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「少子化は若い世代の意識が最大の問題」-フジサンケイの大誤報、高度成長と公費給付を謳歌する世代の欺瞞

2015-01-26 | いとすぎから見るこの社会-少子化問題
大手メディアは何かと言えば「社会の木鐸」「公器」と称するが、
それはどう控え目に見ても「自画自賛」でしかない。
社会の木鐸どころか実態は唐変木であるケースも少なくない。

「軽減税率」「放送利権」「再販制度」における彼らの言い分を見れば、
公益を唱えて実際には自らの利益を擁護していることがよく分かる。

複数の保守メディアは上意下達の体質が強くイデオロギーに基づいた「人民日報」的存在で、
リベラル系メディアの殆どは安全保障やリアルポリティークの分野に伝統的に弱いことは
良識ある者なら既に常識であり、常に嘆いているところである。

そもそもが情報を得るための将棋の駒のようなものだから
と割り切って接することも一つの態度であるが、
重大な社会問題に関して誤った風説を流されるのは迷惑千万で、有害でさえある。

フジサンケイビジネスアイで「団塊ジュニア世代が“貧しい高齢者”に」と題して
少子高齢化問題への対策を促す記事があり、現状の人口動態の厳しさや
年金支給開始年齢の引き上げ、高齢者就労の促進といった
他メディアでも押し並べて論じられている諸点に触れられている。

「凡庸ながら可もなく不可もなく」といったところであったが、
読み進めるにつれて余りにひどい水準なので絶句した。

記事によれば、これまで少子化対策が効果を上げなかったのは、
「戦時中の「産めよ殖やせよ」への国民の忌避感が強かったことが大きい」
「批判が出にくい子育て支援に比重が置かれてきた」

とあるが、この執筆者は日本の少子化対策のレヴェルの低さも、
自民党の町村氏でさえ少子化対策が「大失敗」と総括した事実も知らない訳である。

更に失礼極まりないのが次に続く文句で、
「政策以上に重要なのは、2042年に社会の中心となっている
 現在の10代、20代が問題意識を持つことだ。
 若き世代に「日本の未来」を考える機会をいかに提供していくのか」

と「若い連中は問題意識がないから俺が教えてやる」と豪語しているのである。
若い世代はこのような老害から教わりたくないどころか、
反面教師として絶対に真似したくない対象であろう。

はっきり言っておくが、今の高齢層の退職金控除と公的年金控除を全廃して
全額を育児支援の現物給付に移転すれば出生率は跳ね上がる。

我が国の低出生率の根源には、社会保障給付が極端に高齢層向けに偏り、
家族向けが著しく低いという異常な社会保障の歪みがあるからだ。

▽ 他の先進国と比較すれば一目瞭然





『日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学』(原田泰,新潮社)


日本の社会保障は、子を育てない方が負担が軽く、
老後は他人の子にカネを出させる方が得であるという歪んだ制度になっている。

「「奇跡の村」下條は、次元の低い「少子化白書」とは異なり、
 仕事と育児の両立や雇用改善の推進によって出生率急回復を実現したのではない。
 よく知られているように若年夫婦や育児世帯のための公営住宅を建設し、
 医療・保育・教育における現物給付を手厚くしたのである」

「日本における出生率の低迷と、下條村の見事な出生率V字回復を比較すれば、
 内閣府も、厚労省も、安倍政権もみな下條村より遥かに劣っていることが明白である。
 数値が全てを物語っている」

「しかも、こちらも有名な話であるが、下條村は職員数や公共事業費が極めて少なく、
 そうして確保した予算を育児世帯に予算移転しているのである」

「下條村を見れば、行政コストを合理化して育児世帯への現物給付にすれば
 日本の出生率が急回復して2.00に迫るであろうことは容易に予想できる」

と当ウェブログは主張してきたが、
「育児支援先進国」北欧や仏を見れば至極当然の結論である。

▽ スウェーデンは育児分野で女性雇用を創出し、労働投入を増やして高成長と高生産性を両立した





『スウェーデン・パラドックス』(湯元健治/佐藤吉宗,日本経済新聞出版社)


我が国の人口動態の劣化と少子化対策の遅れに関しては、
政治家ばかりでなく大手メディアの認識の甘さも当然、糾弾されるべきである。

「自民党が漸くこれまでの少子化対策を「大失敗」と認めた。
 当たり前のことをどうしてこれ程の長い時間がかかるのか全く理解できないが、
 但しこれでも初心者の水準内のレヴェルアップでしかない」

