全仏オープン ロジャー・フェデラー総括-2


 2回戦 対ソムデブ・デブバルマン(Somdev Devvarman、インド)

   6-2、6-1、6-1

  試合開始予定時間は現地時間29日午後3時半(日本時間29日夜10時半)でした。ところが、前の試合が押して2時間以上も遅れ、現地時間夕方5時40分ごろ(日本時間30日午前12時40分ごろ)にやっと始まりました。

  勘弁してくれよ、と思いましたが、こういうふうに時間が押している場合や、翌日の試合に備えて当日の試合を早く終えたい場合、フェデラーは異常な強さを発揮して、短時間でさっさと勝ってしまうことがあります。

  そんなフェデラーのモチベーション(?)に期待して、この試合ばかりは、フェデラーに勝ってほしいという気持ち以上に、とにかく早く終わって下さいという気持ちのほうが正直強かったです。

  対戦相手のDevvarmanの発音が分かりません。主審は「デブバルマン」と呼んでいた気がします。バレエ『ライモンダ』に出てくるサラセン人「アブデラフマン」に似た名前だな~、と思ったので記憶に残っています。ニュース記事を見たら、他に「デバーマン」、「デウバーマン」という表記もありました。  

  デブバルマンはインド国籍だそうで、インド出身のプロテニス選手って珍しいんじゃないでしょうか。コートに入ってきたデブバルマンを見たら、ほっそりした体つきの少年だったので、まあ、この華奢な坊やはいくつかしら、きっと期待の新星なのね、と思いました。

  しかし、画面に表示されたデブバルマンの経歴を見たら、"Age 28"とあったので仰天。フェデラーと3歳しか違いません。28歳でこの童顔?この極細の体?アジア人ってほんとに若く見えるんだな~、と思うのと反比例して、フェデラーがいよいよおっさんに見えてきます。

  フェデラーは、第1セットは主に強打中心で、第2セットはネット・プレー中心で、第3セットは強打とネット・プレーをバランス良く織り交ぜて攻撃していました。フェデラーにしては珍しく、攻撃心をかなり露わにしていて、まるでデブバルマンを威嚇しているように見えました。フェデラーがネットに走り出るたびに、観ているこちらまで「うわっ!来た!」と緊張しました。

  デブバルマンについては、この選手が予選を通過したのも不思議なら、1回戦で勝ったのも不思議です。デブバルマンの自己最高世界ランキングは62位(2011年7月末)です。2012年の初めからランキングが急激に落ちて、今年の初めからまたランキングが急激に上がってきている(現在は188位)ので、怪我や故障などの理由で1年間休んでいたのかもしれません。

  デブバルマンの武器は何なのかを注意して観ていたら、どうもサーブと強打のようです。でも、武器といえるほどのレベルではないように感じました。フェデラーはデブバルマンのサーブを返していたし、強打のラリーでもデブバルマンに打ち勝っていました。それに、デブバルマンはネットにまったく出ません。フェデラーに引きずられて出てきた場合を除いて、徹底してネット・プレーをやりませんでした。

  その他にも、デブバルマンは、ボールに追いつけない、あっさりとあきらめる、簡単に逆を突かれる、フェデラーにネットにおびき寄せられると決まってミスをする、といった具合で、実況中継も第2セットあたりから「これはもう(試合ではなく)練習ですね!」と言ってました。

  第2セットか第3セットだったと思いますが、フェデラーのサービス・ゲームで、デブバルマンが位置につくのが遅れたときがありました。フェデラーはデブバルマンを待っている間、無表情でラケットの縁にボールを乗せました。そのままラケットを動かすと、ボールがまるで磁石でくっついているかのように、ゆっくりとラケットの縁に沿って動き出し、ラケットの縁の半分を2往復くらいして止まりました。観客が拍手しました。

  試合は1時間20分で終わりました。フェデラーが強かったというより、デブバルマンがあまりにも弱すぎたという印象です。グランド・スラムにふさわしい試合ではなかったように思いました。


 3回戦 対ジュリアン・ベネトー(フランス)

   6-3、6-4、7-5

  フェデラーはこのベネトーという選手が苦手なんだそうです。去年のウィンブルドン選手権ではフルセットでようやく勝ち、今年の初春に開催された大会ではストレートで負けています。

  それで少し心配でした。案の定、第1セットはフェデラーのサービス・ゲームで始まりましたが、フェデラーは明らかに緊張しており、あっさりとブレークされてしまいました。ところが、次のサービス・ゲームから、フェデラーのプレーが良くなり始めました。

  ベネトーが2-1とリードしての第4ゲーム、フェデラーはブレーク・ポイントを握るとすかさず取り、2-2のタイ・スコアに戻しました。このへんから、ベネトーは自分のサービス・ゲームをキープするのに苦心するようになりました。一方、フェデラーは簡単にキープしていきます。

  このベネトーという選手は長身らしく、速いサーブ、パワフルな両サイドへのリターン、フェデラーに余裕を与えない速いテンポでの試合運び、そしてフェデラーのバック・ハンドを徹底して攻撃するといった戦術で臨んだようでした。

  反射神経も良く、ネットでのプレーにもなかなか秀でていて、優れた選手だと思います。しかし不思議なことに、ベネトーはどうでもいいゲームではすごく強いのに、肝心なゲームではすごく弱いのです。

  第1セット第8ゲーム、フェデラーが一応リードした4-3で、ベネトーのサービス・ゲームになりました。フェデラーがプレーク・ポイントを握りました。プロ選手は普通、こういう絶対に落としてはならない重要なゲームは死守するものなんですが、ベネトーはこのゲームを確かダブル・フォールトだったかミスだったか(フェデラーのコード・ボールだったかも)で落としてしまいました(後記:違いました。0-40でフェデラーのバック・ハンドのリターンが決まったからでした。ごめん)。フェデラーは次のサービス・ゲームを鉄壁で守り、6-3で第1セットを取りました。

  第2セットも同じでした。第2セットはキープ合戦になって4-4となりました。第9ゲーム、ベネトーのサービス・ゲームです。これも絶対に落としてはいけません。ところが、なんと0-40でフェデラーがブレークしてしまいました。フェデラーは次のサービス・ゲームを鉄壁で守り、6-4で第2セットも取りました。

  第3セットもやっぱり同じでした。第3セットもやっぱりキープ合戦になって5-5となりました。第11ゲーム、ベネトーのサービス・ゲームです。これもやっぱり絶対に落としてはいけません。ところが、やっぱりなんと0-40でフェデラーがブレークしてしまいました。フェデラーは次のサービス・ゲームをやっぱり鉄壁で守り、7-5で第3セットもやっぱり取ってそのまま勝ちました。

  (後記:てことは、3セットとも、フェデラーはベネトーの最後のサービス・ゲームをすべて0-40でブレークしたんだ。こんなことがあるのね~。)

  解説者は、これはベネトーの問題ではなく、フェデラーのせいだと言っていました。フェデラーは重要な局面になるといきなりスイッチが入って、ものすごいボールを打つんだそうです。

  だから、ベネトーが絶対に落としてはならないゲームに限って、フェデラーが取ってしまうらしいです。フェデラーは、どうでもいいゲームではすごく強いわけではないが、肝心なゲームでは異常に強くなる、ということのようです。フェデラーは今日の試合、4度ブレーク・ポイントを握って、すべて1回目でブレークしたと思います。

  試合は1時間半で終わりました。観ているときは白熱した、緊迫した試合のように感じたのですが。

  でもほんとは、第2セットの序盤あたりで、フェデラーが自分から崩れない限り、フェデラーが勝つだろうと思いました。全体的にベネトーが劣勢になっていたし、あとこれ。第2セット、ベネトーのサービス・ゲームで、ベネトーのリターンがネットに引っかかり、フェデラー側のコートにぽとんと落ちました。これでベネトーはこのゲームをなんとかキープできました。

  面白かったのは両者の反応の違いです。コード・ボールでポイントを運良く取れた場合、相手選手に向かって手を上げ、「ごめん」という意思表示をするのが通常のマナーらしいのです。でも、ベネトーは疲れ切った表情でうつむいたまま、手を上げることがありませんでした。一方、フェデラーはボールが落ちた瞬間、両足を揃えて、ぴょんっ!とユーモラスに飛び上がりました。それを見て、ああ、フェデラーは心に余裕があるな、こりゃ大丈夫だ、と分かりました。


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全仏オープン ロジャー・フェデラー総括-1


  フェデラーがツイッターを先週末に始めたことは大きな話題になりました。どういう心境の変化があったのでしょうか。一説には、なりすましの偽アカウントを防止するためだということです。そういえば、フェイスブックでもなりすまし事件がありました。

  開設後6時間でフォロワーが10万人を突破し(もちろん閲覧だけしている人を含めるともっと多い)、開設して3日経った現在のフォロワーは23万人を超えています。

  Ask Me Anithingという双方向の交流サイトで、フェデラーがリアルタイムでファンの質問に答えるということを、フェデラーはツイッターで開始30分前に告知しました。不意打ちですが、そうでないとアクセスが殺到して、最悪の場合サーバーがダウンしかねません。

  45分間という限られた時間のせいで、答えている質問と答えていない質問があるものの、こういうサイトならではのくだらない質問にフェデラーが律義に答えているのが面白いです。


  ファン:やあ、ロジ(←フェデラーの愛称)。ロジって呼んでいい?
  フェデラー:もちろんだよ。

  ファン:試合の前には何をしますか?
  フェデラー:1.時間どおりにコートに着く。これ大事。そうすると試合に遅れない。2.ウォーミング・アップをして30分ほど練習する。3.軽い食事をとる。パスタとか。(←出た!炭水化物大好き男フェデラー)4.足首にテーピングをする。5.ストレッチをする。6.ウォーミング・アップをして、そして試合。

  ファン:どうやったら自分の股間を打たずに股抜きショットができるんですか?
  フェデラー:今まで痛い目に遭ったことはないよ。だからこれからも続けるよ。

  ファン:ジレットのCM(←フェデラーが男性の頭の上に置かれた缶をサーブで吹っ飛ばす)は本物?
  フェデラー:練習の賜物だよ。良い子のみんなはおうちでマネしちゃダメだお。

  ファン:どうやって髪を完璧なフッサフサ状態に保ってるの?
  フェデラー:そんなこと全然ないよ。みんなと同じように日々格闘しているよ。でも(褒めてくれて)ありがとう。

