昨夜(2月18日)放送された『マイケル・サンデル 究極の選択』、テーマは「お金で買えるもの買えないもの」でした。
まったくの偶然で、たまたまテレビをつけたら興味深いテーマを論じていました。テーマについては、私が説明するよりは、番組紹介のページをそのまま紹介した方が分かりやすいと思います。
「世の中にはお金で買えないものがある」。私たちはこれまでそう考えてきた。しかし、今やお金さえ出せば、ほとんどすべてのものが手に入る時代を迎えている。たとえば、インド人女性による妊娠代行サービス。7千ドル払えば、子宮を貸してくれ、依頼人夫婦の子供を産んでくれる。毎年数百組の夫婦が先進国からインドを訪れている。教育の世界にもお金というものさしが導入され始めている。アメリカでは、よい成績を取った子供、そして先生には、賞金を与えるという試みが実験的に始まっている。またアメリカでは、消防隊も民営化され始めた。その挙げ句、家が火事になっても会員ではないからという理由で消火されず、放置されたまま家と財産を失うという事態も起こっている。
命、教育、公共サービスなど、お金という価値観が、これまで不可侵だった領域にまで次第に入り込んでいる。私たちは、どこかで市場主義の立ち入り禁止の一線を設けるべきなのだろうか。ハーバード大学マイケル・サンデル教授が、各界の著名人、そして日米中の若き知性と議論していく。
出演 ハーバード大学 マイケル・サンデル教授
ゲスト 猪瀬直樹 古田敦也 田明 斉藤慶子 SHELLY
【たまたま観た番組で、ブログ記事にするつもりはなかったので、詳細の表現や論旨の解釈が間違っているかもしれません】
番組の最初のテーマが「スコップが必要となる大雪になり、ある商店で、通常の価格の2倍の売値を付けた。この焦点の行為は不当か?」
この問いかけでが「不当か」という表現をしましたが、表現の仕方によって回答者の選択も変わってくるような気がします。それくらい、微妙な提起ですね。
ゲストの選択は、全員「不当」でした。基本的主張は、ジャパネット高田の高田社長の「もともと仕入れてあるのだから、仕入れ値も在庫数も変化していないので売値だけ変えるのはおかしい」。まあ、「安売り」を売りにしてますから、「不当ではない」とは言わないでしょう。他の学生たちは3割ぐらいが「不当」と答えていました。
「不当」が多いのは、おそらく、最近の野菜の高値(天候不順による生産量の減少)が念頭にあるのでしょう。
しかし、私の考えは「不当ではない」です。もともと、商売はお客の必要なものを仕入れて買ってもらう訳です。そのアンテナを働かす情報や考察、タイミング良く仕入れる才覚、仕入れの際の運賃、搬入や陳列の手間、商品管理、またその陳列や在庫のスペース(倉庫代)などを原価に加味して売価を決めるのですが、需要曲線、供給曲線の兼ね合いも大きく関係します。お客が必要としなければ、売れない、値が下がる。欲しい商品は高くてもお客は買います。
この商店の場合、天気を読んで仕入れたのか、たまたまだったのかは分かりませんが、才覚、或いは幸運にせよ、在庫があるということはそれだけで価値があることなのです。アニメ『一休さん』に登場する桔梗屋なら、「この大雪を読んでスコップを仕入れた私の手柄です。その分の褒美を頂くだけです」と言うのではないでしょうか。
100円ショップすべてがそうとは限りませんが、100円ショップは安く仕入れて100円で売り、そのかわり在庫の保証はしません。ジャパネット高田などの安さを売りにする形態の商法は基本的にそうだと思います。安さが大きな武器なのではないでしょうか。
もちろん、安いに越したことはありませんし、商品の知識やアフターケアも要素(武器)の一つです。ただ、従来の商店にとって在庫が武器の一つです。商品を仕入れてその原価を払い、陳列しても、売れなかったら何もなりません。在庫をするというのはそれだけで大変なのです。雪が降らなければ、売れません。議論の途中、斉藤さんはそのことに気づき、「不当とも言えない」と言いました。
大雪になった時点でスコップの商品価値が高まり、値を挙げて販売するというのは、ある意味、当然の結果ともいえます。私は、値を上げて販売するのは売り手の自由だと思います。
逆に購買者も通常、他の店の方が安ければ、その店では買わないという選択もできます。ガソリンスタンドに入っても表示価格を見て、そのまま出てしまう車もあるそうです。そういう価格優先で店を選ぶ人は、この値を上げた商店を非難してはいけないと思います。
とは言え、スコップだけで荒稼ぎしても、タカが知れているので、そんなことして店の評判を落とすのは得策ではありません。通常価格でたくさん売った方が良いと判断するはずです。ただ、不当かどうかと問われると、不当ではないと私は思います。