「賭けてもいいが、彼らは選挙の票に繋がる高齢層バラ撒きは行っても、
 中長期的な国益に決定的な影響を与える育児支援は口先だけで誤摩化すだろう」

「2004年~2006年に本格的な少子化対策を行う余裕はあったが、
 それを怠ったのは他でもない、長期的視点の全くない当時の自民党内閣である。
 「出生率の低迷は我々の責任だ」と明言するのが至当であろう」

「政治家の癖に先見性に欠け、目先のポピュリスムやドグマにかまけているから
 日本経済が絶望的衰退に向かうのである。まだまだ自覚と反省が全然足りない」

「議員と公務員の人件費を大幅に削減し、育児支援に投入すれば
 (全額、雇用増をもたらす現物給付が望ましい)確実に出生率は上昇し、
 膨大な女性就業者を生み出すことができる」

「しかし自民党は情けないことに、自分達は政治資金の相続でとんでもない優遇を受けている癖に、
 次世代育成に向けては信じられないほど予算をケチっている。
 「コラテラル・ダメージ」を受けるのは日本経済だけでなく、自民党も勿論である。
 己の近視眼の報いを受けて、壮大な自滅崩壊を見せることになろう」

大手メディアで働く安定収入層にも課税強化して
育児支援の財源強化に協力させるべきであろう。
(フランスや北欧といった高出生率国なら、そうした層の手取りはもっと低い)

 ↓ 参考

自民党議員「これまでの少子化対策は大失敗」と漸く自覚 - 石破地方創生担当相も己の知恵のなさを認める
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/fa5e72dc2687a63ff9d642479338c665

「奇跡の村」下條の出生率回復は住宅等の現物給付が主因、行政改革でも卓越 - 低次元の安倍政権と大違い
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/508bd9d382dd2624bd567b845d473189

出生率の推移すら見ない「少子化社会対策白書」- 所得減少でも出生率は下がらず、いい加減に洗脳をやめよ
http://blog.goo.ne.jp/fleury1929/e/1bce64bf05507c14a879c29135bb6158‎‎

▽ 出生率をV字回復させた「先進国」デンマークは、税率を上げて育児支援予算を増やした



『消費税25%で世界一幸せな国デンマークの暮らし』(ケンジ・ステファン・スズキ,角川SCC)


就職氷河期と重なった団塊ジュニア世代が“貧しい高齢者”に…深刻な2042年問題(sankeibiz)
http://www.sankeibiz.jp/macro/news/150125/mca1501250730001-n1.htm
”「2025年問題」という言葉が話題となっている。団塊世代が大病を患いやすい75歳以上となり、医療・介護費がかさむとの懸念である。
 だが、より深刻なのは2042年だ。国立社会保障・人口問題研究所の推計によれば、高齢者人口が3878万人でピークを迎える。これに対し、勤労世代である20~64歳は2025年に比べて1345万人も少ない。
 第3次ベビーブームは到来しなかったのに、団塊ジュニア世代が高齢者となるのだから当然だ。
 2042年以降も高齢化率は伸びるが、高齢者向け施策は人数が一番多くなる同年に合わせて対策を進めなくてはならない。社会コストは大きくなるだろう。小欄はこれを「2042年問題」と呼ぶこととする。
 「2042年問題」の厳しさは、貧しい高齢者が増えることにもある。就職氷河期と重なった団塊ジュニア世代には、思うような職に就けなかった人も多い。低年金や無年金者が増大するとの予測だ。昨今の未婚者が年を重ね、独居高齢者もさらに増える。
〔中略〕
急がれる2つの政策
 ただちに着手すべきは年金の支給開始年齢の引き上げと少子化対策だ。両政策とも相当の年月を要する。2042年までの「時間」はさほど残されているわけではない。
 支給開始年齢の引き上げとは、2042年時点の高齢者数を減らすのが目的だ。日本ほど高齢化が進むわけでない米国やドイツですら67歳、英国も68歳まで上げる。日本も避けるわけにはいかない。
 まず誤解を解き、議論を始めるだけで時間がかかりそうだ。対象は「将来の高齢者=若い世代」だが、構想が持ち上がるたびに高齢世代が反発して先送りされてきた。
 高齢者雇用の充実も必要だ。引き上げが決まったとしても即座に実行に移せるわけでない。人生設計に多大な影響を及ぼすため、何十年もかけて進めざるを得ない。
 一方、少子化対策は2042年の勤労世代を増やそうというものだ。しかし、こちらも一足飛びには行かない。生まれた子供が成長して働き始めるのに、20年近くの年月が必要だからだ。
 政策で産みやすい環境を整えることができたとしても、最終的に結婚、出産するかどうかは国民の判断である。
 いまや日本の少子化は“危険水準”にある。厚生労働省の推計によれば、昨年の出生数は約100万1千人と過去最低を更新しそうだ。1千人程度の誤差は想定され、100万人を割り込んでいる可能性もある。政府が対策に乗り出したからといって、ただちに社会の雰囲気が変わるわけでもない。