  ここから真面目な質問が入ります。

  ファン:片手バック・ハンドの衰退についてどう思う?ほとんどの選手が両手バック・ハンドなのは、そのほうが確実でパワフルに打てるから?
  フェデラー:僕は片手バック・ハンドを見るのが好きなんだけど、両手バック・ハンドが明らかに主流になりつつあるね。ベースラインからの打ち合いメインのテニスが多くなっているからね。

  ファン:(先々週のイタリア国際でフェデラーが空振りした映像について)あなたのリアクションは?
  フェデラー:野球ファンのみんなに。「ワンストライク!」

  ファン:写真で見ると、あなたはいつもラケットがボールを打つ瞬間をしっかり見ていますね。ボールを打つときの腕も完全にまっすぐに伸びています。この技術を身につけられる方法はありますか?
  フェデラー:写真を見ると面白いんだよね。おかしいことだけど、僕は意識的にボールをしっかり見ようと思っているわけじゃないんだ。でも君は正しいと思うよ。これはただ単に習慣で、教えられたとおりの方法でやっているに過ぎないんだ。

  ファン:試合前の緊張にどう対処していますか?なにか特別なことをやっているのですか?それともひたすら訓練で克服しているのでしょうか?
  フェデラー:面白いことに、決勝よりも初戦のほうが緊張することが多いんだよ。初戦の日には、(自分のコンディションに)より多くの疑問を抱えているから。これは説明するのが難しい。でももちろん、大きな試合が自分を待ち構えているときには、もっと不安になってしまいがちだよね。僕は特別なルーティンをすることはないよ。試合前にするいつものルーティン以外にはね。それで落ち着くし集中できるよ。

  ファン:スクワットは何回するの?
  フェデラー:分かんないなあ。次に気をつけてみるね。

  ファン:他にどんなスポーツをしますか?どのくらいの頻度でそれらのスポーツをしているのですか?
  フェデラー:スカッシュ、スキー、サッカー、卓球をするのが好きだよ。引退したらアイス・スケートを習って、アイス・ホッケーをやりたいんだ。アイス・ホッケーは僕が観戦するのが好きなスポーツの一つだから。

  最後に、フェデラーはすごいなと思ったのがこれ。

  ファン:これから欲しいと思っている記録または業績は何?
  フェデラー:どんな記録でも歓迎。ウィンブルドン選手権優勝8回、ATPワールド・ツアー・ファイナル優勝、そして世界ランキング1位復帰。

  「今季はいまだ無冠」とかメディアに叩かれてるのに、フェデラー本人は全然気にしてないのね。


 1回戦 対 パブロ・カレーニョ・ブスタ(スペイン)

   6-2、6-2、6-3

  試合開始予定時間(現地時間26日午後2時半、日本時間同日夜9時半)直前に気づいて、あわてて観ました。大会初日、しかもなんとかっていう名前の最も大きなコート(ごめんね相変わらずいいかげんで)での、男子シングルスでは最初の試合だったようです。

  フェデラーはポワント・ワーク、パ、ポール・ド・ブラ、ジュテ、ピルエット、フェッテがすばらしく……あ、これ、テニスの話題だった。フェデラーはフット・ワーク、フォア・ハンドとバック・ハンドのリターン、ボレー、ドロップ・ショット、スマッシュ、サーブなど、みなすばらしかったです。

  凡ミスもほとんどなく、ブレーク・ポイントを握ると確実に決めました。試合時間は1時間半弱。すべての試合がみなこのような短時間で済んでくれると、観るほうは非常に助かります。

  カレーニョ・ブスタはところどころで良いプレーを見せましたが、フェデラーの敵ではありませんでした。まだすべてにおいて未熟な感じです。でも、第1セット第6ゲーム、5-0になったところで、フェデラーのサービス・ゲームをブレークして意地を見せました。次の自分のサービス・ゲームも守って2ゲームを取りました。

  ところが、第2セットに入ると、もう集中力とスタミナが切れてしまったようでした。第1セットから凡ミスが多かったのですが、更に増えました。若いからといって(カレーニョ・ブスタは21歳)スタミナがあるとは限らないみたい。

  試合直後、コートでのフェデラーへのインタビューはフランス語で行われました。フェデラーのフランス語、相変わらずステキ


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「マラーホフの贈り物 ファイナル」Bプロ(5月25日)-3


  『椿姫』より第二幕のパ・ド・ドゥ(振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:フレデリック・ショパン)

   ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

  今度はいわゆる「白のパ・ド・ドゥ」です。Aプロと合わせて、これで紫、白、黒の三つのパ・ド・ドゥがすべて踊られました。

  Aプロでの「黒のパ・ド・ドゥ」を観たときにも思いましたが、ラカッラはこういう踊りでは、長所である柔軟な関節を持つ長い脚のシャープな動きが、逆に悪目立ちしてしまうように思います。脚だけをやたら高く振り上げてるように見えてしまうのです。本当はそうじゃないのかもしれないけど、脚ばかりが目立って全身の動きがよく分かりません。

  この「白のパ・ド・ドゥ」を観ると、どーしても数年前のバンジャマン・ペッシュとエレオノーラ・アバニャート(パリ・オペラ座バレエ団)が踊ったやつを思い出しますな。今思い出しても噴きそうになるわ。

  あれに比べれば、ラカッラとディノの踊りははるかにすばらしかったです(当たり前)。偶然かもしれないけど、マリア・アイシュヴァルトとマライン・ラドメイカーが前に「紫のパ・ド・ドゥ」を踊ってたのも、ナイスな演目チョイスでした。「紫のパ・ド・ドゥ」と「白のパ・ド・ドゥ」は、マルグリットとアルマンの立場の変化を振付で表現してると思うので。


 『白鳥の湖』より「黒鳥のパ・ド・ドゥ」(振付:マリウス・プティパ/ユーリー・グリゴローヴィチ、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

   オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン

  これもAプロとかぶります。初日(21日)は二人とも力みすぎでミスしてばかりでしたが、今日ははるかに良くなりました。明日はもっと良くなるでしょう。初日のぎこちなさは、やはり慣れの問題に過ぎなかったようです。

  しかし、音楽に合わせて決めなくてはならないところでは、「(音楽と)合いますよーに!がんばれ~!」と心の中で二人にエールを送っていました。なんで観客の私がプロのダンサーたちにエールを送らなくてはならないのか。でも今日はほぼちゃんと合ってました。ほっ。

  チュージンはパートナリングがまだ頼りないです。まあ、これも経験を積んでいけば解決される問題でしょう。ソロで踊るぶんには問題ないどころか、コーダでジャンプして舞台一周するところなんて、両脚の開き具合がハンパないです。180度以上開いて跳んでるんじゃないの。

  スミルノワも振付に追いつくのがやっとな感じがしました。特にオディールのヴァリエーション。これも慣れの問題でしょうが、また思ったのは、音楽のテンポが非常に速いことです。それもあって追いつけないようでした。

  ボリショイ・バレエは演奏のテンポが速い印象があります。『ドン・キホーテ』なんて、指揮者、ダンサー見て振ってねえだろ、と思えるほどの超速です。それでもダンサーたちが追いついて踊っちゃうところがすごいんですが。

  「黒鳥のパ・ド・ドゥ」コーダでのグラン・フェッテ部分は特に速いです。スミルノワが初日に失敗したのは、このテンポの異様な速さのせいもあるな、と思いました。今日は成功しました。でも、回転し終えたときには脚がガクガクしているのを、かろうじて踏ん張ってポーズを決めました。それでこそプロ。

  チュージンは先が楽しみなダンサーです。身長と体型はさすがにこれ以上は変わらないと思いますが、王子らしいたたずまいがあるので、広い役柄が持てそうです。


 「ヴォヤージュ」(振付:レナート・ツァネラ、音楽:ウォルフガング・アマデウス・モーツァルト)

   ウラジーミル・マラーホフ

  マラーホフは裸の上半身に白い長めの上着、白いズボンという衣装。

  相変わらずソロになると圧倒的な、強烈な存在感を発揮します。飛んだり跳ねたりのほとんどない静かな振付です。両手をせわしく動かす同じ動きが何度もくり返されましたが、あれは何のライトモチーフなんでしょうか。

  マラーホフのポーズの美しさに、やはり見入ってしまいました。片脚で立ったままポーズを変化させていくところは、スローモーションのようにゆっくりなのに、バランスを崩すことなく、手足が緩やかに動いていきます。その一瞬一瞬がそれぞれとても美しかったです。

  途中で動きが激しくなるところがあり、そこでマラーホフは両足を揃えて垂直に飛び上がり、空中で鋭く何回転もして着地しました。完璧でした。ジャンプらしいジャンプは、Aプロ、Bプロ合わせてこれだけだったと思います。

  この作品を踊り終えた直後のマラーホフは、疲れ切ったような、憔悴したかのような表情をしていました。しかし、何度目かのカーテン・コールで、笑顔が戻ってきました。そして、観客に対して深々と頭を下げたまましばらく動かず、ようやく顔を上げると、手を胸に当て、観客に向かってゆっくりと投げキッスをしました。

  演目に目新しさがなく、ほとんどがよく知られている作品ばかりのガラ公演でしたが、私はとても楽しめました。マラーホフの全盛期の踊りを私は見ていないし、特にファンというわけでもないので、寂しさのような感情もありません。

  でも、今まで日本のファンを楽しませてくれてありがとう、と思います。日本との関係を自然消滅にするのではなく、何を言われることになっても、日本のファンに別れを告げる場を設けて、きちんとけじめをつけたことは潔いし、日本のファンのことを思ってくれている証だと感じました。


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「マラーホフの贈り物 ファイナル」Bプロ(5月25日)-2


 「バレエ・インペリアル」(振付:ジョージ・バランシン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

   ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

   東京バレエ団

  サレンコはこの作品を踊ったことがあるのかな?最初はずいぶん緊張していたのか、あるいは急に代役に立ったための練習不足のせいか、動きが硬かったです。最初のソロではミスが目立ちました。

  この作品、私はポリーナ・セミオノワとマラーホフが主演で踊ったのを以前に観たことがあって、そのときはとても感動しました。セミオノワのお姫様は神秘的な存在感があったし、そのお姫様を恋い慕う青年に扮したマラーホフの、報われない恋に愁える雰囲気もすばらしかったからです。

