-写真の部屋-

奥野和彦

レンズ考9

2021-02-09 19:22:18 | 写真


この丸い縁の感じだな。
昨日の金盥と同じあの。

まだ、ウィキペディアもあったかどうかの時代で
会社は銀座だったし
何より中古カメラ屋へ見に行くのが早かった。
はあ、これがスーパーイコンタで、テッサーか。
飴ちゃんみたいなキレイなガラス玉レンズ。
テストプリントの後、
写真展をしようと思っているという話になって
なんか変わった印画紙ないかな?
で、当時は色々選べたモノクロ印画紙の中から
これ、どうでしょうか?と持って行ったプリントが
気に入ってもらえて、いざ本番プリントと思ったら
現像ムラがひどく出てとても納品できない。
日によって、時間によって現像液の
濃さや温度の状態が微妙に変わる会社の現像機では
プリントにムラが出来るのだった。
テストの時はたまたま上手くはまってたらしい。
それを伝えに行くと
どうしてもこれでやって欲しい、何とかならないか?
と仰るので、自宅に持って帰って自分のうちで
現像バットでやらせてもらうことにしたのだ。

会社は痛し痒しだったろうけれど
自分としては面白い仕事をさせてもらったと満足していた。
が、直後に胃潰瘍で倒れて入院してしまったので
写真展は見に行けなかった。
病院のベッドでは、退院したら
テッサー付きのスーパーイコンタを
手に入れる事ばかり考えていた。


こちらはこちらで完成。
恥ずかしいので控え目に。

レンズ考8

2021-02-09 00:22:11 | 写真


思い出した事。
ある日、お得意様の広告代理店の写真室のカメラマンが
自身の作品用のプリントを頼みに来た時だった。
6cmx6cmの正方形のフォーマットで撮られている
その写真は、いつもその方が仕事で使っている
ハッセルブラッドとは違って
横にフイルムが送られている。
多分古い蛇腹のスプリングカメラで撮られたのではないかと推測した。

で、プリントを始めたのだけれど
頼まれたカットの中に、多分自宅用の、
小学生にはまだ上がらないかな?
ぐらいのお嬢さんが写っていて
スプリングカメラによくある事だけれど
隣のコマとちょっと画面が重なっちゃってたりして
その女の子のほっぺたやお手手や
そのぼやけた背景がとても1枚の写真として
素敵で、可愛くて
今までに見たことのないまろやかなトーンになるので
テストプリントを持って行った時に
どんなカメラで撮っているのかと聞いてみた。
あ、気になる?とか言って笑ったその人が教えてくれたのは
「スーパーイコンタなんだよ。レンズがテッサーのやつ。
ああ、良いねぇ、すごく良いねぇ、プリント。
蛇腹が少し破れてて光線引きもしてるから
上手くトリミングしてプリントして。」