書名 「パリの『敵性』日本人たち 脱出か抑留か 1940-1946
著者 藤森晶子 出版社 岩波書店 出版年 2023
ドイツがパリを占領して時代はともかく、連合軍がパリに進出、ドイツ軍が撤退したあと、在仏の日本人たちは「敵性」と見なされ、抑留されたり、逮捕されたりした。この本はその時脱出か抑留か迫られた日本人たちの姿をフランスに残る一次史料をつかって追跡したものである。いわゆる学術書なのか、ルポなのか、そのあたりのスタンスをはっきり最初に打ち出した方がよかったように思える。妙にルポのようなタッチで書き起こされるのが、鼻についてしまった。
史料だけで語られることもできたように思える。
戦争とサーカスというテーマで何か書けないかということがあって、読んだのだが、いくつか発見はあった。このテーマで追いかけていくとやはり沢田ファミリーのことに立ち返ってしまう。ソ連のドイツ侵攻あたりから在欧日本人に対して、ベルリンに集まり゛そこからソ連を経由して日本に帰国させるというのが、日本の当時の作戦だったようで、まさに沢田たちもその施策のもとに、満州まで行くわけである。そのあたりの動きがこの本を読んでよくわかった。参考になる史料についても教示してもらった。一番驚いたのはヒトラーかぶれの当時の在ドイツ日本大使の大島が、アメリカに渡り、そこのかつての保養所でかなりいい待遇で抑留され、そのあと帰国したという事実。他の日本人たちがかなり厳しい条件のもとに帰ったのに、海外の日本人を守るべき大使が一番いい思いをしていたとは。
パリに残留して芸術家のなかに早川雪州も入っていたというのもちょっと驚きであった。いろいろと発見はあった本であった。
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