英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

情熱! 『クローズアップ現代』 -学びをあきらめない- 74歳老棋士 最後の戦い

2010-07-09 23:22:12 | 将棋
【私のブログは、気まぐれに多種に渡って書き連ねていて、その筋の方にのみ発信(放電)していますが、今日の記事は将棋に興味のない方も読んでくださると、嬉しいです】

 現役最高齢(74歳)棋士の有吉道夫九段が、今年の5月に引退されました。「火の玉流」と異名を取るように、盤に向かい読みふける姿は闘志に満ち溢れていました。

 棋士の引退規定について説明すると非常に長くなるので、有吉九段についてのみ簡単に説明します。
 棋士は順位戦のクラスによって対局料が決められます。順位戦というのはC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と分けられ、リーグ戦を1年間戦い(総当たりはA級とB級1組のみ。他のクラスは抽選で対局者10人が決まる)、昇級・降級を争います。プロ棋士養成機関の奨励会を卒業した新四段は、C級2組に配属され、好成績を上げると昇級していきます。竜王位と並ぶ最高位の名人位に挑戦できるのはA級で優勝しなければなりません。
 A級棋士でも力が衰えると降級していきます。C級2組では成績下位の2割に降級点が付けられ3点たまると降級します。C級2組から降級するとフリークラス棋士という身分?(順位戦には参加できないが他の棋戦には参加できる)になります。
 フリークラス棋士にも2種類あり、フリークラスを宣言して自ら順位戦を離脱すると、C級2組から陥落したフリークラス棋士より、引退猶予が長くなります。
 不運、あるいは実力が不足して、若いうち陥落するのは厳し過ぎるという温情から、猶予期間が与えられている訳です。ただし、C級2組から陥落した時、定年の60歳を超えていると引退になります。(細かい引退猶予規定はいろいろありますが、おおまかな説明でご容赦ください)

 有吉九段は、昨年度の順位戦C級2組の陥落が決まり、その年度末で引退となるわけですが、2010年2月24日(つい最近です)、規定が変更され、「引退が決まった年度に勝ち残っていた棋戦は、勝ち続けている限り対局できる」となりました。
 有吉九段の場合、C級2組陥落が決まった時点で、いくつかの棋戦で勝ち残っていましたので、年度を越えての引退となりました。
 実は、平成20年度もC級2組陥落の危機を迎えて、最終局を勝って踏みとどまりました。


 やはり、前置きが長くなりました。

 「技術革新や社会構造の変化で、仕事のやり方・ルールがめまぐるしく変わり、過去の知識・データさらに今までの常識などが、いつの間にか役に立たなくなってしまう事態も珍しくない。変化についていけず、引退、退くことを考えざるを得なくなったという方もいらっしゃると思います」という国谷裕子さんの導入から始まりました。
 将棋界もそういった技術革新の大波がやってきています。

 ネットによる大量しかも瞬時の情報の波及、また、データベースの整備による系統だった研究、将棋ソフトの進歩により終盤の詰みの有無など研究に将棋ソフトの利用、若手による共同研究などによって、将棋の理論や技術は大きく変革した。
 番組でも紹介されたが、今までの常識を覆す理論や戦法が次々生み出されてきた。年配の棋士は、こういった変革の流れに対応できず苦戦を強いられている。
 有吉九段も平成8年に61歳でA級を陥落し(A級在位21年)、将棋変革と年齢による衰えの2つの敵に戦わなければならなくなった。
 平成13年、1000勝に到達した。この頃から引退を考えるようになったとのこと。多分、このころから将棋変革の波が起こり始め、「1000勝が花道かな」と思うようになったそうだ。
 ほんの少し前まで奨励会員でお茶汲みしていた新人棋士に歯が立たない。自分が今まで培ってきたモノが通用しない。棋士人生を否定されるようで辛かったはずだ。

 有吉九段は、「若手と互角に渡り合うことはもはや不可能なのか」と、若手棋士の棋譜をすべて取りよせ、盤に並べ研究した。
 そこで有吉九段は衝撃を受けた。「藤井システム」「横歩取り8五飛戦法」「ゴキゲン中飛車」など、今までの将棋の常識を根底から覆すものだった。
 並の棋士なら、「引き際」と考えたはず。しかし、有吉九段は違った。
「将棋というものは非常に奥が深いということが、この歳になって初めて分かった。自分は将棋を何もわかっていなかった」
と、現役続行を決意。これ、凄いと思いませんか?素晴らしいと思いませんか?