  でも、今日はちょっと退屈だったかなー。サレンコは途中から順調に踊っていましたが、やはりまだ少しぎこちなくて、また何よりも「高嶺の花」的な高貴さと存在感が足りないように感じました。群舞の中に入ると姿が埋まってしまいます。

  一方、マラーホフは、どこか無機質で人間味の薄いこの作品に、今回も生き生きとした感情を与えていました。ああ、追い求めても追い求めても手の届かぬ美しい姫、他の女性と踊っても心は晴れぬ切なさよ……という感じ(笑)。

  マラーホフは体重がだいぶ増えたようなので、ソロを踊るときはハラハラしました。あの体重で大きな跳躍などをしちゃったら、非常に危険だからです。幸いなことに、「左脚のふくらはぎの違和感」は大事には至っていないようですが、ここで無理したら大変です。そのことは本人が最も分かっているようで、すべて軽めのジャンプで済ませていました。それが賢明だと思います。


 『ロミオとジュリエット』よりバルコニーのパ・ド・ドゥ(振付:ジョン・クランコ、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)

   マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー

  クランコ版、前に観たの何年前だっけ?アイシュヴァルトが着ていた白いドレスの赤いサッシュでなんとなく思い出したよ。でも、ケネス・マクミラン版ほど音楽的じゃないし、見ごたえのある振付でもないなあ、と思ったんでした。今日観てもその印象は変わらず。

  どうせクランコなら、鉄板演目の『オネーギン』から「鏡のパ・ド・ドゥ」か「別れのパ・ド・ドゥ」をお願いしたかったです。でも、ラドメイカーはまだオネーギンが持ち役じゃないのかな?レンスキーは踊ってたよね?

  そのラドメイカー、ロミオのソロ部分では少し不安定でした。珍しい。でもパートナリングは盤石の見事さ。クランコ版のトリッキーで複雑な(←矢継ぎ早の複数の動きで構成されている)リフトをよくこなしていました。

  アイシュヴァルトは、よくここまでキャラクターが変わるな、と感服しました。『椿姫』での大人の女性で高級娼婦であるマルグリットから、まだ無邪気な少女であるジュリエットに雰囲気が完全に変わっていました。


 「タランテラ」(振付:ジョージ・バランシン、音楽:ルイス・モロー・ゴットシャルク)

   ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル

  「バレエ・インペリアル」を踊ったばかりのサレンコを酷使しすぎではないか、と心配しました。でもちゃんと踊っていました。若いなあ。

  いやー、バランシンはどの作品も本当に難しいね(ため息)。二人ともテクニック面では超絶というほどではなくても、すっごく優秀なのには違いないのに。あのハイテンポで細かくて複雑な難しい振付を音楽に合わせるのが大変そうでした。

  でも、去年観たロベルタ・マルケスとスティーヴン・マックレー(英国ロイヤル・バレエ団)よりは全然良かったです。特に、タマズラカルの陽気で明るい雰囲気が、作品の盛り上がりをだいぶ助けていました。マルケスとマックレーが踊ったときにも、マックレーが必死で頑張って盛り上げようとしてたけど、逆に温度が下がっちゃってたもんね。

  その前にはマリインスキー・バレエのヴィクトリア・テリョーシキナとレオニード・サラファーノフ(当時)が踊ったのを観ました。あれが今まで観た中では最も良かったです。結局、「ジュエルズ」、「タランテラ」、「バレエ・インペリアル」、「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」など、バランシンの超有名どころの作品でさえも、比較対象となりうる模範的な、理想形的な踊りをまだ観られていない気がします。


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「マラーホフの贈り物 ファイナル」Bプロ(5月25日)‐1


  今回もメモだけねん。詳しい感想はまた後日~(たぶん)。


 『シンデレラ』よりシンデレラと王子のパ・ド・ドゥ(振付:ウラジーミル・マラーホフ、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)

   ヤーナ・サレンコ(ベルリン国立バレエ)、ウラジーミル・マラーホフ(ベルリン国立バレエ芸術監督)

  Aプロと同じ踊りです。マラーホフのパートナリングは、初日(21日)よりはマシになっていました。でも、お世辞にも上手とはいえませんでした(ごめんね)。ガタつきが目立ちました。

  私のカン違いだったら申し訳ないのですが、この演目のカーテン・コールで、果敢にもブーイングを飛ばした観客(男性)がいました。日本人独特の「ブラボー!」、「ブラー!」ではなく、口を両手で包み込むようにして叫ぶ「ヴー!」というくぐもった声です。欧米人がよくやるブーイングの声です。

  マラーホフのパートナリングが不調だった上に、正直に感じたところを言えば、この踊りは振付そのものが極めて凡庸です(本当にごめん)。ブーイングが飛んでも仕方ないと思います。


 『椿姫』より第一幕のパ・ド・ドゥ(振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:フレデリック・ショパン)

   マリア・アイシュヴァルト、マライン・ラドメイカー(シュトゥットガルト・バレエ)

  いわゆる「紫のパ・ド・ドゥ」です。一つの踊りというより、一つの「ドラマ」を見せてもらいました。アイシュヴァルトの踊りと表現、ラドメイカーのパートナリング、二人のパートナーシップ、すべてが見事でした。

  マルグリットが自身の病気と死への恐怖を押し隠して、最初はアルマンに「いかにも娼婦」的な態度で接していたのが、アルマンのまっすぐで純粋な愛に揺り動かされ、アルマンに惹かれていく気持ちとアルマンを拒まなくてはならないという気持ちとの間で葛藤した末に、ついにはアルマンに心を開き、愛の喜びに希望を見出す、というドラマが、踊りと演技とで語られます。

  アイシュヴァルトの爪先での雄弁な動き(←いつ見てもすごい!)と、アイシュヴァルトとラドメイカーのよどみない流れるような踊りとで、マルグリットとアルマンの気持ちが激しくぶつかり合う様が、凄まじい迫力をもって表現されていました。


 「ジュエルズ」より「ダイヤモンド」(振付:ジョージ・バランシン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

   オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエ)

  今日の公演では、なんとバランシンが3演目。バランシンって、踊るほうも難しいでしょうが、観るほうもかな~り難しいです。どう踊られるのが正しいのか、私には分かりません。

  ただし、スミルノワの踊りがまだまだ粗くて雑だということは分かりました。特に脚の動きが時に乱暴です。それから、この作品は「ダイヤモンド」という名のとおり、ダイヤモンドの持つ硬質感、奥深いところから輝く重厚な光と気高さを表現しなくてはならないと思います。

  その点では、まるで人間の男と女のありきたりな恋の踊りになってしまっていたように思います。


 「レ・ブルジョワ」(振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク、音楽:ジャック・ブレル)

   ディヌ・タマズラカル(ベルリン国立バレエ)

  Aプロと同じ演目です。今日もとても楽しめました。タマズラカルの髪の乱れ具合となびき方が実に良いんだよね。野暮ったいけどセクシーで。

  終わり方もユーモラスでした。もともとああいう終わり方だったっけ?最後にタマズラカルは膝をついて両腕をだらんと下げ、うなだれたまま動きません。観客は拍手していいのかどうか分からず、シーンとしています。するとタマズラカルはいきなりばっと両腕を広げて顔を上げ、「ま、仕方ないね!」という感じで首をかしげてニッと笑いました。その瞬間に照明がパッと消える。見事な間合いのはかり方です。

  観客は爆笑し、とたんに拍手と喝采の嵐になりました。タマズラカルはほんとに良いダンサーになったねえ(感嘆)。


 「ライト・レイン」(振付:ジェラルド・アルピノ、音楽:ダグ・アダムズ)

   ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ(ミュンヘン・バレエ)

  ラカッラは淡いグレーの全身レオタード、ディノは上半身が裸でラカッラの衣装と同じ淡いグレーのタイツ。

  これはすばらしかったです。ラカッラの長い脚、驚くほど柔軟な関節、鋭い動きを存分に生かした振付と踊りでした。ラカッラは、もともとこういう踊りのほうが向いているのではないでしょうか?

  ただただラカッラの超人的な身体能力に驚くばかりでした。最後にディノが仰向けに寝っ転がってラカッラを持ち上げながら開脚し(ディノも意外と脚が長かったのだ!)、ラカッラも続いて開脚するところには鳥肌が立ちました。二人の脚が交差して、まるで蜘蛛の足のようでした。

  ラカッラが踊るのであれば、また観たい作品です。(てか、これはラカッラのために作られた作品か?プログラムを買わなかったので分からん。)

  そーいえば、音楽が加藤茶の「ちょっとだけよ~」、「アンタも好きねえ~」ギャグのBGMみたいだったな。


   
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「マラーホフの贈り物 ファイナル」Aプロ(5月21日)-2


  引き続き簡単にメモのみ。詳細は後日。


 『シンデレラ』第二幕よりシンデレラと王子のパ・ド・ドゥ(振付:ウラジーミル・マラーホフ、音楽:セルゲイ・プロコフィエフ)

   ヤーナ・サレンコ、ウラジーミル・マラーホフ

  サレンコは白いドレス。マラーホフも白を基調にした衣装。白は膨張色なので、拡大・増量ぶりが目立つ。マラーホフのリフトがかなり危なっかしくて、サレンコを落としそうになっていた。


 「フランク・ブリッジの主題による変奏曲」(振付:ハンス・ファン・マネン、音楽:ベンジャミン・ブリテン)

   マリア・アイシュヴァルト(シュトゥットガルト・バレエ)、マライン・ラドメイカー

  アイシュヴァルトは紫の、ラドメイカーは光沢のあるモス・グリーンの袖なしの全身レオタード。アイシュヴァルトはオフ・ポワント。

  どんなスタイルの踊りにでも適応できてしまう、相変わらずすごい二人。アイシュヴァルトは柔軟な身体を縦横に駆使して流麗に踊っていた。ラドメイカーとの息も合っており、複雑なリフトを次々とこなしていく。よどみない踊りですばらしかった。


 「レ・ブルジョワ」(振付:ヴェン・ファン・コーウェンベルク、音楽:ジャック・ブレル)

   ディヌ・タマズラカル

  前に観たダニール・シムキンのほうがテクニックは上だが、うらぶれた中年男が新橋のガード下で酔っぱらって、くだを巻いているかのような滑稽な悲哀を醸し出せている点では、タマズラカルのほうが圧倒的に上。テクニック以上に、このユーモラスな雰囲気が観ていて楽しい。


