みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

EU、環境戦略で世界の最先端を疾走する - 温室効果ガス排出量20%削減を決定

2007-03-25 | いとすぎの見るこの社会-地球環境を考える
環境分野において、日本のベンチマークとすべきなのは欧州です。
金融分野で米英がベンチマークとなるのと同じく、
世界の最先端を走っている地域だからです。

日本の政界と財界の取り組みが非常に遅くてリーダーシップに欠けるので、
ぜひ欧州を見習って欲しいところです。

EU、環境分野で競争力強化を図る(日本経済新聞)
http://www.nikkei.co.jp/news/kaigai/20070228AT2M2700C27022007.html

” 欧州連合(EU)が地球温暖化に対応する新技術の導入などでテコ
 入れを強化している。二酸化炭素(CO 2)を大気中には放出しな
 い発電所の開発に資金を拠出。バイオマス(生物資源)燃料の積極
 活用を税制面で支援する加盟国もある。EUは温暖化対策で規制を
 強化する一方、環境対応の技術革新を促し、欧州経済の競争力強化
 をねらう。
 デンマーク西部の港町エスビアウ。ここの石炭火力発電所で排ガス
 からCO 2を除去・分離し、地中に封じ込める世界最大規模の実験
 が進んでいる。”

かつて環境は「経済と相対立するもの」でしたが、
もはや時代は「環境が経済と深く結びついたもの」、或いは
「環境が経済を改良してゆくもの」となりつつあります。
おそらく、

環境分野での競争力が経済の死活的問題となる
時代に突入しているのでしょう。

日本の場合は「海中に封じ込める」技術が研究されています。
環境分野の死活的な重要性を踏まえ、研究・技術・システム・
マネジメント等、あらゆる部門においての進歩が望まれます。

EU、温室効果ガスの20%削減で合意(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/science/env/news/20070309dde007040013000c.html

” 欧州連合(EU・27カ国)は8日、ブリュッセルで首脳会議を開
 き、京都議定書後(12年以降)を想定して2020年までに温室
 効果ガス排出量を1990年比で20%削減することで合意した。
 目標達成のため、水・風力、地熱、太陽光などの再生可能(自然)
 エネルギーの利用割合をEU全体で現在の約6%から20年までに
 20%に増やす方向で検討を開始した。9日の会議で合意できれば
 世界に先駆けた革新的な温暖化防止策となる。
 EUは京都議定書に沿った現行の温室効果ガスの排出量削減目標を
 8%(90年比)と規定している。だが、EU議長国ドイツのメル
 ケル首相は記者会見で「EUが地球温暖化防止のモデルケースとな
 るべきだ」と表明、20%の削減目標を全会一致で決めたことを明
 かした。”

同じ欧州であっても、原子力大国フランスの立場や
火力発電に依存せざるを得ないポーランドの状況など、
各個の事情も記事から分かります。

日本でこのようなことを協議しようものなら、
経団連あたりが強力な「抵抗勢力」となるのではないでしょうか。
今の政権与党にもそれだけの実行力はまずあり得ません。

しばしば「日本の環境技術は世界一」と言われますが、
そこに満足しているとすぐに二流国に転落します。

こうした理念構築的あるいは先駆者精神においては、
日本は明らかに世界平均を下回る劣等生なので、
その点も自覚しておく必要があるでしょう。

…… 日本には、慢心している暇はないのです。
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不動産がセクターとして買われる時代の終わり - 本格的な投資対象選別の時期へ

2007-03-23 | 注目投資対象・株価の推移
今週は質の高いリリースが相次ぎました。

公示地価の全国平均が16年ぶりに上昇(asahi.com)
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200703220098.html

” 株式市場では、公示地価発表に対する期待感が先行し、三井不動産
 <8801.T>、三菱地所<8802.T>などの不動産株が軒並み上昇して
 きた。三菱倉庫<9301.T>、住友倉庫<9303.T>など含み資産の増
 加が見込める倉庫株や、担保価値上昇が期待できる都銀・地銀株に
 まで波及していた。不動産株の上昇ぶりは、TOPIXの年初から
 の上昇率が3%に対し、業種別の不動産株指数<.IRLTY.T>の上昇
 率が17%に達していることが象徴している。
 「現在の不動産株の水準を考えれば、材料出尽くしになりやすい。
 三井不などはすでに上値を切り下げる形であり、チャートの形状は
 悪い」(水戸証券投資情報部長の阿部進氏)との指摘も出ている。
 不動産関連株の一段の上値追いは厳しそうだ。”

