英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

「お金で買えるもの買えないもの」 ~『マイケル・サンデル 究極の選択 』より~

2012-02-19 21:44:53 | 日記
 昨夜(2月18日)放送された『マイケル・サンデル 究極の選択』、テーマは「お金で買えるもの買えないもの」でした。
 まったくの偶然で、たまたまテレビをつけたら興味深いテーマを論じていました。テーマについては、私が説明するよりは、番組紹介のページをそのまま紹介した方が分かりやすいと思います。

「世の中にはお金で買えないものがある」。私たちはこれまでそう考えてきた。しかし、今やお金さえ出せば、ほとんどすべてのものが手に入る時代を迎えている。たとえば、インド人女性による妊娠代行サービス。7千ドル払えば、子宮を貸してくれ、依頼人夫婦の子供を産んでくれる。毎年数百組の夫婦が先進国からインドを訪れている。教育の世界にもお金というものさしが導入され始めている。アメリカでは、よい成績を取った子供、そして先生には、賞金を与えるという試みが実験的に始まっている。またアメリカでは、消防隊も民営化され始めた。その挙げ句、家が火事になっても会員ではないからという理由で消火されず、放置されたまま家と財産を失うという事態も起こっている。
命、教育、公共サービスなど、お金という価値観が、これまで不可侵だった領域にまで次第に入り込んでいる。私たちは、どこかで市場主義の立ち入り禁止の一線を設けるべきなのだろうか。ハーバード大学マイケル・サンデル教授が、各界の著名人、そして日米中の若き知性と議論していく。

出演 ハーバード大学 マイケル・サンデル教授
ゲスト 猪瀬直樹 古田敦也 田明 斉藤慶子 SHELLY



【たまたま観た番組で、ブログ記事にするつもりはなかったので、詳細の表現や論旨の解釈が間違っているかもしれません】

 番組の最初のテーマが「スコップが必要となる大雪になり、ある商店で、通常の価格の2倍の売値を付けた。この焦点の行為は不当か?」
 この問いかけでが「不当か」という表現をしましたが、表現の仕方によって回答者の選択も変わってくるような気がします。それくらい、微妙な提起ですね。
 ゲストの選択は、全員「不当」でした。基本的主張は、ジャパネット高田の高田社長の「もともと仕入れてあるのだから、仕入れ値も在庫数も変化していないので売値だけ変えるのはおかしい」。まあ、「安売り」を売りにしてますから、「不当ではない」とは言わないでしょう。他の学生たちは3割ぐらいが「不当」と答えていました。
 「不当」が多いのは、おそらく、最近の野菜の高値(天候不順による生産量の減少)が念頭にあるのでしょう。
 しかし、私の考えは「不当ではない」です。もともと、商売はお客の必要なものを仕入れて買ってもらう訳です。そのアンテナを働かす情報や考察、タイミング良く仕入れる才覚、仕入れの際の運賃、搬入や陳列の手間、商品管理、またその陳列や在庫のスペース(倉庫代)などを原価に加味して売価を決めるのですが、需要曲線、供給曲線の兼ね合いも大きく関係します。お客が必要としなければ、売れない、値が下がる。欲しい商品は高くてもお客は買います。
 この商店の場合、天気を読んで仕入れたのか、たまたまだったのかは分かりませんが、才覚、或いは幸運にせよ、在庫があるということはそれだけで価値があることなのです。アニメ『一休さん』に登場する桔梗屋なら、「この大雪を読んでスコップを仕入れた私の手柄です。その分の褒美を頂くだけです」と言うのではないでしょうか。
 100円ショップすべてがそうとは限りませんが、100円ショップは安く仕入れて100円で売り、そのかわり在庫の保証はしません。ジャパネット高田などの安さを売りにする形態の商法は基本的にそうだと思います。安さが大きな武器なのではないでしょうか。
 もちろん、安いに越したことはありませんし、商品の知識やアフターケアも要素(武器)の一つです。ただ、従来の商店にとって在庫が武器の一つです。商品を仕入れてその原価を払い、陳列しても、売れなかったら何もなりません。在庫をするというのはそれだけで大変なのです。雪が降らなければ、売れません。議論の途中、斉藤さんはそのことに気づき、「不当とも言えない」と言いました。
 大雪になった時点でスコップの商品価値が高まり、値を挙げて販売するというのは、ある意味、当然の結果ともいえます。私は、値を上げて販売するのは売り手の自由だと思います。
 逆に購買者も通常、他の店の方が安ければ、その店では買わないという選択もできます。ガソリンスタンドに入っても表示価格を見て、そのまま出てしまう車もあるそうです。そういう価格優先で店を選ぶ人は、この値を上げた商店を非難してはいけないと思います。
 とは言え、スコップだけで荒稼ぎしても、タカが知れているので、そんなことして店の評判を落とすのは得策ではありません。通常価格でたくさん売った方が良いと判断するはずです。ただ、不当かどうかと問われると、不当ではないと私は思います。
 この番組で、不満に思ったことは、サンデル教授は微妙で考えさせる問題提起をし、回答者の意見を聞きながら上手にその考えを明確化します。そして、いろいろな場合を考えさせ、解答者に更に考えさせます。しかし、考えさせるだけ考えさせ、その考え方を整理するだけで、その問題の詳細については細かく解説することはしません。結論を出さないのです。もちろん、結論が簡単に出ない問題なので、結論を出すのは難しいのですが。その考えの背景にあるような考え方や事情をもう少し掘り下げて欲しいと思いました。

 こういう微妙な問題の場合、極端な例を考えると判断しやすいことが多いです。この教授は、もっと極端な例を出してきました。
 「災害が起こって、飲料水が不足してきた。この時、飲料水の価格が高騰したとした。この場合は不当ですか」と。
 この場合は、非常時なので(命にかかわることなので)、飲料水の値が上がるのは不当であるという意見がさらに多数を占めました。
 それを支持する象徴的な意見をシェリーが述べていました。
「値が上がったら、お金のある人しか飲料水が手に入らなくなってしまう」
 これに対し、学生が鋭い反論を。
「値が一緒なら、早い者勝ちと言ううことになってしまう。だから、値段で差別化するのも一つの方法である」
 なかなか鋭いでしょう。
 それはともかく、「お金持ちしか飲料水(商品やサービス)を享受できないのはおかしい」という考えは、人道的な考えのように思えますが、そもそも資本主義というのはそういうものなのでしょう。贅沢したかったら、おいしいものが食べたかったら、金持ちになるしかないのです。災害時、緊急時にその考え方が適切かどうかは疑問です。線引きが難しいです。
 私は、緊急時はお金は二の次で困っている人を助けるというのが、最優先になって欲しいのです(当然、皆さんもそうですよね)が、すべてに「お金持ちしか商品を享受できないのはおかしい」という理屈で考えるのも良くないと思います。

 さらに、その線引きが部図化しいと考えさせる問題が提起されました。「学校長が成績優秀者に賞金を出す」「税金(会費)を払わない人の家には消火活動を行わない」といった問題です。
 それにまつわる興味深い議論もされましたが、それをここで言及すると、非常に長く、まとまりそうもありません。


 この番組、一回きりじゃあないようですが、毎週見ると、人生に悩んでしまうかもしれませんね。
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『相棒season10』 第16話 「宣誓」

2012-02-17 22:47:53 | ドラマ・映画
 冤罪、証拠の捏造・隠滅……相棒ではよく取り上げられるテーマです。長く続いているドラマなので、テーマが被らないのは不可能ですし、それは構わないと思います。
 ただ、今回はデジャブ感が強いのです。……過去の事件が冤罪で、それを右京さん(水谷豊)が気づき追求していく、当時の捜査班はそれを否定したり、介入を拒否する。そして、一見善人そうな刑事が証拠を改ざんしていた……そういう展開があったような気がしますが、思い出せません。気のせいかもしれません。心当たりがある方は、お教えください。

