英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『鍵のかかった部屋』 第3話「盤端の迷宮」

2012-04-30 23:47:56 | ドラマ・映画
 今回の密室を解く上で、最も重要なのは、動機だと思います。
 犯人が何故、殺人を犯してしまったのか?それは本来、容疑者を絞り込んだり、犯行の裏付けを行ったりする際に考えることで、密室と直接関連付ける意味はあまりないと言えるでしょう。
 しかし、この部屋で起きた殺人事件においては、この鍵やドアに掛けられたチェーンと同じように、動機そのものが密室を構成する一つのアイテムとしなっているのです。(榎本径)




≪以下、いきなり密室トリックのネタばれですので、お気をつけ下さい≫

 今回の密室トリックは、被害者自身が密室を完成させてしまうというパターン。
 この場合、よくあるのが、被害者が犯人を庇って、死ぬ直前に最後の力を振り絞って密室を完成させるということが多いが、この事件はダイイングメッセージを保持するための行為だった。

 犯行の動機は、不正対局で強請られていた犯人・来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が、その証拠品の携帯電話を取り戻すためというものだった。
 しかも、その携帯電話が犯人に直結する証拠となっており、ダイイングメッセージはその携帯電話の存在を示すものだった。
 そのダイイングメッセージは、竜王戦の毒島竜王(貴志祐介)が妙手を指した局面のマグネット将棋盤。被害者が犯行時刻にこの局面を並べるには、ネット中継をパソコンや携帯電話で知ることしかできないという状況であった。現場にそれらがないことから、携帯電話を或いはノートパソコンを犯人が持ち去ったということが推測されるというもの。
 将棋ファン以外だとちょっと理解できない推理かもしれない。
 しかし、死ぬ間際にとっさにマグネット盤がダイイングメッセージになると考え、それを犯人が気づくと考え、それを保持するためにドアチェーンを掛けるとは、何という悪知恵、知恵の働く奴。
 さらに、殺人を犯すというギリギリの状況で、マグネット盤が竜王戦の局面が並べられていると気づき、それがダイイングメッセージになると気づき戻ってくるとは、来栖奈穂子も恐るべし。
 そこまでの洞察力や頭の回転があるのなら、将棋ソフトによるカンニングなどせずとも奨励会を突破できると思う。被害者の竹脇伸平五段(ゆうぞう)にしても、もう少し実績を残せたのではないのだろうか。


 さて、今回は書くことが多くなりそう。
 まず、ドラマとは離れてしまうが、この不正行為(将棋ソフトや協力者によるカンニング)は、実際に充分可能なのでちょっと怖い。
 ご存知の方も多いと思うが、将棋ソフトの実力はプロレベルにまで達していて、特に終盤、とりわけ詰みの検証については速さも正確さも人間はかなわないレベルである。さらに、最近は携帯電話(スマートフォン)モバイルPCの発達によりトイレなどで将棋ソフトを使用が容易である。
 私は過去に2009年11月14日記事「『週刊将棋』驚きの記事」、2010年11月15日記事「ソフト指しについて」で、この不正行為について書いているので、興味のある方はご覧ください。ただ、現在、対局に置いて、そういった不正行為防止について、将棋連盟がどのような対策や処置を取っているのかは把握していません。

 それにしても、原作者の貴志さん、将棋が好きなんでしょうね。奨励会やネット中継やソフト指しなどに詳しいそうです。しっかり毒島竜王として出演していますし。


★今回はさらに榎本(大野智)の独壇場
 将棋が強く、将棋界(情勢)に詳しくないと、解明できない密室(もちろん、鍵についても)だった。榎本の将棋に詳しいことが更に彼の活躍度を高めたと言える。
 さらに、今回は芹沢(佐藤浩市)が捜査にほとんど関わっておらず、ドラマの面白さは半減。彼の見せ場は自分が窮地に陥っても守秘義務を貫いたが、美人には洩らしかける。しかも、守秘しようとした依頼というのが仕様もない内容だったということぐらいか。
 青砥(戸田恵梨香)も、早とちりと来栖奈穂子に入れ込み過ぎと稚拙な推理ぐらいしか活躍?できなかった。