 『椿姫』より第三幕のパ・ド・ドゥ(振付:ジョン・ノイマイヤー、音楽:フレデリック・ショパン)

   ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ

   ピアノ:菊池洋子

  二人の踊りがぴったりと合ってない。ディノのパートナリングも頼りない。このパ・ド・ドゥは、二人の動きがたとえ一瞬でもずれたら、もう立て直すのはほぼ不可能。ディノは途中で疲れ果ててしまったようで、ラカッラを充分に持ち上げることもできなくなっていた。


 『白鳥の湖』より黒鳥のパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ/ユーリー・グリゴローヴィチ、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

   オリガ・スミルノワ、セミョーン・チュージン(ボリショイ・バレエ)

  導入部で、スミルノワは自力アティチュード+ジャンプをやった。自力でやったダンサーを観たのは久しぶり。

  スミルノワもチュージンも、緊張しすぎ、力が入りすぎ。二人とも音楽の終わりに合わせられない、チュージンはパートナリングがおぼつかない、スミルノワはグラン・フェッテの途中で踵が落ちて身体が前のめりになり、両足を床に着いてしまった。

  でも、二人とも場数を踏めばいい段階で、いずれも優れたダンサーだと思う。

  コーダでチュージンがマネージュをするときには、決してまばたきするべからず。すげーぞありゃ。あんな凄まじいマネージュははじめて見た。


 「瀕死の白鳥」(振付:マウロ・デ・キャンディア、音楽:カミーユ・サン=サーンス)

   ウラジーミル・マラーホフ

  最後においしいとこだけ持ってくのは相変わらず(←褒めてます)。これまでの3演目はパートナー要員だったが、ようやくマラーホフの独壇場。凄まじいばかりに美しい踊りだった。腕の動きの柔らかさ、ポーズの完璧さ、安定したバランス。

  マラーホフを20数年間応援してきて、マラーホフの変化にショックを受けたファンの方もいるかもしれない。でも、きちんとマラーホフのキャリアを最後まで見届けて下さい。その意味で、「瀕死の白鳥」が急遽上演されることになったのは、偶然ではなく必然に思えた。


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「マラーホフの贈り物 ファイナル」Aプロ(5月21日)-1


  とりあえずメモだけ。詳細は後日。


 『白鳥の湖』よりグラン・アダージョ(振付:レフ・イワーノフ、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

   オリガ・スミルノワ(ボリショイ・バレエ)、ウラジーミル・マラーホフ

   東京バレエ団

  なんだかマラーホフが115%か122%拡大したような?縮小して86%になってくれとはいわないが、等倍は保っていてほしかった気もする。でも今は芸術監督の仕事が本業なんだから仕方ないか。

  マラーホフのパートナリングがかなり危なっかしい。左脚のふくらはぎに違和感があるとのこと。深刻な状態でないといいけど。

  スミルノワはスタイルに恵まれ、情緒を醸し出すところまでは行ってないけれども、踊りは見事。個性的な踊り方をする。マリインスキー・バレエなら許されないだろうが、ボリショイならOKってことで。

  東京バレエ団の白鳥のコール・ドがすばらしかった。アレクサンドル・ゴルスキーの躍動的な振付は、東京バレエ団に合っているのだと思う。


 「トゥー・タイムス・トゥー」(振付:ラッセル・マリファント、音楽:アンディ・カウトン)

   ルシア・ラカッラ、マーロン・ディノ(ミュンヘン・バレエ)

  ダンサーたちの踊りと照明技術との双方にかなり問題がある。この作品の圧倒的な迫力と凄味がほとんど出ていなかった。


 「ギルティー」(振付:エドワード・クルグ、音楽:フレデリック・ショパン)

   マライン・ラドメイカー(シュトゥットガルト・バレエ)

   ピアノ:菊池洋子

  ラドメイカーはブルーのハイネックの長袖Tシャツに黒いズボン。振付は大したことないが、ラドメイカーの踊りはすごい。


 「ラ・ペリ」(振付:ウラジーミル・マラーホフ、音楽:ヨハン・ブルグミュラー)

   吉岡美佳(東京バレエ団)、ウラジーミル・マラーホフ

  どういう作品だかさっぱり分かんないけど、衣装が『海賊』、『シェヘラザード』、『ラ・バヤデール』みたいにオリエンタルっぽかった。吉岡さんは白い胸当てに白いスカート、マラーホフの衣装は形容しがたい。袖なし、膝丈で刺繍の入った黒い衣装にグレーのスカートを穿き、腰をベルトで締めていた。腕と手首に腕輪。

  マラーホフはやはりただ今20%増量中の模様。やっぱりパートナリングがぎこちない。振付はクラシカル。


 『海賊』より奴隷のパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ、音楽:コンスタンティン・フリードリヒ・ペーター)

   ヤーナ・サレンコ、ディヌ・タマズラカル(ベルリン国立バレエ)

  サレンコもタマズラカルも白いハーレム・パンツの衣装。二人とも以前とは段違いに良いダンサーになっていてびっくりした。

  サレンコは踊りがすごく優雅になり、安定感も増した。プリマらしい余裕もある。また感心したのは、これは奴隷商人と彼に売られる女奴隷との踊りなので、サレンコが悲しげな表情をしていたこと。

  タマズラカルも粗さがなくなって、とても丁寧できれいな踊りになっていた。身体が柔らかい!ジャンプして異様に深いプリエで着地。音がまったくしない。パートナリングも盤石だった。

  この二人をここまで育て上げたマラーホフは偉い!


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島添亮子さん/ストリーター「コンチェルト」第2楽章


  昨夜、NHK「バレエの饗宴2013」がEテレで放映されました。イタリア国際の男子シングルス決勝と時間がかぶったので、録画しておいて今少しずつ観ています。

  小林紀子バレエ・シアターも参加しており、ケネス・マクミラン振付「コンチェルト」全曲(ショスタコーヴィチ「ピアノ協奏曲第2番」)を上演しました。

  クラシック・バレエの練習作品として作られただけに、シンプルな振付と構成だけど、シンプルさがいっそうダンサーたちの動きの端正な美しさを際立たせています。音楽と踊りを合わせるという基本も重視しているので、ダンサーたちの踊りが音楽と見事に連動していて、見ていて気持ちが良いですね。

  第1楽章の最後はちょっとユーモラスな終わり方で、ここも私は好きです。

  最も有名な第2楽章を踊ったのは島添亮子さんとジェームズ・ストリーター(James Streeter、イングリッシュ・ナショナル・バレエ)です。

  今夏の英国ロイヤル・バレエ団日本公演「ロイヤル・ガラ」の演目にも、「コンチェルト」が入っていますが、上演されるのはおそらくこの第2楽章だと思います。

  第2楽章での女性ダンサーの独特な動きは、振付者のケネス・マクミランが、当時の英国ロイヤル・バレエ団のプリマ、リン・シーモアがバー・レッスンをしている様子を見て、その姿のあまりな美しさに着想を得て振り付けたんだそうです。

  島添さんの踊りがテレビで放映されたのは、これが最初ではないですか?私はこの公演を生で観ませんでしたが、今こうして画面を通じて観ていても、うっとりと見惚れてしまいました。

  島添さんのパートナーを務めたジェームズ・ストリーターのパートナリングも見事ですし、島添さんの強靭でしなやかな筋力に支えられた、情感豊かな踊りがすばらしいです。

  両脚が微動だにせず、美しい弓なりの形で静止している中で、上半身と腕だけが柔らかに、流れるように動いていきます。

  この第2楽章は初演者のリン・シーモアに合わせて振り付けられたので、他の楽章よりも女性ダンサーの動きの難度が高く、男性ダンサーのサポートとリフトもやや複雑で、二人の動きを合わせるのが難しいと思うのですが、島添さんとストリーターの踊りは自然でよく合っていますね。

  それにしても、島添さんはサポートされても、空中でリフトされても動きやポーズがまったく崩れません。島添さんはパートナー任せで自分を支えさせているのではなく、自分で自分を支えているからです。だから動きも軸もブレず、バランスも失ないません。

  島添さんは、見た目は小鹿のように可愛らしくて儚げで、動きも柔らかく優雅でしなやかです。でも実は心身両面で凄まじいほどに強いダンサーです。私は心中ひそかに、島添さんのことを「鋼の女」と呼んでいます(笑)。

  前にも書きましたが、今年の8月24、25日、小林紀子バレエ・シアターはケネス・マクミラン振付『マノン』全幕上演を行います。この島添さんがタイトル・ロールです。デ・グリューは英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパル、エドワード・ワトソンです。

  一民間バレエ団による『マノン』なんて期待できるのかなあ、とためらっておられるみなさまは、今回放映された「コンチェルト」での島添さんの踊りがご参考になるかと思います。

  チケットはもう発売されています。チケットぴあ、イープラスなどのチケット・エージェンシー、小林紀子バレエ・シアターでも販売しています。私はすでに両日ともチケットをゲットしました。るん♪

  なんでこの記事を書いたかというと、今回の「バレエの饗宴2013」放映に乗じて、小林紀子バレエ・シアター公演『マノン』の宣伝を勝手にしたかったからです(笑)。


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イタリア国際 ロジャー・フェデラー総括-3


 準決勝 対 ベノワ・ペー(フランス)

   7-6(5)、6-4

  ペーが改心したらしい。今日は(割と)お行儀が良かった(ボールを蹴っ飛ばしたり、大声で叫んだりしてたけど…)。

  ペー(←196センチ)はファースト・サーブが絶好調で、サービス・エースをどんどん取っていました。リターンも良く、コントロールの利いた鋭いボールをサイド・ラインぎりぎりに入れます。ネットにも積極的に出てきて、落ち着いてプレーしていました。

  フェデラーは勝ったけど、ファースト・サーブは入らないわ、凡ミスは異常に多いわ、ブレーク・ポイントを取ってもなかなか決められないわで、はっきり言って不調でした。マスターズの準決勝で観客に披露すべきレベルのプレーではなかったと思います。

  臆測ですけれども、もう決勝での対ラファエル・ナダル戦に気持ちが行っちゃってて、心ここにあらずの状態だったのかもしれません。あるいは、また背中の調子が思わしくなくなったことも考えられます。フェデラーは、自分の体調に関しては異様に口が堅いし、そうしたそぶりも絶対に見せませんから、ちょっと心配です。

