石仏散歩

現代人の多くに無視される石仏たち。その石仏を愛でる少数派の、これは独り言です。

3 蝶観音

2011-05-09 17:02:30 | 観音菩薩

石仏めぐりを始めて、日が浅い。

居住地の板橋区の外へ初めて出かけたのは、一昨年、2009年の秋。

中野区と杉並区の寺をいくつか回った。

人工の岩山に無縁仏を配してある「西方寺」が印象に残った。

しばらくして『郷愁ただよう東京の石仏』を読んでいたら、「西方寺」がとり上げられていた。

記事の中で「大型で優れた彫りの石仏」として「延宝七年(1679)年の蝶の羽のような天衣」のある如意輪観音が紹介されていた。

石仏を撮影はしてきたが「蝶の羽のような天衣」の如意輪観音は記憶がない。

保存fileをチェック。

あった。

      西方寺(杉並区)

 「ミス杉並」と呼びたいほどの美形の仏さんの肩から頭にかけて、ふくらみのある帯状の輪が彫られている。

天衣を表現していることは間違いない。

それにしても、「蝶の羽」とは言いえて妙ではないか。

さっそく使用させていただくことにした。

都内23区の寺の墓地の墓標には、地蔵と聖観音、それに如意輪観音が圧倒的に多い。

あまりにもありふれた光景で特に注意を払うこともないのだが、天衣などつけてないのが普通である。

普通の如意輪観音 観明寺(板橋区)

     栄松院(文京区)

上の如意輪観音は、石仏としては珍しい六手の優品だが、天衣はない。

天衣のあるなしは、製作費とは無関係のことらしい。

その後、「蝶観音」を探すようになったが、探そうとするとなかなか見つからない。

忘れかけた頃、ぱったり出くわすことが多い。

出会えば写真に撮って「蝶観音」というfileに放り込んでおく。

その写真が、1年半で59枚溜まった。

ひとつとして同じものはないが、似通った「蝶の羽」はある。

        宝塔寺(江東区)      長久院(台東区)

頭が天衣から突き出ているか、いないかの違いはあるが、天衣の大きさや傾きはよく似ている。

宝塔寺の方が、天衣の質感がよく出ているようだ。

天衣の如意輪観音は、当然、儀軌に則っているのだろうが、天衣の大きさや形は石工の好みに任せてるようだ。

極端に小さい天衣もある。

心法院(千代田区)              浄興寺(江戸川区)

これでは「蝶観音」とは言えそうもない。

体のわりに羽が小さすぎて、飛べそうにないからだ。

小さいのがあれば、大きいのもある。

       観音堂(野田市)           功徳寺(中野区)  

天衣が風になびいている。

正に「蝶観音」のイメージにピッタリ。

羽が4枚なければ蝶ではない、という理屈っぽい人には下の「蝶観音」はどうだろうか。

 

           源証寺(足立区)

腰からも天衣がそよいで、後翅のように見える。

以上はいずれも墓標だが、如意輪観音だから十九夜塔もある。

       千葉寺(千葉市

天衣がゆったりと風にはためいてはいるが、こうなると「蝶観音」とは言えないだろう。

天衣の形とはためきようは、石工の想像力によってこんなにも違うのだといことを改めて確認した思いがする。

当たり前のことだが、天衣は如意輪観音だけのものではない。

さすがに地蔵にはないが、聖観音にはある。

       大吉寺(世田谷区)       南蔵院(葛飾区)

意外にも天衣をなびかせた青面金剛もいる。

意外にも、というのは、石仏めぐりの日が浅い僕の感想で、あるいは当たり前のことなのかもしれない。

      路傍(野田市目付)


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
西方寺 (yoshihisa)
2017-10-04 01:10:37
こんばんは。素敵な石像の写真がいっぱいで楽しませていただいております。一カ所だけ気になるところですが、西方寺は確か杉並区ではなかったかな・・と。僕の勘違いかもしれませんが。間違っていたらすみません。
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H・M (ありがとう)
2017-10-04 18:17:15
ご指摘ありがとうございます。
早速、訂正しておきました。
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