を慕って、「乳よ、乳よ・・・・」と
か細い声で泣いているのです。

 ミノ虫が風に吹かれている姿を見て、そんなドラマを
想いました。本当に哀れですね。