  第1セットで、フェデラーは先にサービス・ゲームをペーにブレークされてしまいました。ただやはり「落としてはいけないところ」や「勝ちどころ」では強く、次のペーのサービス・ゲームをさっそくブレークして、またもやタイに引き戻しました。タイ・ブレークでも、ペーに一時はリードされましたが、5-5になった瞬間から積極的なプレーでポイントを連取し、第1セットを取りました。

  第2セットに入ると、ペーの集中力が落ちてきました。あれほど好調だったファースト・サーブがなぜか入らなくなり、ダブル・フォールトを次々と犯していきます。第4ゲームはペーのサービス・ゲームでした。30-30の同点になった大事な局面で、ペーはなんと連続でダブル・フォールトを仕出かしてしまい、このゲームをフェデラーにブレークさせてしまいました。

  第2セットの半ば以降、ペーは相変わらずファースト・サーブが入らず、凡ミスも一気に増えました。なんとか自分のサービス・ゲームを守るので精一杯になり、相手のサービス・ゲームをブレークするどころではない様子でした。

  フェデラーは不調ながらも自分のサービス・ゲームを堅実に守り、危なくなりそうな局面では自分から積極的に攻撃をしかけて、ペーに付け入る隙を与えません。フェデラーが5-4とリードしての第10ゲーム、フェデラーはペーに1ポイントも与えずに勝ちました。

  決勝はラファエル・ナダルとです。今日のフェデラーの調子からすると、フェデラーのほうがかな~り分が悪いです。しかも、今回のフェデラーの試合は現地時間18日夜8時開始、夜9時半過ぎに終了でしたが、決勝は現地時間19日午後4時からです。寝て起きたらすぐナダルと試合ってひどくない?

  ところで、試合終了直後、解説者たちが中継スタジオから、まだコートにいるフェデラーにインタビューをしました。フェデラーはヘッドセットを付けています。しかし、スタジオからの音声はフェデラーに聞こえているらしいのですが、フェデラーの声がスタジオに聞こえません。機器の不具合のようです。

  そこで解説者はフェデラーにジェスチャーで答えてくれるよう頼みました。フェデラーはにこにこ笑いながら、祝いの言葉に両手を一生懸命ぶんぶん振って応え、ナダルとの対戦について聞かれて、「大丈夫!頑張るよ!」という感じで、両手の親指をぐっと立ててガッツ・ポーズをしました。キュートだぜおっさん。

  決勝戦、フェデラーがどこまでやれるか見てみましょ。


 決勝 対 ラファエル・ナダル(スペイン)

   1-6、3-6

  復帰後わずか7戦目でのマスターズ準優勝、おめでとう!

  試合は完敗でしたね。仕方ない。ナダルはさすがクレー・キングといわれるだけのことはあります。

  フェデラーは前日の準決勝での不調を引きずっていました。いくらナダルの土俵上であるクレーでも、あれは明らかにおかしいです。凡ミスのあまりな多さと、何よりも覇気のないプレー(←これが最も不可解)に、観客からブーイングが浴びせられたほどでした。2回戦と3回戦でのあの闘志と超攻撃的なプレーは、いったいどこに行っちゃったんでしょう。まさか1日や2日の間に「年齢的な衰え」がいきなり出るわけないし。

  昨日の準決勝から様子がおかしくなったので、準々決勝あたりでまた背中の故障がぶり返しちゃったのかな。あるいは、精神的な問題かもしれません。身体的な故障なら医者やトレーナーに任せるしかないし、精神的な問題なら、フェデラー本人が家族や友人や専門家の助けを借りて、なんとかするしかないでしょう。いずれにせよ、フェデラーは今回も一切弁明しないだろう。

  個人的には、フェデラーはもっと言い訳をしてもいいと思うんだけどね。3月から5月にかけて、2ヶ月間も大会に出場しなかったのは、背中などの故障のせいで治療と療養に専念していたのだ、とはっきり説明するべき。シーズン中に2ヶ月も休養を取ったのは、プロデビュー以来初めてのことだったんでしょう。

  その間、フェデラーのコーチであるポール・アナコーン、フィジカル・トレーナー、マネージャーでもあるミルカ夫人をはじめとするフェデラーの関係者も、一貫して沈黙を守っていました。フェデラーの意思によるものでしょう。

  フェデラーは復帰後、休養についてインタビューで問われても、「ちょっと怪我をしていたから治していた」くらいしか言わないで、後は「調整してた」ではぐらかしてしまった。

  何も説明しないから、2ヶ月も大会に出ないなんて、と非難されるし、負けると恒例、「フェデラー年齢限界説」が飛び出すんですよ。一方、ラファエル・ナダル側はイメージ操作と情報操作に非常に長けているし、ナダル復活劇の演出も、確実な段取りを踏む見事なものでした。優秀な専門アドヴァイザーとスタッフを揃えてると分かります。

  今回の結果で、「フェデラーはもう衰えた」、「年寄りのフェデラーはさっさと引退しろ」とか言ってる人は、両者の今回の状況の違いを比較して考えてみたほうがいいよ。ナダルは復帰してから何ヶ月経つ?何大会をこなしてきた?何戦目?ナダルの最も得意なコートは?ナダルの今の調子は?

  対して、フェデラーは復帰後どのくらい経つ?何大会目?フェデラーの最も得意なコートは?フェデラーの今の調子は?フェデラーは復帰して2週間、2大会目、まだ7戦目です。それなのに、マスターズ1000という大きな、しかも最も難しいクレーの大会で準優勝した。

  この戦績は、よく考えてみればすごいことなんですよ。なのに、しかるべき評価を受けられず、逆にメディアや一部のファンに揶揄され、非難される。

  フェデラーは、たとえば「調子は徐々に回復してきている」とか、「復帰したばかりなのに良い結果が残せて嬉しい」とか、「まだ背中の具合が気になるが、やれるだけやってみるさ」とか絶対に言わない。こういうことを言っておけば、負けても仕方がないと受け止めてもらえるだろうし、勝てば劇的勝利と扱われるのに。

  こうした予防線を張らないから、フェデラーは負けるたびにバッシングに遭うんです。それでも言い訳や釈明をまったくしないところが、私は好きなんですけどね。

  …あれ、今、NHKで放送された「バレエの饗宴2013」の録画を観てるんだけど、『コッペリア』第三幕のフランツのヴァリエーションって、音楽が『シルヴィア』第三幕のアミンタのヴァリエーションと同じだっけ?レオ・ドリーブの作曲だからね。

  東京バレエ団のモーリス・ベジャール版「春の祭典」と、小林紀子バレエ・シアターの「コンチェルト」(ケネス・マクミラン振付)が録画できてよかった♪ …「黒鳥のパ・ド・ドゥ」はひどいねこりゃ。映像で観てこれだけ踊りが粗いということは、生で観たらもっと粗かっただろう。

  話は戻って、フェデラーがインディアン・ウェルズの大会でナダルに負けた後、落ち込んでいた私に向かって、ウチの姉が小バカにしたように言った。

  「そんなに落ち込むんなら、これからはナダルっていう人を応援すればぁ?」

  至言である。以来、私はフェデラーを徹底的に応援すると決めた。フェデラーが負けてどんなに辛くても、逃げないでその辛さをとことん味わうのだ。

  私もファンとして一緒に頑張るぞおっさん。


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イタリア国際 ロジャー・フェデラー総括‐2


 準々決勝 対 イェジ・ヤノヴィッツ(ポーランド)

   6-4、7-6(2)

  ヤノヴィッツって、去年秋のパリ・マスターズで上位選手を次々と倒して話題になった選手だな。でもそれより、すでに世界ランキングが50位前後だったのに、去年の全豪オープンにはお金がなくてエントリーすらできなかった、という逸話のほうが印象に残ってるわ。いくら優れた能力を持っている選手でも、資金がないと実績を上げるチャンスそのものが得られないんだなあ、と。

  その後、ちゃんとスポンサーがついたみたいで、テニスのニュースでヤノヴィッツの名をよく見かけるようになりました。でも、ヤノヴィッツはなんだか一部のファンの間で評判が良くないみたいです(「バカ打ち」、「自信過剰」といった声あり)。

  今回の大会でも、ヤノヴィッツはトップの選手たちを倒して勝ち上がって来ました。対ジョー・ウィルフリード・ツォンガ戦直後の写真を見たら、ヤノヴィッツは勝利した嬉しさのあまり、ウェアを両手でびりびりに引き裂いていました。リアル北斗の拳(笑)。

  そして今日の試合、ヤノヴィッツはポイントを取るたびに、こぶしを握った腕を大きく振り上げ、いちいちガッツポーズをしていました。あとは、なぜかぐずぐずして規定時間どおりに位置につかず、主審から注意を受けたりね(しかも注意されてるのに気づいてないしw)。たぶん、こういうふうに感情を激しく露わにするところや若さゆえの大胆不敵さに、今ひとつ好感を持てない人が多いんでしょう。

  ただ、ヤノヴィッツは決して「バカ打ち」選手ではないと思います。ビッグ・サーブとフォア・ハンドの強打が確かに目立ちますが、ネット・プレーもちゃんとやります。特に第2セットでの、ヤノヴィッツのこのプレーがすごかった。フェデラーのパッシング・ショット(3、4回)をことごとく遮り、最後に超鋭角のボレーで決めたところ。フェデラー顔負けのすばらしさでした。

  でもまだ若い(22歳)せいか、粗くて偏りが激しいというか、たくさんの武器を持ってるのに有効活用できてないというか。たとえば、第1セットではドロップ・ショットを異常なほど多用したかと思うと、第2セットではほとんど用いない。すばらしいボレーを持ってるのに、入りの良くないサーブやラリーでの強打一本に頼ろうとする。

  スコアこそストレートで、また試合時間も1時間20分ほどでしたが、フェデラーは手こずっていました。ヤノヴィッツが速いテンポで、ものすごくパワフルなリターンをラインぎりぎりに打ってくるので、フェデラーが後ろに押されながら打ち返す場面が多く見られました。

  またどうもヤノヴィッツはフェデラーの意表を突くところに打ってくるらしくて、珍しくフェデラーが振り回されていました。フェデラー持ち前の優れた反射神経のおかげで、なんとか間に合って対応できていた印象です。