★感想、疑問点
・青砥に「彼女、います?」と聞かれ、榎本はうろたえ、彼女の有無と事件とが関係あるのか尋ねる。
 心酔していた来栖奈穂子の不正行為と殺人に落ち込む青砥に、「青砥さん、彼氏いますか?」と突然話題を変える。それは、以前、女性は何故恋愛話をするのかと聞いた時に、青砥が面白いからだと答えたのを思い出したからだった。青砥に、その妙な榎本の気の利かせようを面白がられ、げんなりして「もういいです」と言う榎本が面白かった。
・青砥が来栖を弁護したいと言いだしたが、芹沢が「たとえ殺人を犯したとしても、君には弁護は頼まないよ」と言うように、依頼する気にはならないだろう。
・事件直前に通話記録があったということだけで、あそこまで疑うものなのだろうか?
・来栖が被害者の持ち物確認に来た時、マグネット盤をいじったのは、滅茶苦茶怪しい。もっとも、この行為がないと、榎本が密室の秘密にたどり着くのが困難になってしまう。
・棋士や奨励会員の着手の手つきが素人っぽい
・級位者と有段者は持ち時間が違うので、対局時刻にずれはあるが、完全に別時間に指すことはないと思う。
・最後の榎本と来栖の対局は来栖の勝ちだったが、その局面を見ると、あまりに榎本の指し手(攻め方や守備)がヘボ過ぎ。
・将棋ソフト「激指」の宣伝をし過ぎ。スポンサー?

・不正行為をすることで、棋力の伸びはストップしてしまう。不正とプライド、その辺りを厳しく追及するのが、青砥の役目だと思う。あるいは、冷静に本末転倒の行為だと榎本が指摘してもよいと思う。

 今回の記事でも、棋士の不正行為の可能性を指摘したが、棋士のプライドがその不正を抑止すると考えたい。



【ストーリー】(番組サイトより)
榎本径(大野智)は、青砥純子(戸田恵梨香)と刑事・鴻野(宇梶剛士)とともに、プロ棋士・竹脇伸平五段(ゆうぞう)が殺害されたホテルの一室にやってきた。そこはビジネスホテルで、竹脇は背中を包丁で一突きにされドアを頭にして倒れていたという。現場は、窓もドアも施錠されチェーンまでかけられた密室で、室内には携帯用の将棋盤、棋書、将棋新聞、飲みかけのコーヒーカップが残されていた。




榎本は、部屋を開けた時ドアが遺体に触れたかどうかを遺体発見者のスタッフに尋ね、スタッフはチェーンがかかっていたため遺体までは届かなかったと証言した。

そこへ、来栖奈穂子女流三段(相武紗季)が入ってきた。鴻野は竹脇の恋人だという奈穂子に遺留品の財布などを見せていると、奈穂子は将棋盤にあった駒をひとつ動かした。

奈穂子が最近話題の女流棋士だと知った純子は盛り上がる。そして名刺を差し出すと、自分の上司・芹沢豪(佐藤浩市)が竹脇から法律相談を受けていた関係で、今回の事件の捜査協力をすることになったと説明した。

その後、女流四段昇格をかけたリーグ戦がはじまり奈穂子が勝ち進む。美人棋士の勝利とあって報道陣の注目も奈穂子に集まる。その様子を見ていたプロ棋士・中野秀哉四段(忍成修吾)は、竹脇の死後ますます奈穂子の人気が高まり、竜王戦で八連覇を成し遂げた毒島薫竜王(貴志祐介)がかすんでしまい気の毒だ、と漏らした。

依然、犯人像が浮かび上がってこないなか、榎本と純子はプロ棋士・谷二郎八段(児玉頼信)を訪ねると、谷は竹脇を恨んでいる人間は腐るほどいて、毒島もそのひとりだと証言。それを聞いた榎本は…。
コメント (4)
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『平清盛』 第17話「平氏の棟梁(とうりょう)」

2012-04-30 13:27:40 | ドラマ・映画
平氏の棟梁、一家の長


清盛(松山ケンイチ)「平清盛であるっ!」
盛国(上川隆也)「みな……存じております」


 突っ込んだらあかんやろ!
 平氏の棟梁となった清盛、一族の前に颯爽と登場!(小奇麗になっている)

 緊張の中の第一声!
 緊迫の静けさ?固まる空気?
 何を当たり前のことを……清盛としては、一族の棟梁となったことを宣言したかったのであろうが、言葉が足りなかった。「棟梁となった清盛である。一族の繁栄のために務めるゆえ、そなたらもわしを支えてくれ」とか言えばよかったのに。
 でも、盛国よ、突っ込んだらあかんやろ!

