被災者でないのに

  3月27日の『秋田魁新報』に掲載された記事から。『秋田魁新報』はローカル紙で、記事を他紙と共有することが多いので、他の新聞にも同じ記事が載っていると思います。(『秋田魁新報』Web版にはこの記事がアップされていないようです。よって、またも無断引用。『秋田魁新報』さん、すみません。)

  まず、「被災者でないのに無力感」と題された記事から。大手企業で産業医を務める浜口伝博医師との一問一答(抜粋)。

  Q:被災者でもないのに、落ち込んだり無力感を感じるのはなぜ。

  A:あれだけの映像を見たら、衝撃を感じるのは当たり前。被災地に知人がいなくても、日本人であれば身近に思い、つらく感じる。


  Q:涙が出るのは変では。

  A:涙を流して悲しみをそのまま表現することはすごくいいこと。できれば一人でなく誰かと一緒だとなおいい。泣いた後から、意欲が徐々に出てくる。


  Q:仕事が通常のように回らず、職場で言い争いなどが増えたときは。

  A:それも正常な反応。ストレス状態なので、本来持っている感情のコントロール力を失っている。けんかになったとしても、感情は出した方がいい。周囲の人が「いつものあなたと違います」と上司に言ってあげてもいい。


  Q:ストレス対処法は。

  A:一番は寝ること。次は食べること。それから会話がとても大切。自分が泣いたことや、買い占めしてしまったことも、誰かと話せたらいい。インターネット上では、ささいな言葉を冷たい意味に取りがちなので、繊細な人はコミュニケーションをネットやメールに頼らない方がいいかもしれない。


  次に、災害救援学者の野田正彰氏の評論「弱者の視点、今度こそ」から、要点だけ。極限状態に置かれ、今を生きることだけで精一杯の被災者の人々に対して、「頑張って下さい!」と言ったり、「頑張ろう、日本!」とかいうスローガンが叫ばれていることに、私個人も「それはあまりにむごい言葉ではないか」と思っていました。

  ・海外からの支援の声は悲しみを抱える被災者一人一人に向けられたものなのに、それを日本国や日本の経済に対するものであるかのように受け止め、「国難」とか「日本として」という言葉を多用する社会やマスコミに違和感を感じている。

  ・「日本人は大災害を前にしても整然としている」との海外の報道に飛び付いているが、これも実証なしの自画自賛だ。

  ・近代以来の日本は、戦争や災害など巨大な不幸を何度も経験しながら、悲しみを受け止める社会をつくらず、「忘れなさい。前向きに生きなさい。頑張ろう」と経済復興に結び付けることばかりを繰り返してきた。死者と悲しみに寄り添い、社会の信頼性を高めていこうという思想が生まれてこなかった。

  ・悲しみや喪失の後、人間は「多動化」し、行動が活発になる。(関東大震災では)その中で朝鮮人虐殺などが行なわれた。ボランティアの動きは当時もあったが、上野の山では自殺者が相次いだ。阪神淡路大震災でも「多動化」の中で神戸空港建設などが行なわれた。

  ・不便な避難所や仮設住宅でも、被災地に居続けようとする人がいるのはなぜなのか考えなくてはならない。死者とともに居たい被災者が、ゆっくりと悲しみを受け止める、その時間を温めてあげるのが、本当の支援のはずだ。「消えた家族と一緒に居たい。不幸な人とともに支え合いたい」という被災者の気持ちの一方で、早くも疎開を呼び掛ける声が高まっている。疎開する場合でも、たまには現地に戻れるような場所を選び、帰るプランも初めから決めておくことが重要だ。もともとのコミュニティーを壊さないよう地域単位で疎開や避難をする必要がある。

  ・日本の社会は弱者の視点を持たず、災害に当たっても「上からの目線」を繰り返してきた。「安心・安全」という言葉が為政者の側から使われるが、「安心」は個人の心の問題であり、権力者が言ってはならない。権力者ができるのは「安全な社会」をつくることだけだ。「安心」という言葉が上から使われ、平気で容認される社会は病んでいる。

  ・不幸を忘れて前に進むのではなく、悲しみを大事にする社会でありたい。コミュニティーを失い、悲しみをバラバラにされたとき、人間は信頼を失う。個々の悲しみを聴き取り、個々の信頼を取り戻せる社会を、私たちはつくらなければならない。 
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15日後

  もうあの地震から2週間も経ったんですね。長かったのか、短かったのか…。

  姉がアメリカから帰ってきました。ぎりぎりまでメールでやり取りして、向こうの家族や友人とよく相談するよう勧めたのですが、自分の目で日本の今の様子を見ないと気がすまない、帰る、と姉は書いてきました。

  ユナイテッド航空の飛行機で来たのですが、機内の搭乗率は3分の2くらいと少なかったものの、不思議なことに日本人乗客は少なく、アメリカ人乗客がほとんどだったそうです。

  姉は品川のホテルに一泊して、翌日に実家に帰省してきました。おりしも福島第一原発の件でみなが不安な気持ちでいる最中です。ホテルの宿泊客もいつもより明らかに少なかったそうです。でも、姉は日本に帰ってきて逆にホッとした、と言っていました。ホテルのドアマンやボーイさんたちが、マスクもつけずにいつもどおり仕事をしているのを見て、ぐっときた、とも。

  私と母は秋田空港まで姉を迎えに行きました。到着口から乗客たちが出てくると、その中に日本赤十字の作業服を着た人たちが何人かいました。到着口に迎えに来た人々の中には、「バス 盛岡行き」と書かれた大きな紙を持った人がいました。

  実家に向かう途中で、ある道の駅(国道のSAみたいなもの)に寄りました。大型車輌専用の駐車場に、何台もの赤い消防車、迷彩色の大型車がずらりと並んでいました。北陸の消防署と陸上自衛隊の車輌でした。車の前面に「緊急」、「災害派遣」というプレートが貼られていました。

  車輌の周辺では、オレンジ色の制服を着た消防隊員、迷彩服とヘルメット姿の自衛隊員の人たちが一休みしていました。あるおじさんの消防隊員は温かいメロンパンに照れくさそうにかじりつき、ある若い自衛隊員は携帯電話に見入っています。彼らはここで小休止して、秋田から盛岡、そして被災地に入るのでしょう。彼らの姿を見て、なんともいえない気持ちになりました。また、今は震災の只中なのだ、と実感しました。

  秋田のほうは、燃料事情はだいぶ好転してきていて、特にここ一両日の間にいきなり劇的に変わりました。国道を大手燃料会社の大きなタンクローリー車が何台も走り、営業していないガソリンスタンドを見つけるほうが今では難しくなっています。給油を待つ車列ももうありません。