 → 市場の現状を非常にうまくまとめている分析です。
   東証一部の不動産銘柄は、もう明らかに割高なものが
   この指摘通りいくつも出ています。

   マーケットは既にもう景気後退を織り込みつつある
   のではないでしょうか。
   新興マンションディベロッパーの株価低迷と
   その業績の伸び悩みを見ると、特にそう思います。

地方や中小物件保有のREITに成長余地か(asahi.com)
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200703220079.html

” 好調に推移してきた不動産ファンドも競争激化で今後は曲がり角に
 さしかかるとの見方も浮上し始めた。不動産投資信託(J-REIT)で
 は、保有不動産の収益力向上(内部成長)を進めやすい中小物件保
 有のファンドや、まだ地価が上昇していない地方都市などの物件取
 得に力を入れるファンドに成長の中心が移るとの指摘も出ており、
 今後、銘柄選別の動きが加速しそうだ。”

 → ここには今後の投資のヒントも出ています。
   不動産セクターが何でもかんでも買われる時代が終わり、
   投資対象選別の優劣が問われるようになりつつあります。

   いとすぎがダヴィンチの件のエントリー
   書いたのと近い方向性ではないかと思います。

   ただ、中小物件でも地方でも決してパイは大きくなく、
   過当競争に突入してしまう危険性もあるでしょう。

   ◇     ◇     ◇     ◇

ヘッジファンド関連、今週もまた続報です。

2006年のヘッジファンド資産、24%の増加(asahi.com)
http://www.asahi.com/business/reuters/RTR200703200040.html

” インスティチューショナル・インベスター・ニュースとヘッジファ
 ンド・ドットネットが19日発表したリポート「ヘッジファンド・
 アセット・フローズ&トレンズ・リポート 2006─2007’」
 によると、ヘッジファンド業界の資産は、新規資金流入と運用益に
 よって2006年に24%拡大して1兆8900億ドルとなった。
 株式に集中投資するヘッジファンドの資産は2006年に1730
 億ドル(30%)増加し、7430億ドルとなった。増加額のうち
 約70%は新規の資産流入によるもの。”

 → いよいよ資金の動きがボーダーレスかつ急激になり、
   市場がそれに振り回されるようになるに違いありません。

   個人的にはCTAのような先物に特化したファンドの
   資金力・資産増加率を知りたいところです。

   最近思うのですが、ヘッジファンドは呼称を改めて
   「レバレッジ・ファンド」とした方が適切かもしれません。
   その方がより実態に近い気がします。

   ◇     ◇     ◇     ◇

注目銘柄。持ち直していますが、明らかに弱いです。

  【日立建機(東証一部 6305)の株価推移】

 [9月4日]    [3月23日]
 2,715円 → 3,260円 △ 545(+20.07%)

  【トーセイ(東証二部 8923)の株価推移】

  [9月4日]    [3月23日]
 112,000円 → 122,000円 △ 10,000(+8.93%)

  【シーズクリエイト(東証一部 8921)の株価推移】 ※ 一昨年から継続

 [11月22日]  [3月23日]
 74,500円 → 69,900円 ▼ 4,600(-6.17%)

  【オークマ(東証一部 6103)の株価推移】

 [6月7日]    [3月23日]
 1,202円 → 1,378円 △ 176(+14.64%)

  【丸紅(東証一部 8002)の株価推移】

 [6月7日] [3月23日]
  573円 → 731円 △ 158(+27.57%)

  【新日本建物(JASDAQ 8893)の株価推移】

 [1月12日] [3月23日]
  679円 → 822円 △ 143(+21.06%)

※ 投資判断は投資家各位で行って頂けますようお願い致します。

首都圏のマンション発売戸数、5,000戸を割り込む(毎日新聞)
http://www.mainichi-msn.co.jp/today/archive/news/2007/03/15/20070316k0000m020028000c.html

” 民間の調査会社、不動産経済研究所が15日に発表した首都圏マン
 ション市場動向によると、2月のマンション発売戸数は前年同月比
 19.4%減の4804戸で、13年ぶりに5000戸を割り込ん
 だ。〔中略〕
 都内の市町村部が同48.2%減と半減するなど、東京、神奈川、
 千葉、埼玉の1都3県全域で減少した。一方、1戸当たりの販売価
 格は4,621万円で同15.7%(627万円)上昇した。埼玉、千葉
 両県の郊外部などでは、価格上昇のために購入をあきらめるケース
 が出始めているという。契約率は同3.7ポイント減の77.5%
 に下がり、2月末の在庫物件も同27.9%増の7388戸と増え
 た。”

