【私のブログは、気まぐれに多種に渡って書き連ねていて、その筋の方にのみ発信(放電)していますが、今日の記事は将棋に興味のない方も読んでくださると、嬉しいです】
現役最高齢(74歳)棋士の有吉道夫九段が、今年の5月に引退されました。「火の玉流」と異名を取るように、盤に向かい読みふける姿は闘志に満ち溢れていました。
棋士の引退規定について説明すると非常に長くなるので、有吉九段についてのみ簡単に説明します。
棋士は順位戦のクラスによって対局料が決められます。順位戦というのはC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と分けられ、リーグ戦を1年間戦い(総当たりはA級とB級1組のみ。他のクラスは抽選で対局者10人が決まる)、昇級・降級を争います。プロ棋士養成機関の奨励会を卒業した新四段は、C級2組に配属され、好成績を上げると昇級していきます。竜王位と並ぶ最高位の名人位に挑戦できるのはA級で優勝しなければなりません。
A級棋士でも力が衰えると降級していきます。C級2組では成績下位の2割に降級点が付けられ3点たまると降級します。C級2組から降級するとフリークラス棋士という身分?(順位戦には参加できないが他の棋戦には参加できる)になります。
フリークラス棋士にも2種類あり、フリークラスを宣言して自ら順位戦を離脱すると、C級2組から陥落したフリークラス棋士より、引退猶予が長くなります。
不運、あるいは実力が不足して、若いうち陥落するのは厳し過ぎるという温情から、猶予期間が与えられている訳です。ただし、C級2組から陥落した時、定年の60歳を超えていると引退になります。(細かい引退猶予規定はいろいろありますが、おおまかな説明でご容赦ください)
有吉九段は、昨年度の順位戦C級2組の陥落が決まり、その年度末で引退となるわけですが、2010年2月24日(つい最近です)、規定が変更され、「引退が決まった年度に勝ち残っていた棋戦は、勝ち続けている限り対局できる」となりました。
有吉九段の場合、C級2組陥落が決まった時点で、いくつかの棋戦で勝ち残っていましたので、年度を越えての引退となりました。
実は、平成20年度もC級2組陥落の危機を迎えて、最終局を勝って踏みとどまりました。
やはり、前置きが長くなりました。
「技術革新や社会構造の変化で、仕事のやり方・ルールがめまぐるしく変わり、過去の知識・データさらに今までの常識などが、いつの間にか役に立たなくなってしまう事態も珍しくない。変化についていけず、引退、退くことを考えざるを得なくなったという方もいらっしゃると思います」という国谷裕子さんの導入から始まりました。
将棋界もそういった技術革新の大波がやってきています。
ネットによる大量しかも瞬時の情報の波及、また、データベースの整備による系統だった研究、将棋ソフトの進歩により終盤の詰みの有無など研究に将棋ソフトの利用、若手による共同研究などによって、将棋の理論や技術は大きく変革した。
番組でも紹介されたが、今までの常識を覆す理論や戦法が次々生み出されてきた。年配の棋士は、こういった変革の流れに対応できず苦戦を強いられている。
有吉九段も平成8年に61歳でA級を陥落し(A級在位21年)、将棋変革と年齢による衰えの2つの敵に戦わなければならなくなった。
平成13年、1000勝に到達した。この頃から引退を考えるようになったとのこと。多分、このころから将棋変革の波が起こり始め、「1000勝が花道かな」と思うようになったそうだ。
ほんの少し前まで奨励会員でお茶汲みしていた新人棋士に歯が立たない。自分が今まで培ってきたモノが通用しない。棋士人生を否定されるようで辛かったはずだ。
有吉九段は、「若手と互角に渡り合うことはもはや不可能なのか」と、若手棋士の棋譜をすべて取りよせ、盤に並べ研究した。
そこで有吉九段は衝撃を受けた。「藤井システム」「横歩取り8五飛戦法」「ゴキゲン中飛車」など、今までの将棋の常識を根底から覆すものだった。
並の棋士なら、「引き際」と考えたはず。しかし、有吉九段は違った。
「将棋というものは非常に奥が深いということが、この歳になって初めて分かった。自分は将棋を何もわかっていなかった」
と、現役続行を決意。これ、凄いと思いませんか?素晴らしいと思いませんか?