  スーパーは、どうやら店ごとに調達できる商品の得意分野と不得意分野があるらしく、A店では卵はないが納豆はある、B店では卵はあるが納豆はない、といった感じです。ですから、たとえある店で必要な物が買えなくても、別の店に行けば買えることがほとんどです。

  依然として品薄なのは、いちばんがパンとカップラーメン、次が乳製品(ヨーグルトや乳飲料)です。その他の加工食品はだいぶ入ってきています。

  『週刊文春』と『週刊新潮』を買って読みました。『週刊文春』3月31日号に掲載されている、日本の原子力事業をめぐる記事は読み応えがありました。早い話が、日本の原子力事業は、電力会社、企業、官庁(例の「原子力安全・保安院」も含む)、日本の原子物理学界のお金儲けと既得権益の保護のために行なわれているのだ、ということです。

  辰巳琢郎さんがブログで書いていたように、『週刊文春』には、テレビでは映されない現実を写した写真も掲載されていました。

  それを見たら、涙が出てきて止まらなかった。

  そこに写っていたのは、東北の漁港のどこにでもいるおばちゃん。割ぽう着姿で、いつもどおりに過ごしていた。地震が起こらなければ、いつもどおりにその日が終わるはずだった。寝て起きたら、またいつもどおりの一日が始まるはずだった。

  姉によると、アメリカではもっと残酷な映像や画像が報道されたそうで、それを見たら、やはり泣いてしまったそうです。

  なぜ姉がこんなときに帰国を強行したのか、なんとなく分かりました。
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あさましい人々

  今日はお昼過ぎに母と買い物に行きました。スーパーの品揃えは日ごとに回復してきており、ない物を探すほうが難しくなっています。

  ない物は、加工食品(レトルト類)、カップラーメン、乳製品、サニタリー用品などです。卵は売り切れていましたが、入荷は毎日しているそうです。牛乳、ヨーグルト、豆腐、納豆などは一世帯1個または1パックまで。

  一方、燃料不足は続いています。燃料会社の店員さんによると、灯油は供給量が徐々によくなってきているそうです。でも、ガソリンはまだ圧倒的に足りないとのこと。公共交通機関の発達している都会と違い、田舎では一家全員がそれぞれ車を持っているのが普通です。もちろんぜいたくなどではなく、通勤や外出に必要な生活必需品だからです。

  ガソリンスタンドは、毎日持ち回り(?)で1店舗ぐらいが営業しているようです。品切の時点で閉店ですが、営業しているガソリンスタンドの前には100メートル以上の長い車列。販売量の制限もあり、灯油は1人1缶まで、ガソリンは1車輌3千円分まででした。

  そんな状況の中、灯油窃盗、ガソリン窃盗事件が発生しています。田舎では防犯意識が薄いのに乗じて、民家の物置から灯油を容器ごと盗む、民家の外にある灯油タンクから灯油を抜き取る、駐車していた車からガソリンを抜き取る、そんなあさましい、恥知らずな犯罪が起こっています。

  こういうことをする人々は、節約して使うとか、長い時間を待っても順番に並んで買うとか、みんながやっている努力や我慢をしない人々なのでしょう。「なければ盗む」なんて、まさしく人間のクズのやることです(怒)。

  これらの窃盗事件は、おそらくプロの泥棒集団ではなく、ふだんは普通の顔をして暮らしている一般の人々が起こしているんだろうと思います。でなければ、同じ窃盗事件が一気にもっと多く発生するはずですから。

  こういう人々は、たぶん普段からいわゆる「手癖の悪い」人々なのだろうとは思います。でも、何より怖いのは、こうした行為に、普段は窃盗癖のない人々が手を染めてしまうことです。こうして地域の治安が悪くなっていくのかと、まったくやりきれない思いです。
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辰巳琢郎さんのブログ(2)

  引き続き、辰巳琢郎さんのオフィシャル・ブログ 道草日記 3月18日の記事より、以下無断転載(辰巳さん、再び申し訳ありません)。

(以下転載)


イマジン
テーマ:ブログ
この数日、僕の頭の中で静かに流れ続けている歌があります。ジョン・レノンの名曲『イマジン』。
1980年12月8日、ジョン・レノン暗殺。会ったことのない有名人が亡くなって、初めて(そして最後に)涙を流しました。大学の4回生でした。もちろん当時も色々なことを感じ、考えてはいましたが、50歳(知命の年)を越えた今、また新たな思いで、この歌を噛みしめています。

沢山の、本当に沢山のアクセス、気持ちのこもったコメント、ありがとうございました。驚いた!…それ以上に感激しました。かなり時間はかかりましたが、総てしっかり読ませて頂きました。

「何も出来ない」
「何をすればいいのかわからない」
「無力なのがもどかしい」
という感想が多かったのですが、そんなことはありません。皆さんのリンクや転載のおかげで、何万人、何十万人の方がこのブログを、そして皆さんのコメントを読んで下さっています。救援隊や撮影隊、政治家も含めて。それを見て、動ける人は動いています。声をあげることが、十分力になっているんです。

大切なのは、落ち着くことです。ちょっと衝撃的な内容だったかもしれませんが、現地は一つの死に集中して、感傷的になるような状況ではないはずです。恐らく、これから毎日、この春とは思えぬ寒さと、体力の衰えからくる病で、命を落としていく方たちが後を絶たないだろうことも容易に推測されます。一人の子供の死は、象徴的な事例ではあれ、被災地では恐らくそれらを日常の出来事として受け入れざるを得ない日々が続いているのではないでしょうか?

蛇足かもしれませんが、僕も関係している『国連WFP協会』の資料によると、「6秒に一人、世界のどこかで幼い子供が餓死している」そうです。初めてこれを聞いた時、僕は物も言えぬ程ショックでした。

間違えないで頂きたいのは、僕は決して「友人のいる避難所に救いの手を…」と訴える為だけに、先日のブログをアップしたのではないということ。きちんと伝えられなかったことを反省していますが、 声を大にして言いたかったことは、「テレビ画面の奥にあるものを推理し、被災地のこれからのことを想像してください。長い長い支援が必要でしょうから、この出来事をしっかり心に刻みつけて欲しい」ということなんです。

もう一つ、マスコミ批判をする為に書いたのでもありません。放送コードというより自主規制ですが、あまりにも残酷な映像は、流さない方がいい。テレビはそういうメディアだということをわかって欲しい。問題は受け手です。テレビに、過度の期待をしてしまう。テレビの報道は、総て正しいと疑わない。全くの受け身はよくありません。あくまでも一つ一つの素材として、それらを繋ぎ合わせて、自分の力で考えなければ…。

各局のクルーが、ニュースバリューの高いところに集まるのは(これは批判ですが)良くない。北茨城の映像は、確かに殆ど見受けません。県は違えど、いわき市と繋がった地域なのに…