 → 個人投資家はマンションディベロッパーが好きな方が多いので、
   参考までに取り上げてみました。

   これは一時的な現象との声も聞こえてくるのですが、
   千葉・埼玉で在庫が増えているのは決して楽観視できません。
   「千葉・埼玉でマンション供給が増えるのは良くない前兆」
   というのが業界の経験則なのだそうです。

   千葉・埼玉を主力展開エリアとしており、
   しかも差別化しにくいビジネスモデルの場合、
   特に苦戦が予想されます。
   (既に下方修正を出したところがあるようですね)


~~~~~~~~(2006年の注目銘柄)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【三菱商事(東証一部 8058)】 [6月7日]  [1月12日]
                 2,220円 → 2,140円 ▼ 80(-3.60%)

【新日本建物(JASDAQ 8893)】[2月7日]  [9月1日]
                1,200円 → 645円 ▼ 555(-46.25%)
               [4月14日] [9月1日]
                 985円 → 645円 ▼ 340(-34.52%)

~~~~~~~~(2005年の注目銘柄)~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

【クリード(東証一部 8888)】[12月15日] [9月1日]
                578,000円 → 408,000円 ▼ 170,000(-29.41%)

【東誠不動産(JASDAQ 8923)】[12月9日]  [2月6日]
                 105,000円 → 157,000円 △ 52,000(+49.52%)

【オークマ(東証一部 6103)】[11月2日]  [4月7日]
                 1,000円 → 1,631円 △ 631(+63.10%)

【丸紅(東証一部 8002)】  [10月24日] [4月14日]
                507円 → 631円 △ 124(+24.46%)

【三菱商事(東証一部 8058)】[10月24日] [4月14日]
                2,065円 → 2,740円 △ 675(+32.69%)


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  譲渡益税の分を社会に貢献する組織・団体に寄付して下さい。
  (当ウェブログのこちらのカテゴリーも御覧下さい。)
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三浦展『団塊格差』- フリーター増加の「最大の理由」を発見

2007-03-22 | こんな本を読んでいます
まだしっかりと読んでいないのですが、
非常に興味深い指摘があったので取り上げます。
『団塊格差』(三浦展,文春新書,2007)の紹介

これは『下流社会』で知られる三浦展 氏の著作で、
団塊世代を様々な視点・調査で分析したものです。

このなかで、子がフリーターになりやすい家庭の特徴、
つまり「フリーター要因」を分析した箇所があります。
著者によると、最も関連性が強いのは ……

親が仕事に大きな苦痛を感じている家庭
なのだそうです。
(なるほど、納得の結論です)

仕事における能力が相対的なものに過ぎず、
すべての人が自分の職にやりがいを感じる社会があり得ない以上、
これが必然的な結果なのかもしれません。

となるとフリーターとは日本経済の現状に対するひとつの
アンチテーゼである、との見方も成立します。

途上国のように盗みや詐欺で生計を立てる者が少ないだけ、
まだしも日本はましなのかもしれませんが。

    ◇     ◇     ◇     ◇

この本は他にも興味深い調査データが収録されており、
「団塊世代の特徴は、"自分は他と違う"と皆が主張すること」
など面白い指摘も多く、なかなか有益だと思いました。

新刊本です。関心をお持ちの方はどうぞ。
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教育再生会議、大学卒業に認定試験を検討 - 議員・財界人・公務員・大学教授にも必要でしょうに

2007-03-21 | いとすぎから見るこの社会-全般
何でも試験すれば良いという平板な発想も日本的です。

大学卒業、認定試験の検討で一致(読売新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/yomiuri/politics/20070321i301-yol.html

” 政府の教育再生会議の第3分科会(教育再生)は20日の会合で、
 大学の学部教育の質を担保するため、卒業時の認定試験の導入を
 検討することで一致した。 〔中略〕
 会合では、出席委員から「極端に言えば九九が出来なくても大学
 に入れる」などと、大学生の学力低下を懸念する声が相次ぎ、4
 年間の学部卒業時に何らかの認定試験を設ける必要性で大筋合意
 したという。
 また、学部教育での〈1〉到達目標の設定〈2〉成績評価の厳格
 化〈3〉語学や文章作成力など各学部共通の基礎教育の充実――
 なども検討する。学部教育を充実させ、より高度で専門的な人材
 を育成する大学院教育につなげるのが狙いだ。”

