○モーツァルト 「フィガロの結婚」 フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団他 1960年9月12~22日
フリッチャイ最後のオペラのスタジオ録音。軽すぎず、重すぎず非常によくまとまった演奏と思います。特に木管楽器の音色がとてもいいです。また声楽陣は優秀なメンバーが揃っています。非常に雄弁なディースカウのアルマヴィーヴァ伯爵、愉快な側面を前面に出したカペッキのフィガロ、伯爵夫人には清楚なシュターダー、対してスザンナはちょっといたずらっぽいメイドのようなゼーフリート・・・というように配役の性格をよく表現していると思います。テッパーのケルビーノは一般的にはミスマッチという評が多いですが、私は、あどけない小学生でなく、悩み多い中高生といった感じの彼女のケルビーノが好きです。
この録音には、グラモフォン盤と日本で販売されたヘリオドール盤とで何箇所か別のテイクを用いている箇所があります。
まず序曲ですが、出だしから数小節目の合奏の出だしが少し異なっています。また、3幕のスザンナと伯爵夫人の二重唱、4幕のスザンナのアリアは、いずれもヘリオドール盤の方がテンポが速くなっています。その他、2幕の効果音も異なっています。
今日は、2幕の終りまで聴きました。残りは明日。
○ベートーヴェン 交響曲第1番 フリッチャイ/ベルリン・フィル 1953年1月9、10日
○ベートーヴェン 交響曲第8番 フリッチャイ/ベルリン・フィル 1953年4月8、9日
1番は、早いテンポでありながら、ベルリン・フィルは余裕綽々の演奏をしています。まるでまだまだ早く演奏できますよとでも言いたげです。大変優秀な演奏であると思います。
一方、8番は、力の限り早く、強く演奏しているように思えます。何もここまで早くしなくてもという感じさえします。しかし、そこがこの演奏の魅力ではないかと思います。田代秀穂氏は自著「世界の指揮者」(昭和29年)で、この演奏について、「いわばトスカニーニの解釈をもってワインガルトナーの表現を創造したとも言うべき」と評していますが、まさに的を得たという感じがします。
この演奏は、私が大学生だった頃、東京文化会館の音楽資料室でレコードを聴いて気に入り、長い間、手に入れたいと思っていました。しかし廃盤で滅多に中古盤が出ることがありませんでした。初めて、レコード芸術の中古レコード店の広告に出て、すぐにその店に電話しても既に売約済みということでくやしい思いをしたことがありましたが、その次に広告が出たときは、日時を定めて店頭販売をするというのでしたので、会社を休んで早くからその店に並んで、なんとか購入した思い出があります。「やっと手に入れることができた。」と感動したものです。写真は、そのとき購入した盤です。DG盤ではなくデッカ盤でした。20年くらい前、9,800円でした。
○メンデルスゾーン ヴァイオリン協奏曲 シュナイダーハン(Vn)、フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団 1956年9月19~23日
○チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 メニューイン(Vn)、フリッチャイ/RIAS交響楽団 1949年9月24日(放送)
メンデルスゾーンは、RIAS交響楽団がベルリン放送交響楽団と改名、マゼールが指揮者となった1956年の録音。
1954年にフリッチャイが首席指揮者を辞任してから、レベルが下がったと言われたこのオーケストラですが、マゼールが指揮者になって持ち直しています。フリッチャイはこの年の9月に、「オルフェオとエウリディーチェ」、「シェエラザード」、「カルメン」管弦楽曲集と続けて録音していますが、いずれも優秀な演奏であると思います。ですが、この録音では、フリッチャイは前面に出ることなく、控えめに演奏しており、シュナイダーハンのヴァイオリンの美質を強調しています。
チャイコフスキーはRIAS交響楽団との最初の放送録音です。フリッチャイは、ドイツ・グラモフォンのスタジオ録音としてベルリン・フィルとチャイコフスキーの交響曲第5番を始めとする数曲をベルリン・フィルと録音した後、この曲を録音しています。
ティタニア・パラストでの収録で、この年の12月にはイエス・キリスト教会で録音するようになったようですので、この場所での貴重な録音となります。
演奏については特筆すべきことはありません。
フリッチャイとメニューインは1961年になって再共演しています。メニューインは4月から5月にかけて行われたベルリン放送交響楽団との演奏旅行に同行しています。メニューインによると同曲を演奏している際、「第1楽章の最後の部分になるとまるで『もうすぐ(フリッチャイの好きな)タルタル・ステーキ(が食べられる)、もうすぐ(メニューインの好きな)ガーリック・スープ(が飲める)』とでも言うように互いに頷き合ったものでした。」と回想しています。1961年のルツェルン音楽祭での同曲の録音が残っていますが、そんなことを思い浮かべられるような演奏ではないかと思われます。こちらの録音が発売されればと思います。
○グリンカ 「ルスランとリュドミラ」序曲
○チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 山田晃子(Vn)
○ストラビンスキー 「ペトルーシュカ」(1947年版) 須藤千晴(Pf)
デリック・イノウエ/群馬交響楽団
チャイ・コンは今日も良かった。私の好みの演奏でした。
残念なのは、これまで定期はFMで放送されていたのに、今回は放送されないようです。残念、残念!
