英の放電日記

将棋、スポーツ、テレビ等、日々感じること。発信というより放電に近い戯言。

『平清盛』 第13話「祇園闘乱事件」

2012-04-03 20:53:29 | ドラマ・映画
今回のテーマは「決断」
 今回、清盛(松山ケンイチ)、鳥羽院(三上博史)、家盛(大東駿介)それぞれ決断を下している。清盛は主人公であり、平氏の存亡に係わる決断であったはずだが、鳥羽院のほうに目が行ってしまうのは、気のせいだろうか……

★鳥羽院の決断
 清盛らが引き起こした比叡山延暦寺(祇園社)との騒動の対処に、朝廷(鳥羽院、藤原摂関家、藤原家成(佐藤二朗)、信西(阿部サダヲ))で詮議が行われる。
 「重罪(流刑)に処するべし」が、藤原頼長(山本耕史)と忠実(國村隼)。両者とも平家を疎ましく思い排除する絶好の機会と考えた。
 ただ、それぞれのアピールが対照的で面白い。風紀委員長・頼長は刑事ドラマのごとく清盛の所業を調べ、また、神輿に矢を射った際の目撃証言を提示する。忠実は祟りとされている実父の急死を例にあげ、神輿を射た清盛を処さないと祟られると脅す。
 一方、「平氏を厳罰に処せば、延暦寺の横暴をまかり通らせることになる」と平氏を擁護するのが、藤原忠通(堀部圭亮)と家成。平氏の武力・財力なしでは政が成せないという事情からであろう。ただ、同じ藤原摂関家の忠通が、平氏を疎む立場にいながら頼長、忠実と意を異にしたのは意外だったが、この頃既に、3人の間に亀裂が生じていたのかもしれない。
 頼長と信西は、白河院、鳥羽院の悪政を糾弾する考えは一致していたが、藤原摂関政治の旧体制を望む頼長と、新しき政を確立(そのためには平氏や清盛が必要)したい信西と対立していた。
 出世が望めない下級?貴族であった信西が、出家したからといってもいきなり朝廷の中枢で意見を求められるというのには、違和感を感じたが、頼長が信西の見識を買って抜擢したのではないだろうか?
 馬鹿ばかりの朝廷に、学があり語り合える同士と思っていた頼長は裏切られた気持ちだろう
 こういった藤原摂関家の亀裂や頼長と信西の対立は面白いのだが、親切に描かれないので、視聴者が補完しなければならない。私としては、白河法皇の血の因縁や璋子(檀れい)と得子(松雪泰子)と鳥羽院のドロドロ劇場ばかりに力を入れる今回の方針は、残念至極だ。

 で、肝心の鳥羽院はどうなのか?
 表向きの焦点は、「平氏を取るか延暦寺を取るか」であるが、この判断に関しては、平氏を取ると決めていたことが得子によって明らかになる。
 恥ずかしながら私は、平氏を排除したいと鳥羽院は考えているものだと思っていた。確かに、白河院が重用した平氏をそのまま重用していたのだから、両者の関係はそれほど悪くなかったと考えられる。しかし、平氏がいくら功績を立てても貴族扱いしないのだから、平氏を切り捨てることにためらいはないのかと思った。悪政を行う鳥羽院には平氏抜きでは政ができない状況を把握していないと考えた。
 この辺りの事情や心情もよく分からない(描かれていない)のが大いに不満

 鳥羽院は何故決断をためらっていたのか?
 それは白河院の呪縛
 今回の騒動は、自分が最も忌み嫌っていた白河院の血を引く清盛が招いたもの。それに自分にもその血が流れている。
 平氏(清盛)の罪を軽くしてしまうことは、自分で決断したつもりでも、実は白河院に操れれて軽減したのではないか?と恐れおののいていたのだ

 なるほどという話であり、おもしろいのだが、また血の呪縛かと思ってしまう。面白いのだが、ここに力を注ぎ、他がおろそかにするので、時代背景や社会情勢や他の者たちの思惑が語られず、理解が難しいのだ。

