昨夜は日本のあちこちで、ため息が充満したのではないでしょうか。惜しかったですね。
Ⅰ 対戦成績 苦手?深浦王位
羽生名人が3連勝で棋聖位防衛。
棋聖戦直前まで、羽生名人の28勝27敗とほぼ互角。羽生名人と互角に戦ってきているのは深浦王位と渡辺竜王(10勝10敗)のみで、羽生名人にとっては「苦手」と言っていいのかもしれない。(互角で「苦手」という表現は、適切ではないかもしれません)
羽生名人との対戦成績は4パターンあって、
①羽生名人にずっと圧倒されている
高橋九段 2勝19敗(11連敗中)
屋敷九段 2勝15敗(10連敗中)
先崎八段 1勝14敗(12連敗中)
山崎七段 2勝12敗( 4連敗中)
中田(宏)八段 2勝12敗(10連敗中)
中村九段 2勝11敗(10連敗中)
青野九段 1勝12敗( 9連敗中)
福崎九段 1勝 9敗( 4連敗中・1993年8月以降対局なし)
桐山九段 1勝 9敗( 2連敗中・1999年9月以降対局なし)
有吉九段 1勝 9敗( 7連敗中・1995年12月以降対局なし)
中田(功)七段 0勝 8敗( 8連敗中)
小林九段 0勝 8敗( 8連敗中・1997年8月以降対局なし)
②最初はやられっ放しで、途中からある程度互角に近い対戦成績を残す
佐藤九段 31勝72敗の後は18勝18敗(勝率0.500)
丸山九段 1勝11敗の後は16勝23敗(勝率0.410)
森下九段 8勝33敗の後は 6勝 4敗(勝率0.600)
久保2冠 8勝26敗の後は 5勝 6敗(勝率0.455)
③最初は互角、あるいはそれ以上だが、突然勝てなくなった
藤井九段 11勝9敗の後は 3勝19敗(勝率0.136)
島 九段 6勝6敗の後は 4勝20敗(勝率0.167)
三浦八段 6勝6敗の後は 15連敗中(勝率0.000)
南 九段 4勝5敗の後は 2勝14敗(勝率0.125)
安部八段 4勝5敗の後は 6連敗中 (勝率0.000)
田中(寅)九段 4連勝後5連敗
④ずっとほぼ互角
渡辺竜王 10勝10敗
深浦王位 27勝31敗(棋聖戦終了時点)
森内九段 44勝55敗
この他、谷川九段は、時々谷川九段が盛り返す(8勝2敗、12勝3敗)が、全体的には62勝98敗(勝率0.388)とかなり劣勢。最近は3勝18敗(8連敗中)と苦戦している。
今回の棋聖戦で流れが変わり、③のパターンに移行するのか注目。
Ⅱ 羽生名人×深浦王位のこれまでの戦況
深浦王位は、羽生名人に対して特別視せず、また苦手意識を持っていなかった。ネット中継での深浦王位のコメントも羽生名人の指し手を信用していない節もあった。
羽生×深浦戦のパターンは、序盤、深浦王位の研究が羽生の指し手を上回っていて、深浦王位が主導権を握ることが多く、その小差を、羽生名人が苦心して追い込むが、深浦王位が逃げ切る展開。
終盤までに名人が時間やスタミナを消費してしまうこともあるが、深浦王位の終盤の粘り強さも見逃せない。
ただ、羽生名人との互角の戦いを考慮すると、もっと深浦王位は他の棋士に勝ち、王位の他にもタイトルを獲得しても不思議ではないはず。深浦王位が羽生名人に相性がいいだけかもしれない。
Ⅲ 棋聖戦とこれまでの両者の対局との違い
①1日制タイトル戦における羽生名人の強さ
羽生名人と棋聖戦の相性はそれほどではないが、王座戦、棋王戦における強さは並ではない。対して、深浦王位のは初体験。慣れていない不利もあるうえ、深浦王位と1日制との相性も疑問視されていた。
②深浦王位の定跡への果敢な挑戦
深浦王位は、不利とされている変化を掘り下げて、定跡に挑むことも多い。しかし、それがうまくいかないことが多い。今回もそのパターンが見られた。
③ワールドカップサッカーの影響
サッカー中継観戦で夜更かしして寝不足ということはないだろうが、集中力などに多少の影響があった可能性もある。
④羽生名人の好調さ
王位戦挑戦者決定戦で広瀬五段(現六段)に敗れたものの、今年度は14勝2敗と絶好調。王位戦の指し手も、よどみがなく、完璧な指し回しに思えた。
⑤深浦将棋を把握し、対深浦戦のコツをつかんだ。
深浦王位が羽生名人との対局に実力を出し切っている(他の強豪たちは羽生名人戦に力を発揮できない)と考えられますが、羽生名人が深浦王位にだけには、本来の力を出せないでいるという考えも成り立ちます。