 しかし、有吉九段はパソコンが使えない。そこで出した答えが、
『若いとき以上に努力すること』
 年間2000局をすべて分類し、参考になりそうな将棋はすべて並べて研究する。
 将棋会館に足を運び、若手に練習将棋を申し込む。負けても負けても、若手に学ぼうとする姿勢を変えない。
 妻に「今日も増田(六段)に五局指して、全敗したわ」「次も頑張れるから行く」 と話す。奥さんも(あんなに負けて)何故頑張れるのだろうと不思議がっている様子。


 とにかく、脱帽するしかないです。感動しました。

 あとは、印象に残った有吉九段の言葉を記します。

「(若い人に負けて)恥ずかしさというものは感じない方がいい。若い人のほうが優秀だと思うほうがいい」
「経験が逆にマイナス作用になることがある」
「3七角(好手)と打ってほっとしたというのが、私の今日の敗因ですね」
「もう自分はダメだって思ったら、それで終わりなんです」
「若い人の何倍も努力をすれば追いつける。追いつければ、長年の経験とか知識とか活かせる道が生じるんじゃないかと」
「努力した者が報われるというぐらい素晴らしいことはあり得ないですね(にっこり笑う)」
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テレビの画面が

2010-07-06 00:03:59 | 日記
 今日からテレビがワイド画面(横長)になりました。徐々にワイド画面に切り替えられていたようですが、今日からは全面的にワイド画面になった気がします。
 横長と言っても、画面の比率が横長になったので、従来のアナログ画面で従来比率で見ると、上下が黒くなって画面が小さくなっただけです。つまり、縦に圧縮されただけななので、非常に画面が小さいです。(テレビの画面設定を「ワイドモード(シネマモード)」にすればいいのですが)

 もう、これは、地デジ化しない奴への「嫌がらせ」か「脅迫」ですね。
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『新警視庁捜査一課9係』 第1話

2010-07-01 18:51:51 | ドラマ・映画
 番組サイトを見ると、『新警視庁捜査一課9係』となっています。
 しかし、個人的な感覚では『新・警視庁捜査一課9係』と「・」を入れたいです。
 よくよく考えれば「新」は『警視庁捜査一課9係』に係っていることは分かりますが、文法的には「警視庁」あるいは「警視庁捜査一課」もあり得ますし、その方が普通のような気がします。
 そもそも、ドラマタイトルの「新」の扱いがよくわかりません。
 『9係』(略します)は、今回で第5シリーズです。で、第3シリーズまでは『シーズン1』『シーズン2』『シーズン3』と続きましたが、第4シリーズは『新9係』となり、キャラクターの人物関係が少々変化させていました。
 特に加納倫太郎・石川倫子の親子関係は、第3シーズンでは雪解けの気配だったのが、『新9係』では、少し逆戻りしてしまっていました。
 第4シリーズでは、少し捜査9係の家族や恋人などのしがらみを軽くして、捜査本位のドラマにしようという意図が見え、それを意識して『新』をつけたのでしょう。
 ところが、今シリーズを迎えるに当たって、この『新』の弊害にぶち当たってしまいました。『新9係』としては第2シリーズなので『2』とすべきなのですが、『9係』としては5作目なので、「2」をつけるのには第2シリーズの『シーズン2』と紛らわしいし、5作目だというのに「2」をつけるのは、気分的にもすっきりしません。
 もちろん、これは私の推測ですが、今シリーズも単に『新警視庁捜査一課9係』です。

 これと同様なジレンマは『科捜研の女』にもあるようで、第5シリーズから第8シリーズまでは『新・科捜研の女』と「新」が付いていました。(「・」もついています)
 ところが、昨年の第9シリーズからは「新」が取れ、今シリーズも『科捜研の女』となっています。