日本の自衛隊は大変優秀です。海外からの応援部隊も活動しています。その他、自治体や医師も含めて数多くのプロが、不眠不休で被災地を救おうと頑張っています。被災地は広すぎて、まだまだ救援活動が行き届いていないことは、歯がゆくてなりませんが、だからと言って、素人が駆けつけるのは危険ですし、足手まといになりかねません。東北の人達は、本当に粘り強く、頑張り屋です。今はすぐにでも駆けつけたい気持ちを抑えて祈って下さい。そして、今できることを続けて下さい。たとえ小さな節電であっても積み重ねれば大きな力になります。そして力を蓄えて出番を待ちましょう。テレビが報道をやめても、被災地の復興への道のりは、気が遠くなるほど長いのですから。

最後にもう一つだけ。今回の、大変な出来事を、あまりにも多くの方々の死を、どうしたら無駄にしないかを考えることも、被災地を救うことと同じぐらい大切だということを書き留めておきたいと思います。


(転載終わり)
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辰巳琢郎さんのブログ(1)

  「テレビは遺体を決して映さないね。」 私と母が毎日のように交わしている会話。死者は毎日、数百人単位で増加していくのに。

  俳優、辰巳琢郎さんのオフィシャル・ブログ 「道草日記」 3月15日の記事より、以下無断転載(辰巳さん、申し訳ありません)。

(以下転載)


  地獄…
テーマ:ブログ
「地獄ですよ、辰巳さん…」

安否を心配していた、石巻の友人から衛星電話がかかって来ました。

4年間、東北地方の町おこしを応援する番組を担当していたおかげで、各地に友人がいます。そして彼らの多くが被災しました。心配だけど、何も出来ない自分がもどかしく、ただ過ぎて行く日々。ブログも暫く書けませんでした。でもそれじゃいけない。彼の言葉で目が覚めました。

「この状況を、たくさんの人に伝えて下さい。死体がゴロゴロなんですから。避難所にいるのに、食糧がなく、子供が餓死してるんですよ。お願いします、辰巳さん!」

長年この世界で生きていますから、テレビの裏も表も、良いところも悪いところも、大体わかります。仕事が延期になり、終日地震報道を見ていましたが、やはりそうでした。画面に映し出されるのは、恐怖シーンと感動シーンばかり。冷徹な目で現実を見つめても、それらは番組にならなかったり、放送コードに引っかかったりするんです。大体、撮影クルーが入れる、比較的安全な場所の映像しか、テレビで見ることは出来ないと思って間違いありません。でも、様々な材料から、現実を想像することは出来ます。想像力を精一杯働かせて、自分達に何が出来るか、何をすべきか、しっかり考えましょう。

間もなく、雑誌の地震特集号が発売されて、テレビよりずっと残酷な写真が、次々に公開されると思います。でも、本当はこれからなんです。まだまだ被害の全容もわからないんですから。長い長い復興への道程。長期に渡る支援を考えなければ…

これから、この国はどうなって行くのか、日本人の勇気と良識が試されているようです。

今回の震災で亡くなられた皆様に、心から哀悼の意を表します。


(転載終わり)
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少しでも正確な情報を手に入れる

  アメリカ在住の姉より、アメリカ国内で福島第一原子力発電所事故がどのように報道されているか、詳しいメールが来た。

  海外各国が日本在住の自国民を日本国外に退避させたり、東京より西に退避するよう勧告したのは、日本政府と東京電力が発表する情報が信頼性に欠けるため、とりあえず最悪の事態を想定して安全策をとったからである。

  国際原子力機関(IAEA、International Atomic Energy Agency)会長の天野之弥事務局長をはじめとするIAEAのスタッフたちは、IAEA自身で正確なデータを調査把握し、同時に正確な情報をありのままに開示するよう日本政府と東京電力に圧力をかけるために日本に赴いた。

  自衛隊、東京消防庁、警視庁による福島第一原子力発電所3号機(Fukushima Daiichi nuclear power plant Unit 3)への放水作業は一定の効果をあげており、3号機の状態は「深刻ではあるが、安定している("very serious, but stable")」。現在、3号機の冷却プールの気温は85℃前後だが、適温である25℃に下がるまでは数週間から数ヶ月かかり、適温になるまでの間に放射性物質を放出するかもしれない。

  IAEAは独自に日本国内の47の都市で18日から放射性物質量の調査を行なっている。調査の解析結果は順次発表していくが、まず東京ではヨウ素131(Iodine-131)やセシウム137(Caesium-137)といった、核分裂後に発生する放射性物質は検出されていない。引き続き結果を解析している(詳しくは IAEA の公式サイト で)。

  同じくIAEAによると、原発から周囲30キロメートル周辺の放射線レベルは、95~130ミリシーベル。この結果を見れば、30キロメートル以内の避難は適切である。福島県のその他の地域の放射線レベルは5ミリシーベルト以下。東京都の放射線レベルは健康にはまったく差し支えない。

  ちなみに、具合が悪くなる数値は500ミリシーベルト、病気になる数値は1000ミリシーベルト、亡くなる数値は5000ミリシーベルトで、広島の原爆の被害者は7000ミリシーベルト、東海村JCO臨界事故(1999年)で亡くなった2人の作業員は25000ミリシーベルト以上の放射能を浴びた。

  各号機の炉心融解(メルト・ダウン)の可能性について、専門家は「1週間も持ちこたえていることから、メルト・ダウンはしていない」という見方をしている。

  17日(アメリカ東部現地時間)、成田からアメリカに到着した旅客機の機体、乗客、貨物から放射性物質が検出されて、アメリカ国内は騒然となった。しかし、18日(同)に到着した、成田発の旅客機から放射性物質は検出されていない。

  総合すると、最初は悲観的な報道だったのが、徐々に肯定的な、希望の持てる報道に変化してきている、とのこと。

  もはや日本政府と東京電力の発表は信頼できない。国際社会の圧力と情報だけが頼り。
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1週間後

  まだ秋田の実家にいます。

  仙台市在住の恩師と昨夜、電話(固定電話)でようやく連絡が取れました。仙台市の一部は16日あたりから電気だけは復旧したそうです。ガスと水道はまだ復旧しておらず、給水所に行ってもらっているとのこと。

  ガスが止まっているのなら、食事はどうしているのかと聞いたら、電気を使わない旧式の石油ストーブを使って、暖房兼調理用コンロにしているそうです。ただ、灯油の残りが少ないので、いつまでもつか、と言ってました。

  それでも、恩師は「戦争のときのあのどん底に比べれば、こんなことはなんでもありませんよ。それに、今がどん底だとするなら、これからは上がっていくんですから」と言いました。戦争を経験している人々は、本当に強いです。