  フェデラーは、200センチ前後の高身長から放つ強烈なサーブを得意とする、いわゆる「ビッグ・サーバー」を相手にするとき、まず自分のサービス・ゲームはきっちり守ります。そのせいで、「ビッグ・サーバー」である相手よりもサービス・エースを量産する結果になるようです。今回も同様で、ヤノヴィッツ(203センチ)の倍以上もサービス・エースを取っていました。ちなみにフェデラーの身長は185~6センチです。

  次にフェデラーがやるのは、相手のビッグ・サーブを逆利用して圧力をかけ、相手のミスを誘発していくことです。ジョン・イスナー(206センチ)やミロシュ・ラオニッチ(196センチ)と戦ったときもそうでしたが、相手の武器である超速ファースト・サーブをとにかく打ち返します。

  今回もヤノヴィッツの平均時速200キロを超えるサーブ(最速で236キロ!)を多く打ち返してました。これがラインぎりぎりに入るのです。更に相手のセカンド・サーブで積極的に攻めてポイントを取りにいきます。

  こうなると、相手は絶対にファースト・サーブを入れなくてはならないプレッシャーにさらされることになります。現に、ヤノヴィッツは徐々にダブル・フォールトが増えていきました。同時に、ボールをネットに引っかける、ボールがラインから外れる凡ミスも多くなりました。

  フェデラーは我慢して常にチャンスをうかがっていたようでした。第1セットでブレーク・ポイントを握ると、それを逃さずに決めて第1セットを取りました。ところが、第2セット、フェデラーは最初のサービス・ゲームを早々にブレークされてしまいました。

  そのままヤノヴィッツがリードして5-4となった第10ゲーム、ヤノヴィッツのサービス・ゲームです。ヤノヴィッツがキープすれば第2セットを取れます。ところが、ヤノヴィッツはその緊張のせいかプレーが硬くなりました。するとフェデラーはすかさずその隙を突き、ブレークし返して5-5のタイ・スコアに戻しました。

  第2セットはタイ・ブレークとなりました。フェデラーのリードで4-2になったあたりで、もう完全にフェデラーのペースになっている、試合の流れがフェデラーに傾いていることが分かりました。観客もフェデラーの勝利を期待して騒ぎ出します。

  (ヤノヴィッツにとって)嫌な雰囲気になったなあ、と観ていて思いました。案の定、フェデラーはこの流れに乗じてポイントを連取し、一気に決着をつけました。おっさん、大人の作戦勝ち。こういうふうに、相手を徐々に切り崩していく過程を見るのはすごく面白いです。

  今日の試合は、戦術、経験とメンタルの差でフェデラーに負けてしまいましたが、ヤノヴィッツは将来が非常に有望な選手だと思います。フェデラーは試合後、にこにこと相好を崩しながら、ヤノヴィッツの肩や胸を盛んに叩いて話しかけていました。よほどヤノヴィッツのことが気に入ったんだと思います。


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イタリア国際 ロジャー・フェデラー総括-1


  この大会は第1~8シードの選手が1回戦免除なので、

 2回戦 対 ポッティート・スタラッチェ(イタリア)

   6-1、6-2

  スタラッチェは現在世界ランキング293位、この大会にはワイルド・カードで出場した。でも、1回戦でラデク・ステパネック(48位)を破っている。フェデラーと同じ31歳。

  今日の主審も例の慧眼審判。今日はイタリア語と英語でコールしていた。いったい何ヶ国語が話せるのか。英語に加えて、スペイン語とイタリア語ができるということは、たぶんフランス語も話せるに違いない。

  慧眼審判は今日も動体視力が絶好調で、ホーク・アイを待つまでもなく、親指と人差し指で「このくらいラインにかかってた」と具体的な幅を示したり、スタラッチェのサーブがネット上を通過した瞬間に「レット!」とすぐさまコールしたりしていた。

  スタラッチェは抗議したが冷静な口調できり返され、フェデラーもこの審判には従順で、審判の確認に対して正直にボールの落下点を申告する。

  が、この慧眼審判はお茶目な面もあり、カメラが自分に向いていると分かると、カメラ目線で手を振っていた

  フェデラーはマドリッドの大会と同じウェアで、ライム・グリーンのシャツにチャコール・グレーの短めのズボンだった。先週のふがいない敗戦をいたく反省した証か、 頭を丸坊主にしていた。 髪をすごく短く切っていた。

  試合は51分で終わった。今日は「たとえ293位の選手が相手でも容赦はしまへん」という、気合いがガンガンに入りまくった超攻撃的なプレーだった。強烈なスピードの球が伸びる伸びる。ファースト・サーブも信じられないほど高くバウンドする。ネット・プレーも絶好調。凡ミスをしない。マドリッドの大会とは別人化していた。

  あまりに一方的な試合展開に、第2セットでは実況中継までが「ブラヴォ!ポッティート!」、「カモーン!ポッティート!」とスタラッチェを応援し始める始末。

  スタラッチェはフェデラーのバック・ハンド側を集中的に狙っていたが、今日のフェデラーはバック・ハンドのリターンが絶好調で、スタラッチェは返り討ちに遭っていた。

  ところで、スタラッチェのコーチが、試合中にスタラッチェに向かってバック・ハンドの仕草をしていた。「フェデラーのバック・ハンド側を攻めろ」という意味らしい。これ、ルール違反じゃない?

  実況中継とフェデラーの試合後のインタビューからすると、先週の敗戦はもはや過去の笑い話になってるようだった。ようやく目が覚めたかおっさん


 3回戦 対 ジル・シモン(フランス)

   6-1、6-2

  試合が始まったのは、現地時間16日午後9時過ぎ(日本時間17日午前4時過ぎ)から。これは意外と助かるんです。夜早く寝て、朝早く起きればいいから。日本時間午前12時とか午前2時とかにやられると、平日はさすがに観られません。

  今日もおっさんイケイケドンドンでした。シモンとの対戦成績は2勝2敗ということなので少し心配でしたが、どうして2敗もしているのか不思議に思える試合内容でした。

  シモンの調子が悪かったのかも。凡ミスが多くて、ファースト・サーブもなかなか入りませんでした。

  フェデラーはさすがにスタラッチェ戦ほど楽勝だったというわけではなくて、特にフェデラーが4-2とリードした第2セット第7ゲーム、シモンのサービス・ゲームでの攻防はなかなか見ごたえがありました。

  フェデラーがブレーク・ポイントを握る、シモンがピンチをしのいでデュースにする、シモンがアドヴァンテージを握る、フェデラーがまたデュースに戻す、フェデラーがブレーク・ポイントを握る、シモンがしのいでデュースにする…という一進一退の攻防になりました。このゲームだけで10分近くかかったと思います。

  これほど長引いたからには、フェデラーはこのゲームを絶対にブレークしないといけないな、と少しヒヤヒヤしました。シモンがキープしちゃったら、試合の流れが変わってしまうかもしれないから。

  でも、フェデラーは5回目のブレーク・ポイントでやっとこのゲームを取りました(シモンのミス)。

  フェデラーは、今日はフットワークがめちゃくちゃ軽かったように感じました。シモンもフェデラーのバック・ハンド側ばかりを攻めていましたが、フェデラーは今日もバック・ハンドのリターンが良く、また逆に回り込んでフォア・ハンドで返すことが多かったです。

  ボールがわずかにラインの外に出てしまう、ボールがネットに引っかかるといった類のミスも少なかったです。ただ、打てたはずのボールをフェデラーが空振りするというミス(???なんで?)が1回あって、これには思わず笑ってしまいました。実況中継も笑っていました。

  サーブも好調で、ファースト・サーブの入りは良く、セカンド・サーブでもエースを取ったりしていました。

  前回の対スタラッチェ戦に続いて、こんなに安定感のある強いフェデラーを見るのは、なんか久しぶりのような気がします。


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小麦アレルギーと米アレルギー


 注:以下の記事の冒頭部分には、人によっては不快感や吐き気を催すような内容が書かれています。グロい話題に敏感なみなさま、お食事中のみなさまはご注意下さい。


  先日、お昼ご飯を食べているとき、中国人の同僚が不意に嘆いて言った。「いったい、中国の食べ物はなんでこうなっちゃったの?なぜ業者たちには道徳心がないの?」 私は聞いた。「また何かあったの?」 食事中とあって、同僚は注意深く「気持ちの悪い話よ?」と念を押した。私「いいよ。」

  同僚の話では、ネズミの肉を羊肉と偽って販売した事件が起きたという。そんなことが可能なのかと疑ったけれども、ブロック肉ではなくて、ひき肉、こま切れ肉、薄切り肉にしてしまえば分からないかもしれない。

  で、調べてみたら、同僚の話は本当だった。それは無錫市(江蘇省)と上海市で起こった。集団犯罪で、山東省からキツネ、イタチ、ネズミなどの未検疫の肉を仕入れ、ゼラチン、食紅、塩などを加えた上で、羊の肉と称して江蘇省と上海市の生鮮食品市場で販売した。この2月に無錫市公安局が一斉摘発に乗り出して容疑者63人を逮捕、加工場50余箇所を捜索して原材料、半加工、加工済みの肉10余トンを押収した。

  中国で羊肉を食べるのは、元来は北西部の地域だった。おおまかにいえば北方の食べ物に属する。しかし、流通が発達した現在では、各地の食習慣や食べ物が互いに流入しあっているため、南方でも羊の肉が食べられている。主に串焼きや鍋(火鍋)で食べる。串焼きに用いるのはこま切れ肉、鍋に用いるのは薄切り肉なので、騙すことができたのだと思う。

  羊の串焼きも羊肉を入れる火鍋も、私は大好きなのでショックだった。特に羊の串焼きは独特の赤いスパイスが効いてすごく美味。ビールのお供に最適である。こんな事件が起きてしまっては、もう向こうで怖くて食べられないじゃんよ。

  キツネ、イタチ、ネズミは食べたことがない。味や食感が羊と似てるのだろうか?安全なら何事も経験で食べてみたいけど、未検疫なのはもちろん嫌。中国では他にも、病死した羊の肉が不正に市場に出荷され、それを食べた人が死亡する事件が起きている。

  中国人というのは大抵のことには動じないが、食べ物に関しては一転して非常に神経質になる。穀物、野菜、果物、肉、魚、加工品など、国産の食べ物は誰も信用していない。だから富裕層は外国産の輸入食品を買って食べる。広東省の人々は香港に食料品の買い出しに行く。

