○ドヴォルジャーク 八つのユモレスク クヴァピル(Pf) 1967年~1970年
○ドヴォルジャーク 影絵 クヴァピル(Pf) 1967年~1970年
チェコのピアニスト、ラドスラフ・クヴァピルによるドヴォルジャーク、ピアノ音楽全集(全集とは言いながら、3曲ほど欠けています。)からのお気に入りの2曲。
ユモレスクは、ドヴォルジャークがニューヨークのナショナル音楽院の院長在任中、夏期休暇で3年振りにチェコに帰省した際に作曲された曲です。もともとはスコットランド舞曲ということで作曲を始めたようですが、最終的には「ユモレスク」という題名になったとのことです。
有名な7曲はもちろんのこと、どの曲も愛らしい小品ですが、終曲の8曲だけは、とても壮大な曲です。この曲は、ドヴォルジャークがナイヤガラの滝を見た時の感動を表したもので、彼は、このときスケッチした動機を用いて交響曲を作曲するつもりだったようですが、実現には至りませんでした。
この曲を聴くにつけ、彼の第10交響曲が完成していたら、壮大で偉大な曲になっていただろうと思う次第です。
影絵は、12曲からなる小品集です。1879年に出版された曲ですが、第1、第2交響曲や、歌曲集「いとすぎ」など1865年に作曲された曲の主題が用いられています。
ここで重要なのは、第1交響曲の主題が用いられているということです。ここには、第1、3、4楽章の主題が使われています。
第1交響曲は、ドヴォルジャークがドイツのコンクールの応募したもので、そのまま返却されず、ドヴォルジャーク自身は破棄したものと思っていたのです。ところが、奇しくも同名のルドルフ・ドヴォルジャークというという東洋学の学生がライプチヒの古本屋で発見し、公表せずにずっと保管していたのです。彼の死後の1923年、親族がその存在を公表し、筆跡と影絵に上記のように主題のいくつかが使われていることから、ドヴォルジャークの第1交響曲に間違いないということになったのです。
影絵は、そんな重大な事実を含んでいた曲でした。
クヴァピルは、決して華美な表現はせず、控えめだが、味あいのある演奏をしています。