  東北電力が予定していた計画停電は、結局一度も実施されていません。これからも実施されない可能性が高いようです。理由は、節電の効果と水力発電所の発電量の増加で、電力供給量が需要を満たしているため、だそうです。

  この東北電力の度重なる「計画停電の予定発表→実施見送り」のルーティンには、個人的には違和感を覚えていますし、東京電力による計画停電の実施と福島第一原発をめぐる一連の経緯(東京電力・経済産業省・政府の対応とマスコミの報道)にも、なんだかある種の企図や目的のようなものを感じるのですが、まあうかつなことは書かないでおきます。

  でも、ひとつだけ。プロ野球のセ・リーグ「某球団代表」が、来週25日の開幕を強行しようとしたのは、それなりの根拠があったからではないでしょうか?もちろん、野球で国民を元気づけよう、などといった理由ではなく。

  私が感じていることを仙台の恩師に話したら、物理学者である恩師は「それは大いにありえますね」と言っていました。

  話は変わって、日本海側→太平洋側への輸送・交通ルートは確実に整備されつつあるようで、同時に、物流もスムーズさを少しずつ取り戻してきているようです。

  今朝は近所のスーパーに開店前から母と並びました。開店準備をしていた店員さんが、「今日になってだいぶ商品が入りましたよ。パンなんかもたくさんあります」と教えてくれました。

  開店と同時に入ると、いつもどおりの品揃えとまではさすがにいきませんでしたが、生鮮食品は豊富にあり、加工食品も少ないながらも陳列されていました。母と「あさましい『買いだめ』は絶対にやめようね。他の人に迷惑だし、後で自分が恥ずかしくなるから」と言いながら、必要最小限のものだけを買いました。

  開店前に、やはり早めに来て待っていた他のお客さんたちとおしゃべりしていました。あるおばあさんは、「最近、食が進まないの。なんだか申し訳なくてね。ストーブにあたっていても、自分だけあったかい思いができて、申し訳ないの」と言っていました。

  みな同じことを感じているんだ、と思いました。
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帰省しました

  火曜日に帰省しました。母が少し参っているようなので。東京から秋田へは、飛行機だけがかろうじて運航していました。県内の路線バスも運行しています。私は1週間くらい滞在し、入れ替わりで姉が駆けつける予定です。

  秋田は被災していませんが、東北電力による計画停電が16~18日まで予定されています。しかし、16日、17日の計画停電は、降雨によって水力発電所の発電量が増加したため中止されました。

  ガソリン、灯油、生活物資は不足しており、ガソリンは1回2千円までしか給油できず、灯油も通常の3分の2の量の供給にとどまっており、閉店しているガソリンスタンドも多いです。街中を走る車の量もいつもより少ないようです。

  スーパーは文字どおりからっぽ。ない物より、ある物を挙げたほうが早いです。ある物は調味料とアルコール類だけ。

  これは工場が稼動しておらず、また交通状況やガソリン不足の問題で輸送が滞っているせいもあるでしょうが、報道にあるとおり、買い占めの悪循環(不安なので買い占める→商品がないのを見て更に不安に陥る→また買い占める)が生み出した現象でもあると思うので、落ち着いて対処するしかありません。

  母が言う、「戦争のときや戦争が終わった後は、物がないのが当たり前だったのよ。お母さんは履く靴がなくて、おじいちゃん(母の父)が編んだわらぐつを履いてたんだから。これぐらいなんでもない」というセリフが妙に心強いです。

  何よりも、秋田は水道、ガス、電気が通じています。スーパーに物がないくらいで不平不満は言えません。

  鉄道と長距離バスが徐々に復旧してきています。羽越本線、奥羽線、田沢湖線が運行を再開しました。被災地への物資輸送を行なう貨物列車を、新潟から秋田・青森経由で盛岡に運行するために復旧を急いだようです。盛岡からは東北自動車道に引き継ぎ、南下する形で物資輸送を行なうそうです。

  高速バスも盛岡、仙台、東京行きの便が次々に運行を再開し始めたか、もしくは近日中に運行再開予定です。

  福島第一原発の件については、言いたいことは山ほどありますが、今は言っていいときではないと思うのでやめます。

  石原東京都知事の「天罰」発言は地元の新聞報道で知りました。前後の文脈を読むと、悪意はなかったことは分かります。石原都知事は被災者を労わる言葉も同時に口にしています。

  ただ、こんな悲惨な現実の事態を、超現実的に、象徴的に捉え、文学的な比喩を用いた言葉で表現する神経は理解できません。物事を現実的に捉える能力もなければ、他人の境遇や心情を想像する能力にも欠けている人なのでしょう。次の知事選、私は石原さんには絶対に投票しないことにしました。

  新国立劇場バレエ団の「ダイナミック・ダンス!」は全公演が中止になりました。チケット代金を払い戻してくれるそうですが、新国立劇場側で、同意した人に限って、チケットのお金をそのまま今回の震災への募金として回収する、という措置は取ってくれないものかな?そのほうが手間がかからず、効率的だと思うんですが。
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3日後

  今日は部屋から出なかった。  

  輪番停電(計画停電)に備えて、念のため準備をした。はっきりした情報が入ってこないものの、どうやら私の住む地域は午後のグループに入っているらしい。バスタブに水をためた。日が暮れる以前には終了するらしいが、一応ろうそくも出した。

  はじめての事態とはいえ、東京電力にはもっとしっかりしてほしい。経済産業省の原子力安全・保安院も同じだ。危機的な状況になってしまったことは仕方がない。だが、その情報を明確に分かりやすく説明する能力に欠けている。

  記者会見しているのは、「広報班」とは名ばかりの、見るからに典型的な理系の口べたな一般職員。狼狽と混乱を隠さない、かすれた途切れ途切れの声で、一般人が聞いても分からない専門用語と見ても分からない図表を使い、話の順番も前後するなど、実に要領の悪い説明をする。学会では要領よく話しているのかもしれないが。

  危機事態専門の広報官を設けたらいいのに、と思った。あと、東京電力の社長は、いったい何様なの?福島の原発に異常が起きたのは地震発生の当日からだったのに。地震から2日後にやっと姿を現す神経が理解できない。計画停電についても、職員任せで自分は姿を見せない。

  テレビ局は、民放は若手のアナウンサーに報道させている。余震や原発関連の緊急事態が起こると、まだ若くてキャリアの浅い彼らはあわててしまうのか、声がかん高く、大きくなって早口になる。これでは視聴者の不安を余計に煽ってしまう。