 相も変わらず、前置きが長いです。
 さて、今回、犯行の動機やミステリーの材料として将棋が使われていました。

 将棋1局で100億円の金の流れが決まるってすごいですね。あり得ません。まあ、被害者(銀行頭取)は負けても、そんな約束は反故にするつもりだったようですが。
 結局、頭取は元プロ棋士に指し手をカンニングさせてもらうというインチキをしていたにもかかわらず、「小娘(女流棋士)に負けた」と激怒。元プロ棋士も「小娘に負けた」と激情。頭取に罵られ、首を言い渡されたことに逆上し、撲殺。
 あまりにも、せこくて肝っ玉の小さい!
 棋士、愛棋家の風上にも置けない奴らです。
 ん、「風上にも置けない」って風下ならいいの?

 せっかく将棋が題材になったのに、残念だなあと思っていたのですが、実は今回、もっと突っ込みたいことが合ったのです。
 小娘は、容疑者の娘で女流棋士・桜沢あかねだったのですが、取調室で事件直前の様子を話すシーンがあります。

「私が(将棋に)勝たなきゃいけないと思った……勝てば………勝てば、父も兄も許してくれるかもしれないと思って」
 と父や兄への自分の思いを切々と話すのですが、そこで浅輪刑事(井ノ原快彦)があかねの顔をじっと見て、
「何でもいい…あの部屋にいたときのことを思い出せないかな」

 ええ~!あかねの心情はスルー!
 そんなに手柄が欲しいんかい!


 現場で誰も変だとは思わなかったのでしょうか?
 イノッチ、台詞言ってて、自分で「それはないだろう」って思わなかったのかな?
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将棋雑感  羽生名人・棋聖・王座 VS 深浦王位

2010-07-01 00:28:36 | 将棋
 昨夜は日本のあちこちで、ため息が充満したのではないでしょうか。惜しかったですね。

Ⅰ 対戦成績 苦手?深浦王位
 羽生名人が3連勝で棋聖位防衛。
 棋聖戦直前まで、羽生名人の28勝27敗とほぼ互角。羽生名人と互角に戦ってきているのは深浦王位と渡辺竜王(10勝10敗)のみで、羽生名人にとっては「苦手」と言っていいのかもしれない。(互角で「苦手」という表現は、適切ではないかもしれません)

 羽生名人との対戦成績は4パターンあって、
①羽生名人にずっと圧倒されている
  高橋九段    2勝19敗(11連敗中) 
  屋敷九段    2勝15敗(10連敗中)
  先崎八段    1勝14敗(12連敗中)
  山崎七段    2勝12敗( 4連敗中)
  中田(宏)八段 2勝12敗(10連敗中)
  中村九段    2勝11敗(10連敗中)
  青野九段    1勝12敗( 9連敗中)
  福崎九段    1勝 9敗( 4連敗中・1993年8月以降対局なし)
  桐山九段    1勝 9敗( 2連敗中・1999年9月以降対局なし)
  有吉九段    1勝 9敗( 7連敗中・1995年12月以降対局なし)
  中田(功)七段 0勝 8敗( 8連敗中)
  小林九段    0勝 8敗( 8連敗中・1997年8月以降対局なし)

②最初はやられっ放しで、途中からある程度互角に近い対戦成績を残す
  佐藤九段 31勝72敗の後は18勝18敗(勝率0.500)   
  丸山九段  1勝11敗の後は16勝23敗(勝率0.410)
  森下九段  8勝33敗の後は 6勝 4敗(勝率0.600)
  久保2冠  8勝26敗の後は 5勝 6敗(勝率0.455)

③最初は互角、あるいはそれ以上だが、突然勝てなくなった
  藤井九段  11勝9敗の後は 3勝19敗(勝率0.136)
  島 九段   6勝6敗の後は 4勝20敗(勝率0.167)
  三浦八段   6勝6敗の後は 15連敗中(勝率0.000)
  南 九段   4勝5敗の後は 2勝14敗(勝率0.125)
  安部八段   4勝5敗の後は 6連敗中 (勝率0.000)
  田中(寅)九段 4連勝後5連敗
  