 で、今回ですが、元警察官・国原(石垣佑磨)の行動が、あまりに一貫性がないのと、右京の推理する場面もあまりなく、ただ、真実の追求に終始するだけといういう感が強かった。もっとも、過去のずさんな捜査を洗い直すという展開になるので、仕方がないのかもしれない。
 こういうテーマの場合、つまり、冤罪がテーマとなる場合、ずさんな捜査が冤罪を引き起こすので、逆に言えば、ずさんな捜査が必須の条件となる。…とは分かっていても、「そもそも、ずさんな捜査をするから、悲劇が起るんだ!」という怒りを覚えてしまう。
 当時、捜査一課トリオもこの捜査に絡んでいたらしい。彼らも、いったい何をやっていたんだ!
 今回、当時の捜査を担当していた刑事(加納竜)が、「あの事件のホシは、死んだ野橋で間違いなかった。それを疑うことは、我々刑事課や蓮沼署を侮辱するに等しい」と言い切ったが、証拠品のフリーライターのUSBメモリーのデータを確かめるのを拒否していた。つまり、USBメモリーの内容が、真相究明に繋がる不都合なものだと考えていた。
 だったら、証拠を隠滅しようとは考えないのかな。「バカな、証拠を消すような人間はうちの署には……」と言っていたので、こういうところはバカ正直、あ、単にバカなだけかも
、だから冤罪を起こすのか。

 今回は、尊くんの退場の前振りの意味が強かった。そもそも、今シリーズの初回が、尊君退場の前振りであった。そして、今回、「僕も、やっと、覚悟が出来た気がします」と退場の予告とも取れる言葉を発した。
 これまでの尊の言動から偽証という行為には違和感を感じてしまう。尊君退場ありきで、尊に裁判で偽証したという過去を刻みつけた、そんな気がする。

 ところで、『及川光博、相棒卒業』という記者会見を大々的に行った。番組宣伝的には効果があると思うが、ドラマ的には悪影響がある。
 「及川光博降板か」という不確定な状況なら、不安と希望を抱いてドラマを見ることができるが、「ああ、最終回で彼も退場してしまうのか」と思って観るのは、ドキドキ感が全くない。極端なことを言えば、彼がどんなピンチに陥っても、今シリーズの最終話までは絶対に死なないのである。
 あの記者会見は、ドラマをつまらなくした。

【ストーリー】(番組サイトより)
右京(水谷豊)と尊(及川光博)は大河内監察官(神保悟志)から、所轄の元警察官・国原(石垣佑磨)が起こした傷害致死事件を調べて欲しいと依頼される。立ち飲み屋で相席となったフリーライター・島内(日向丈)と口論になり店を出た後もみ合いの喧嘩に発展。島内は国原に突き飛ばされ階段から転落して死亡したという事件だった。
同じ警察署の警察官だった国原をかつての同僚が取り調べるとなれば、捜査に手心が加えられる可能性がある。大河内は特命係に内々に調査を依頼。

右京たちが調べると島内が、5年前に起きた同じ所轄の女性警察官殺害事件を調べていたことが分かる。国原が後に警察をやめるきっかけになった事件だ。

国原が警察を辞めた原因はなんだったのか?
それが今回の事件とどうかかわりがあるのか?

右京と尊が調べ直していくと、ある疑問が強くなってくる。
ライターの島内は5年前の女性警察官殺人事件について何を掴んでいたのか?
警察官の正義を問われる展開に尊の決意が固まる!

※あの三池崇史監督も特別出演!


ゲスト:石垣佑磨

脚本:戸田山雅司 監督:和泉聖治
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『ストロベリーナイト』 第6話「感染遊戯」

2012-02-16 23:38:10 | ドラマ・映画
葉山(小出恵介)のトラウマ、玲子(竹内結子)と菊田(西島秀俊)の関係などが主題。ただ、これで終わり?という印象も残った。

★玲子と菊田はある意味、いちゃいちゃしていた
・「誰かと一緒だったんでしょ。彼女?(ひとりかという問いに対して)『ええ、まあ』って、何あれ?まぁいいけど」
 鋭い玲子だが、不機嫌な様子は女心見え見えである。

・「偏見だと思うよ。できる女はプライド高いって」
 有無も言わさず当然のように自分を送らせた玲子だが、上記の言葉を投げかける。たぶん、菊田もメンバーと二次会に行くことは察知していたが、先の言葉を言うため菊田に送ってもらったのではないか。
 「主任は別ですっ」と即答する菊田に拍子抜けし、「誰も、あたしのこと言ってないじゃない」と、自分の言葉を恥ずかしく思う玲子。(自分のことを「できる女」と思っているようである)

・菊田と話をしていた高野真弓(加藤あい)に、何を話していたのかと尋ね、「口説かれていた」という真弓の言葉に、思わず「ああんっ!」と声を荒げる。
 「できる女」である玲子であるが、しっかり真弓に女心を見抜かれたようである。

・犯人逮捕後、「痛い痛い痛いっ痛い!もっと優しくやって」と甘える玲子。
 葉山は犯人のナイフを見て足がすくんでしまい、玲子が傷を負ってしまった。葉山を思い切り殴る菊田だが、犯人逮捕の際は、玲子を傷つけたことに対してより、犯人にひじ打ちを腹に喰らったため、切れて凶暴になったように見えたけれど。


 今回は葉山のトラウマがメインであるが、玲子の女心や人間的魅力が(葉山を思いやる、パンプスやシャンプー、係長のモノマネ)あちこちに垣間見られ面白かった。
 玲子と菊田の関係は一見「お姫様と騎士」だが、主導権は菊田にあるようだ。ただ、菊田が玲子の心を掌握しているか、単に鈍いだけなのかは微妙。



★葉山のトラウマ
 葉山は、自分が習っていた家庭教師の女子大生が刺された現場を目撃してしまったことによるトラウマを抱えていた。
 素敵な女性があっという間に物言わない存在になってしまったという死の恐怖、好きな女子大生を救えなかったという怒り、憧れの女性が死んでしまったという悲しみとかいろいろあると思うが、葉山の言によると、葉山の警官(刑事)になった動機は、その女子大生が刺された現場を見ていたのにもかかわらず、証言できなかった悔いと、その犯人が自分を口封じに来るのではないかという怖れに打つ勝つために強くなりたいという思いからだった。
 犯人を逮捕するためではなく、自分のためだったのね。


 
★玲子の推理は、なかなかのものだった。
 スーツ姿にサンダル履きだった(帰宅してすぐ呼び出された)、呼び鈴に指紋がなく被害者のボタンに指紋が付いていたこと(呼び鈴を押す必要がなかった状況だった)、ホームヘルパーが雨戸を閉め(中の様子が分からない)、玄関だけ灯りを付けておいた(中に灯りがついていたから標的が在宅していたと犯人が判断した)ことなどから、犯行の真相にたどり着いた。論理的には納得でき、感心。ただ、真相にたどり着いた現場での再考は夜じゃないと、ピンとこないのではないか。
 まあ、犯人の行動が不可解だったけれど。あの状況では顔は判らない。顔を見られたと判断する明るさなら、家人に呼び出してもらうのは逮捕される危険が高い。
 異常な状況だったとは言え、普通、殺す相手の顔を見るか、呼びかけて確認するのでは?
 標的が在宅かどうか分からない状況で、雨の中、門の所に立ちつくすのは合理的でない。既に家に帰宅しているかもしれないのに、外で帰ってくるか不明の標的を待つのはおかしい。その情景も不自然だし、怪しまれてしまう。

★標的(被害者の父親の利一(佐々木勝彦))は、酷い奴。
 息子が殺されたのに、ゴルフの話なんかしていて、あまり悲しそうではない。まじめに仕事はしないし。
 自分を狙った犯人に対し、「お前か、息子を殺したのは?」と詰め寄るのが普通。逮捕劇を見て、「何なんだこれは?ふざけるのもいい加減にしろ」この後に続く言葉が「もっと早く犯人を逮捕しろ」と怒鳴るのかと思ったら、「人の家の前を、何だと思っているんだ!」って、あんな状況でも、自分が襲われたという自覚がないのかな。