  私は別にNHKのファンではないが、NHKはベテランのアナウンサーたちがリレーで報道している。彼らは地震発生以来、ずっと帰宅していないに違いない。緊急事態が起きても、表情や声音、口調、話すスピードを決して変えない。ニュースを読んでいるそばから次々と新しい情報を手渡されても、手際よくまとめて読み上げる。

  明日の計画停電はどうなっているのかな。交通機関の運行の問題があるから、マメにチェックしないといけない。情報が混乱しているが、今は仕方ない。

  
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2日後

  少しでも節電に協力するため手短に。

  新宿の家電量販店に行って、携帯の簡易充電器を購入した(近所のコンビニでは売り切れ)。みな同じ考えらしく、充電器の陳列棚には人だかりができていた。電池式の充電器は売り切れ。ソーラー式と普通充電式の充電器、パソコンのバッテリーから携帯に充電できるケーブルを買った。

  新宿の百貨店のほとんどが短縮営業。外に面した照明もみな消していた。

  駅の売店をふと見たら、普通の電池式の携帯充電器があった。考えてみれば、駅の売店は、会社員や若い人向けのアイテムを取り揃えてあるのだから、あってもおかしくない。あわてて購入した。

  スーパーは営業していた。商品は豊富にあったが、即席ラーメン、うどん、そば、シリアルなどが売り切れ。パンもほとんど売り切れ。少し残っていたから、入荷はしたのだろう。一部の工場が稼動を再開したらしい。

  コンビニに寄った。パンはすべて売り切れ。店員さんの話によると、早朝にパン類が入荷したが、すぐに売り切れたという。おにぎり、弁当、惣菜も残っていた。工場は動き始めているが、明日からの輪番停電でどうなることか。

  原発をめぐる報道には腹が立つ。地震のニュースのほとんどが、原発のニュースで占められている。被災者の状態はどうなっているのか。救助の進行情況はどうなっているのか。

  どうみても危険だとしか思えないのに、「問題ない」という言葉を連発する政府関係者、役人、電力会社。実際に一般住民の被曝が起きているではないか。放射性物質が風に乗って広がっているではないか。

  地震の多い日本で、原発を建設するという発想自体がそもそもおかしかったのだ。

  
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一夜明ける(2)

  昨夜遅く、アメリカにいる姉から悲鳴のようなメールが来る。実家に電話をしているがつながらず、実家にいる家族の安否が心配だという。向こうでは、大津波の映像が何度も放映され、おそらく千葉の製油所で起きた爆発火災の映像について、「原発が爆発した」と報じているというのだ。とんでもない誤報だ。

  すぐにメールを返し、実家のある街を含めて、東北は全域が停電していて、固定電話がつながらないこと、携帯電話もつながりにくい状態になっていること、ただし、実家の地元の警察署や消防署によると、実家のある街では停電を除いて地震による被害は一切ないこと、「原発の爆発」映像は製油所の火災だろうことを知らせた。

  今朝になって母親と連絡が取れたので、またすぐに姉にメールした。家族は全員が無事で、停電も復旧したから、たぶん今度は電話がつながると思う、と書いた。すぐに返信が来て、今度は安堵のあまり号泣するような文面だった。

  日中はやはりNHKのテレビにくぎづけ。細かい情報は確かに増えたが、自衛隊、消防、警察が被災地に近づけないせいか、大きな被害ほど情報が少ない。民放も見てみたが、昨日の津波の衝撃的な映像を何度も流し、家や家族を失い、家族の安否が分からない被災者に無神経にインタビューしている。腹が立ってすぐにNHKにチャンネルを戻した。

  やがて、福島にある原発関連のニュースが頻繁に報じられる。「原発が安全」なんて、やはり大嘘だった。

  昼過ぎ、郵便物が届けられる。「今日はさすがに配達はないと思ってました」と言うと、可能な地域では配達は普段どおり行なう、という返事。ただし、東北と北関東地方への郵便物は、受付、配達ともに停止されているそうだ。

  コンビニに行く。おにぎり、弁当、惣菜、パン、そして携帯電話の電池と簡易充電器がすべて売り切れ。カップラーメンもほぼなくなっていた。スープ春雨はあったのに。でも、店舗で作るコロッケ、から揚げ、おでんは豊富にあった。

  保存のきく真空パック詰めの惣菜と袋ラーメンをいくつか買った(カップラーメンは売り切れで袋ラーメンは残ってるってどーいうこと!?)。おかしいのは、こういう時って、普段は買わないような物を買ってしまうことだ。チョコレートとか果実入りゼリーとか。それとも、危機意識があって緊張しているときは、甘いものが食べたくなるのかな?

  コンビニの店員さんに、なくなっている品物について聞いたら、輸送が滞っているのではなく、工場が稼動を停止しているので、おにぎり、弁当、惣菜、パン類は全部ないということだった。東京電力の節電要請に応じたのかもしれない。

  関東地方は、たぶん週明けに正常化をめざしているのだと思う。 
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一夜明ける

  昨日、午後3時前に大きな地震が起きた。建物ごと揺さぶられる感じ(実際そのとおりなのだけど)。激しい揺れがしつこく長く続き、「いいかげんにしろバカヤロー!」と心の中で叫んだ。

  棚から本、ファイル、書類がバラバラ落ちた。とても怖かった。揺れがおさまってすぐに、携帯電話でインターネットに接続し、震源地を確認した。三陸沖。

  実家に電話した。通じない。「おかけになった地域では現在、通信システムに障害が起きているか、もしくは……。」 母親の携帯電話に電話しても通じない。「ただいま接続が集中しています。しばらくたってからおかけ直し下さい。」  

  ワンセグケータイでテレビを見せてもらった。すでに大きな津波が到達し始めているという。日本海中部地震と同じだと思った。地震発生からわずか数分後に津波が来る。

  数分後、また大きく揺れた。余震だ。さっきのよりはわずかに弱いが、やはりしつこくいつまでも揺れている。おさまったかと思ったら、その数分後にまた揺れた。更に弱くなっている。大きいヤツはこれでたぶん終わりだ、となんとなく感じた。

  もはや仕事どころではなくなり、みなテレビに見入った。やっぱり災害時はNHKに限る。交通機関の運行情報も入ってきた。首都圏の鉄道はJR、地下鉄、私鉄ともにすべて運行停止。急遽帰宅することになった。日が暮れる前までに帰り着かないといけない。

  歩いてどのくらいかかるのか?でも、決して歩けない距離ではない。

  こーいうときに「グーグル・マップ」とか、「ナビタ~イム!」とか使うといいのかしら、と思いつつ、線路沿いの道を歩いた。これなら確実だから。道に迷う不安があまりない理由は他にもあった。そのとき、道にはいつもより大勢の人が歩いていた。みな、徒歩で帰宅することにした人々だ。彼らのおかげで心強かった。