この番組で、不満に思ったことは、サンデル教授は微妙で考えさせる問題提起をし、回答者の意見を聞きながら上手にその考えを明確化します。そして、いろいろな場合を考えさせ、解答者に更に考えさせます。しかし、考えさせるだけ考えさせ、その考え方を整理するだけで、その問題の詳細については細かく解説することはしません。結論を出さないのです。もちろん、結論が簡単に出ない問題なので、結論を出すのは難しいのですが。その考えの背景にあるような考え方や事情をもう少し掘り下げて欲しいと思いました。
こういう微妙な問題の場合、極端な例を考えると判断しやすいことが多いです。この教授は、もっと極端な例を出してきました。
「災害が起こって、飲料水が不足してきた。この時、飲料水の価格が高騰したとした。この場合は不当ですか」と。
この場合は、非常時なので(命にかかわることなので)、飲料水の値が上がるのは不当であるという意見がさらに多数を占めました。
それを支持する象徴的な意見をシェリーが述べていました。
「値が上がったら、お金のある人しか飲料水が手に入らなくなってしまう」
これに対し、学生が鋭い反論を。
「値が一緒なら、早い者勝ちと言ううことになってしまう。だから、値段で差別化するのも一つの方法である」
なかなか鋭いでしょう。
それはともかく、「お金持ちしか飲料水(商品やサービス)を享受できないのはおかしい」という考えは、人道的な考えのように思えますが、そもそも資本主義というのはそういうものなのでしょう。贅沢したかったら、おいしいものが食べたかったら、金持ちになるしかないのです。災害時、緊急時にその考え方が適切かどうかは疑問です。線引きが難しいです。
私は、緊急時はお金は二の次で困っている人を助けるというのが、最優先になって欲しいのです(当然、皆さんもそうですよね)が、すべてに「お金持ちしか商品を享受できないのはおかしい」という理屈で考えるのも良くないと思います。
さらに、その線引きが部図化しいと考えさせる問題が提起されました。「学校長が成績優秀者に賞金を出す」「税金(会費)を払わない人の家には消火活動を行わない」といった問題です。
それにまつわる興味深い議論もされましたが、それをここで言及すると、非常に長く、まとまりそうもありません。
この番組、一回きりじゃあないようですが、毎週見ると、人生に悩んでしまうかもしれませんね。
まったくの偶然で、たまたまテレビをつけたら興味深いテーマを論じていました。テーマについては、私が説明するよりは、番組紹介のページをそのまま紹介した方が分かりやすいと思います。
「世の中にはお金で買えないものがある」。私たちはこれまでそう考えてきた。しかし、今やお金さえ出せば、ほとんどすべてのものが手に入る時代を迎えている。たとえば、インド人女性による妊娠代行サービス。7千ドル払えば、子宮を貸してくれ、依頼人夫婦の子供を産んでくれる。毎年数百組の夫婦が先進国からインドを訪れている。教育の世界にもお金というものさしが導入され始めている。アメリカでは、よい成績を取った子供、そして先生には、賞金を与えるという試みが実験的に始まっている。またアメリカでは、消防隊も民営化され始めた。その挙げ句、家が火事になっても会員ではないからという理由で消火されず、放置されたまま家と財産を失うという事態も起こっている。
命、教育、公共サービスなど、お金という価値観が、これまで不可侵だった領域にまで次第に入り込んでいる。私たちは、どこかで市場主義の立ち入り禁止の一線を設けるべきなのだろうか。ハーバード大学マイケル・サンデル教授が、各界の著名人、そして日米中の若き知性と議論していく。
出演 ハーバード大学 マイケル・サンデル教授
ゲスト 猪瀬直樹 古田敦也 田明 斉藤慶子 SHELLY
【たまたま観た番組で、ブログ記事にするつもりはなかったので、詳細の表現や論旨の解釈が間違っているかもしれません】
番組の最初のテーマが「スコップが必要となる大雪になり、ある商店で、通常の価格の2倍の売値を付けた。この焦点の行為は不当か?」
この問いかけでが「不当か」という表現をしましたが、表現の仕方によって回答者の選択も変わってくるような気がします。それくらい、微妙な提起ですね。
ゲストの選択は、全員「不当」でした。基本的主張は、ジャパネット高田の高田社長の「もともと仕入れてあるのだから、仕入れ値も在庫数も変化していないので売値だけ変えるのはおかしい」。まあ、「安売り」を売りにしてますから、「不当ではない」とは言わないでしょう。他の学生たちは3割ぐらいが「不当」と答えていました。
「不当」が多いのは、おそらく、最近の野菜の高値(天候不順による生産量の減少)が念頭にあるのでしょう。