(群馬音楽センター)
○グリンカ 「ルスランとリュドミラ」序曲
○チャイコフスキー ヴァイオリン協奏曲 山田晃子(Vn)
○ストラビンスキー 「ペトルーシュカ」(1947年版) 須藤千晴(Pf)
デリック・イノウエ/群馬交響楽団
当初、聴きに行く予定ではなかったのですが、会社の総務担当者から招待券があるということで、行くことにしました。
仕事が終わって、電車、電車、電車、タクシーと乗り継ぎ、開演ぎりぎりに会場に到着しました。
デリック・イノウエさんは、一昨年度の定期で「グレート」を振り、大変素晴らしい演奏でしたので、今日も大いに期待していました。そして、期待通りの豪快、爽快な演奏でした。
チャイコフスキーのコンチェルトですが、ソリストの山田晃子さんは、一音一音愛しむかのように長めに演奏し、早い部分であってもはっきり明確に音を刻み、とても印象的でした。一楽章が終わった後、少し拍手がありましたが、彼女は笑顔で軽く礼をして、好感が持てました。
明日は、本拠地群馬音楽センターで同一プログラムの定期、楽しみです。
(新田文化会館)
○モーツァルト 交響曲第29番 フリッチャイ/RIAS交響楽団 1955年9月30日、10月1日
○モーツァルト 交響曲第35番「ハフナー」 フリッチャイ/RIAS交響楽団 1952年9月12日
○モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」 フリッチャイ/RIAS交響楽団 1953年9月9~11日
RIAS交響楽団とのモーツァルトの交響曲のスタジオ録音。
29番は、フリーランサーであった1955年の録音で、ちょっときごちなさを感じます。残念ながら、この年の録音はあまりよいものはありません。テンポは晩年の演奏より遅めです。
ハフナーは早めで生き生きとしたテンポで全曲を一気に通します。
ジュピターも早めのテンポで流れるようです。弦楽器は、切れるような鋭さがある一方、艶やかさもあります。管楽器も同様に艶やかでともて魅力的な演奏です。特に第4楽章の開始部分の推進力は、思わずわくわくします。
ハフナー、ジュピターは、私がフリッチャイ・エディションで最初に購入した盤です。1979年2月14日のことでした。このシリーズは、日本で出ていなかった曲から順に購入していき、かなりの年数を経て、全て揃えることができました。
指揮者の若杉弘さんが、21日、亡くなられました。74歳ということで、指揮者としてはまだまだ活躍が期待できるだけに残念です。
若杉さんは、1976年12月、ヤナーチェクの「イェーヌーファ」の日本初演を行っています。翌年春、私が丁度大学に進学した前後、当時、使い古したラジカセでこの初演の模様のFM放送をエアチェックしました。
素晴らしい演奏で、木琴か何かはわかりませんが、水車が回る音を表している部分をくっきり演奏していて、とても印象的でした。その後に聴いたグレゴルやマッケラスの演奏にはない演奏でした。当時録音したカセットテープは廃棄してしまっており、再び聴くことはできませんが、私の記憶にはっきり残っています。もし録音が残っているならCD化等してほしいものです。
若杉さんは、何年か後に「利口な女狐の物語」も指揮しており、こちらも素晴らしい演奏でした。
実演では、1976年9月26日、群馬音楽センターで新日本フィルによるファミリーコンサートを聴いており、これが唯一でした。
ご冥福をお祈りします。
久し振りに、マッケラスの「イェヌーファ」を聴き、若杉さんはこの部分はこのようにとか、ここはこう等指揮していたと思い出に浸りました。
○ビゼー 「カルメン」抜粋 フリッチャイ/RIAS交響楽団他 1951年9月3、29日、10月1~5日(放送)
○ビゼー 「カルメン」から闘牛士の歌 メッテルニヒ(Br)、フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団 1957年1月18~22日
「カルメン」は1946年12月、フリッチャイがフォルクスオパーでウィーン・デビューを飾った曲です。もちろんこの時が初めての演奏ではなく、セゲド時代に採り上げています。また、前か後かはわかりませんが、ブタペスト国立オペラでも採り上げていました。そして1961年秋に「ドン・ジョバンニ」で杮落としを飾ったベルリン・ドイツ・オペラでも次期演目として計画されていたようですが、病気のため実現できませんでした。