  地震の直後、空は一時まっくらになった。雨が降るかと思ったが、そのうちまた晴れた。歩きながら、実家の固定電話と母親の携帯電話に電話をかけ続け、メールを送り続けた。でも通じないし、返信もない。

  黙々と歩き続けて2時間。やっと最寄り駅に着いた。緊張しているせいか、疲れはあまり感じなかった。日は暮れてしまったが、それでも7時前。いつもは夜10時まで営業している駅前のスーパーがもう閉店していた。貼り紙がしてあって、陳列棚から商品が落ち、更に天井から落下物もあったので危険だとのこと。コンビニは営業していた。いいことだ。

  部屋に戻ると、家具こそ倒れていなかったが、本棚やCDラックから本、CD、DVDがなだれ落ちていた。まだ余震があるだろうから、元に戻さずに床の上に積み上げておくことにした。落ちてなかったものの、落ちそうな物はすべて床の上に置いた。

  ガスが点かなかった。外に出てガスメーターを見ると朱色のランプが点滅していた。自動停止したってことは、震度5以上あったってことだ。説明書を見ながら、ボタンを押して回復作業をした。数分後にコンロを点けてみて、ガス臭がしないか確認した。大丈夫そうだった。水道水も出た。水ににごりもなく、こちらも大丈夫そう。

  NHKをずーっと見続けた。余震が絶え間なくあるので、炊事したり入浴したりするのが怖かった。火を使っている最中に地震があったら、入浴している最中に地震があったらどうしよう、と思い、気力が沸かない。あ、人間ってこうやって恐怖で動けなくなるんだわ、と気がついた。

  連絡のつかない実家のことが心配だった。テレビやネットの報道によると、被害は岩手、宮城、福島に集中しているようだが、秋田はどうなんだろう?

  いろいろ考えて、実家のある街の地元警察署と消防署に電話した。電話はすぐに通じた。実家のある街は震度5だったが、停電しているだけで、人的・物的被害はまったくないという。警察と町役場の職員が総動員で実際に調査して回ったそうだ。ただ、停電のせいで一般家庭の固定電話は使えなくなっており、携帯電話もつながりにくくなっているのだ、と教えてくれた。

  とりあえず実家は大丈夫らしい、と安心できた。

  疲れたから寝ようと思ったが、今度は寝るのが怖い。寝ている間にまた大きな揺れが来たらどうしよう、と考えてしまう。でも、こちらが「寝ずの番」をしたって、来るときは来る、と思い直して寝ることにした。NHKの報道も同じ情報ばかりになった。夜なので、新しい情報が入らなくなっているのだ。朝になったら、新しい情報が入るだろう。

  やっぱり疲れていたらしくて、布団に入ってすぐに爆睡した。

  朝、電話で起こされた。母親からだった。電気が復旧したという。やはり停電のせいで固定電話が使えなかったそうだ。みな無事。驚いたことに、家具が倒れるどころか、物も一つとして落ちなかったそうだ。ただ猫がおびえてしまって、母親のそばを離れないという。

  携帯に何度もメールしたことを伝えると、「携帯、電池が切れちゃって~」とぬけぬけと言いやがった。普通、携帯は充電できるときにマメに充電しておくものだが(と思うんだけど)、母親は電池が切れてからやっと充電する。そういう日ごろの姿勢が、こういう緊急のときに連絡がつかないという事態を引き起こした。後で説教してやろうと思う。 

  関東圏は、今夜6~7時に電力供給が追いつかないために停電になる恐れがあるとのこと。

  電灯をはじめとする家電類はこまめに電源を切る、使わない家電類はコンセントを引っこ抜く、電気を使う暖房器具は温度を低めに設定し、点けっぱなしにせず、あるいは石油やガスの暖房器具があればそれで代替する、食事の支度にはなるべくガスを使うなど、各家庭で一斉にやれば、いくぶんかは節電できるだろう。

  余震はひっきりなしに続いているし、長野や新潟のほうでも大きな地震が起きている。地震は連動して起こるものなので、不思議がったり、不気味がったりするまでもない。

  とにかく落ち着くのが大事。 
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東北地方太平洋沖地震

  通信各社の災害用伝言板(ITmedia)

  これで相手の安否が確認できればいいですが、現在、東北地方のほとんどは停電で、情報が遮断されている状態です。災害用伝言板の開設自体を知らない方々も多いと思われます。こちらが相手の住んでいる地方の状況を知るには:

  停電情報: 東北電力

  通信状況: NTT東日本

  ガス状況: 東北地方の各ガス事業者

  水道状況: 全国の水道事業者

  今はどこも混んでいるので最初はアクセスしにくいです。再試行してみて下さい。

  固定電話→固定電話、固定電話→携帯電話、携帯電話→固定電話、携帯電話→携帯電話は、現在は通じにくくなっています。

  公衆電話からかけると割と通じやすいです。また、海外に知人がいる場合は、海外の知人から安否を知りたい人の固定電話、携帯電話にかけてもらう方法を試してみて下さい。

  固定電話が通じにくいのは、混んでいるせいもありますが、停電のせいで相手の電話機が使用不能になっていることも大きいと思います。機種にもよりますが、相手が電話機のジャックをモデムやスプリッタから引き抜いて、電話回線の差し込み口に直接に接続すれば、通話が可能になる場合もあります。伝言板や留守番電話などを利用して、ご家族や友人に伝えて下さい。

  それから、各自治体のホームページには被害状況や対策がアップロードされています。確認しましょう。更に、県庁、市役所、区役所、役場に電話をかけると、まず通じると思います(大抵が自家発電で電話を使用可能にしている)。地元の人に尋ねるにしくはないので、詳しい震度、ライフラインの状態、被害の状況を聞いてみましょう。

  直接に相手と連絡が取れなくても、周辺の情報を総合することで、状況の概要が分かってきます。

  帰宅したら、本棚や棚から物がだいぶ落ちていました。落ちたものはそのままにしてあります。大きな余震が続いていますから。まずは落ち着いて、できる限りの備えをしておきましょう。

  首都圏については、TOKYO MXテレビ( ブログツイッター )で帰宅困難者支援ステーション、帰宅支援サービスを行なっている場所、災害用伝言板、交通機関の運行に関する情報が得られます。また、東京都防災ホームページ(モバイル版) にも情報が載っています。帰宅できないでいるみなさま、どうか他の方々と助け合って、なんとか今夜を乗り切って下さい。
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牧阿佐美バレヱ団『ドン・キホーテ』(3月6日)

  今日、関東地方はスギ花粉が飛来して大暴れ。私は普段、大工作業に従事する方々が用いる粉塵用マスクを使っているのですが、今日はとっておきの秘密兵器、医療用マスク(3枚798円)を装着して出かけました。