言っていること自体は別に悪くないのですが、
そもそも大学生の学力を下げたのは日本政府です。

大学の数だけやたら増やして少子化を放置しているわけですから、
大学生の質が低下するのは当然でしょう。

質の問題など、大学進学率を2割以下に下げれば一発解決しますが、
それでは高等教育に携わる職にありついた方が路頭に迷います。
或る意味、これも「既得権益層」の主張なのかもしれません。

また、「到達目標の設定」「評価の厳格化」は、
大学の教育側には全く適用されていません。
(教授会の質が旧態依然で何も変わっていないのは周知の事実です)
政治家でも、行政でも、日本の企業でも、教育界でも、
「到達目標の設定」も「厳格な評価」も為されていないのですから、
大学生だけに求めても有名無実に終わるでしょう。

「九九ができない」云々は、出所が数学教育勢力と思われます。
若年層の5割が年金未納でも「年金制度は絶対破綻しない」と
しつこく主張している方々に是非言って欲しいものです。
(これは九九ができない以前の問題です)

   ◇     ◇     ◇     ◇

認定試験が必要と思われる方々を列挙します。

日興コーディアルグループ、15年間で3度の大事件(日経BP)
http://news.goo.ne.jp/article/nbonline/business/nbonline-121310-01.html

” これまでも日興は、世間を騒がす不祥事を度々起こしている。1991
 年の損失補填問題を巡る証券スキャンダル、97年の総会屋への利益
 供与事件、そして今回の不正会計問題。15年ほどの間に事件で3度
 もトップが退任している。
 不祥事で社長が代わる度に、日興は「事件再発防止」を宣言してき
 た。だが、世間のホトボリが冷めると、また過ちを犯す。”

 → 今話題の日興コーディアルグループです。
   時系列で振り返ってみると凄いですね。

省庁の天下りあっせん全廃案に自民党内から強烈な反発(朝日新聞)
http://news.goo.ne.jp/article/asahi/politics/K2007030903960.html

” 自民党行革推進本部公務員制度改革委員長を務める片山氏が「彼
 (渡辺氏)よりはずっと詳しい人もいるし、真剣に考えている人
 も大勢いる。議員の発言を真摯(しんし)に受け止めないと」と
 名指しで批判。「(省庁に頼まれて)一斉に言っているなんて大
 間違いだ」と語った。
 尾身財務相は9日の会見で「人材バンクに登録したらいいとの案
 もあるが、仮に登録したら『この人は売りですよ』と天下に知ら
 せることになり、その人は公正中立な行政を意欲をもってできな
 くなる」と批判。冬柴国交相も「公務員の士気にかかわる」と、
 慎重対応を求めた。”

 → 「公務員の士気にかかわる」というのが爆笑です。
   自民党って本当に面白いですね。
   本音を覆い隠す表現技術にかけては世界一でしょう。

黒木亮「自浄力なき地方の闇」(日経BP)
http://news.goo.ne.jp/article/nbonline/business/nbonline-119375-02.html

” 村長は、村の公共工事の入札指名業者の名前を自筆で書き加え、
 地元のゴロである娘婿の方は、工事に群がってくる暴力団などを
 抑える役割をしていた。Xの手がけた温泉施設も、総工費のうち、
 5割強は大手ゼネコンが受注したが、それ以外のかなりの工事や
 備品の納入を村長の娘婿の会社が受注した。また、施設の警備・
 清掃は、警備・清掃業の実績がない村長の娘の会社が受注してい
 る。さらに、ゼネコンから村長に金が流れているとも言われる。
 欧米では、こういう公私混同をしただけで、村長はクビである。
 東京でも問題になるだろう。ところが、地方では、共産党の村議
 や一部の人々を除いて、こうしたことをほとんど問題視しないの
 である。”

 → これは、本当に凄い実話です。
   「これだけの取材力は只者ではない」と思っていたら、
   案の定、黒木亮 氏でした。(なるほど納得)
   『カラ売り屋』という著作に収録されているそうです。
   さすが、営業活動もすばらしいです。
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『週刊エコノミスト』3月27日号 - 今の日本では極めて使いにくい「三角合併」

2007-03-20 | 『週刊エコノミスト』より
今週の『週刊エコノミスト』の特集は「狙われる会社」でした。
『週刊エコノミスト』の内容案内

最新号の内容の確認は、こちらの毎日新聞のサイトの方が正確で早いです。
但し、定期購読してもディスカウントされません。
http://www.mainichi.co.jp/syuppan/economist/

5月の三角合併解禁を控え、メイン特集は「狙われる会社」でした。
内容としては、これまで言われてきたことをコンパクトにまとめた、
という印象です。「資本のねじれ」やキャッシュリッチなど
かなり懐かしい項目が並んでいます。