この両者の対局、特に王位戦においては名局が多いので、後者は考えにくいのですが、何らかの原因(心理的、あるいは作戦的なもの)で、羽生名人が指しづらさを感じていて、それの対処法をこの棋聖戦でつかんだとも考えられる。
Ⅳ 楽しみな王位戦
棋聖戦の戦況を観ると、羽生名人が王位挑戦権をつかめなかったことは、大いに残念。ここで、一気に深浦王位をたたくチャンスだった。
しかし、深浦王位の棋聖位挑戦が決まった当初は、王位戦も羽生×深浦となると、ここで両タイトル戦で敗れるとなると、「羽生は深浦に勝てない」「羽生<深浦」と認知されてしまう。小心者の羽生ファンとしては、王位挑戦権を得ることができなくて、少しホッとしてしまった。
広瀬六段は侮れないと見ていた。しかし、羽生名人があそこまで一刀両断されてしまうとは思わなかった。
とにかく、穴熊戦での距離感覚が素晴らしい。詰めろや2手スキの見切りが的確。
深浦×広瀬がどんな将棋になるか、深浦王位が広瀬アナグマ穴熊を攻略できるのか、それとも、広瀬六段が深浦王位との間合いを見切り、一刀両断してしまうのか。非常に興味深い対戦だ。
この王位戦で、今まで見えなかった深浦将棋の弱点が露わになるかもしれない。また、広瀬穴熊の隙が露出してくるかもしれない。
Ⅰ 対戦成績 苦手?深浦王位
羽生名人が3連勝で棋聖位防衛。
棋聖戦直前まで、羽生名人の28勝27敗とほぼ互角。羽生名人と互角に戦ってきているのは深浦王位と渡辺竜王(10勝10敗)のみで、羽生名人にとっては「苦手」と言っていいのかもしれない。(互角で「苦手」という表現は、適切ではないかもしれません)
羽生名人との対戦成績は4パターンあって、
①羽生名人にずっと圧倒されている
高橋九段 2勝19敗(11連敗中)
屋敷九段 2勝15敗(10連敗中)
先崎八段 1勝14敗(12連敗中)
山崎七段 2勝12敗( 4連敗中)
中田(宏)八段 2勝12敗(10連敗中)
中村九段 2勝11敗(10連敗中)
青野九段 1勝12敗( 9連敗中)
福崎九段 1勝 9敗( 4連敗中・1993年8月以降対局なし)
桐山九段 1勝 9敗( 2連敗中・1999年9月以降対局なし)
有吉九段 1勝 9敗( 7連敗中・1995年12月以降対局なし)
中田(功)七段 0勝 8敗( 8連敗中)
小林九段 0勝 8敗( 8連敗中・1997年8月以降対局なし)
②最初はやられっ放しで、途中からある程度互角に近い対戦成績を残す
佐藤九段 31勝72敗の後は18勝18敗(勝率0.500)
丸山九段 1勝11敗の後は16勝23敗(勝率0.410)
森下九段 8勝33敗の後は 6勝 4敗(勝率0.600)
久保2冠 8勝26敗の後は 5勝 6敗(勝率0.455)
③最初は互角、あるいはそれ以上だが、突然勝てなくなった
藤井九段 11勝9敗の後は 3勝19敗(勝率0.136)
島 九段 6勝6敗の後は 4勝20敗(勝率0.167)
三浦八段 6勝6敗の後は 15連敗中(勝率0.000)
南 九段 4勝5敗の後は 2勝14敗(勝率0.125)
安部八段 4勝5敗の後は 6連敗中 (勝率0.000)
田中(寅)九段 4連勝後5連敗
④ずっとほぼ互角
渡辺竜王 10勝10敗
深浦王位 27勝31敗(棋聖戦終了時点)
森内九段 44勝55敗
この他、谷川九段は、時々谷川九段が盛り返す(8勝2敗、12勝3敗)が、全体的には62勝98敗(勝率0.388)とかなり劣勢。最近は3勝18敗(8連敗中)と苦戦している。
今回の棋聖戦で流れが変わり、③のパターンに移行するのか注目。
Ⅱ 羽生名人×深浦王位のこれまでの戦況
深浦王位は、羽生名人に対して特別視せず、また苦手意識を持っていなかった。ネット中継での深浦王位のコメントも羽生名人の指し手を信用していない節もあった。
羽生×深浦戦のパターンは、序盤、深浦王位の研究が羽生の指し手を上回っていて、深浦王位が主導権を握ることが多く、その小差を、羽生名人が苦心して追い込むが、深浦王位が逃げ切る展開。
終盤までに名人が時間やスタミナを消費してしまうこともあるが、深浦王位の終盤の粘り強さも見逃せない。
ただ、羽生名人との互角の戦いを考慮すると、もっと深浦王位は他の棋士に勝ち、王位の他にもタイトルを獲得しても不思議ではないはず。深浦王位が羽生名人に相性がいいだけかもしれない。