  同僚の中国人は言った。「どうしてこんなことが起きるの?」 そしてまたくり返した。「道徳心はどうなっちゃったの?」

  私は言った。「日本でも、半世紀前に経済が急速に発展した時期には、今の中国とほとんど同じ事件が起きてるんだよ。大気汚染、水質汚染、工場排水に汚染された魚、有毒の食用油や粉ミルク、中国で起きてる公害は日本でもみんな起きたよ。経済が急激に発展すると、どの国でも同じ公害が起きてしまうものなんだよ。これから長い時間をかけて、徐々に解決されていくよ。」

  しかし、同僚は言い返した。「日本の場合は、公害を起こしたのは特定の企業だったでしょ?だからその企業が訴えられて、有罪になって解決できたのよ。でも中国では一つの企業だけじゃない。全国のいたるところで同じ不正が行われてる。どう解決すればいいの?」

  そう言われて、私は言葉に詰まってしまった。辛うじて「中央や各地方の政府が…」と言いかけたけど、中央政府のお達しをみな素直に守るなら苦労はない。また、地方政府は地元企業とカネを通じて癒着しているのが当たり前で、不正を摘発するわけがない。中国の法制度と司法機関はまだ未熟で、人々の間でも法律を守るという意識が薄い。

  中国全土で後を絶たない公害を解決する道は、まだまったく見えてこないのが現実だ。

  さて、この間、『ビッグイシュー日本版』を数ヶ月分まとめ買いして、今読んでいるのだけど、213号(2013年4月15日号)に面白い話題があった。本家の"The Big Issue UK"の記事を翻訳したものである。ビッグイシュー・オンライン に要約(4月19日付け)版が載っている。

  記事の題名は「英国、麦類に含まれるグルテンが巻き起こす『グルテンフリーダイエットとセリアック病』」。イギリスで富裕層を中心にグルテンフリーと呼ばれるダイエット法が流行している現象と、グルテンに反応するセリアック病という疾患についての内容である。

  記事本文の冒頭にノヴァク・ジョコヴィッチとアンディ・マレーの名前が出てきたので驚いた。ジョコヴィッチはグルテンフリー・ダイエットを始めてすぐにウィンブルドン選手権で優勝し、マレーもグルテンフリー・ダイエットをツイッターで礼賛していると書いてあった。

  もっとも、ジョコヴィッチの場合は、もともとグルテン・アレルギーだったとニュースで読んだことがある。アレルギー反応のせいで試合で実力が出せず、後に検査でグルテン・アレルギーだと判明し、それでグルテンを含む食品の摂取を止めたという。一方、マレーもグルテン・アレルギーなのか、グルテンフリー・ダイエットを実行しているのかは分からない。

  「グルテン・アレルギー」とは、日本でいえば「小麦アレルギー」とほぼ同じ意味だと捉えていいらしい。ただし、グルテンは小麦だけではなく、大麦、ライ麦など麦類のほとんどに含まれている。また、小麦アレルギーを持っている人の大部分はグルテンに反応するが、一部の人はそうではないという。

  「セリアック病」は知らなかった。記事によると、セリアック病もグルテンに反応するのだが、アレルギーとは違うらしい。自己免疫疾患の一つで、グルテンを摂取することによって起こる症状は、体調不良、腹痛、吐き気、嘔吐、下痢などで、悪化すると栄養失調、骨粗鬆症や腸がんを発症する危険のある病気である。根治療法はなく、とにかくグルテンを摂取しないようにするしかない。

  セリアック病は「欧米人に特有の病気とされており、日本での発症例については現在調査中」だそうだ。しかし、検索してみたら、日本にもセリアック病の患者はいるのだ。患者本人の方、また家族に患者がいる方が書いたブログが多く見つかった。

  また記事によれば、イギリスでのセリアック病の発症率は100人に1人だそうで、これは高い数値だと思う。しかし、イギリスでもこの疾患についてはよく知られておらず、セリアック病である本人がその事実を知らず、医師もセリアック病だと正確に診断できない場合が多いという。患者が多いイギリスでさえこうなのだから、まして日本の現状がどうなのかは想像がつく。

  イギリスは物価が年々順調に(?)上昇していく不思議な国だが、緊縮財政政策で医療予算が削られた結果、なんと、セリアック病の患者が唯一口にできるグルテンフリー食品のほとんどが、保険適用外になってしまった地方もあるというのだ。

  しかし、イギリスにおけるグルテンフリー食品の市場は拡大し続けており、グルテンフリー・ダイエットの流行がこれに拍車をかけている。グルテンフリー食品は非常に高価で、グルテン・アレルギーやセリアック病の人々に重い経済的負担を強いているが、マーケットがどんどん拡大していけば、いずれは値下がりする可能性もある。

  記事の中で気になったのは、貧困層ほどセリアック病の診断率が低いということだった。その理由が今ひとつ明瞭に書かれていなかったが、おそらく、こうした人々のほとんどがセリアック病についての知識を持たないこと、専門医の診察を受ける機会がないこと、高額な治療費を継続して捻出できないことなどが理由だろう。

  欧米では貧困層の人々ほど太っている。安上がりにお腹を満たそうとすれば、カロリーの高い安価なジャンク・フードが主な食事内容になり、その中には小麦や豆をはじめとする穀類も含まれている。かくして、貧困層の人々はたとえグルテン・アレルギーやセリアック病を有していても、炭水化物を大量に食うしかない。その一方で、富裕層の人々はアレルギーでもセリアック病でもないのに、高価なグルテンフリー食品を買って、グルテンフリー・ダイエットに励むという皮肉な構図が浮かんでくる。

  ヨーロッパ人の主食はずっと小麦だったのに、なぜ小麦に対するアレルギーが今さら増えているのか、不思議に思って検索してみた。小麦アレルギー(グルテンが原因だとは限らないのでこう書いておきます)は、たとえばパスタの本場であるイタリアでも増え続けているという。

  その原因の一つに、輸入小麦の増加があるらしい。イタリア人がそれまで食べていなかった外来の小麦を日常的に食べるようになったとたん、小麦アレルギーが増加したのである。
  
  ヨーロッパで主食の小麦に対するアレルギーが増えているということは、日本でも同じ現象が起きている、つまり主食の米に対するアレルギーが増えているはずだ。検索したら、やっぱりあった。「米アレルギー」。かなり多いようだ。

  米アレルギーが増加した主な原因は、なんと米の品種改良。日本人がそれまで食べていなかった、品種改良された新しい種類の米を日常的に食べるようになったのにともなって、米アレルギーが増えたというのである。米アレルギーの研究は比較的進んでいるようで、現在ではアレルギーが出にくい品種の米も生産されている。

  中国での食品公害の原因は、汚染された土壌での栽培、有毒性の極めて強い農薬の使用、家畜へのホルモン剤や抗生物質の過剰投与、偽装食品の横行など。ヨーロッパでの小麦アレルギー増加の一因は輸入小麦。日本での米アレルギーの主な増加原因は品種改良。

  こうなると、それぞれ原因は違うようだが、いずれも元来の自然と食環境に手を加えた結果という点で、実は根は同じなのではないかと思えてならない。

  私は富裕層や知識人層のファッションとしての「ロハス」や「スロー・フード」に興味はないどころか、嫌悪感すら抱いている。だから自然に帰れ、原点に戻れ、などといったスローガンを叫ぶつもりは毛頭ない。けれど、みなが腹いっぱい食べられることを追求した結果、新型のアレルギーや疾患が出現したのだとしたら、なんともいえない皮肉さと複雑さとを感じる。


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デ・グリューはエドワード・ワトソン


  今年の8月24日(土)、25日(日)に行われる小林紀子バレエ・シアター公演『マノン』(ケネス・マクミラン振付)全幕ですが、デ・グリュー役はエドワード・ワトソン(英国ロイヤル・バレエ団)だそうです。

  島添亮子さん、後藤和雄さんの他の主な出演者も発表されました。一昨年の公演からすれば、配役はおそらく、

  マノン:島添亮子、デ・グリュー:エドワード・ワトソン、ムッシューG.M.:後藤和雄、マダム:大塚礼子、レスコー:奥村康祐、レスコーの愛人:喜入依里、高級娼婦:高橋怜子、萱嶋みゆき、看守:冨川直樹、

  だと思います。 中尾充宏さん、真野琴絵さんのお名前も見えますが、詳しい役名は分かりません。

  ロバート・テューズリーがもう出演できないなら、以前に小林紀子バレエ・シアターの公演にゲスト出演したダンサーのうち、デ・グリューを踊ることになるのはヨハン・コボーかエドワード・ワトソンしかいないだろうと思っていました。

  デヴィッド・ホールバーグは、アメリカン・バレエ・シアター時代にデ・グリューを踊ったかもしれないけど、今はボリショイ・バレエに在籍しているので無理だろうと。

  エドワード・ワトソンなら大丈夫。信頼できる。踊りも演技もすばらしい、また知的なダンサーだから。パートナリングの能力もまったく問題ありません。『マイヤーリング(うたかたの恋)』のルドルフ皇太子(←超難役)をこなすような人です。

  ワトソンは英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルに昇格した数ヶ月後、小林紀子バレエ・シアター『くるみ割り人形』に客演しています。あのときのワトソンと、現在のワトソンはまったく違います。別人レベルで変化しました。

  プリンシパルに昇格したばかりのころは、特にこれといった特徴のない、地味な目立たないダンサーでした。ワトソンのプリンシパル昇格は、「ロイヤル・バレエ学校出身のイギリス人プリンシパル」を輩出したかった、ロイヤル・バレエ側の意図に助けられた部分もありました。

  しかし、誰よりもワトソン自身がそのことをよく分かっていて、ワトソンはその後すごく努力したようです。自分の長所をもっと伸ばすこと、自分の新しい可能性を探って開拓すること、役を徹底的に研究することによって様々な解釈を施し表現することなどです。その結果、ワトソンは非常に個性的で優れたダンサーに成長しました。

  ワトソンのデ・グリューを観てみたかったので、ワトソンに決定して嬉しいです。


  チケットの一般発売日も決まりました。5月18日(土)午前10:00より。良い席はお早めに~♪


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ムチュア・マドリッド・オープン ロジャー・フェデラー総括


  この大会、第1~8シードの選手は1回戦免除ということで、いきなり

 2回戦 対ラデク・ステパネック(チェコ)

