英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

王将戦第1局 佐藤九段×久保王将・棋王③「封じ手の周辺」

2012-02-24 23:22:52 | 将棋
 前記事で、難解な局面で久保二冠の封じ手になったが、緊張感がある戦いだったので疲れ、そのおかげでぐっすり眠ることができたそうだというような事を書いたが、更に、『将棋世界』3月号の佐藤九段の自戦記を読むと、封じ手の本命を△5四角と考え、その対策をかなり練ったようで、タイトル戦第一日の夜の過ごし方としては当然かもしれないが、疲れを感じていたという割には、しっかり考える辺り、将棋が好きな佐藤九段らしいなあと思ってしまう。


 封じ手の各人の予想は、中継サイトでは青野九段は△3三歩、神谷七段は△5三金、坂井三段は△5五歩。『週刊将棋』では△3三歩や△5三金が本命視、『将棋世界』の自戦記の佐藤九段は△5四角を本命に考え、他に△4四歩、△5五歩を予想していたとのこと。
 特に△5四角を警戒していたようで、かなり掘り下げて調べたようだ。その辺りを自戦記でも詳細に記されていて、それをここで紹介するのは気が引けるが、あとで読み返した場合、とても自力で納得する棋力はないので、参考にさせていただきます。参考と言っても引用に近いですが、出来るだけ自分の意見も付け加えたいです。

 封じ手図で△5四角には▲同角△同飛▲4五銀△5一飛(変化7図)が順当。

 感覚的には、▲7七銀と壁銀を解消しつつ、上部に働かせたいところだが、△5五歩がうるさく▲同歩△同飛▲5六銀に△3五飛(変化8図)で、

次に△3九角が残り後手を引いてしまう。それを受けていると、△3三桂などドンドン後手の駒が働いてきてしまう。
 なので、△5一飛(変化7図)には▲4六歩と突いて4五の銀に紐を付け、△5五歩に▲同歩△同飛に▲5六歩と受けられるようにするが、今度はその時に△4五飛と飛車を切られ、▲同歩に△3三桂(大変図)と強引に決戦を挑まれると、局面を収めるのが大変。


 まず、①▲4七玉が考えられる。変な手だが、この手はあらかじめ玉をかわしておき、△4五桂には▲4六歩と桂を取ろうという狙いだ。しかし、かまわず△4五桂と跳ね、▲4六歩に△6九角(先手苦戦図1)が決まってしまう(△4五桂▲4六歩を決めないと▲4六玉と受ける手がありそう)。

 この変化では、先に▲7八金と立った手がマイナスになっている。

 そこで、初日の夜は②▲4四歩と③▲7九銀を中心に考えていたそうだ。
 ②▲4四歩は取られそうな歩を伸ばし後手に歩を与えず、さらに上部への厚みを少しでも残しておこうという手であろう。それにしても、桂跳ねを防がない上、さらに隙間を作るような気がする。強気な手である。
 しかし、▲4四歩以下△4五桂▲4六玉に△5四銀(先手苦戦図2)と打たれると、次の△6四角の受け方が難しい。

▲8六角と受けても、△4二角で困る。

 再び大変図に戻り

 ③の▲7九銀を考える。この手は、浮き駒になりそうな7八の金(現在は2八の飛車が利いている)に紐を付けつつ壁銀を解消し自陣を引き締めている。
 この手には△4五桂▲6六玉に△5七角(先手容易でない図)がうるさい。

 この変化は、先手玉も8八まで逃がせるので勝負ではあるが、自信がなかったそうだ。

 更に、大変図では、④6八金も考えている。この手も自陣の整備で、浮き気味の金を落ち着かせるのと同時に5七に利かせ、▲5八玉と引きやすくしている(先手容易でない図で生じた△5七角も消し▲6六玉も可能に)。ただ、8八の銀が離れ駒になるというマイナスもある。
 この手には、△3六歩▲4七玉△6四角▲5五角△同角▲同歩△3七銀(勝つ気がしない図)でどうかと佐藤九段は述べているが、私は勝つ気がしない。


 そもそも、大変図で△4五桂を防ぐ手はないのだろうか?

 一番うまそうなのが▲1八角だが、△6四角と打たれると角筋が防げない。では、△6四角と打たれても1八に飛車をかわせるよう▲2七角や▲3六角はどうだろうか?
 ▲2七角だと△2六銀や△2五桂が生じるので△6四角と絡められると持ちそうにない。
 ▲3六角は△3四歩と角頭を攻められると困る。▲3四同歩には△3五銀と打たれ△4六角の王手飛車を狙われる。
 かと言って、大変図で桂跳ねを防ぐため飛車を打つ気になれない。▲4八飛打と辛抱しても、△3六歩(次に△3七銀)や△3六銀(次に△4五桂)などがあって、却って後手からの攻めの当たりが強くなってしまう。

 どうも大変図は大変なので、△5一飛の変化図7まで戻って、ここで▲3六銀と引き、以下△4二銀▲7七銀(初夜の結論図)の展開を選ぶことになるかというのが一応の結論だったようだ。

 先手は妥協した感があるが、後手も2歩損なので嫌かもしれないという佐藤九段の形勢判断(感触)。

 久保二冠の封じ手は△4四歩だった。
コメント
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