カンボジア経済

カンボジアの経済について、お堅い数字の話から、グルメ情報といったやわらかい話まで、ビジネス関係の方にお役に立つブログです

2022年の最低賃金 194ドルで決着

2021年10月05日 | 経済
 2022年1月1日から適用されるカンボジアの最低賃金は、194ドル/月で決着しました。現在は192ドルで、1.0%の上昇となります。カンボジアの最低賃金の上昇は、2012年61ドルから2013年80ドル(31.1%増)、2014年100ドル(25.0%増)、2015年128ドル(28.0%増)と急激なものがありましたが、労働諮問委員会で客観的基準を使用し始めた2016年は140ドル(9.4%増)、2017年153ドル(9.3%増)、2018年170ドル(11・1%増)、2019年182ドル(7.1%増)、2020年190ドル(4.4%増)、2021年192ドル(1.1%増)と上昇幅が落ち着いてきています。2022年の最低賃金は、新型コロナの影響で経済に不透明感が広がっている中、上昇幅が抑え込まれたものと見られます。
 最低賃金は、政府、雇用者、労働組合の3者の代表28名が参加する労働諮問委員会で討議されてきました。9月28日の会議において192ドル(今年と同額)で合意し、労働大臣に答申されました。この結果を受けて、フン・セン首相は、毎度おなじみの鶴の一声で2ドル増額を加えることを決定し、最終的に194ドルで決着しました。使用者側からの意見もあって、フン・セン首相による追加額は2019年までの慣例だった5ドルから、2020年は3ドルに、2021年からは2ドルに縮減されています。
 内需振興のためにも、最低賃金の引き上げは必要不可欠ですが、急激な上昇は外国投資家の懸念となっていました。カンボジア政府では、最低賃金の検討に当って、労働生産性上昇率や物価上昇率等の客観的基準を2016年の最低賃金から使用し始めており、雇用者側も労働者側も納得感が高い決定方式が次第に定着しつつあります。昨年と今年は、新型コロナの影響が大きく、工場の閉鎖や労働者の失業・一時帰休が大きな問題となっており、こうした情勢も反映したものと見られます。他方、2019年8月から2021年8月までの2年間の消費者物価上昇率は5.5%であるのに対し、最低賃金は2.1%しか上昇していません。カンボジアの実質賃金は目減りしている状態であり、失われた20年で賃金上昇が抑え込まれてデフレを招いた日本と同じような状況です。新型コロナ終息後に、カンボジア経済回復のための国内需要を喚起する観点からは、すくなくとも物価上昇に見合う実質賃金が確保できるような最低賃金の見直しが必要になるものと見られます。



↓にほんブログ村のランキングに参加しています。よろしければクリックしてください↓
にほんブログ村 海外生活ブログ カンボジア情報へ
にほんブログ村

コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« メルマガ「週刊カンボジア経... | トップ | 世界銀行 東アジア・大洋州... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

経済」カテゴリの最新記事