  さて、今日の舞台のほうが、昨日よりも断然見ごたえがあったし、とても楽しかったです。ちゃんと客に見せるショウとして成立していました。

  ただ、観客のあのマナーの悪さはなんとかなんないもんかね。老いも若きも、上演中に平気でしゃべるしゃべる。昨日もそうだったし、今日もそう。他のバレエ団の公演ではあんなことはまずありませんよ。よっぽど「うるせーんだよ!」と注意しようと思ったくらいです(でも、そうすると逆にこっちのほうが「モンスター客」扱いされるのよね)。


  『ドン・キホーテ』(アザーリ・M・プリセッキー改訂振付版、プティパ/ゴルスキー版に基づく)

   キトリ/ドゥルシネア姫:久保茉莉恵
    演技がとても自然でキュート!踊りも終始安定していました。久保さんは上背があるので、踊るととてもダイナミックで華があります。今日は久保さんに目が釘付けでした。キトリはよくても、ドゥルシネアはどうかな、と思っていましたが、やや大味なところはあったものの、昨日の公演で久保さんが踊った森の女王よりもはるかにすばらしかったです。

    久保さんの踊りでいちばん個人的にツボにはまったのは、キトリのカスタネットのソロです。久保さんはキトリが舞台に駆け出してきて登場するときばかりでなく、踊りに入ってからも、カスタネットをリズミカルに鳴らしながら踊っていました。これはすばらしいパフォーマンスです。大抵のダンサーは、ここでは踊るだけで精一杯なのに。

   バジル:菊地 研
    奔放なようにみえますが、実は堅実派のダンサーです。自分の今の能力をわきまえ、また相手のダンサーと自分とのバランスを考えて、決して無理をしない。

    菊地さんのパートナリングはすばらしかったです。スムーズにきれいに見せる、同時にパートナー(久保さん)の安全を最優先していることがよく分かりました。

    第一幕ではバジルによるキトリの「片手頭上リフト」が2回あります。菊地さんは1回目は久保さんをさっと低く上げてすぐに下ろしました。2回目は久保さんを頭上に上げて長めにキープしましたが、2回目の2回目(←まぎらわしいな)は大きくグラついたので、すぐに久保さんを下ろしました。第三幕のグラン・パ・ド・ドゥでは両手を使って久保さんをリフトしていました。

    菊地さんと久保さんとの背丈や体格のバランスを考えると、これらは正しい選択でした。見た目的にもスマートでしたし、リフトされる久保さんの安全を守る意味でも。

    グラン・パ・ド・ドゥのヴァリエーションは、意外にも原振付に忠実な動きで踊りました。ヴァリエーションで曲芸ばかり見せたがる男性ダンサーが多い昨今、非常に真面目な姿勢です。

    その反面、コーダではエキサイトしたのか、物凄い超速回転をやりすぎて、静止で大きくグラついてしまいました。ところが、面白いことが起こりました。観客がドッと笑って拍手したのです。ボリショイ・バレエのイワン・ワシリーエフがエキサイトしすぎて失敗したときも、同じ反応が起こりました。失敗しても観客が思わず笑って拍手してしまう。これは稀有な能力です。

    今日の舞台がとても楽しかったのは、菊地さんの場を盛り上げる力の強さによるところが大きいと思います。菊地さんの演技は自然で楽しそうで、観客は思わず引き込まれてしまうのです。こういう吸引力を持つ日本人ダンサーは非常に珍しい。キトリ役の久保さんとも踊り、演技ともにしっくり合っていました。観ている側の頬が思わず緩んでしまうような、ほほえましい魅力的なカップルでした。
    
   ドン・キホーテ:逸見智彦
    2回目ともなると、観る側も慣れるもんですな。でもまだ、ドン・キホーテの「どっかイッちゃってる感」に乏しい気がします。挙措や雰囲気は王子で、演技はラジャ(『ラ・バヤデール』)なんだもん。

   サンチョ・パンザ:上原大也
    すごいかわいかったです(笑)。第一幕で街の人々にからかわれ、無理やりトランポリン(?)をさせられるシーンでは、今までに見たことがないほどすっごく高く上がって、空中での姿勢や動きがとてもコミカル(なんと空中で反転した!)だったので、観客が思わず拍手したほど。

   エスパーダ:中家正博
    まず顔がオードリーの春日そっくりで、一発で覚えることができました。踊りはカッコよかったです。キメのポーズもバッチリ決まってました。

    昨日の公演でも思ったんだけど、エスパーダの衣装は、デザイン的にちょっと問題があるのではないでしょうか?光沢のあるアイボリー・ホワイトという色合いはすごくいいですが、ズボンが腰丈どころか胸の下まであって、そのせいで布が余ってお腹や腰のあたりでだぶついてしまい、エスパーダの見どころ(?)である、腰からお尻にかけてのセクシーなラインがきれいに出ない。ズボンは腰丈でいいと思います。

   キトリの友人:日高有梨、坂本春香
    よかったと思います。特に、目が切れ長のメイクをしていて、基本的に左側で踊っていた人。

   街の踊り子:吉岡まな美
    特に強い印象はないです。ごめんなさい。

   闘牛士たち:塚田 渉、京當侑一籠、今 勇也、中島哲也、石田亮一、清瀧千晴、ラグワスレン・オトゴンニャム、宮内浩之
    すっごく背が高く、身体が棒のように細くて、かつ超イケメンが1人いましたが、あれは誰なんだろう?ジャンプがえらく高い人でした。(追記:ご教示を頂きました。石田亮一さんだそうです。ありがとうございます

   ガマーシュ:保坂アントン慶
    大げさではないけど、気取った、ちょっとおネエ入った演技が笑えました。帽子が落ちるアクシデントを巧妙に逆利用した演技も見事。

   キトリの父:森田健太郎
    意外に似合ってた。大僧正(『ラ・バヤデール』)よりも、こういうガンコ親父のほうがしっくり(?)きますな。

   酒場の踊り子(←普通の版ではメルセデス):田中祐子
    腕の動きや上体を反らすのが柔らかくしなやかで、脚をダイナミックに上げて長いスカートをさばいて美しく見せる、すばらしい踊りでした。ミステリアスで艶のある雰囲気も魅力的です。

   ジプシーの首領:塚田 渉

   ジプシーの女:橋本尚美
    踊りと同時に、演技も頑張っていました。でも、このジプシーの女の踊りには、「アタシはこのまま、ジプシーのみずぼらしい女として生きていくしかないのね」的な嘆きとあきらめ、同時に「それでもアタシは生きていくのよ!」的な強い気迫がもっと必要だと思います。この役と踊りも実は難しいですよね。