 悩める鳥羽院は清盛と対峙して己の気持ちをはっきりさせようとする。ここで、一旦、清盛に視点を移します。

★清盛の決断
 寺院の横暴振りに、清盛は神輿に矢を射る。
 私自身、僧たちの横暴ぶりにイラつきを感じていた。神仏に仕え高潔であるべき僧侶が、己が信仰する神仏を立てにとっていいのだろうか?
 そんなわけで、矢を放った直後の清盛を「かっこいい」と思ってしまった。
 さらに、「あんなもの、ただの箱じゃ、神など宿っておらぬ」と言い放つ。そうそう、確かにそうだ。うんうん。あの時代、信仰心は強いと思うが、僧たちのあんな横暴な振る舞いを見て、「ただの箱」と思うものは多いのではないだろうか? 是非、その辺りの見解を、頼長や信西に伺ってみたいものだ。。
 しかし、平氏の存亡に係わる事態に発展するとは思っていなかったようで、あとは黙りこくってしまう。
 なんだ、考えなしかよぉ。「神仏を盾に取るあやつらの方が不届き者である」ぐらいの弁ぐらい立てて欲しいものだ。
 考えなしの清盛だったが、忠盛(中井貴一)はさすがである。盛国(上川隆也)らを検非違使に差し出し、更に清盛を連れて蟄居する。
 そこで、久々にふたりは対峙し、忠盛は、清盛の実母の死(清盛の不幸な生い立ち)は陰陽師の迷い言葉によるものだったと語り、「わしはこの時が来るのを待っておった。お前があてにもならぬ迷信のごときものに立ち向かう時を」と話す。白河院の因縁を絶ち切るように思ったのかもしれない。
 平氏の存亡にかかわる事態だというのに、けっこう甘い父である。皆の前では忠盛は清盛を殴ったのだが、そこらあたりの慈愛を宗子(和久井映見)に見透かされていた。
 ただ、「お前は、なくてはならぬ男だ。平氏にもこれから先の世にも」というのは、どうか?平氏はともかく、これから先の世というのは、持ち上げ過ぎだろう。信西も鳥羽院も清盛の事を同じようなことを言っていた。
 これといって活躍していない主人公を、「兼続は大した奴じゃ」と言葉だけで持ち上げ続けた『天地人』を思い出してしまった。


 そして、鳥羽院が自ら出向いてきて清盛に問う。
「そちが神輿を射たは、わざとか?手違いか?」と。返答次第では、平氏取り潰しに繋がる。
 清盛はさいころを握りしめ、ゆっくり顔を上げて
「わざとにござります」
 さいころは清盛が博打(ばくち)を打ったと解釈すべきなのだろう。

 この返答に、(神をも恐れぬのなら)射てみよ!神輿を射抜いた時のごとく、朕を射てみよ!」
 と両手を大きく広げる。
 清盛は無言でゆっくり立ち上がり、弓を引く所作を取り、そして、気を込めて矢を放つ。

 命を懸けた問答の場面だが、それとは関係なく粛々と鳴く蜩。どろどろした人間模様とは対極の涼しげな自然の営み。
 これが、清盛が立ち上がり弓を引く辺りから、蜩の声が消え、静寂がおとずれる。今回最大の見せ場だった……はずだった。

 しかし、しかし、このあと、鳥羽院が射たれたと思われる部位を見て、
「あっふわっはっはっはは~、血が、噴き出ておる。我が身に住まう白河院の血が、一滴残らず流れ出ておる。っはっはっはっはっは……」
と、泣き笑い

 ……清盛の印象が、あとかたもなく飛ばされてしまった………

 それはともかく、その後の鳥羽院の台詞が不自然。
「平清盛! そちこそが、神輿を射抜いた矢そのもの! 白河院、朕が…乱しに乱した世に報いられた一本の矢じゃ!」
 なんで、そこまで持ち上げる?

 それから、振りとは言え、時の権力者の鳥羽院に矢を射たというのだから、それなりの覚悟や意図があったはずと思われるが、いまいち分からない。
 たまたま鳥羽院が変な奴だったので、事無きを得たが、普通なら無事では済まないはず。

 結局、このやり取りで、平氏の罪を軽減する決断を鳥羽院は下した。

★家盛の決断
 忠盛が亡き舞子(吹石一恵)への愛ゆえ、清盛を庇うと宗子は感じており、それを察した家盛が母・宗子のために、自分が平氏を継ぐと決心する。
 まあ、あの兄じゃあ、仕方ないかも。


☆根はいい奴だった忠正
 出産間近の時子(深田恭子)を訪ねた忠正(豊原功補)。きついことを言っってしまった詫びに来たことだけでも、「おっ」という感じだが、清盛の子どもらの面倒を見た上、異母兄弟が生まれて時子が自分らを蔑(ないがし)ろにするのではないかという不安に、
「さようなことは断じてない。誰も好き好んで、血のつながりのあるなしで争わぬ。つまらぬことは考えず、生まれてくる子を、うんと可愛がってやれ
と諭す。
 つまらぬことばかり考えていたキミが、この台詞を吐くとは!