 とにかく、清盛のふがいなさを良く知る身としては、一族の棟梁をしっかり務められるか、はらはらドキドキである。
 そんな清盛であるが、意気は高く、やる気満々であり、棟梁の仕事をこなそうとするが、あまりにも多岐にわたり、今までそれをこなしてきた亡き忠盛(中井貴一)の偉大さを知る。……というが、忠盛がしていたようには見えない。
 棟梁は方針を決め、決裁や指示を出すのが役目だと思う。具体的な段取りは重役(責任者)たちが行わないと、組織は成り立たないであろう。(このドラマでも実際に、西国や明との貿易は家盛の盛り役の平維綱(尾美としのり)が管理していたような描写があった)
 家貞(中村梅雀)や忠正(豊原功補)や盛国らは「殿!」とか「はっ」と言っている役立たずだったら、平氏はこれほどの力を持たなかったはず。
 取ってつけたような、エピソードだと感じた

★やはり、ふがいない清盛
 藤原家成(佐藤二朗)が平氏の棟梁の清盛を披露するための歌会を催す。そこで、春の歌を一首詠んで欲しいと頼まれる。
 棟梁の仕事の多さに困惑していたうえ、苦手な歌の課題が与えられ、「いっぱいいっぱい状態」になる。
 一族の宴の準備や、琵琶の演奏、三男の反抗に、「子どものしつけや、家内としての務めが果たせていない。先妻の明子棟梁の妻のつとめをもっとうまく果たせたはず」と言ってはいけないことを言ってしまう。
 その時、義弟・時忠(森田剛)は、時子が琵琶を弾かなくなったのは、結婚する前に清盛が「耳に残る明子の琵琶の音色をかき消されたくない」と言ったことを時子が覚えているからだと告げた。清盛、反省。

★清盛、歌会で名誉挽回
まず、前座?の崇徳院(井浦新)の歌
  朝夕に 花待つころは 思ひ寝の 夢のうちにぞ 咲き始めける
家成「さすが上皇さま。なんとも雅なお歌にごさりまする」
忠通(堀部圭亮)「花の開くうちに寝入り、夢の中で桜が咲く…美しくも儚げにおじゃりまする」
得子(松雪泰子)「まこと、上皇さまのお心のこもったお歌。きっと夜毎夢の中で政をなさっておいでなのでござりましょうなぁ」

 座布団を三枚ぐらいあげたくなるほどの、得子の皮肉が絶妙!


  重盛に 基盛それに 清三郎 清四郎みな われらの子なり

 進行役の藤原成親(家成の子:吉沢悠)が詠むのをためらうほどの、わけの分からなさ。雅仁親王(松田翔太)には大うけであったが。

頼長(山本耕史)「お題は“春”ぞ。春らしいものが何一つ詠み込まれておらぬ」
崇徳院「いや・・その前にもはや歌ではない」
 風紀委員の頼長の弾劾はともかく、崇徳院の突っ込みは「って言うか、○○じゃねえし」という今風。しかも、自分の歌を揶揄された腹いせのように思え、おかしかった。

 後の流れはベタなので、サイトのあらすじをそのまま引用。
「あきれる人たちに向かい清盛は、自分が家族や家人たちをなにより大事に思っていること、歌会よりケンカした妻に一刻も早く謝りたいという思いを述べた。堂々とした清盛の態度は歌会の客たちにさまざまな波紋を広げた。得子は清盛を「もろ刃の刃のごとき男」と評し、鳥羽院は「われらにもっとも足りぬものを持っている」と評した。
 清盛が帰宅すると、時子は重盛らに請われて琵琶を弾いていた。そして重盛や基盛は時子が大事な母であり、傷つけることは父でも許さないと訴える。清盛はほほえんで時子の琵琶に耳をかたむけた」
       ……一件落着!めでたし。

☆その他の感想、突っ込み
・源氏については、端折り過ぎ。義朝(玉木宏)、常盤(武井咲)を側室に、手が早っ!
 為義(小日向文世)、唐突にひねくれ過ぎ!
 ドラマ初回から、ライバルの義朝、軽く扱われすぎ!