④ずっとほぼ互角
  渡辺竜王  10勝10敗
  深浦王位  27勝31敗(棋聖戦終了時点)
  森内九段  44勝55敗

 この他、谷川九段は、時々谷川九段が盛り返す(8勝2敗、12勝3敗)が、全体的には62勝98敗(勝率0.388)とかなり劣勢。最近は3勝18敗(8連敗中)と苦戦している。


 今回の棋聖戦で流れが変わり、③のパターンに移行するのか注目。

Ⅱ 羽生名人×深浦王位のこれまでの戦況
 深浦王位は、羽生名人に対して特別視せず、また苦手意識を持っていなかった。ネット中継での深浦王位のコメントも羽生名人の指し手を信用していない節もあった。
 羽生×深浦戦のパターンは、序盤、深浦王位の研究が羽生の指し手を上回っていて、深浦王位が主導権を握ることが多く、その小差を、羽生名人が苦心して追い込むが、深浦王位が逃げ切る展開。
 終盤までに名人が時間やスタミナを消費してしまうこともあるが、深浦王位の終盤の粘り強さも見逃せない。
 ただ、羽生名人との互角の戦いを考慮すると、もっと深浦王位は他の棋士に勝ち、王位の他にもタイトルを獲得しても不思議ではないはず。深浦王位が羽生名人に相性がいいだけかもしれない。

Ⅲ 棋聖戦とこれまでの両者の対局との違い
①1日制タイトル戦における羽生名人の強さ
 羽生名人と棋聖戦の相性はそれほどではないが、王座戦、棋王戦における強さは並ではない。対して、深浦王位のは初体験。慣れていない不利もあるうえ、深浦王位と1日制との相性も疑問視されていた。

②深浦王位の定跡への果敢な挑戦
 深浦王位は、不利とされている変化を掘り下げて、定跡に挑むことも多い。しかし、それがうまくいかないことが多い。今回もそのパターンが見られた。

③ワールドカップサッカーの影響
 サッカー中継観戦で夜更かしして寝不足ということはないだろうが、集中力などに多少の影響があった可能性もある。

④羽生名人の好調さ
 王位戦挑戦者決定戦で広瀬五段(現六段)に敗れたものの、今年度は14勝2敗と絶好調。王位戦の指し手も、よどみがなく、完璧な指し回しに思えた。

⑤深浦将棋を把握し、対深浦戦のコツをつかんだ。
 深浦王位が羽生名人との対局に実力を出し切っている(他の強豪たちは羽生名人戦に力を発揮できない)と考えられますが、羽生名人が深浦王位にだけには、本来の力を出せないでいるという考えも成り立ちます。
 この両者の対局、特に王位戦においては名局が多いので、後者は考えにくいのですが、何らかの原因(心理的、あるいは作戦的なもの)で、羽生名人が指しづらさを感じていて、それの対処法をこの棋聖戦でつかんだとも考えられる。


Ⅳ 楽しみな王位戦
 棋聖戦の戦況を観ると、羽生名人が王位挑戦権をつかめなかったことは、大いに残念。ここで、一気に深浦王位をたたくチャンスだった。
 しかし、深浦王位の棋聖位挑戦が決まった当初は、王位戦も羽生×深浦となると、ここで両タイトル戦で敗れるとなると、「羽生は深浦に勝てない」「羽生<深浦」と認知されてしまう。小心者の羽生ファンとしては、王位挑戦権を得ることができなくて、少しホッとしてしまった。

 広瀬六段は侮れないと見ていた。しかし、羽生名人があそこまで一刀両断されてしまうとは思わなかった。
 とにかく、穴熊戦での距離感覚が素晴らしい。詰めろや2手スキの見切りが的確。

 深浦×広瀬がどんな将棋になるか、深浦王位が広瀬アナグマ穴熊を攻略できるのか、それとも、広瀬六段が深浦王位との間合いを見切り、一刀両断してしまうのか。非常に興味深い対戦だ。
 この王位戦で、今まで見えなかった深浦将棋の弱点が露わになるかもしれない。また、広瀬穴熊の隙が露出してくるかもしれない。
コメント (11)
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