Ⅲ 棋聖戦とこれまでの両者の対局との違い
①1日制タイトル戦における羽生名人の強さ
羽生名人と棋聖戦の相性はそれほどではないが、王座戦、棋王戦における強さは並ではない。対して、深浦王位のは初体験。慣れていない不利もあるうえ、深浦王位と1日制との相性も疑問視されていた。
②深浦王位の定跡への果敢な挑戦
深浦王位は、不利とされている変化を掘り下げて、定跡に挑むことも多い。しかし、それがうまくいかないことが多い。今回もそのパターンが見られた。
③ワールドカップサッカーの影響
サッカー中継観戦で夜更かしして寝不足ということはないだろうが、集中力などに多少の影響があった可能性もある。
④羽生名人の好調さ
王位戦挑戦者決定戦で広瀬五段(現六段)に敗れたものの、今年度は14勝2敗と絶好調。王位戦の指し手も、よどみがなく、完璧な指し回しに思えた。
⑤深浦将棋を把握し、対深浦戦のコツをつかんだ。
深浦王位が羽生名人との対局に実力を出し切っている(他の強豪たちは羽生名人戦に力を発揮できない)と考えられますが、羽生名人が深浦王位にだけには、本来の力を出せないでいるという考えも成り立ちます。
この両者の対局、特に王位戦においては名局が多いので、後者は考えにくいのですが、何らかの原因(心理的、あるいは作戦的なもの)で、羽生名人が指しづらさを感じていて、それの対処法をこの棋聖戦でつかんだとも考えられる。
Ⅳ 楽しみな王位戦
棋聖戦の戦況を観ると、羽生名人が王位挑戦権をつかめなかったことは、大いに残念。ここで、一気に深浦王位をたたくチャンスだった。
しかし、深浦王位の棋聖位挑戦が決まった当初は、王位戦も羽生×深浦となると、ここで両タイトル戦で敗れるとなると、「羽生は深浦に勝てない」「羽生<深浦」と認知されてしまう。小心者の羽生ファンとしては、王位挑戦権を得ることができなくて、少しホッとしてしまった。
広瀬六段は侮れないと見ていた。しかし、羽生名人があそこまで一刀両断されてしまうとは思わなかった。
とにかく、穴熊戦での距離感覚が素晴らしい。詰めろや2手スキの見切りが的確。
深浦×広瀬がどんな将棋になるか、深浦王位が広瀬アナグマ穴熊を攻略できるのか、それとも、広瀬六段が深浦王位との間合いを見切り、一刀両断してしまうのか。非常に興味深い対戦だ。
この王位戦で、今まで見えなかった深浦将棋の弱点が露わになるかもしれない。また、広瀬穴熊の隙が露出してくるかもしれない。
その場合、深浦王位が居飛車穴熊側になると思うので、若干 深浦王位ノリです。
棋聖戦の結果は意外でしたが、3局とも定跡形で、深浦王位の良さが出なかったというのが率直な感想です。
なるほど、相穴熊ですか。
その公算は大きいですね。
でも、サービス精神が豊富な深浦王位なので、いろいろ新工夫してくれるような気がします。
居飛車穴熊にしないで、急戦で挑む可能性もあります。
もちろん、相穴熊で居飛車が指せるという信念で、相穴熊戦の一応の結論を出してくれるかもしれません。相穴熊シリーズも良し。
楽しみな王位戦です。
角・銀交換から意表の▲53銀!が印象に残る将棋でした。
これは、深浦王位も容易ならざる相手と思ったのではないでしょうか?
予想が当たりましたね。
相穴熊戦は広瀬六段の方が一枚上手のような気がします。広瀬六段は相穴熊における距離感や戦略を知り尽くしています。彼独特の穴熊感覚が確立されていて、まさに異次元の強さを感じます。
このままだと、4-0で広瀬六段のタイトル奪取ですね。
「このままだと」という言葉を付けておくのがミソで、そうならなかった場合は、深浦王位が「このまま」ではなかったという言い訳が立ちます。
さらに、2012年度までのバージョンUP版をお暇な時にお願いしたいです。
例えば、深浦九段は、英さんには言うまでもないことかもしれませんが、羽生三冠に大きく引き離され、負けが続きました。
私の分析では、一つには歳をとられてアイデアがでにくくなった、二つには渡辺明三冠の質問三羽ガラス発言があって、質問がしにくくなった、三つには、今までは一番よい研究成果を羽生善治三冠にぶつけていたが、渡辺明三冠にぶつけるようになった、というものですが、いかがでしょうか?