この曲は、1958年のバイエルン国立オペラとの抜粋盤と、1956年のベルリン放送交響楽団との管弦楽曲盤の二つのスタジオ録音(と闘牛士の歌のみ2種のスタジオ録音)がありますが、これは初期のRIAS交響楽団との放送録音です。収録内容ですが、曲だけでなく語りの部分も含めて収録してあり、オペラそのものを聴いている気分に浸れ、バイエルン盤より楽しめます。もちろん若い頃のきびきびした演奏で心地よいです。
ただ、なぜか「闘牛士の歌」が収録されていないので、私は、1957年にメッテルニヒとスタジオ録音した同曲を挿入して聴いています。
今年は横浜開港150周年、これを記念して開港博が開催、併せて横浜ディスチネーション・キャンペーンが行われています。
ということで急遽思い立って、妻と横浜に行ってきました。
最初に行ったのは「海のエジプト展」。もの凄く混んでいました。まずチケットを購入するのに20分、会場の中も動きが超スロー、全部回るのに3時間かかりました。とても疲れましたが、大変貴重なものを見ることができました。
今日は「中華街グルメクーポン」コースというJRのきっぷと中華街のクーポンが一緒になったびゅう商品で来ました。ということで昼食は、クーポンの指定店の一つ「珠江飯店」でコース。
横浜は、仕事の関係もありよく訪れましたが、中華街で昼食をとるときは、横浜の知り合いから教わった「四五六菜館」でいつもとっていました。今日は初めてのお店。ということでお味はというと、全体的にこんなものかなと印象でしたが、えびちりの味が独特で、お味噌を使っているのではと思いました。
昼食後は、山下公園を散策、「ウチキパン」でパンを購入、元町商店街を散策して、帰途につきました。
相変わらず、どこも賑わっていました。
肝心の横浜開国博にはまったく目もくれませんでした。写真は「氷川丸」。これしか撮りませんでした。
○モーツァルト 交響曲第29番 フリッチャイ/ウィーン交響楽団 1961年3月13、23日
○モーツァルト 交響曲第41番「ジュピター」 フリッチャイ/ウィーン交響楽団 1961年3月12、13日
○モーツァルト アダージョとフーガ フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団 1960年1月29日
○モーツァルト フリーメーソンの為の葬送音楽 フリッチャイ/ベルリン放送交響楽団 1960年1月29日
フリッチャイが晩年、ウィーン交響楽団と録音した交響曲4曲のうちの1961年3月に録音した2曲。前回の39、40番から1年4ケ月を経ての録音になります。両曲ともRIAS交響楽団とのスタジオ録音が存在し、再録音になります。
29番は、ウィーン交響楽団と残した4曲中、最も優れた演奏、録音であると思います。さわやかで流れるような演奏です。2楽章の終りのところで、低弦がちょっと引きずるような晩年のスタイルを見せます。
41番は、特に1楽章でキャシャで骨だけとか、痩せた、機械的なという印象を受けます。録音が悪いのかオケが悪いのかはわかりません。しかし、1楽章の全合奏の出だしのあと、テンポを落としてヴァイオリンが演奏するところは、とても印象的です。指揮者の佐藤菊夫氏は、このレコードが出た当時の印象として「第1楽章のトゥッティの威風堂々たるフォルテで始まる迫力ある力強い第1主題の動機に続く今一つの第1ヴァイオリンに現れる物静かで優美な旋律が、あまりにのびすぎていて第1主題の前半と後半が調和を失っている。」と否定的な評価をしていますが、私はそこが魅力の一つと思います。アーノンクールがこのスタイルを踏襲しています。アーノンクールは当時、ウィーン交響楽団のチェロ奏者でしたので、この録音にも参加していたのかもしれません。
一番の白眉は第2楽章、反復なしで9分半をかけ、大河を流れるようゆったり演奏しています。
わざわざウィーンに行って録音した4曲の交響曲、果たして成功だったのかどうか。ベルリン放送交響楽団と演奏したら・・・という思いもあります。
アダージョとフーガ、フリーメーソンの葬送音楽は、どちらも暗い雰囲気が全体を覆っています。特にフリーメーソンでの低減の引きずるような動きは印象に残ります。