しかし、有吉九段はパソコンが使えない。そこで出した答えが、
『若いとき以上に努力すること』
年間2000局をすべて分類し、参考になりそうな将棋はすべて並べて研究する。
将棋会館に足を運び、若手に練習将棋を申し込む。負けても負けても、若手に学ぼうとする姿勢を変えない。
妻に「今日も増田(六段)に五局指して、全敗したわ」「次も頑張れるから行く」 と話す。奥さんも(あんなに負けて)何故頑張れるのだろうと不思議がっている様子。
とにかく、脱帽するしかないです。感動しました。
あとは、印象に残った有吉九段の言葉を記します。
「(若い人に負けて)恥ずかしさというものは感じない方がいい。若い人のほうが優秀だと思うほうがいい」
「経験が逆にマイナス作用になることがある」
「3七角(好手)と打ってほっとしたというのが、私の今日の敗因ですね」
「もう自分はダメだって思ったら、それで終わりなんです」
「若い人の何倍も努力をすれば追いつける。追いつければ、長年の経験とか知識とか活かせる道が生じるんじゃないかと」
「努力した者が報われるというぐらい素晴らしいことはあり得ないですね(にっこり笑う)」
現役最高齢(74歳)棋士の有吉道夫九段が、今年の5月に引退されました。「火の玉流」と異名を取るように、盤に向かい読みふける姿は闘志に満ち溢れていました。
棋士の引退規定について説明すると非常に長くなるので、有吉九段についてのみ簡単に説明します。
棋士は順位戦のクラスによって対局料が決められます。順位戦というのはC級2組、C級1組、B級2組、B級1組、A級と分けられ、リーグ戦を1年間戦い(総当たりはA級とB級1組のみ。他のクラスは抽選で対局者10人が決まる)、昇級・降級を争います。プロ棋士養成機関の奨励会を卒業した新四段は、C級2組に配属され、好成績を上げると昇級していきます。竜王位と並ぶ最高位の名人位に挑戦できるのはA級で優勝しなければなりません。
A級棋士でも力が衰えると降級していきます。C級2組では成績下位の2割に降級点が付けられ3点たまると降級します。C級2組から降級するとフリークラス棋士という身分?(順位戦には参加できないが他の棋戦には参加できる)になります。
フリークラス棋士にも2種類あり、フリークラスを宣言して自ら順位戦を離脱すると、C級2組から陥落したフリークラス棋士より、引退猶予が長くなります。
不運、あるいは実力が不足して、若いうち陥落するのは厳し過ぎるという温情から、猶予期間が与えられている訳です。ただし、C級2組から陥落した時、定年の60歳を超えていると引退になります。(細かい引退猶予規定はいろいろありますが、おおまかな説明でご容赦ください)
有吉九段は、昨年度の順位戦C級2組の陥落が決まり、その年度末で引退となるわけですが、2010年2月24日(つい最近です)、規定が変更され、「引退が決まった年度に勝ち残っていた棋戦は、勝ち続けている限り対局できる」となりました。
有吉九段の場合、C級2組陥落が決まった時点で、いくつかの棋戦で勝ち残っていましたので、年度を越えての引退となりました。
実は、平成20年度もC級2組陥落の危機を迎えて、最終局を勝って踏みとどまりました。
やはり、前置きが長くなりました。
「技術革新や社会構造の変化で、仕事のやり方・ルールがめまぐるしく変わり、過去の知識・データさらに今までの常識などが、いつの間にか役に立たなくなってしまう事態も珍しくない。変化についていけず、引退、退くことを考えざるを得なくなったという方もいらっしゃると思います」という国谷裕子さんの導入から始まりました。
将棋界もそういった技術革新の大波がやってきています。
ネットによる大量しかも瞬時の情報の波及、また、データベースの整備による系統だった研究、将棋ソフトの進歩により終盤の詰みの有無など研究に将棋ソフトの利用、若手による共同研究などによって、将棋の理論や技術は大きく変革した。
番組でも紹介されたが、今までの常識を覆す理論や戦法が次々生み出されてきた。年配の棋士は、こういった変革の流れに対応できず苦戦を強いられている。