しかし、私の考えは「不当ではない」です。もともと、商売はお客の必要なものを仕入れて買ってもらう訳です。そのアンテナを働かす情報や考察、タイミング良く仕入れる才覚、仕入れの際の運賃、搬入や陳列の手間、商品管理、またその陳列や在庫のスペース(倉庫代)などを原価に加味して売価を決めるのですが、需要曲線、供給曲線の兼ね合いも大きく関係します。お客が必要としなければ、売れない、値が下がる。欲しい商品は高くてもお客は買います。
この商店の場合、天気を読んで仕入れたのか、たまたまだったのかは分かりませんが、才覚、或いは幸運にせよ、在庫があるということはそれだけで価値があることなのです。アニメ『一休さん』に登場する桔梗屋なら、「この大雪を読んでスコップを仕入れた私の手柄です。その分の褒美を頂くだけです」と言うのではないでしょうか。
100円ショップすべてがそうとは限りませんが、100円ショップは安く仕入れて100円で売り、そのかわり在庫の保証はしません。ジャパネット高田などの安さを売りにする形態の商法は基本的にそうだと思います。安さが大きな武器なのではないでしょうか。
もちろん、安いに越したことはありませんし、商品の知識やアフターケアも要素(武器)の一つです。ただ、従来の商店にとって在庫が武器の一つです。商品を仕入れてその原価を払い、陳列しても、売れなかったら何もなりません。在庫をするというのはそれだけで大変なのです。雪が降らなければ、売れません。議論の途中、斉藤さんはそのことに気づき、「不当とも言えない」と言いました。
大雪になった時点でスコップの商品価値が高まり、値を挙げて販売するというのは、ある意味、当然の結果ともいえます。私は、値を上げて販売するのは売り手の自由だと思います。
逆に購買者も通常、他の店の方が安ければ、その店では買わないという選択もできます。ガソリンスタンドに入っても表示価格を見て、そのまま出てしまう車もあるそうです。そういう価格優先で店を選ぶ人は、この値を上げた商店を非難してはいけないと思います。
とは言え、スコップだけで荒稼ぎしても、タカが知れているので、そんなことして店の評判を落とすのは得策ではありません。通常価格でたくさん売った方が良いと判断するはずです。ただ、不当かどうかと問われると、不当ではないと私は思います。
この番組で、不満に思ったことは、サンデル教授は微妙で考えさせる問題提起をし、回答者の意見を聞きながら上手にその考えを明確化します。そして、いろいろな場合を考えさせ、解答者に更に考えさせます。しかし、考えさせるだけ考えさせ、その考え方を整理するだけで、その問題の詳細については細かく解説することはしません。結論を出さないのです。もちろん、結論が簡単に出ない問題なので、結論を出すのは難しいのですが。その考えの背景にあるような考え方や事情をもう少し掘り下げて欲しいと思いました。
こういう微妙な問題の場合、極端な例を考えると判断しやすいことが多いです。この教授は、もっと極端な例を出してきました。
「災害が起こって、飲料水が不足してきた。この時、飲料水の価格が高騰したとした。この場合は不当ですか」と。
この場合は、非常時なので(命にかかわることなので)、飲料水の値が上がるのは不当であるという意見がさらに多数を占めました。
それを支持する象徴的な意見をシェリーが述べていました。
「値が上がったら、お金のある人しか飲料水が手に入らなくなってしまう」
これに対し、学生が鋭い反論を。
「値が一緒なら、早い者勝ちと言ううことになってしまう。だから、値段で差別化するのも一つの方法である」
なかなか鋭いでしょう。
それはともかく、「お金持ちしか飲料水(商品やサービス)を享受できないのはおかしい」という考えは、人道的な考えのように思えますが、そもそも資本主義というのはそういうものなのでしょう。贅沢したかったら、おいしいものが食べたかったら、金持ちになるしかないのです。災害時、緊急時にその考え方が適切かどうかは疑問です。線引きが難しいです。
私は、緊急時はお金は二の次で困っている人を助けるというのが、最優先になって欲しいのです(当然、皆さんもそうですよね)が、すべてに「お金持ちしか商品を享受できないのはおかしい」という理屈で考えるのも良くないと思います。
さらに、その線引きが部図化しいと考えさせる問題が提起されました。「学校長が成績優秀者に賞金を出す」「税金(会費)を払わない人の家には消火活動を行わない」といった問題です。
それにまつわる興味深い議論もされましたが、それをここで言及すると、非常に長く、まとまりそうもありません。
この番組、一回きりじゃあないようですが、毎週見ると、人生に悩んでしまうかもしれませんね。