みんなの心にも投資 … ソーシャルインベスター(社会投資家)への道

個人投資家の”いとすぎ ”が為替・株式投資を通じた社会貢献に挑戦します。すべてのステークホルダーに良い成果を!

『週刊エコノミスト』3月27日号 - 今の日本では極めて使いにくい「三角合併」

2007-03-20 | 『週刊エコノミスト』より
今週の『週刊エコノミスト』の特集は「狙われる会社」でした。
『週刊エコノミスト』の内容案内

最新号の内容の確認は、こちらの毎日新聞のサイトの方が正確で早いです。
但し、定期購読してもディスカウントされません。
http://www.mainichi.co.jp/syuppan/economist/

5月の三角合併解禁を控え、メイン特集は「狙われる会社」でした。
内容としては、これまで言われてきたことをコンパクトにまとめた、
という印象です。「資本のねじれ」やキャッシュリッチなど
かなり懐かしい項目が並んでいます。

いとすぎ個人としては、最も重要なのはP30ではないかと思います。
村上ファンド騒動の際に一躍名声を高めた、一橋大学の服部暢達 教授が
日本における敵対的買収の難しさを説明されています。
以下にポイントを纏めてみました。

・国際株式交換制度は欧米だけでなく世界のスタンダードである。
・経営者がノーと言い続ける日本で、敵対的買収は事実上不可能。
・課税繰り延べ制度が存在しないと、三角合併はほとんど使えない。

特に最後に挙げた項目を見ると、いかに重要な記事か分かるでしょう。
エクソン・フロリオ条項への言及がないのが非常に残念ですが、
投資家の方は是非お読みになることをお薦め致します。

日本経済にとってのM&Aの意味合いを理解する上では、
P32で野村証券の西山賢吾ストラテジストの寄稿も外せません。
「買収防衛策導入企業に目立つ資本効率の悪さ」と題して

「買収防衛策=経営陣の保身ではないのか」
との観点から論じられています。

まことに残念なことですが、日本企業の経営陣の多数派は
「企業価値向上よりも、自身とその属する集団の利益が最優先」
だと思われます。

   ◇     ◇     ◇     ◇

今週号の巻末には「東大よりハーバード大』と題して
ハーバードを筆頭とするアメリカの名門大学の実像を取材しています。
なかなか面白い記事ですよ。

P98のジャーナリスト石川幸憲 氏のレポートによれば、

「入るのは簡単だが卒業は難しい」という通説は、
アメリカのトップ100校においてはもう通用しない

ようであり、名門大学では熾烈な受験競争が繰り広げられるとのこと。
” 中国やインドなど世界各国から「超秀才」が殺到してい
 る。ハーバードやプリンストンへの留学生の競争率は20
 倍を超えると言う。”

と石川氏は指摘されています。

「事実や客観的な情報をもとに自らの考えをまとめ、大勢の前で発言
 したり文書にする能力は、エリートの条件として米国社会で重視さ
 れる。米国の大学生は4年間かけてこのスキルを磨くわけだ。」

との記述を読むと、
日本の高等教育の課題が浮かび上がってくるようです。
実社会を見ると、この訓練を経たとは思えない人が非常に多いですから。

P95からハーバード大のマルガリータ・エステベス・安倍 助教授の
(東京大を出て、ハーバード大で博士号を取られた方です)
充実したレポートが始まっています。

何しろ大学のスタッフだけで1万2千を超える「大企業並みの組織」、
入学審査だけでなく寄付金開発、資産運用部門もあると言うのです。

” 寄付金開発部門と並んで大切なのが資金運用部門だ。
 言わば投資銀行のようなものを大学内に抱えており、
 2004年には24%もの利回りを達成するなどファンド
 顔負けの運用益を出している。
 1年間の大学全体の予算は30億ドル(3000億円強)
 で、給与、研究、奨学金、その他のインフラ整備に使
 われる。これだけのお金があるので、他大学の優れた
 研究者の引き抜きなどは日常的に行われている。
 著名な研究者なら年1億円以上の報酬を貰う人もいる
 一方で、全く給与が上がらない教授もいる。”

重要な箇所なので、長々と引用致しました。

運用の評価は単年度だけでなく最低5年以上のスパンが必要と思いますが、
(正確には「投資銀行」ではなく「資産運用会社」だと思います)
それでも非常に優秀な運用成果と言えるでしょう。

日本の大学は資金力でも運用力でも明らかに負けているのです。
イノベーションの必要な分野がここにも発見できます。

   ◇     ◇     ◇     ◇

最後になりましたが、P26の毎日新聞の尾村洋介 記者の報告
「地域間の所得格差はやはり広がっていた」も御覧下さい。

毎日新聞は地域間格差の拡大をデータで立証し報道しました。
記者の指摘によると、所得低下の要因はやはり「公共事業」とのこと。

公共事業は自治体にとって「麻薬」と同じですので、
記者の結論と同様、公共事業の増加は難しいでしょう。
日本社会にとっても害悪ですから。

尾村記者は、この記事中で

” 米英では、税と社会保障を一体化し、低所得者に対し、
 税とは逆に「給付」を行う「勤労所得税額控除」が導入
 されている。勤労が条件のため、生活保護より勤労意欲
 を引き出す効果が高いとされている。”

という重要な提言をされています。
これなら、勤勉に重きを置く日本人にも受け入れやすいでしょう。
この制度の運用実態を詳しく知りたいところです。
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