>さらに、2012年度までのバージョンUP版をお暇な時にお願いしたいです。
再検証した方がいいほど、月日が経っていることに驚きました。
自分の記事を検索してこのページを開いたのですが、コメントを頂いて、アップの日時を見て、びっくりしました。
URLを載せる際、記事の内容は読み返したのですが、日時はノーマークでした。記事内容が古いなあとは思ったのですが。
深浦くだんについては、今ですと、「羽生三冠が深浦将棋に慣れた」「深浦九段が弱くなった」を核に、考察すると思います。
2009年度 渡辺明三冠 B1級
A級の丸山九段、三浦八段との対戦なし
深浦九段と対戦し敗北
2010年度 渡辺明三冠 A級
丸山九段、三浦八段の両方に敗北、B1級の深浦九段との対戦なし
2011年度 渡辺明三冠 A級
丸山九段、三浦八段の両方に勝利、B1級の深浦九段との対戦なし
2012年度 渡辺明三冠A級
三浦八段に勝利、深浦九段に敗北
丸山九段はB1級のため対戦なし
そもそも、質問三羽ガラス発言をしたのは、渡辺明三冠の親しい友人の村山慈明六段を守ることがきっかけでそれは三浦八段が4時間にもわたって研究会の情報を聞き出そうとしたということが伝わっています。
三浦八段は反省をしておられると観ています。
丸山九段は1回勝ってNHK杯でも渡辺明三冠の初手▲3六歩戦法に勝って溜飲を下げたのだろうか?と思ったりします。
深浦九段は、「僕たちが盗んでいるように彼らも盗めばいいじゃん」というようなことを仰られたそうです。http://blog.livedoor.jp/kobakoba81/archives/14381541.html
これはある意味、哲学の違いで、情報を漏らすほうが悪いという考え方かもしれません。嫌なら漏らさなければいいということで。
かくして百年戦争が勃発しているということはないでしょうか?
こちらは目が離せません。
まあ、得をしたのは羽生三冠ということで…。
渡辺明三冠はオウンゴールかもしれません。
しかし、詰将棋はやっていたため、棋力は確実に伸びていると思います。
離れていたのは指し将棋と将棋観戦です。
渡辺明三冠はオウンゴール又はナイスアシストだと思いますが、しかし、これぐらいの発言は若さの特権ということで温かく観るというのも必要なように思います。
どこかで将棋界を盛り上げようという気持ちもあると思うのですね。
自分の創造的発想だけで戦うべきであるという気持ちもあるでしょう。
しかし、渡辺三冠から羽生世代の人は、一人も名指しで質問三羽ガラス発言が出なかったのですから、やはり地力が凄いのですね。
三浦八段は、真面目なかたで、真面目が行きすぎて質問していただけなように思います。
そんな人の発想を盗んでやろうとかそういう気持ちはこれっぽっちもなかったと思います。
ただ、指摘されて、気付いて「ごめんなさい」という気持ちが芽生えたと分析しています。
基本的に人間は善い人ではないでしょうか?
そういう方なので、A級の上位にもいることができるのでしょう。
名人戦のトータルの成績で観ると、質問三羽ガラスの中では現在渡辺明三冠の一番の強敵と観ています。
この人には善業があるように思います。
だからこそ、羽生善治三冠が七冠を取った時に、その一角を始めて崩すことができたのでしょう。
しかし、渡辺明三冠は、直接的には深浦九段に注意しなくてはなりません。
羽生世代としてビッグフォー(佐藤、羽生、森内、郷田)をイメージしていました。
しかし、丸山九段も羽生世代でした。
ビッグフォーは渡辺明三冠も質問三羽ガラスの中に含めなかったので、地力(創造的発想、天才性)があるのでしょう、ということが言いたいことです。
同じ超トップレベルのプロ棋士から認められるというのは、アマが評価するのとは違った本当の意味での賞讃のように思います。
しかし、これは偶然私が質問三羽ガラスを持ち出したタイミングと重なっただけで、英さんのご質問は、特に創造的発想を取ろうとかそういうものではないわけです。
気にされるかもしれないと思いましたので、一応、書くことにしました。