有吉九段も平成8年に61歳でA級を陥落し(A級在位21年)、将棋変革と年齢による衰えの2つの敵に戦わなければならなくなった。
平成13年、1000勝に到達した。この頃から引退を考えるようになったとのこと。多分、このころから将棋変革の波が起こり始め、「1000勝が花道かな」と思うようになったそうだ。
ほんの少し前まで奨励会員でお茶汲みしていた新人棋士に歯が立たない。自分が今まで培ってきたモノが通用しない。棋士人生を否定されるようで辛かったはずだ。
有吉九段は、「若手と互角に渡り合うことはもはや不可能なのか」と、若手棋士の棋譜をすべて取りよせ、盤に並べ研究した。
そこで有吉九段は衝撃を受けた。「藤井システム」「横歩取り8五飛戦法」「ゴキゲン中飛車」など、今までの将棋の常識を根底から覆すものだった。
並の棋士なら、「引き際」と考えたはず。しかし、有吉九段は違った。
「将棋というものは非常に奥が深いということが、この歳になって初めて分かった。自分は将棋を何もわかっていなかった」
と、現役続行を決意。これ、凄いと思いませんか?素晴らしいと思いませんか?
しかし、有吉九段はパソコンが使えない。そこで出した答えが、
『若いとき以上に努力すること』
年間2000局をすべて分類し、参考になりそうな将棋はすべて並べて研究する。
将棋会館に足を運び、若手に練習将棋を申し込む。負けても負けても、若手に学ぼうとする姿勢を変えない。
妻に「今日も増田(六段)に五局指して、全敗したわ」「次も頑張れるから行く」 と話す。奥さんも(あんなに負けて)何故頑張れるのだろうと不思議がっている様子。
とにかく、脱帽するしかないです。感動しました。
あとは、印象に残った有吉九段の言葉を記します。
「(若い人に負けて)恥ずかしさというものは感じない方がいい。若い人のほうが優秀だと思うほうがいい」
「経験が逆にマイナス作用になることがある」
「3七角(好手)と打ってほっとしたというのが、私の今日の敗因ですね」
「もう自分はダメだって思ったら、それで終わりなんです」
「若い人の何倍も努力をすれば追いつける。追いつければ、長年の経験とか知識とか活かせる道が生じるんじゃないかと」
「努力した者が報われるというぐらい素晴らしいことはあり得ないですね(にっこり笑う)」
まず感じたのは30分では短いということ。それと強く違和感あったのがサブタイトルにあった「老棋士」という表現。
将棋ファンで有吉先生のことを知っている人なら、若々しくて将棋に熱く情熱を傾けているということを。
孫のような年齢差を気にしないで、教えてもらうという姿勢を実行できるという事。
これだけでもなかなかできることではなく凄いと思います。
だからこそ若手棋士から尊敬されるのだと思います。そこらへんも放送で十分伝わってきましたね。
私も将棋観戦が趣味で観戦しながらTwitterでつぶやいてます。
もう放送時は有吉先生の話題で盛り上がってましたよ。
自分もあの年齢になった時、あの姿勢で
生きていくことができれば幸せだと感じました。
それでは失礼します。m(__)m
私も「老棋士」という表現には違和感を感じました。「老棋士 最後の戦い」というタイトルで衆目を集めようという意図が見え隠れします。
内容が良かっただけにやや残念です。
それはともかく、有吉先生の考え方、生き方は見習わなければならないと思いました。
> 老棋士
わたしは、逆に「老」という表現がなければならなかったと思います。
冒頭に国谷キャスターが述べている言葉を見れば一目瞭然です。
つまり、この番組のテーマは将棋ではありません。
年老いて自分のこれまでが通用しなくなったときに、それを「最近の世の中は、若者はおかしい」と他人のせいにしない。最後まで自分の世界の新しい展開に興味を持ち、キャッチアップの努力を怠らない。「老い」を、そういう潔い瑞々しい態度で生きていくことはできないのか。
それがテーマであることは明らかでしょう。