★その他の疑問
・非加熱製剤で免疫不全症に罹ってしまった件が動機だったが、その感染者の数が少ない
・「感染遊戯」の「感染」は実際の感染と殺意の感染の懸詞だったと思われるが、ネットの悪意のサイトで感染するように殺意を持ってしまうというのなら、実行犯がひとりというのはおかしい。感染遊戯と言うから、次々殺人者がという状況を予想したが。
・菊田の人の胸をグーで叩く癖は、迷惑。

【ストーリー】(番組サイトより)
姫川玲子(竹内結子)から事件発生の連絡を受けた菊田和男(西島秀俊)は、珍しく葉山則之(小出恵介)と飲んでいた。葉山は菊田に相談事があるらしいのだが、優先されるのは仕事。結局、菊田は葉山の悩みを聞けずに現場へと急行する。

現場では所轄の高野真弓(加藤あい)が玲子のパートナーとして挨拶している。真弓は葉山の警察学校での同期だった。殺されたのは長塚淳(窪寺昭)。自宅玄関前でメッタ刺しとなった遺体から目を背ける葉山に気づく玲子と菊田。しかし、葉山は態度とは裏腹に、事件解決に向けての意気込みを口にする。



姫川班は、東大卒のエリートで製薬会社に勤務していた長塚の身辺を捜査するのだが、犯行動機を持つような人物はなかなか現れない。その中でも、やはり一段とやる気をみなぎらせる葉山。だが、葉山の脳裏には中学生時代の恐ろしい出来事が去来していた。

被害者の着衣のボタンから犯人らしき指紋が検出された。玲子は、その事実から犯人が長塚淳を狙ったのではないと推測。父親の利一(佐々木勝彦)に注目する。利一は旧厚生省、厚労省を渡り歩き、退職後も天下りを繰り返していた。また、旧厚生省の薬事課長時代に薬害感染問題が発生。危険を知りながら回収命令を出さなかった張本人と言われたが、裁判では無罪となっていた。姫川班は、薬害で死亡したと思われる3人と、感染症が発症したショックで自殺した女性の関係者たちの捜査を始める。

菊田は捜査にはやる葉山が気になる。飲んだ時の相談も、まだ聞いていなかった。問い詰める菊田に葉山は中学生の時、目の前で自分の家庭教師の女性が刺殺されたことを打ち明ける。その時、目撃者として名乗り出ることが出来なかった葉山は自分を責め、強くなりたいがために警察官になったと話した。



葉山は玲子と利一の警護に当たる。一方、自殺した女性の関係者を調べる菊田は、彼女の恋人だった矢部眞人(矢柴俊博)という男に行き当たる。矢部のアパートに向かった菊田は、部屋のパソコンに利一たち旧厚生省役人のプライバシーを書き連ねたサイトが開かれ ているのに気づいた。

その日の利一は、天下り先から自宅に直接帰宅した。利一の車の後ろには玲子と高野の警察車両がつき、自宅前には葉山と所轄刑事が待機している。だが、利一が車から降りた瞬間、刑事たちの囲いをやぶって突き進む男がいた。矢部だ。ふりかざす凶器にすくんでしまう葉山。玲子たちは果敢に立ち向かうのだが、大暴れする矢部を抑えることが出来ない。間一髪のところで菊田が駆けつけ、矢部の身柄を抑えた。

何も出来なかった葉山を、玲子は慰めようとも責めようともしない。そんな玲子に葉山は菊田同様、ついていくことを決心しようとしていた。
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羽生将棋 早指し将棋における強さ② ~各棋戦の傾向~

2012-02-16 17:09:13 | 将棋
「羽生将棋 早指し将棋における強さ① ~NHK杯戦から思う~」 の続きです。

 早指し棋戦の範疇に入ると考えられる棋戦は、大和証券杯最強戦、銀河戦、JT将棋日本シリーズ、朝日杯将棋オープン戦、NHK杯将棋トーナメントの5棋戦。一番持ち時間が長いのは、朝日杯の40分だが、チェスクロック使用なので1分未満切り捨ての場合と比べると、実質はもっと短い。
 この5棋戦について、最近5年間の羽生二冠の成績を振り返ると(括弧内は最終対戦相手)
2007年度 王座・王将防衛、王位・棋王失冠 年度成績44勝18敗
 大和杯     準決勝敗退(丸山九段)
 銀河戦     2回戦敗退(飯島五段)
 日本シリーズ  準決勝敗退(森内名人)
 朝日杯     準決勝敗退(丸山九段)
 NHK杯    準々決勝敗退(長沼七段)
2008年度 名人・棋聖奪取、王座・王将防衛、王位・竜王奪取失敗 年度成績44勝21敗
 大和杯     1回戦敗退(渡辺竜王) 時間切れ負け
 銀河戦     ブロック戦敗退(中原16世名人)
 日本シリーズ  準決勝敗退(深浦王位)
 朝日杯     2回戦敗退(渡辺竜王)
 NHK杯    優勝 (○…森内名人)
2009年度 名人・棋聖・王座防衛、王将失冠 年度成績30勝18敗
 大和杯     1回戦敗退(山崎七段)
 銀河戦     1回戦敗退(北島六段)
 日本シリーズ  2回戦敗退(行方八段)
 朝日杯     優勝 (○…久保八段)
 NHK杯    優勝 (○…糸谷五段)
2010年度 名人・棋聖・王座防衛、竜王奪取失敗 年度成績43勝11敗
 大和杯     2回戦敗退(久保二冠)
 銀河戦     準決勝敗退(丸山九段)
 日本シリーズ  優勝 (○…山崎七段)
 朝日杯     準優勝  (木村八段)
 NHK杯    優勝 (○…糸谷五段)
2011年度 棋聖防衛、王位奪取、名人・王座失冠 2月15日現在41勝18敗
 大和杯     1回戦敗退(菅井四段)
 銀河戦     準決勝敗退(糸谷五段)
 日本シリーズ  優勝 (○…渡辺竜王)
 朝日杯     優勝 (○…広瀬七段)
 NHK杯    ベスト4以上が確定

 年度総合勝敗は、2009年度がやや不調である他は、ほぼ安定した成績。タイトル戦は2008年度が6タイトル戦登場(2防衛、2奪取、2奪取失敗)と凄まじい成績。失冠はなく、敗れた竜王、王位戦も3-4の惜敗で再び7冠制覇かという勢いだった。ああ、3連勝4連敗……。
 今年度は2失冠(名人・王座)が目立つが、王座失冠後、怒ったように勝ちまくり、10月20日以降は18勝2敗。A級順位戦8連勝で挑戦権獲得、その他日本シリーズ、朝日杯で優勝、NHK杯戦でも準決勝に進出している。
 ちなみに、2007年度は朝日オープン選手権から朝日杯将棋オープン戦へ移行した年度で、この年度の4月~5月に行われた朝日オープン選手権5番勝負では阿久津五段を3-1で降している。


早指し戦での傾向
 日本シリーズ、朝日杯、NHK杯戦と相性がよく、日本シリーズでは2連覇、朝日杯ではここ3年で優勝2回、準優勝1回、NHK杯では3連覇中。
 年度的には、2007年度は振るわなかったが、ここ3年間は絶好調。
 大和杯では、ここ4年では1勝4敗と苦手にしている。
 上記の最終対局者で丸山九段が3回登場(3敗)している。ここ5年間では、羽生二冠の7勝4敗だが、早指し戦に限ると1勝3敗で、2006年にもNHK杯で敗れている。

大和杯での苦戦の原因は?
 インターネット大局という特異な対局環境が影響していると考えることが可能である。
①PC操作が苦手、あるいは苦手でなくても、それに気を取られ読みに集中できない。
②実際の盤駒でなく、モニター画面なので勝手が違う(読みにくい、考えにくい)。
③PC操作の分、NHK杯での30秒秒読みより実質は短い。このわずかな違いが大きい。
④対局相手が面前にいないので、相手の読みの気配(形勢判断や攻めるか守るかなど)を察知できない。
⑤対局相手が面前にいないので、闘志が湧かない。
⑥対局相手は羽生二冠のオーラを感じない