出生率目標で機運を
 一方で、政府に変化が見え始めた。安倍政権が「地方創生」の名で人口減少対策に乗り出したことだ。昨年末に政府がまとめた「長期ビジョン」は、2020年の合計特殊出生率が1・6程度、2030年に1・8程度、2040年に人口が一定となる「2・07」を達成すれば、政府目標の「1億人程度維持」が実現するとの道筋も示した。
 これまで少子化対策が効果を上げなかったのは、戦時中の「産めよ殖やせよ」への国民の忌避感が強かったことが大きい。政治家や官僚は及び腰となり、子供が生まれてこない現状の打開が課題なのに、批判が出にくい子育て支援に比重が置かれてきた。
〔中略〕
 政府は、今回も批判を懸念して「長期ビジョン」は目標値ではないとの立場をとっているが、「2042年問題」の解決に向けて、人口減少や少子化に歯止めをかけようという政府の変化を確かな流れにしていく必要がある。
 自治体には出生率や出生数の目標値を掲げているところが少なくない。国民にプレッシャーを与えてはならないが、数値目標のない政策の実効性が上がらないのも事実だ。ここまで出生数が下がった現状を考えたとき、政府としての出生率目標を掲げ、首相自ら国民的機運を高めていくことが求められる。
 これらの政策以上に重要なのは、2042年に社会の中心となっている現在の10代、20代が問題意識を持つことだ。若き世代に「日本の未来」を考える機会をいかに提供していくのか。われわれは“時間との勝負”に負けるわけにはいかない。”

これが問題の記事。やれやれという感じで、
育児関連分野を支えるために配偶者控除をバウチャーに移転することも、
保育料等を仕事の必要経費として控除対象とすることも、
第3号被保険者を原則廃止して女性就労率を増やすことにも言及されていない。

高齢者雇用を増やしたければ、税収の一定分を
有権者の選ぶ公益・非営利組織に拠出する制度を唱えるべきであろう。

主張が居丈高な割に内容が乏しく、
「「日本の未来」を考える機会」が必要なのはこの執筆者本人である。

日本では婚姻率と出生率の相関が強く、婚姻を望む若者の比率は国際的に見て高い。
そしてその婚姻率は、男性の所得の伸びとの関連性が強いことも研究で分かっている。
(つまり所得が停滞する局面では、公費で補えば出生率が上がる)
執筆者はその程度のことは理解した上で書くのが当然であろう。


社会保障膨張、高齢者優遇も一因 給付抑制 切り込み不足(日本経済新聞)
http://www.nikkei.com/article/DGXLASFS13H51_T10C15A1EA2000/
”2015年度予算では社会保障費は31兆円台半ばとなり、過去最高を更新する。高齢化によって4人に1人が65歳以上になり、年金、医療、介護費は毎年のように増えている。高齢者向けの優遇措置を温存していることも費用膨張が止まらない原因だ
 税金で賄っている社会保障費は31兆円だが、保険料や利用者の自己負担も入れた社会保障給付費は115兆円になる。
〔中略〕
 団塊世代が75歳以上になる10年後の25年度には、給付費が150兆円近くまで膨らむ見込みだ。
 伸びが著しいのは介護費だ。14年度は10兆円となり、00年度の制度発足時に比べ3倍になった。厚生労働省は25年度には20兆円を超えるとみている。15年度予算では介護サービスの公定価格である介護報酬を2.27%減額する。ただ単価を下げても利用者そのものは高齢化で増えているため、毎年5~6%程度伸びる費用を抑えることはできても、介護費の総額そのものは増える。
 社会保障財政の問題は、給付が高齢者に偏っており現役世代の負担とのバランスが取れていないことだ。政府は高齢者の優遇措置を見直すため、75歳以上の医療保険料の軽減特例を15年度に廃止する予定だったが、今回は17年4月への先送りが決まった。特例を廃止すれば、国の財政支出は約800億円減る見込みだったが、財政の改善も先延ばしとなる。”

我が国の社会保障の現状については、
最近ではこの日経新聞の報道が的確であろう。
日本の破滅的な少子化は、歪んだ高齢者優遇と表裏一体である。
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