 まあ、つまらぬこと(血縁がどうのこうの)を考える輩は、このドラマでは脚本家を始め、たくさんいらっしゃるようですが…… 

☆その他、どうでもよい突っ込み
 祇園社で、悶着を起こしたふたりの僧、金覚、銀覚って、西遊記か……

【ストーリー】(公式サイトより)
 1147年、一門の繁栄祈願のため祇園社(現・八坂神社)を訪れていた清盛(松山ケンイチ)たちは、僧兵に武装したままの参詣をとがめられ、大乱闘を起こしてしまう。これが平氏一門の存続を揺るがす大事件・祇園社の争いの始まりだった。
 日ごろ平氏をうとましく思っていた比叡山延暦寺の僧・明雲(腹筋善之介)が、清盛一党の厳罰を鳥羽院(三上博史)に直訴。忠盛(中井貴一)は盛国(上川隆也)らを検非違使(今の警察のようなもの)に差し出すが、明雲はかえって反発、清盛と忠盛を流罪にせよと僧兵たちが神輿(しんよ)を担いで強訴を始める。僧兵を阻んだのは源為義(小日向文世)、源義朝(玉木宏)ら源氏の武士たち。神聖な神輿を避けて矢を放ち威嚇する源氏軍勢だが、一本の矢が神輿に突き刺さる。この矢を放ったのは清盛だった。
 この時代、神が宿るという神輿を傷つけることは許されることではなかったが、清盛はわざと神輿を狙って射たと言い放つ。事の重大さを悟った忠盛は清盛と共に自ら検非違使庁に蟄居(ちっきょ)する。
 清盛たちの処分については、朝廷内でも真っ二つに意見が分かれる。流罪にして平氏の勢力を奪おうとする内大臣・頼長(山本耕史)に、信西(阿部サダヲ)は真っ向から反論。信西を信頼していた頼長は、思わぬ裏切りに怒りをあらわにする。出産間近の時子(深田恭子)を案じた叔父の忠正(豊原功補)は清盛の館を訪ね、不安がる清盛の長男・清太(丸山歩夢)を、やさしくなぐさめる。
 検非違使庁の一室で忠盛と清盛は二人きりで語り合う。忠盛は白河院という強大な相手に一人で立ち向かった清盛の母・舞子の思い出を語り、清盛が迷信のごときものに立ち向かう時を待っていたこと、平氏の未来を清盛に託していることを告げる。
 鳥羽院御所では清盛たちの詮議(せんぎ)が行われていた。そこに事件の証人として一人の僧兵が現れる。鬼若のちの弁慶(青木崇高)だった。鬼若は、清盛がわざと神輿を射たと証言、頼長は清盛を流罪とすることを再度主張。一方、信西は清盛を「世に欠かせぬ男」と反論。詮議の後、迷う鳥羽院は得子(松雪泰子)に本音を語る。まだ自分は白河法皇の亡霊に悩まされ続けている、と。こうした寺社や武士の争いは元をただせば、白河法皇の悪政のツケだったのだ。
 ついに鳥羽院は検非違使庁へ向かい清盛を直接問いただす。すると、清盛は確信を持って神輿を射たことを堂々と告げる。鳥羽院は手を開き自分も射てみよと清盛に言い、清盛は鳥羽院の胸を射るしぐさをしてみせる。胸をおさえた鳥羽院は、ふっきれたように清盛こそが乱れた世に報いられた一本の矢だと叫ぶ。
 裁断は下され、忠盛と清盛は流罪をまぬがれた。喜ぶ平氏一門のなか、宗子(和久井映見)の顔は晴れない。忠盛が清盛を守るのは亡き舞子のためなのだと改めて思うからである。そんな母の本音に家盛(大東駿介)は気づく。
 清盛の館では清三郎(のちの宗盛)が生まれ、騒動がおさまった喜びを清盛と時子がかみしめていた。そこへ家盛が訪ねてきて、今後は清盛ではなく自分が平氏を率いると宣言。仲むつまじい兄弟に亀裂が走る瞬間だった――。
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