 さて、現在、早指し戦においても他の棋戦においても、恐ろしい強さを発揮している羽生二冠、目下の目標はNHK杯戦の4連覇。これを果たせば、NHK杯戦は10度目の優勝となり名誉NHK杯選手権者となる。もし決勝戦が羽生王位・棋聖×渡辺竜王・王座となったら、それは盛り上がるだろう。
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『ラッキーセブン』 第5話「別れの予感、駆け抜ける夜」

2012-02-14 22:25:35 | ドラマ・映画
 相変わらず、何もしない探偵事務所、しかも、思わせぶりで何も明かさないドラマでした。実際、もう書く気も起らないのですが、前編について書いたので、その惰性です。

何もしない探偵たち
 と書くと、語弊がありそうである。確かに動きましたが、その行動開始は遅く(前回も輝の事で疑心暗鬼の展開)、調査したのは、真相の切れっ端の浮気調査の依頼主の林原(正名僕蔵)についてのみ。
 いえ、警視庁幹部の峰永(近江谷太朗)については、探偵社社長の瞳子(松嶋菜々子)が、贈収賄をすっぱ抜いた出版社については筑紫(角野卓造)が、瑛太の家族については駿太郎(松本潤)がと、瑛太のアパートについては飛鳥(仲里依紗)たちが、それぞれ、調べて入るのだが、タイトルの「駆け抜ける夜」は、林原を探すだけで、まったく真相に近づく気配はなし。結局、見つけられず、警察が林原を捕まえることによって、探偵社は救われた。それを見せられる視聴者もフラストレーションがたまる。
 先行して調べているとは言え輝(瑛太)1人の方が探偵社全員より遥かに有能。しかし、その輝も探偵社を去ってしまう。次回は、全く別の話みたいで、真相は先送り。
 はい、視聴離脱決定!

使えない社長
 「承知しました」と言って何でもやってしまうミタさんが恋しい。
 今回は、輝の退職届を破る、峰永に事情を聴く、聴聞会に出席するなど、寿司を注文しただけの先週よりは遥かに活躍?はしたが、輝を救うため調査の指示をあれこれするというのが、社長の腕の見せ所であろう。

駿太郎の活躍
 活躍というほどではないが、輝の実家を突きとめる、ゴミ回収車を追走、動体視力の良さを発揮、女将の本質を見抜く(恋愛中の女性が発する気配を感じない)マダムキラー?を発揮と、それなりに働いた。
 でも、輝が何を調べていたかぐらい、問い詰めて欲しかった。「すべて解決した」とお気楽なことを言い切っていたし。


【ストーリー】(番組サイトより)
時多駿太郎(松本潤)の腕を振り払って新田輝(瑛太)が逃走した後、ラッキー探偵社には公安委員会から呼び出しがかかった。聴聞会に藤崎瞳子(松嶋菜々子)が出席し、新田の件の事実確認が行われるという。その結果次第では、探偵社の営業停止もある、と筑紫昌義(角野卓造)は説明。旭淳平(大泉洋)は、探偵社が助かるためには新田の退職届を示し会社とは無関係だと主張することだと話し、水野飛鳥(仲里依紗)も賛同する。

探偵たちが暗いムードに包まれていると瞳子が来て、新田はうちの社員だから、と言って手にした退職届を破ってしまった。瞳子は、状況的には新田が犯人に見えるかもしれないが、何度考えても自分はそうは思えない。だから、この事件について自分たちなりの結論を出すために調べなおそう、と提案。駿太郎ら探偵たちも同意する。

早速、新田にかけられたふたつの容疑、住宅侵入と窃盗について洗い直しが始まるが、すぐに行き詰ってしまう。新田がここにいればすぐに説明がつくのに、という飛鳥に、駿太郎は新田の実家について聞いていたことを思い出す。そして、小さな手がかりをもとに、駿太郎は新田の実家と思われる豪邸の前にやってきた。インターホンを押すと家政婦が出て、新田とこの家はもう関係がないと主人が話していると言って、インターホンを切ってしまう。駿太郎が再度インターホンを押すと、後ろで女性の声がした。振り向くと、そこには新田の姉・真須子が立っていて…。
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羽生将棋 早指し将棋における強さ① ~NHK杯戦から思う~

2012-02-14 17:35:31 | 将棋
 一昨日、NHK杯戦の羽生二冠(王位、棋聖)×郷田九段戦を観戦。「観戦」と書くと、スタジオに見学にでも行ったのかと、思われるかもしれませんが、もちろん、テレビ観戦です。
 羽生二冠が激しい将棋を勝ち切り、準決勝進出。ここ数年、早指し戦は滅茶苦茶強い。その中でも、NHK杯戦は特に強くて、3連覇中で今期もベスト4。羽生二冠はシードなので、2回戦~決勝まで5連勝。3年連続なので、15連勝。今期も2回戦、3回戦、準々決勝と3連勝なので、合わせて18連勝。
 単一棋戦の連勝は、19連覇した王座戦で、今期(昨年)第1局で渡辺竜王に敗れるまで、19連勝していたのが思い出されるが、ある意味、それより凄い。タイトル戦は同じ相手と続けて指す上、持ち時間も充分あるが、NHK杯戦は、1局ごとに相手も変わり、しかも持ち時間も短い。なので、想定外の局面になりやすく、それを短時間(終盤は秒読み)で対応しなければならない。当然、ミスも犯しやすく、一発も食いやすい。にもかかわらず、この連勝は、強いというより、異常である。しかも、NHK杯戦だけでなく、日本シリーズや朝日杯でも、強さを発揮している。(この点については、後日、言及するつもり)

 まず、実戦を追ってみよう。

 図は、同型の角換わり腰掛け銀から後手の郷田九段が△8一飛と変化した局面。定跡は△4四銀、他の手では渡辺竜王の新手の△3五同歩もある。
 実は、この△8一飛は昨期(今期ではない)の順位戦の▲郷田×△渡辺で渡辺竜王が指した手である。この時は、以下▲4五桂△4四銀▲7四歩△4一飛▲7三歩成△4五銀直▲6七銀△3六銀▲2九飛△3八角▲3九飛△4七銀不成▲5九金と進み郷田九段が勝っている。ちなみに、図の△8一飛に▲7二角も有力とのこと。本譜の羽生二冠は▲4五桂と跳ね郷田×渡辺戦に追従した。
 郷田九段はこの時は先手番を持っていたが、「気になる変化があった」と感想戦で述べていた。その変化が、▲4五桂△4四銀▲7四歩に△4一飛と飛車を回る前に、△4五銀と桂を取り、▲4五同銀と形を決めてから△4一飛と飛車を回った。渡辺戦では先手は▲6七銀と引け、対する後手の5四の銀は置き去りになった感があった。本譜はこの順を避けたとも考えられる。対羽生戦用の研究ではないと思うが、郷田九段が温めていた研究だと推測される。長考派の郷田九段にしては、ここまでの着手は非常に早かった。


 第2図は△4一飛に▲4四角△5五角と角を打ちあった局面。▲4四角では▲5四銀と銀を取るのが自然な指し手(後手に飛車は成り込まれるが)であるが、▲4四角は△5五角と合わされると、ほとんど▲5五同角と取る一手で、後手の5四銀が5五に移動しただけ。銀は5四と5五とではどちらが良いのか?……もしかしたら、角の合わせをうっかり……などと考えていたら、▲4七桂!(第3図)

 なるほど、飛車成りを受けつつ、銀取りになっている。このための角打ちだったのか。3五への飛車の回りも消している。……しかし、攻めに使いたい桂を飛車成りを防ぐために打つなんて。歩で止めるのではなく、頭の丸い桂で!……
 なんて柔軟な発想!
 解説の深浦九段も言っていたが、この手は郷田九段の研究にはなかったはず。形勢はともかく、この手で郷田九段の足場(研究)がなくなった。もちろん、郷田九段はタイトル経験者のA級棋士、そのくらいのことではビクともしない。もともと、自分の研究と正確な読みを礎に相手によって手を変えることのない正攻法で、直球勝負の剛腕である。このくらいの局面では、ひるむはずもなく、読みもよどみのない……はずである。