   森の女王:吉岡まな美
    ヴァリエーションはすばらしかったです。きれいなクラシックの踊り。ただ、スタミナがないのか、筋力が弱いのか、すっくとスムーズに爪先立ちしてアラベスクできない、アラベスクやアティチュードで軸足がブルブル震えてる、というのは、観ていてちょっと頼りなかったです。

   キューピッド:米澤真弓
    まず、痩せすぎです。もっと肉を付けたほうが魅力的だと思います。踊りは普通に良かったです。昨日のキトリの友人の踊りとは印象がだいぶ違いましたが。

   ボレロ:田中祐子、塚田 渉
    田中さんはやはりすばらしい。スカートの裾をつまんで広げる動き一つとっても、華麗に見せる。本当に艶やかです。

   パ・ダクシオン(第三幕):奥田さやか、竹下陽子、織山万梨子、米澤真弓
    みなよく揃っていてきれいでした。

   第1ヴァリエーション(第三幕):日高有梨
   第2ヴァリエーション(第三幕):坂本春香
    順番が間違ってたらすみません。普通によかったです。

   他にも、たとえば第一幕のセキディーリャの群舞がすばらしかったです。足さばきや腕の動きがきびきびしていて、みなよく揃っていました。

   一つだけ気になったのは、いくらバレエ作品における「民族舞踊」が、バレエ用にカスタマイズされた動きだとはいえ、クラシック・バレエとは異なるステップが用いられているのは明らかです。『ドン・キホーテ』ではスペイン民族舞踊風の踊りが多く踊られます。

   が、今回の公演では、スペイン民族舞踊風の踊りになったとたんに、ダンサーたちのステップが総じてぎこちないものになりました。エスパーダの踊り、闘牛士たちの踊り、ファンダンゴなどです。普段のレッスンで、民族舞踊の動きやステップの練習をきちんと取り入れているのかな、と疑問に思いました。

  このプリセッキー版は、

   第一幕 第一場:バルセロナの街の広場、第二場:居酒屋
   第二幕 第一場:ジプシーたちのキャンプ、第二場:ドン・キホーテの夢
   第三幕 公爵の城の前庭

という構成です。ですから、バジルの狂言自殺は第一幕第二場です(←自分のためのメモ)。

  アンドレイ・アニハーノフ指揮による東京ニューシティ管弦楽団は、今日も良い演奏を聴かせてくれました。開演前に、なぜか『白鳥の湖』の「ナポリの踊り」のトランペットによるソロパートを練習していた団員がいましたが、近々『白鳥の湖』の演奏予定でもあるのかしらん。    
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牧阿佐美バレヱ団『ドン・キホーテ』(3月5日)

  突然だけど観に行きました~♪

  今日は時間がないので、メモ程度の感想だけ。

  『ドン・キホーテ』

   原振付:マリウス・プティパ、アレクサンドル・ゴルスキー
   改訂振付・演出:アザーリ・M・プリセッキー、ワレンティーナ・サーヴィナ

   音楽:レオン・ミンクス

   演奏:東京ニューシティ管弦楽団
   指揮:アンドレイ・アニハーノフ(←びっくりした。お久しぶり~。アフロヘアも健在でしたw)

   キトリ/ドゥルシネア姫:青山季可
    溌剌としてかわいかったです。ただ、キトリよりは、ドゥルシネアのような踊りのほうが得意なのかな?キトリの踊りにはもう少しキレがほしかったです。

   バジル:清瀧千晴
    第一幕の最初は緊張してたようでした。でも、途中から動きが見違えるように良くなりました。まだ荒削りで不安定ですが、技術がとにかくすばらしい!!!身体もすごく柔軟で、「日本のダニール・シムキン」になれるかも。演技と特にパートナリングは要努力。    

   ドン・キホーテ:逸見智彦
    最初はどーしてもジークフリート王子が鎧を着てるよーな感じがしました。てか、なんで逸見さんがドン・キホーテなのか?最後はそれなりに慣れましたが。

   サンチョ・パンザ:山内貴雄

   エスパーダ:京當侑一籠
    力みすぎ。空回り感がありました。エスパーダは力みすぎるとスベるし、緩いとカッコよくないし、難しい役ですね。

   キトリの友人:奥田さやか、米澤真弓
    ふたりともすばらしかった!明日のキトリは彼女たちかも。

   街の踊り子:田中祐子
    貫禄たっぷりで艶やかなプロの踊りでした。

   ガマーシュ:今 勇也
   キトリの父:保坂アントン慶
   キトリの母:諸星静子

   闘牛士たち:塚田 渉、菊地 研、邵 智羽、中島哲也、篠宮佑一、ラグワスレン・オトゴンニャム、宮内浩之、中家正博
    菊地研さんがやたらカッコつけてて笑った。でも確かにそれだけの踊りはできるもんねえ。

   酒場の踊り子(←メルセデスに相当する役):笠井裕子
    あんまり印象に残りませんでした。ごめんなさい。

   ジプシーの首領:塚田 渉

   ジプシーの女:吉岡まな美
    ジプシーの踊りにしては軽くてきれいすぎ。憂愁に満ちた重さや暗さがあるともっといいと思いました。

   森の女王:久保茉莉恵
    大味でダイナミック。ただ、踊りがちょっと硬かった。

   キューピッド:小松見帆
    すばらしかったです。小柄な身体を生かして、音楽に乗って弾むように踊ってました。技術もすばらしく、また「見せる」ために効果的に踊るということを心得てるダンサーだと思いました。特に、ヴァリエーションの最初のほう、左右にアティチュードを3回くり返すところで、徐々に足を上げていくというふうに変化をつけていたのが良かったです!

   3人のドゥリアーダ:奥田さやか、竹下陽子、米澤真弓
   4人のドゥリアーダ:日高有梨、坂本春香、柳川真衣、織山万梨子

   ボレロ:笠井裕子、森田健太郎
    聴いたことのない音楽でした。森田さんは大柄で体格もよく、なんだかアルチョム・プハチョフ(レニングラード国立バレエ団)に見た目が似てきたな~。


  豪華な舞台装置がたくさんあってゴージャスな舞台でした。オーケストラもアニハーノフのアフロ効果で大健闘。

  話には聞いていましたが、牧阿佐美バレヱ団は男性ダンサーの人材に実に恵まれています。もちろん女性ダンサーたちの質も総じて高いです。日本の国内バレエ団としては、このカンパニーが実質的に最高水準にあるのではないでしょうか。

  プリセッキーの改訂振付は、原振付を難しくしてあると思いました。特に第一幕のキトリとバジルが組んでの踊りです。ダイナミックなリフトが追加されてたり。さすがはマイヤ・プリセツカヤの弟です。姉が基準になってるんでしょうか。 
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