いとすぎ個人としては、最も重要なのはP30ではないかと思います。
村上ファンド騒動の際に一躍名声を高めた、一橋大学の服部暢達 教授が
日本における敵対的買収の難しさを説明されています。
以下にポイントを纏めてみました。

・国際株式交換制度は欧米だけでなく世界のスタンダードである。
・経営者がノーと言い続ける日本で、敵対的買収は事実上不可能。
・課税繰り延べ制度が存在しないと、三角合併はほとんど使えない。

特に最後に挙げた項目を見ると、いかに重要な記事か分かるでしょう。
エクソン・フロリオ条項への言及がないのが非常に残念ですが、
投資家の方は是非お読みになることをお薦め致します。

日本経済にとってのM&Aの意味合いを理解する上では、
P32で野村証券の西山賢吾ストラテジストの寄稿も外せません。
「買収防衛策導入企業に目立つ資本効率の悪さ」と題して

「買収防衛策=経営陣の保身ではないのか」
との観点から論じられています。

まことに残念なことですが、日本企業の経営陣の多数派は
「企業価値向上よりも、自身とその属する集団の利益が最優先」
だと思われます。

   ◇     ◇     ◇     ◇

今週号の巻末には「東大よりハーバード大』と題して
ハーバードを筆頭とするアメリカの名門大学の実像を取材しています。
なかなか面白い記事ですよ。

P98のジャーナリスト石川幸憲 氏のレポートによれば、

「入るのは簡単だが卒業は難しい」という通説は、
アメリカのトップ100校においてはもう通用しない

ようであり、名門大学では熾烈な受験競争が繰り広げられるとのこと。
” 中国やインドなど世界各国から「超秀才」が殺到してい
 る。ハーバードやプリンストンへの留学生の競争率は20
 倍を超えると言う。”

と石川氏は指摘されています。

「事実や客観的な情報をもとに自らの考えをまとめ、大勢の前で発言
 したり文書にする能力は、エリートの条件として米国社会で重視さ
 れる。米国の大学生は4年間かけてこのスキルを磨くわけだ。」

との記述を読むと、
日本の高等教育の課題が浮かび上がってくるようです。
実社会を見ると、この訓練を経たとは思えない人が非常に多いですから。

P95からハーバード大のマルガリータ・エステベス・安倍 助教授の
(東京大を出て、ハーバード大で博士号を取られた方です)
充実したレポートが始まっています。

何しろ大学のスタッフだけで1万2千を超える「大企業並みの組織」、
入学審査だけでなく寄付金開発、資産運用部門もあると言うのです。

” 寄付金開発部門と並んで大切なのが資金運用部門だ。
 言わば投資銀行のようなものを大学内に抱えており、
 2004年には24%もの利回りを達成するなどファンド
 顔負けの運用益を出している。
 1年間の大学全体の予算は30億ドル(3000億円強)
 で、給与、研究、奨学金、その他のインフラ整備に使
 われる。これだけのお金があるので、他大学の優れた
 研究者の引き抜きなどは日常的に行われている。
 著名な研究者なら年1億円以上の報酬を貰う人もいる
 一方で、全く給与が上がらない教授もいる。”

重要な箇所なので、長々と引用致しました。

運用の評価は単年度だけでなく最低5年以上のスパンが必要と思いますが、
(正確には「投資銀行」ではなく「資産運用会社」だと思います)
それでも非常に優秀な運用成果と言えるでしょう。

日本の大学は資金力でも運用力でも明らかに負けているのです。
イノベーションの必要な分野がここにも発見できます。

   ◇     ◇     ◇     ◇

最後になりましたが、P26の毎日新聞の尾村洋介 記者の報告
「地域間の所得格差はやはり広がっていた」も御覧下さい。

毎日新聞は地域間格差の拡大をデータで立証し報道しました。
記者の指摘によると、所得低下の要因はやはり「公共事業」とのこと。

公共事業は自治体にとって「麻薬」と同じですので、
記者の結論と同様、公共事業の増加は難しいでしょう。
日本社会にとっても害悪ですから。

尾村記者は、この記事中で

” 米英では、税と社会保障を一体化し、低所得者に対し、
 税とは逆に「給付」を行う「勤労所得税額控除」が導入
 されている。勤労が条件のため、生活保護より勤労意欲
 を引き出す効果が高いとされている。”

という重要な提言をされています。
これなら、勤勉に重きを置く日本人にも受け入れやすいでしょう。
この制度の運用実態を詳しく知りたいところです。
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