 私は将棋は車のラリーに似ていると考える。それはサーキットコースのように決まった周回コースを走行するのではなく、スタート地点とゴール地点だけが決まっていて、途中はどう走っても良いというレース。
 定跡は地図、研究は経路の計画であろう。その他の要素として、読み、大局観、精神力、体力、経験などは、車のエンジン・足回り・燃費・頑丈さやドライバーのハンドル捌きや判断力などに該当するのだろう。
 羽生将棋の特筆すべき点は、対局中も走り慣れた道も新たな目で局面を捉え可能性を検証すること。道路や天候状況、脇道、更には景色の良さなどを観察する。しかし、今期の王座戦での対渡辺戦は、自分が想定した局面にひた走り、その余裕が感じられなかった。
 悲しい横道に逸れてしまった。話を戻して、羽生二冠の対局相手について考察してみよう。渡辺竜王、森内名人、久保二冠、佐藤九段クラスならともかく、普通の棋士ならNHK杯戦は脚光を浴びる絶好の機会だ。
 NHK杯戦で負けると「先生、調子悪いですねえ」とか声を掛けらることが多いそうだ。世間の目を間接的に感じるのではなく、直に声を掛けられるのだから、本人にとっての勝敗の重みは、他の棋戦の比ではない。否応でも方に力が入ってしまう。
 まして、対局相手が羽生二冠であれば、世間の注目度も高い。勝った時の反響はすごいものだろう。
 と言っても、羽生二冠、そう簡単に勝てる相手ではない。事前に研究し作戦を練るが、それ故、力みが出ることも多いし、疑心暗鬼に陥ることもあろう。
 さらに、テレビ対局という特殊な環境。メイクをされ、ライトを浴び、カメラを向けられ、インタビューまでされる。
 このように、平常心を保つのが非常に難しい状態である。もちろん、これまで命を削る勝負を経験している棋士であるので、舞い上がってしまうことはない。ギリギリの精神状態ゆえ、頭脳がフル稼働し、事前の想定の局面に持ち込み有利に展開することもあるようだ。
 しかし、そんな局面でも、羽生二冠は崩れず、差をつけられずに付いて来る。そして、絶妙なタイミングで、しかも、死角から勝負手を放つのである。それが、極限状態の精神を、ツンと突かれ、あるいは、ガツンと殴られ、平衡感覚を失って、逆転。まあ、こういうパターンは、テレビ将棋に限ったことではないが、特にテレビ対局では起こりやすいのではないか。

 さて、再び、第3図。

 この手はおそらく想定外。定跡と研究のカーナビで快調に飛ばしてきた郷田九段であったが、この手により、カーナビにない森の中に引っ張り込まれてしまった。もちろん、そこは一流棋士、培ってきた大局観と読みで、高性能なレーダーと的確なハンドル捌きで難解な局面も障害物を避けて走る。
 しかし、ここまで狭い視野で走ってきただけに、方向感覚が鈍っていたようだ。逆に、局面の可能性を掘り下げて進んできた羽生二冠は、視野も悪く道なき道であっても、方向を見失わない。

 どの手がまずかったのか、私の棋力では分からないが、終わってみれば羽生二冠の快勝譜になっていた。第3図の▲4七桂の局面の是非の判断もつかないが、勝利を手繰り寄せた一手のように思う。


 第4図は、「次に寄せますよ」と△6九銀を打ったところ。この手では、△5八角成と迫る手のほうが厳しいが、7六角の利きが消えては自陣が危ない。そこで、角の利きを残しつつ先手玉に迫ったわけだ。しかし、一手かけた割には効いていないような気がするが、どうなのだろうか?
 ここで、羽生二冠の手が注目された。私の第一感は▲4三銀。4三への利きは後手の方が多いが、△4三同角だと▲4一金の一手詰。△4三同竜でも▲同桂不成△同金▲2二金まで。気になるのは先手玉が詰むかどうかだが、詰みはなさそう。

 実戦は▲3四馬(第5図)。
 馬を自陣に利かせつつ後手陣に迫る攻防の一手だが、少し緩いような気がする。それに、3三に金を打たれて馬を弾かれると、手順に後手玉を強化させてしまう。実戦も△7八銀不成と金を取られ、▲7八同玉に△3三金打と進む。しかし、この手には▲2二金△同金▲同歩成△同玉に▲2三歩が厳しかった(△2三同金は詰む)。
 以下△1三玉に▲2二銀△1四玉▲3三銀不成(第6図)と自然に攻めて寄ってしまった。

 図で△3三同桂と取れないのでは辛い。取ると

 ここで、初級~中級程度の詰将棋みたいな詰みがある。
 即詰図より▲2五銀△同桂▲2四馬△同玉▲3四金△1三玉▲1四歩△同玉▲2四金打(ピッタリ図)。


 第5図の▲3四馬のような、少し緩めたような寄せ、かと思えば、やたら過激な強引な寄せを見せる時もある。ただ、どちらの場合も、方向を見失わず、見通しを立てて指し進めているように思う。
 第5図では△5八銀成の方が良かったように思うが、ここでは既に、郷田九段の方向感覚・平衡感覚は狂わされていたよう感じて仕方がない。
 印象に残る▲4七桂(第3図)だった。
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『平清盛』 第6話「西海の海賊王」

2012-02-12 21:21:59 | ドラマ・映画
 登場したのは、ジョニー・デップではなく、加藤浩次だった。
 しかも、『パイレーツ・オブ・カリビアン』ならぬ『ワンピース』(海賊王)であった。

因縁の対決であったが
 海賊の棟梁の兎丸(加藤浩次)は、かつて忠盛(中井貴一)が盗伐した朧月の息子だった。清盛(松山ケンイチ)は、兎丸にとって憎き父の敵の息子であった。
 ふたりの対決は因縁の対決のはずだが、殴り合い(刀の打ち込み合い)のシーンにもつれ込んだ時点で、ガキの喧嘩みたいになってしまった。この後の展開はお約束通り、志を共にする仲間に。
 父の敵に出会って復讐に燃え、「盗賊の父には義があった、正しかった」と叫ぶ兎丸にはそれなりの理があるが、少年の日に出生の秘密を暴露された清盛が、「何も知らなかったら平穏に普通の武士になれた、父を失わずに済んだ」と切れるのは、八つ当たりでガキっぽかった。普通、自分が目の前の男の父の敵というのは、やばくて隠すと思うが、自分の感情で逆に切れるのは、清盛らしくガキで阿呆な言動。
 まあ、この場面は、平氏の面々の前で、清盛のこれまでの心の葛藤を吐露する意味合いが強かったのかもしれない。

ちょっと叔父っぽかったぞ
 先週は、清盛に対してあまりにも酷かった忠正(豊原功補)であったが、今回はちょっと見直した。本当に兄・忠盛が好きなんだなあ。兄が清盛を必要としていると思い、清盛も助けようとした。

ライバル三人衆の残り二人
・美女の心を射止める秘訣
 義朝(玉木宏)は、尾張・熱田神宮で、由良姫(田中麗奈)に出会う。高飛車な美女に向かって「そこの醜い女」と呼びかけ、理屈で負かす。
 なるほど、美女は醜いと言われたことがないので、かなりきつい先制パンチ。そこへ理屈でたたみ込み、ギャフンと言わす。美女は男性から屈辱を受けたことがないのでムキになる→気になる→恋心。
 しかし、これは玉木宏のような二枚目しか通用しない技である。
 