この番組は「偉大な棋士 有吉道夫」の特集ではなく「偉大な老人 有吉道夫」の特集だと思います。
コメント、ありがとうございました。
オミクロンさんのおっしゃるように、「老い」がテーマでした。「老いに立ち向かい現代社会を生きていく」そういう姿勢を発信した特集だったと思います。
私も、漠然とそういうものを感じていましたが、ご指摘を受けて、改めて理解できました。私の意見は、狭い見地からのものでした。
ただ、私としては「老い」という言葉のマイナスイメージが強すぎて、抵抗を感じてしまいます。
それと、「最後の戦い」としたのには、疑問を感じます。有吉九段の人生、それに引退はしましたが将棋人生もまだまだ続くからです。
と、少しだけ抵抗しましたが、オミクロンさんのおっしゃる通りだと思います。ご意見、ありがとうございました。
これ、実は見たかったのです。ちゃんと帰宅もしていましたし。
しかし、娘が「宿題」をしている間は、テレビは「邪魔者」扱いされているので、泣く泣く諦めたわけです。こっちは業務でくたくたになって帰ってきて、食事も終えて楽しみにしていたのに…。
ですが、英さんのエントリーを拝読して思いました。
やっぱり、その道の「一流」に君臨なさった方は、プライドもおありでしょうが、それ以上に謙虚なことです。
これは、大いに見習うべきことであると思います。
悔しさがある以上は、ボロボロでも将棋を指し続ける姿勢…敬意を表さねばならないでしょう。
やっぱり、その道を極めることは、誰にとっても永遠のテーマですね。
業務を遂行していく上で、大きなモチベーションに繋がりました。
素直に、感動しています。
頑張らなくては…。
私は「素敵」という言葉が好きで、よく賛辞の言葉として使います。
有吉九段の生き方は、まさに「素敵な生き方」です。
有吉九段の生き方、考え方に感動し、勇気づけられました。
ところで、Danchoさん、やさしすぎ、と言うより、「甘過ぎ」です。
楽しみにしていた番組ならば、見たいと主張すべきです。私は「お前も観ろ」と強要しました。娘も「感動した」と言っていました(言わせた?)。
何も言えませんね~。
しかし、引退を考える(60歳)過ぎから
再度 勉強し直すのは、やはり勝負の世界に
生きてこられたからでしょうね。
私は、最近 息子に勝てませんので、
(アマなので)この境地にはたどり着けません。
ただ、会社生活をしていますと、将棋とは
違い、まだまだ新入社員には負けません。
その辺が 勝負の世界と一般社会との違い
でしょうか?
Blogを読んで 放送内容を観たくなりました。
『クローズアップ現代』の再放送ですが、その日の深夜0時過ぎにBS2でやっています。
なので、『学びをあきらめない』もその晩のうちに再放送がありました。
更なる再放送は、難しいと思います。が、要望が多ければ、再放送をしてくれる可能性もあります。
私も、ブログに載せたら、反響が大きかったので、再放送を望むという主旨のメールを送ろうと思います。
あとは、NHKオンデマンドを利用すれば視聴することができます。視聴料は210円です。
内容ですが、勝手さんのおっしゃるように、新入社員に及ばないというような極端なことは、一般社会においてはあまりないと思いますが、激動の現代社会を考慮すると、5年後追い抜かれている可能性は低くないかもしれません。我々が培ってきた知識・技術が何の役にも立たなくなるかもしれません。
有吉九段の生き方は、すごく励まされました。
急遽、将棋大会のお手伝いを頂き
ありがとうございました。
先輩には急に声を掛けて、協力を願い出て
申し訳なかったと思っていますが、
そんな中、快く!?お引き受け頂き
恐縮しております。
まだまだ、先輩の将棋熱も冷めていないものと
感じました^^。
途中参加の途中離脱で、申し訳なかったです。
それに、「急遽」というタイミングでしたが、予想はしていましたし、楽しかったので気にしないでください。
将棋は以前より好きになっています。ただ、指す棋力と気力が…。