【6月6日(水)の記事からのつづき】
5 所有格の關係代名詞 WHOSE の文構造
名詞(~)の説明を續ける際に、「~の…」といつたかたちになることがあります。例へば、下の漫畫では my only employee と言つておいて、「my only employeeの仕事が…」と説明をを加へてゐます。下線部を普通の代名詞で置き換へると his / her でせうが、關係代名詞だと whose となります。直後に名詞が續いてひとつのまとまつた意味を持ち、關係詞節(下線部)のなかで主語になつたり、目的語になつたりします。whose は人にも事物にも使はれます。
關係詞節のなかで主語のはたらきをしてゐるのが下の漫畫の吹出しです。
5.1 …you’re my only employee / whose job is hanging by a thread!
次は動詞の目的語になるケースです。
5.2 Is that the boy whose sister I met last week? (私が先週そのお姉さんに會つたのはあの男の子ですか)
前置詞の目的語になることもあります。(work for ~「~を得ようと努力する」)
5.3 The people for whose benefit he worked never appreciated his effort. (彼の仕事の恩惠を受けた人々は彼の勞に全く感謝しなかつた)
[用例研究] 關係代名詞 WHOSE
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 I’ll bet you don’t go to anyone else’s house at night and make them work!
・I’ll bet:(口語)きつと~だ
「社長はきつと、(ぼく以外の)他の誰の家にも夜行つて仕事させるなんてことしませんよね」
2 You’re right, but then you’re my only employee
・but then (again): しかしまた一方では / だが同時に / さうは言つても
・employee: アクセント注意
「その通りだが、さうは言つても、お前はワシの唯ひとりの從業員なんだ」
2 Only employee?
「唯ひとりの從業員つて?」
3 whose job is hanging by a thread!
・hang by a thread:非常に危ない状態にある (thread [Ѳred])
「クビになりかけてる唯一の從業員なのさ」(←その仕事が非常に危ない状態にある唯一の從業員…)
【ユーモア】
・長く勤める中間管理職の Dagwood にしてみれば「無理が言へる唯一の…」「信頼できる唯一の…」と言つて欲しかつたところでせうが、思ひもかけぬ展開で笑はせます。
6 所有格の關係代名詞 OF WHICH の文構造
先行詞が事物の場合 of which が使はれることがありますが、改まつた感じの言ひ方になります。先行詞のあとに<名詞+of which>がつづき、<名詞+of which>が關係詞節(下線部)のなかで主語や目的語になります。
[例文]
6.1 They created a strategy the defects of which must have been obvious from the beginning. (=They created a strategy whose defects must have been obvious from the beginning.)
(彼らはその缺點が最初から明白だつたはずの戰略を立てた)
[用例研究] 關係代名詞 OF WHICH (2012年5月23日付拙稿から再録)
(BLONDIE By Dean Young & Stan Drake)
1 Boss, I showed your proposal to Leadbottom.
「社長の企畫(案)を Leadbottom に見せましたよ」
1 Good! What did he say?
「よろしい! あいつはどう言つたんだ?」
2 He said / you were a swindler / the likes of which he’s never seen!
・【讀み方】スラッシュで文の切れめを示してゐます。まづ Leadbottom が言つた、と……何と言つたか?「社長はぺてん師だ」と……そのあとの關係詞節が直前の名詞 swindler の説明をするわけです。 which は a swindler の言ひ換へと解しますから、the likes of which は「それの同類」といつた意味になります。次にhe と續きますから、the likes of which は節の主語ではない…… seen の目的語が blank になつてゐますから the likes of which は seen の目的語だとわかります。そこで「彼がそれの同類には會つたことがない、そのやうな(/そのくらゐひどい)ぺてん師だ」と言つてゐることになります。(※この漫畫では、先行詞 a swindler を概念として觀てゐるやうに思はれます)
「社長は會つた(/見た)こともないやうなぺてん師だつて(Leadbottom は)言つてました」
3 It’s just like that old buzzard to try to butter me up to get a better deal.
・(old) buzzard: 下劣な(contemptible)/ ひねくれた(cantankerous)爺
・butter up: おべつかを言ふ / へつらふ
「有利な取り引きをするためにワシにおべつかを言はうとするなんて、性惡爺みたいなやつだな」
【ユーモア】
・惡罵がへつらひに聞こえるところに Dithers 社長の凄味が感じられます。
【この項 6月20日(水)につづく】