・もう一人の佐藤君は既に良いことを…
 得子(松雪泰子)は御所で権力を持ち始め、璋子(檀れい)に対抗心を持つ。しかし、璋子は、得子の存在を意に介さない。佐藤義清(藤木直人)は堀河局(りょう)と秘め事を交わしながら、璋子は心が空っぽだと、その本質を語り合う。
 今週は、「鳥羽上皇劇場」がなく、ちと寂しかった。

「誰でもよいゆえ、助けてくれ」
 縛られたままで、海戦では何も活躍できなかった通憲(阿部サダヲ)であるが、中国語が堪能で、伊達に学者を名乗っているわけではないことを証明。
 「誰でもよい」という台詞を言えたので、良しとしよう。

【ストーリー】(番組サイトより)
目の前に現れた巨大な宋船と戦闘を始める平氏一族。初めての本格的な戦闘にひるむ清盛(松山ケンイチ)をかばい、乳父(めのと)平盛康(佐戸井けん太)は深手を負ってしまう。宿営地に一時引き返した平氏だったが、清盛は、盛康を負傷させた自分にやり場のない怒りがこみあげ、単身、小船で海へ出る。一方、京の父と離れ、東国での武者修行に出た義朝(玉木宏)は、尾張・熱田神宮で、宮司の娘と出会う。この気の強い娘こそが、のちに平氏を滅ぼすことになる源頼朝(岡田将生)の母・由良姫(田中麗奈)であった。一方、御所でも鳥羽上皇(三上博史)に接近した得子(松雪泰子)に子が出き、その権勢模様に変化が現れてくる。西海では、海に出た清盛が海上で通憲(阿部サダヲ)と出会うが、二人の乗った小船は海賊たちにとらえられてしまう。捕縛され、巨大な宋船に移された二人の前に現れたのは、兎丸(加藤浩次)という海賊の棟りょうだった。その男こそ、かつて清盛に出生の秘密を明かした、あの盗賊朧月の息子だった。
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山崎七段の指導将棋

2012-02-11 17:05:32 | 将棋
 小中学生将棋王位戦が行われ、教え子の応援に会場に行きました。
 ……なんと、山崎七段がいらっしゃるではありませんか!

 明日(12日)に指導将棋会があるのは知っていましたが、今日も来られていたとは!
 早速、彼に擦り寄って(笑)、お話しする機会をうかがいました。午後からの指導将棋でコの字型の配置された場にスタンバッていらっしゃったので、ここぞとばかり、声を掛けました。
 「娘が山崎先生のファンなんですよ」
 嘘ではありません。娘は将棋を指せませんが、棋士は幾人か知っています。羽生二冠、丸山九段(「将棋界の一番長い日」のカロリーメイト事件?、冷えピタシート事件?を目撃)、佐藤九段(同じく対木村八段戦の必死の形相に感動)、橋本八段(テレビ対局でカメラ目線)など棋界通?です。
 山崎七段については、私の『将棋世界』での表紙かグラビアで目撃し、「あ、この人いい」と言っていました。山崎七段とは九歳下ですが、許容範囲です。何とか捕まえて、ただで将棋を教えてもらえる関係になって欲しいものです。
 山崎七段とは10分ぐらいお話できましたが、気さくで面白くて素敵な方でした。スタイルも性格もスマートで、何故独身なんだろう。本人は否定していましたが、モテモテで一人に絞られない状況なのでしょう。
 一番の印象に残ったのは、彼の優しさです。午前中も対局の相手待ちの少年を見つけては、大体の棋力を尋ねて、棋力に見合った詰将棋を出題して、丁寧に解説していました。


 指導対局においても、下手の攻めを素直に受けます。私みたいにいやらしい指し方はせず、上手陣を突破させます。その間、位を張ったりなどして、下手陣に多少のプレッシャーを掛けつつ、玉の厚み(広さ)を築きます。その指し手は駒の本筋の使い方のお手本を感じさせるもので、紛れさせるというようなものではありません。とにかく、下手の力を引き出す指し方をします。
 大体2手違いの負けになるくらいで指している感じで、易しい次の一手というか、将棋の本筋を問う局面、ポイントとなる局面に誘導します。
 また、子どもが残念な手を指すと、タイムスリップ(待った)を許します。やさしいです。


 今日は私の教え子も参加、リーグ戦では6勝2敗で上位2名に入れず(3位)、決勝トーナメントには進めませんでした。上位2名とはまだ力の差はありますが、悪くなってからあきらめずに指して、勝負形に持ち込めたのは収穫でした。
 彼も指導将棋を受けました。手合いは4枚落ち(山崎七段は6面指し)。

(1四の駒は「成香」です)
 かなり紛れてきており、大きなミスは許されなくなっています。大健闘とも言えますが、実は2回ほどタイムスリップさせていただいています。
 山崎七段が△5五角と龍銀両取りを掛けたところ。一見、下手陣は詰めろが掛かったように見えますが、△2八銀には一旦▲同銀と取れば、△同角成▲4八玉で大丈夫。とは言え、普通に龍が逃げては、△3七角成とされて勝てない。(△3七角成に▲4八金直と頑張る手はあるが、勝てない)
 ここで彼の指した手は▲3四歩。これは将棋が分かり始めた頃に指したくなる手で、気持ちはいいけれど上部に玉を逃がしてしまう危険な手で、以下△3四同玉▲2四金△3五玉(失敗図)と進むと、

打ち歩詰となり続かず、龍銀取りが残り、負け。途中△3四同玉に▲3六歩と指せば下手の勝ちだとは思うが、この手が指せれば4枚落ちの手合いではない。
 ここで、再び、タイムスリップ。「玉は下段に落とすのがいいんだよ」とやさしくアドバイス。そのアドバイスに従い、第1図以下▲2四金△3二玉▲2三成香△4一玉(第2図)と進む。(第1図以下▲2四金△3二玉に▲5二龍でも下手勝ち)

 玉を下段に落とし、あと一歩の局面。しかし、依然龍銀取りが残っている。形は▲4三銀成だが、龍を抜かれてしまう。ここで、彼の指し手は▲4三成銀!……やはり、龍取りをうっかりしていた。
 指した後、彼も気づいたが、そのまま山崎七段が来るのを待つ。
 山崎七段「おっ、これは良い…、あ、でも……」
 そこで、私が堪らず、「彼も指した後、気がついたんですが、着手してしまったので、そのままにしたのです(多分、山崎七段は許してくれる)」
 山崎七段も「ふふ、その気持ちに免じて、チャンスをあげましょう」

 龍取りに気づけば、王手でそれをかわし、何かの時に金を取る▲7一龍の発見は容易で、▲7一龍以下△5一桂▲4三銀成と進む。ここで山崎七段の△2一銀(第3図)がしぶとい受け。ご本人も「ここまでしなくても」と小声で。

 普通に△3一歩(銀)では▲3二歩で受けなしとなってしまう。
 彼は筋と▲3三歩と垂らすが、ここは▲3二歩のほうが良い(▲3三成香でもよい)。実戦の▲3三歩には△3一歩(第4図)と受けられて、はっきりしない。

 第4図では、歩が2枚あるので▲3二歩成△同歩▲3三歩△同歩▲3二歩という手筋も成り立つが、できればそこは触りたくない。
 ▲7四龍と金を取る手もあるが△4三桂と成銀を抜かれるとややこしい。
 正解は▲6一龍(勝利図)

 これで受けがない。同じようでも▲6二龍(こちらの方が自然)だと、やはり△4三桂と銀を取られてしまう。

 というわけで、ようやく勝利。
 山崎七段、ありがとうございました。


 「玉は下段に落とせ」と、口がすっぱくなるほど言っているのになあ。
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『相棒season10』 第15話 「アンテナ」