・時忠、ひど過ぎ。
 時忠「お前(清三郎)の父は先の奥方様にそれは惚れておられたゆえな。お前よりも重盛と基盛がかわいいのだ。おまえはいずれ邪魔になって寺へでもやられよう。それゆえお前は文も武もわきまえずともよいのじゃ」
 もしかしたら、清三郎を拗ねさせて、清盛の時子への扱いを改めさせようと計ったのかもしれないが、甥っ子にその言葉はなかろう。
 打算的だが、物事を冷静に分析、行動するキャラらしいが、かなり不可解な今回の行動。あとで、清盛に鋭く忠告したことで、脚本的につじつまを合わせたように感じる。

【ストーリー】(番組サイトより)
 忠盛(中井貴一)がこの世を去り、清盛(松山ケンイチ)が正式に平氏の棟梁となった。清盛は忠盛の館に移り住む。その館に一族郎党が集まり、清盛は「亡き父上の固き志を継ぎ、武士の世を目指す!」と宣言する。
 棟梁の仕事は多岐にわたっていた。清盛は父の偉大さを改めて痛感するのだった。一方、棟梁の妻となった時子(深田恭子)は宴でふるまう膳の数を誤り、琵琶の演奏を頼まれても断るなど、清盛の機嫌を損ねることばかりを起こす。

 そんな折、藤原家成(佐藤二朗)が訪ね、自身の別邸で催す歌会で清盛に一首詠んでほしいと依頼する。歌が苦手な清盛は信西(阿部サダヲ)を頼るが、あっけなく断られる。そのうえ、歌会でのふるまいが平氏一門の未来を左右すると言われ、清盛は重責を感じる。
 そんな清盛の前に現れた源義朝(玉木宏)は、拍子抜けするほどさわやかに棟梁就任を祝い、側室となった常盤(武井咲)を紹介。驚く清盛に常盤が自分の心の支えだと言う。一方、義朝の正室・由良(田中麗奈)はさびしげに一人で過ごす日々が続き、鬼武者(のちの頼朝)はそんな母を見て心を痛めていた。
 そのころ、源氏の棟梁・為義(小日向文世)は、義朝の異母弟・義賢(阪本浩之)に源氏に代々伝わる太刀・友切を授け、東国に行き、義朝に対抗できる力をつけろと命じる。

 朝廷にも暗雲がひろがっていた。もともと丈夫ではない近衛帝の体が思わしくなく、しかもお世継ぎもいなかった。帝の健康を気遣う崇徳上皇(井浦新)にむかい雅仁親王(松田翔太)は、帝が亡くなれば崇徳の子・重仁が帝となり、崇徳が政治に復帰できるのでは、とその心を見透かしたように言う。

 相変わらず歌の宿題に悩む清盛は、三男・清三郎が書の稽古を怠けていると知り、時子のしつけを叱りつけた。そして先妻の明子なら棟梁の妻のつとめをもっとうまく果たせたはずと言い、時子を深く傷つけてしまう。
 そんな清盛に義弟・時忠(森田剛)は、時子が琵琶を弾かなくなったのは、結婚する前に清盛が「耳に残る明子の琵琶の音色をかき消されたくない」と言ったことを時子が覚えているからだと告げた。その言葉は清盛の心に深くつきささる。

 歌会の当日、家成の別邸には鳥羽院(三上博史)、得子(松雪泰子)、崇徳院、雅仁親王、摂関家や、信西らが集まった。それぞれの思いが渦巻く政治の場の様相をおびて歌会は進み、やがて清盛の歌が詠まれる番になった。
 その歌を見て、進行役の藤原成親(家成の子:吉沢悠)が詠むのをためらうと、清盛自ら大声で詠みあげた。「重盛に 基盛それに 清三郎 清四郎みな われらの子なり」あきれる人たちに向かい清盛は、自分が家族や家人たちをなにより大事に思っていること、歌会よりケンカした妻に一刻も早く謝りたいという思いを述べた。堂々とした清盛の態度は歌会の客たちにさまざまな波紋を広げた。得子は清盛を「もろ刃の刃のごとき男」と評し、鳥羽院は「われらにもっとも足りぬものを持っている」と評した。
 清盛が帰宅すると、時子は重盛らに請われて琵琶を弾いていた。そして重盛や基盛は時子が大事な母であり、傷つけることは父でも許さないと訴える。清盛はほほえんで時子の琵琶に耳をかたむけた。

 一方、義朝は源氏の長の証である名刀・友切が弟に与えられたと知り、為義に詰め寄る。すると為義は、父の誇りを踏みにじる義朝に源氏を背負わせることはできないと断言し、義朝とたもとを分かつことになる。源氏も平氏も、世の大きな流れに、いやおうなく身内を巻き込んでいくことになる。
コメント (2)
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