   6-3、6-3

  主審が、あの鼻にかかった声できびきび話す超慧眼オヤジだった。今回も驚異的な慧眼ぶりを発揮してた。

  ステパネックがアウトではないかと抗議したフェデラーのリターンをインと判定。ホーク・アイで確認したら、確かに横のラインにぎりぎりかかっていた!このオヤジが主審だとなんか頼もしい。

  主審はスペイン語と英語でコールしていた。今日もフェデラーを「フェデレール!」と遠慮なく呼んでいた。テニスの審判って、英語、フランス語、スペイン語の3ヶ国語は最低限できないといけないんだろうな。

  フェデラーはライム・グリーンの丸首Tシャツに濃いグレーのズボンで、普段の練習着で来たのかと思った。なんかウェアにやる気が感じられない。表情もなんかぬぼーっとしていて、シエスタ(昼寝)から起きたばかりかおっさん、という感じ。

  フェデラーは第2セット5-2でサービス・ゲームを迎えたので、もうこのまま勝つなー、安心安心、……とは思いませんでしたよ!この前の対スタニスラス・ワウリンカ戦のことがあるからね。案の定、なんかもたついてブレークされてしまった。

  ところが、フェデラーは窮地に陥ると途端に超攻撃的で異様に強くなる。次のステパネックのサービス・ゲームをあっという間にブレークして勝っちゃった。なんで余裕のあるときにはミスしまくるくせに、ピンチになると攻撃レベルと精度が高くなるのか。

  でも、フェデラーならではの美しいフォームと多彩な技が、久しぶりにたくさん見られて面白かった。ネットの端からの超鋭角ボレーや後ろ向きにジャンプしてのボレーなど。ステパネックのスマッシュを返してラリーに持ち込み、ポイントを取ったりもしていた。

  ステパネックはフェデラーよりも3歳年上の34歳。いかにもベテランらしい、しぶとい選手だった。窮地に陥ってもあきらめない。タフ。それにお茶目。

  第2セット第8ゲームか第9ゲームだったか、ネット際にいたステパネックは、やはりネット際に飛び出してきたフェデラーが、自分のほとんど真正面からリターンしようとしたとき、ボールを避けようとユーモアある仕草で身をかがめた。もうほとんど負けが決まっていたときに冗談をかますこの余裕。フェデラーもステパネックにボールが当たらないよう、鋭角で横のライン際に返した。

  試合終了後、フェデラーとステパネックは握手を交わした後も長いこと話していたから、普段も仲が良いんだと思う。

  ボール・パーソンは、みな美人でナイスバディ、超ミニスカで生フトモモを惜しみなくむき出しにしたセクシーお姉さんたち。あれでは男子選手は試合に集中できないのではないだろうか。深く憂慮されるところである。


 3回戦 対 錦織 圭(日本)

   4-6、6-1、2-6

  うーん、複雑な気分だなあ。日本人選手がフェデラーを破ったことは喜ぶべきなんだろうけど、私はフェデラーのファンだからね。日本人選手なら特に応援するというわけではないから。

  錦織選手のプレーはすばらしかったです。それは素直に認めるべき。サーブは良いし、コントロールが良くてミスをせず、メンタルも強く、また対フェデラー作戦も功を奏していました。フェデラーのバックハンド側を連続して攻め続け、フェデラーを左サイドに引き付けておいて、最後にフォアハンド側の右サイドにウィナーを決める。

  一方、フェデラーはミスが異常に多かったです。解説も指摘していました。第1セットはいつものスロー・スタートで、不調とまではいえませんでしたが、錦織選手に1回のブレーク・ポイントを決められてしまいました。

  第2セットでは一転して怒涛の勢いで攻撃し、フェデラーの一方的な試合展開となりました。バウンドした後に直角に曲がるドロップ・ショットや、緩いドロップ・ショットで錦織選手を前におびき寄せ、パッシング・ショットで抜く場面が多く見られました。

  しかし、第3セットで集中力が切れてしまった感じで、最近よくある「もういいや」的な、試合をあっさりあきらめてしまった感じがありました。ファースト・サーブが入らなくなり、ミスが再び増えました。解説者は試合を総括し、「フェデラーのあまりに多すぎるミス!」とはっきり言いました。

  錦織選手は1回戦から出場して3戦目、フェデラーは2回戦から出場して2戦目でした。フェデラーにとっては大会の序盤で両者が対戦したことも、錦織選手には有利に、フェデラーには不利に働いたと思います。すでにノリノリキレキレだった錦織選手と、まだ調子に乗り切れていなかったフェデラーの差でしょう。

  とはいえ、好調の錦織選手が本調子でないフェデラーを破るのにフルセットを要し、第2セットではあれほど一方的に封じ込められたのですから、次の対戦(いつになるのか分かんないけど)はどんな試合になるのか、楽しみに待ちましょう……てか、フェデラーが激しい復讐心に燃えるとどうなってしまうかを考えると、かなり怖い。

  2ヶ月も休んだ後にいきなりクレーの大会、しかもマスターズに出場して優勝しようなんて甘い考えは、フェデラーも持っていなかったでしょう。来週もまたローマでマスターズ(Internazionali BNL d'Italia)があるし、今月の最終週には全仏オープンが始まりますから、今回の敗戦は休みボケから覚める良い刺激になったと思います。

  この大会のドローを見たけど、やはり準決勝でノヴァク・ジョコヴィッチとトマーシュ・ベルディハ、フェデラーとラファエル・ナダルが対戦し、決勝ではジョコヴィッチとナダルが対戦することを想定して組まれたようです。そんな予定調和的な「ドラマ」に付き合うこともないでしょう。

  ジョコヴィッチはすでに敗退したので、優勝するのはラファエル・ナダルです。


  追記:フェデラーの公式サイトはさっそくファンの嘆きの声、というよりは不審の声で満ちています。「一体ロジャーに何が起きたんだ?」、「あれはロジャーじゃない!」(←笑)、「あなたはどうしちゃったの?」等々。かわいさ余って憎さ百倍でフェデラーにキレてるファンもいて、「なんだあのやる気のなさは!」、「闘争心が見られなかった」という叱責の声も。やっぱり、フェデラーのミスが異常に多かったことをみなさん不思議がっています。

    その後、準々決勝の錦織選手対パブロ・アンドゥハル戦を観たらしいファンが「錦織とアンドゥハルの試合を観たか?この人(←錦織選手)があなた(←フェデラー)を破ったのか?本当に?」と訝しんでいました(今度は錦織選手が不調だったらしい。ニュースにもそう書いてあった)。今回のフェデラーの敗戦は、ファンにとって大きな謎と化している模様です。後世、「ロジャー・フェデラー七不思議」の一つとして語り継がれるかもしれん。


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英国ロイヤル・バレエ団「ロイヤル・ガラ」演目発表


  さっき、N響アワーのプロコフィエフ『ロメオとジュリエット』組曲第1、2番(指揮:ヒュー・ウルフ)を観てたというか聴いてました。いやー、この人たちの演奏って、音楽そのものが踊ってるわ。これほどの演奏なら、踊りはいらないね(笑)。

  で、今は、某バレエ団の『ロメオとジュリエット』(ケネス・マクミラン版)の映像を流してます。ああ、あまりに演奏が違いすぎる…。


  本題。いつのまにか、今年の英国ロイヤル・バレエ団日本公演「ロイヤル・ガラ」(2013年7月10日)の演目が発表されてました( NBSの公式サイト )。

  今のところ、発表されたのは演目だけで、どのダンサーがどれを踊るのかは未定だそうです。演奏は東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団。

  
  1.「ラ・ヴァルス」(振付:フレデリック・アシュトン、音楽:モーリス・ラヴェル)

  2.「温室にて」(振付:アラステア・マリオット、音楽:リヒャルト・ワーグナー)

  3.「コンチェルト」(振付:ケネス・マクミラン、音楽:ドミートリ―・ショスタコーヴィチ)

  4.『うたかたの恋』より(振付:ケネス・マクミラン、音楽:フランツ・リスト)

  5.「宝石のパ・ド・ドゥ」(振付:リアム・スカーレット、音楽:アレクサンドル・グラズノフ)

  6.「雨の後に」(振付:クリストファー・ウィールドン、音楽:アルヴォ・ペール)

  7.『ドン・キホーテ』第3幕よりパ・ド・ドゥ(振付:マリウス・プティパ、音楽:ルートヴィク・ミンクス)

  8.『白鳥の湖』パ・ド・カトル(振付:フレデリック・アシュトン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

  9.「アゴン」パ・ド・ドゥ(振付:ジョージ・バランシン、音楽:イーゴリ・ストラヴィンスキー)

  10.「クオリア」(振付:ウェイン・マクレガー、音楽:スキャナー)

  11.『眠れる森の美女』目覚めのパ・ド・ドゥ(振付:フレデリック・アシュトン、音楽:ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー)

  12.「春の声」(振付:フレデリック・アシュトン、音楽:ヨハン・シュトラウスⅡ世)

  13.「シンフォニー・イン・C」第4楽章(振付:ジョージ・バランシン、音楽:ジョルジュ・ビゼー)


  いちばん解せないのは、去年8月に行われた、ロイヤル・バレエのダンサーたち(& バーミンガム・ロイヤル・バレエの佐久間奈緒さん、ツァオ・チー)によるガラ公演「ロイヤル・エレガンスの夕べ」で、会場が大興奮のるつぼと化した「クローマ」(ウェイン・マクレガー振付)がないことですね。

  同じマクレガーなのに、「クローマ」を上演せず、「クオリア」なんて失敗作(初演時、あまりのひどさに呆れた観客が、カーテン・コールを待たずに続々と席を立って帰ってしまった。私はその場にいましてん)をなぜ上演すんの?

  それに、アラステア・マリオットやリアム・スカーレットなど、ロイヤル・バレエ側が「ロイヤル・バレエ出身の振付家」としてガン推ししたい人々の作品を上演するという無茶ぶり。

  今回の演目のうち、ウィールドンの「雨の後に」とアシュトンの「春の声」は観たいかなー。他はあまり興味がないです。観たことがある作品、もしくはロイヤル・バレエのレベルではたかが知れている作品ばかり。

  大体、計13演目って、こんな超コマ切れガラ公演にしないで、いつも向こうでやってるトリプル・ビルかミックスド・ビルにすればいいのに。

  「クローマ」全編を上演するのなら絶対に観に行くところですが、もう誰が何を踊ろうがどうでもいいや。演目だけで今回はパス。


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