2012-02-09 22:16:41 | ドラマ・映画
 今回は相原刑事(萩原聖人)が主人公。
 事件の捜査より、引き籠もりの青年?を救おうとする熱血漢の相原刑事に、引っ張り回される特命のふたり。と言っても、右京(水谷豊)の方は、マイペースで相変わらずの細かく深い洞察力(ネットの書き込みから真の目撃情報を見抜くなど)と推理で事件の真相に近づいていったが。
 尊(及川光博)の方は、「捜査の邪魔をするな」と怒りたいのに、逆に相原に「邪魔をするな」と怒鳴られてしまう。相原刑事って、陣川君(原田龍二)より迷惑な奴かもしれない……。
 右京さんも、いつもより優しかった。黙って、青年の父親の言い分も聞いていたし、引き籠もりの青年の心も理解し、諭そうとする。アンテナの例えは、うまいなあ。
 アンテナが過敏に反応したり、ある方向にだけ敏感だったりと、何気なく発した電波(言葉)で傷つけてしまうことって多いかもしれない。
 逆に、KY(空気読めない)ということも、現代ではある程度、必要な能力かもしれない。今回は、目撃者(受験にやや失敗した学生)と犯人(出産後と育児に追われる主婦)のアンテナが過敏だった。青年は本人も覚えていない些細な言葉に、アンテナが反応してしまい、主婦は出産後の過敏なアンテナを察知しない夫が、不用意に電波を発し続けてしまった。
 引き籠もりの青年は、このままではいけないという思いは強かったはずで、相川の熱血さと、右京さんの理解ある言葉にわずかな光を見つけたようだ。犯人逮捕より、引き籠もり解決の方に、心が向いてしまった視聴者は多かったと思う。こういうのも、『相棒』らしい。

 ところで、「世間の目対策」に駆り出された、一課の3人組。まじめに捜査していたのに、コント仕立てが目立った。引き籠もりという深刻なテーマの中で、和みの役割となってしまった。(相川刑事自体も、深刻さは伴わないが)

★一課トリオ、漫才
 急な任務を言い渡されて、ぼやく芹沢(山中崇史)が、捜査に燃える伊丹(川原和久)に対して
芹沢「そりゃ先輩はいいですよ、ノンプライベートだから」
伊丹「誰がノンプライベートじゃ」(芹沢をはたく)
 そこへ、三浦(大谷亮介)が携帯で妻ともめて通話を切られ「とし子っ」と叫ぶ。
伊丹「な、ああやって、家庭を壊す人もいるんだ、それに比べたらお前…」
三浦「まだ壊れてねえぞ!」
芹沢「まだって言うところが、何とも香ばしいですね」
三浦「喧しいわ、お前!…行くぞぉ」(芹沢をはたく)

★一課トリオ+特命トリオ? 合同漫才
相原「どうしても、と言うのなら、ぼくも一緒にここにいます」(と言って捜査一課トリオの車に強引に乗り込む)
伊丹「どうしてもなんて、頼んでねえよ」
 それを拒もうとする捜査一課トリオに対して、尊がそのまま相原を押しつけて去ろうとしたが
右京「いえ、キミ(尊)も一緒にここに残ってください」
一同「ええっ?」
右京「彼(相原)はここに残ると言い張るでしょう」
相原「言い張ります!」
右京「その場合、彼だけここに残していくのと、うちの神部君もここに残していくのと、どちらがよろしいですか?」
伊丹「何の二択ですか」
芹沢「あ、でも、でも、先輩。この不安定な人だけ残されるよりは……」
尊 「ちょっと、杉下さん、僕にも意思と言うものが…」
右京「どうやら結論は出たようです」
尊 「いつだよ~?」
右京「神部君、お願いしますよ」(立ち去る)
 詭弁の二択…


【ストーリー】(番組サイトより)
千束署の刑事・相原(萩原聖人)が突然米沢(六角精児)を訪ねてきた。
相原は、かつて米沢と組んで、警察の天下り先でもある青少年防犯協会の横領事件を解決した熱血刑事。(映画「鑑識・米沢守の事件簿」2009年公開 より)
千束署管内で起こった連続通り魔事件で採取された繊維片を警視庁本部で詳しく分析してほしいというのだが、所轄の鑑識で調べたのなら結果は同じだといって断る米沢。
懇願する相原から米沢が逃げようとしていたところ、以前米沢から噂にきいていた敬愛する刑事・右京(水谷豊)と遭遇。
"頼まれたらなんでもやってくれるんですよね?"と右京に詰め寄る。
訊けば相原は千束署の捜査本部を外された上、謹慎中の身だという。
尊(及川光博)はそんな熱すぎる相原の行動に辟易。
右京と尊、そして相原の3人で連続通り魔事件の捜査することになるのだが…。


ゲスト:萩原聖人
脚本:櫻井武晴 監督:和泉聖治
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『ストロベリーナイト』 第5話「過ぎた正義2」

2012-02-09 17:21:48 | ドラマ・映画
 惜しい……いいテーマ、良い内容なのに、主人公・玲子(竹内結子)の言動に共感できないことが多い。残念。
 深い内容で、考えさせられる台詞が多い。長くなりそうなので、一番の主題だと思われる台詞から考えてみたい。

「早く楽になろうなんて、しないでくださいね。
苦しんで、苦しんで……カラカラになるまで苦しみ抜いてから死んでもらわないと、つじつまが合いませんから」


 玲子がこの言葉を倉田修二(杉本哲太)に発した真意
①自分(倉田修二)の信念を曲げず、息子(倉田英樹)を死に追いやったことが許せなかった。
 ここまでの玲子の直情型の言動からの怒りを込めた言葉というのが第一印象。親なのに息子を信じず、受けとめず、死に追いやってしまった、その罪は単なる死だけでは購(あがな)えない。それに、倉田が処刑?した3人の件も立件して、その罪も償ってもらう。3人、息子を含めると4人を死に追いやった倉田なので、簡単に死んでは釣り合わないという考え。
 それにしても、息子の死に対する自責と悲しみに打ちひしがれている倉田に、そこまで言うのかと思った。

②「生き続けろ」という倉田へのメッセージ
 これは、私の考えではなく、『トリ猫家族』のきこりさんの記事「「ストロベリーナイト」 第五話 過ぎた正義 その2 選ばれた殺意」を引用させて頂きます。
 玲子から倉田への、この言葉は、「生き続けろ」ということ。
辛くても、苦しくても、どぶの中を這いずるように生き続けろ。
親として大きな間違いを犯してしまった倉田に、その罪の中から這い上がって生き抜け。
「どんな間違いを犯しても、必ずやり直すことができる」
それを証明することが、倉田の親としての償いであり愛情であると、玲子は思ったのではないでしょうか。


 これを拝見して、≪なるほど、そうだったのか≫と「目からウ○コ」が落ちた(伏せ字にしましたが、深い意味はありません。「ロ」を入れた方はいたって正常です。「ン」を連想した方は、私と感覚が似ていて、ある意味正常です)
 とにかく、大いに共感したわけですが、ひねくれ者の私、もう少し捻ってみました。冒頭にも述べたように、玲子の言動には共感できないところが多く、玲子がこんなに優しいはずがないと思ってしまう。(玲子の言動については、後述)そこで、次のように考えました。

③「殺人には死を持って購う」という倉田の信念への反駁
 死刑が一番重い刑ではなく、生きて苦しむことこそ償いになるという考え。


 で、「どれなんだ?」と問われそうですが、①②③すべてを含めた玲子の言葉というのが結論。(「何だよ、逃げたな!」という突っ込みは甘んじて受けます)


 ただ、ラストの玲子の言葉、
「どんな間違いを犯しても、必ずやり直すことができる。あたしは、そんな人の力を信じてる」
 を考慮すると、きこりさんのおっしゃる②番、話を通じて、そして、倉田にその言葉を言った時の玲子の表情の印象だと①に思えます。

【きこりさんから、補足説明をいただきましたので、ご紹介します】

私は、玲子が優しさから倉田に言った訳ではないと思います。
たしかに「生き続けろ」というメッセージだと思いますが、あの言葉は玲子の本能から出た言葉ではないかと。
倉田は英樹が自殺すると知っていながら放置した。
そして、自分も玲子に見つからなければ死んでいたのかもしれない。
殺人犯たちに対しても『死』の制裁を与えてきた(多分)。
玲子はその、『死』で全てをチャラにするという考え方が許せないんじゃないでしょうか。
間違いを犯すのが人間(救いようのない人間、倉田に殺された3人のような奴もいますが)、どん底まで落ちて、それでも生きようとする人間の姿に、かつて死を考えた玲子もすがりたいのかもしれません。


 なるほどです。深い考察、感服しました。



 今回、この言葉以外にも、考えさせられる言葉が多かった。
「正義?馬鹿なことを言うな。殺しに正義もクソもあるか。あるのは選択だ。殺すという方法をとるか、とらないのか、それだけだ。
 人が人を殺す理由と、殺そうとする気持は全く別のところにあるということだ。人を殺すに値する理由などこの世にひとつもない。
 逆に言えば、どんな些細な理由でも、人は人を殺すということだ。そこにあるのは、たった一つ、選択の機会にすぎない」


 倉田自身、殺すに値する理由はないと断言し、殺そうという気持ちが生じ、その行為を「選択」するかどうかであると。
 倉田自身は、3人を殺したのは「処刑」という意志ではなく、復讐に似た気持ちだったのだろう。だから、前回、玲子が倉田に「あなたは純粋な正義のためだけに、3人を殺したんじゃない」と言ったことは正解に近い。
 しかし、「自分を追い詰めるために3人を殺した。息子の倉田英樹に自分の手で罰を与える決心が鈍らないように」と言ったのは、どうなのか?
 倉田は更生しなかった3人だけ手を下している。自分を追い込むための方が、主要な理由とは思えない。純粋な正義ではないとは思うが、息子が殺人を犯し、妻が殺されたやり場のない怒りのためではなかったのだろうか?


「人はな、一度殺してしまったら、もうだめなんだ。再犯の可能性が高いかどうかは断言できん。
 だが、殺意は膨らんだまま心に残る。ひとつの大きな選択肢として魂の中に居座り続ける。そんな心に爆弾を抱えた息子を俺は世に放つことはできん。
 これが俺の、元刑事としての最後の理性だ」


 これに対し、玲子は
「殺意が危険なのは、それを犯してしまった人間に限ったことじゃない。でも、大半の人間が殺意を抑え込んで生きている」
 と反論。

 でも、倉田の言葉は理解できる。人の心には「殺人は駄目」という前提(壁)がある。しかし、一度その壁を破って殺人を犯してしまったものは、更生しその壁を修復したとしても、その壁は薄く、過去に壊してしまったという気持ちから、壁を壊してはいけないと言うブレーキも弱くなるような気がする。
 玲子もそれを理解した上で、ラストの言葉「どんな間違いを犯しても、必ずやり直すことができる。あたしは、そんな人の力を信じてる」
 を言っているのだと思う。


 深い内容の話であったが、
疑問や不満を感じる玲子の言動もあった。
Ⅰ.ガンテツの「無駄死にだ」という言葉を心に刻むべき
 倉田の息子・英樹(石黒英雄)が殺人を犯した理由を、検証・捜査すべきだった。倉田の息子が簡単に殺人を犯すとは考えにくいし、刑務所通いするくらいなら、まず、その事件を掘り下げるべきだった。
 さらに、あんな危うい状況の倉田親子を放置するのはどうだったのか?もちろん、あの場面、息子が父と帰ることを選択してしまったのだから、どうすることもできなかったのかもしれない。

Ⅱ.あの言葉はないでしょう
「親が無償の愛って嘘だよね。親だって人間だもん。どろどろした感情で子どもが憎いってことあるんじゃないのかな。お母さんもさぁ、(あのレイプ事件があって)私がいなくなったらって思ったことあるでしょ?」
 まあ、私自身、親の無償の愛なんて、到底、無理です。≪面倒くさいなあ≫などと、心の中で、しょっちゅう呟いています。しかし、一般的には、親の愛と言うのは、無性に近いものであると思いたいです。どろどろした感情で、子どもが憎いなんて、よっぽどのことだ。
 特に、最後の「私がいなくなったらって思ったことあるでしょ?」なんて言うのは最低だ。それから、「親だって壊れる。親だから壊れる」という台詞もあったが、親だから壊れるというのは否定しない(どちらかと言えば肯定)が、玲子に言われたくないなあ。
 子どもとの話し合いが上手くいった石倉刑事(宇梶剛士)に対して、「保さんのお嬢さんは保さんがパパで幸せねえ。どんなことがあっても、子どもに死んでほしいなんて思わないでしょ」……きついねえ。
 玲子のキャラクターと言ってしまえばそれまでだが、先の言葉を吐く玲子と、「どんな間違いを犯しても、必ずやり直すことができる。あたしは、そんな人の力を信じてる」と言った玲子のイメージが一致しない。ガンテツに「玲子と倉田が同じ」と言われたことを、気にしていたとしても。

Ⅲ.何故、断言できる?
 3人の変死は、倉田の犯行と断言する玲子。証拠は挙げられず、結局、いつもの勘。それに従う姫川班のメンバーは偉い。

Ⅳ.息子の殺人を犯した真相をつらつらと倉田に語る玲子だが
 確かに、息子を信じる事が出来なかった、そして、許すことができなかった倉田に責任があると思うが、息子が自ら命を絶ってしまってから、真相を倉田に告げ、責め立てる玲子であるが、遅過ぎ!


☆その他の突っ込み
 銃口を口に突っ込まれても、改心しなかった山辺もある意味強者(つわもの)



【ストーリー】(番組サイトより)
姫川玲子(竹内結子)は、一連の不審死に元警部補の倉田修二(杉本哲太)が関与していることを確信。さらに倉田は恋人を殺害して服役中の息子、英樹(石黒英雄)が出所したら、彼をも殺そうとしているのではないかと危惧する。倉田の勤め先を訪ねた玲子は、英樹は自分が守ると宣言した。

玲子は今泉春男係長(高嶋政宏)に、一連の不審死を再捜査させて欲しいと頼む。このままでは倉田が英樹まで殺しかねないと迫る玲子に、今泉は証拠をつかんでくることを条件に了承する。

姫川班の必死の捜査にも関わらず、証拠は挙らない。消沈する玲子を今泉は飲みに誘う。そこは、かつて今泉が倉田と飲みに来た場所だった。倉田の犯行を疑う今泉。玲子は倉田が英樹を殺して自分も死ぬことだけを目的に今を生きていると話す。


母親の遺言があるという玲子に、英樹が初めて面会に応じた。遺言とは今泉が倉田の亡き妻に聞いたもので、英樹の犯行にはよほどのことがあったに違いないというもの。母親は信じていたという玲子の訴えにも、英樹の反応は冷たかった。

空しさに苛まれる玲子は英樹が殺害した恋人、嶋田彩香(皆川玲奈)の家を訪ねる。応対した母親の澄子(渡辺杉枝)は、最近になって気がついたと彩香の携帯電話を見せてくれた。そこには石澤琢斗からストーカーまがいの行為を受けているとのメールが残されている。

彩香の友人からの証言も得た玲子は捜査一課に戻って班のメンバーに報告。その時、英樹の釈放が早まったとの報を受け、玲子は琢斗の捜査を班員に任せて少年刑務所へと急ぐ。


玲子が到着したのは、ちょうど英樹が出て来た時だった。倉田もやって来る。英樹は自分が連れ帰ると玲子が主張。しかし、英樹は倉田とともに帰ると刑務所を後にした。

2人を見送った玲子も刑務所を去る。駅に向かう玲子に菊田和男(西島秀俊)から連絡が入った。琢斗が彩香へのストーカー行為と暴行したことまで認めたと言うのだ。玲子はタクシーに乗り込み、倉田の自宅へと急ぐ。

玲子の到着は一足遅かった。すでに英樹は自殺してしまっていた。玲子は倉田に英樹の事件を調べたのかと迫る。そして、推測の域は出ないが琢斗に暴行された彩香が英樹に殺して欲しいと頼んだのではないかと訴えた。愕然とする倉田に、早く楽になろうと思うなと玲子は吐き捨てた。
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