更に写真

  Playbillのサイト( ここ )に「オズの魔法使い」の紹介と舞台衣装を身に着けた主なキャストの写真が載ってます。

  予想はしていましたが、クーパー君の「ブリキの木こり」、かなりすごいことになってます。

  でも、踊りでなくとも、彼はかなり面白い動きをするだろうと思います。踊りがあればもっと面白い動きを見せてくれるでしょう。バレエ・ダンサーとしての経験がかなり生かされるのではないでしょうか。
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )


「オズの魔法使い」公式ブログ

  サウスバンク・センターからメールが来まして、「『オズの魔法使い』公式ブログをチェックしてぴょん。リハーサル写真もあるでよ」という意味のことが書いてありました。

  「リハーサル写真」という言葉に心惹かれて見てみました。クーパー君、写っているかな~、って。 ここ です。リハーサル写真、確かに載ってました。しかも、すべてにクーパー君が写りこんでおります。黒いTシャツ(正面に「心」という漢字がでっかくプリントされている)に草色の膝丈短パン姿です。

  いちばん上に載っている写真の中のクーパー君を見て、私はしばらくのあいだ再起不能になりました。でも、こうして容赦なくファンの幻想を粉砕してくれるクーパー君が好きなのさっ。

  「オズの魔法使い」は本日7月23日からプレビューが始まります。どうか頑張ってね
コメント ( 3 ) | Trackback ( 0 )


お誕生日おめでとう!

  今日、7月22日はアダム・クーパー37歳のお誕生日です。おめでとうございます。

  今年は2008年、私がアダム・クーパーというダンサーを知ったのが2002年、時間が過ぎるのは速いものですね。

  正直なところ、今は最初の頃のようなドキドキ感はないんだけど、「この人は、これからをどう生きていこうというのだろう」という興味はあります。それは「私は、これからをどう生きていこうというのだろう」という課題となぜか重なっている気がします。

  現実逃避なのかもしれないし、依存なのかもしれない。でも、出会ったことに何か意味があることは確かだと思う。人生で起こることに無駄なことはない。

  それに、アダム・クーパーというダンサーを知らずにいたら、私はどうなっていただろうか。おそらく、今よりももっと良くない状態に陥っていただろう。

  たとえ一時しのぎであれ、彼の知らないところで、私は彼に救われた。そのことを感謝したい。アダム・クーパーのお父さんとお母さん、おじいさんとおばあさん、彼をこの世に送り出してくれたすべての人々に感謝したい。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


今年もトロカデロ

  昨日(21日)、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団の公演を観に行きました。会場は新宿文化センター大ホールで、このまえの「ルジマトフのすべて 2008」と同じ会場でした。

  演目は第1部が「ジゼル」第二幕、第2部が「エスメラルダ」パ・ド・ドゥ、「海賊」パ・ド・ドゥ、「ゴー・フォー・バロッコ」、「瀕死の白鳥」、第3部が「ライモンダ」第三幕グラン・パでした。

  「ジゼル」は予想どおり大爆笑でした。ミルタはオルガ・サポーツォヴァことロバート・カーターで、このバレエ団で最もテクニックに優れたダンサーです。目つきの悪い、超凶悪な人相のミルタで、頭上に百合の花をちょんまげのように1本おっ立てた姿で出てきただけで大笑いでした。

  ウィリたちもパンクなヘア・スタイルとメイクで、みな一様にガラが悪かったです。ヤンキーなウィリたちは、ヒラリオンを囲んでボコボコにして舞台から客席に(!)突き落とした後、みなスコップを持ってせっせとジゼルの墓を掘り起こします。

  木の棺から吸血鬼よろしくジゼルが出てきます。名前は忘れましたが(今回はプログラムを買わなかった)、ジゼル役のダンサーもすごいテクニシャンでした。片脚で狂ったように回転するところなんか、まるでコマが回るみたいに速くて迫力満点でした。

  朝を告げる鐘の音を耳にしたミルタのすっごい悔しそうな顔が笑えました。ぐっと拳を握りしめて「ちくしょ~!」という顔をしながらヤケクソな足取りで去っていきます。そしてジゼルは墓の中に消える・・・・・・寸前で、アルブレヒトを手でさし招きます。アルブレヒトはいそいそと棺の中に入り、ジゼルが棺のフタをバタン!と閉めてジ・エンドでした。

  「エスメラルダ」パ・ド・ドゥは、女性ヴェリエーションを踊ったダンサーのタンバリンさばきが見事でした。肩や上げた脚の爪先にタンバリンを叩きつけて鳴らすのが、音楽にバッチリ合っていました。

  「海賊」パ・ド・ドゥはトロカデロお約束、デカい女性ダンサー役に小柄な男性ダンサーをあてがったペアでした。力弱く頼りないパートナーに途中で業を煮やした女性ダンサー(念のため:本当は男性です)が、逆にパートナーをリフトしてぶんぶん振り回し、最後はわざとらしい笑顔でポーズを決めます。

  「ゴー・フォー・バロッコ」は、今回もっとも気に入りました。まず衣装がきれいでした。キャミソールのような黒の短いワンピースに白いタイツ姿です(念のため:もちろん全員が男です)。踊りもみなキレがあって、観ていて気持ちがよかったです。群舞もよく揃っていました(もちろんお笑いはまんべんなく随所に入っていますが)。

  「瀕死の白鳥」は、今回もポール・ギースリンに当たりました。やっぱり「瀕死の白鳥」はマイヤ・プリセツカヤかウリヤーナ・ロパートキナかポール・ギースリンかですよね。ポール・ギースリンの踊りは去年よりも更に進化していて(?)、映像や去年の舞台での踊りをまったく想起させません。来年はまたどう進化しているのか楽しみです(←来年も観に行くのか?)。

  「ライモンダ」は去年も観ました。ヴァリエーションを踊った中では、やはりロバート・カーターと第1部でジゼルを踊ったダンサーが優れていました。ともに長身で大柄なのにも関わらず、ジャンプは高いわ、回転は体がまっすぐで安定していて、しかも一度に何回転もするわ、爪先の動きも細かいわ、おまけにゴツいし胸毛があるのにチュチュが似合うわで、思わず「ブラボー!」と叫びたくなったくらいです。

  トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団は、この9~10月にロンドンのサドラーズ・ウェルズで公演を行ないます。このカンパニーが初めてイギリス(ロンドン)で公演したのは、確か2006年かそこらじゃなかったでしょうか?イギリスのバレエ・ファンには受け入れられやすいだろうに、なぜそれまでイギリスのプロモーターからのオファーがなかったのか不思議なくらいです。

  世界中にどんどん活躍の場を広げているようですが(恐ろしいことにボリショイ劇場でも公演を行なったという)、日本には、20数年もの間このバレエ団を応援し続け、カーテン・コールですべてのダンサーに公平に花束を贈るような優しいファンのみなさんがいるのです。この光景を見て、私は心から感動しました。どうか日本公演は欠かさないでほしいです。

  それと、トロカデロ・デ・モンテカルロバレエ団は、公演グッズがみなセンスいいんですわ。だから、グッズ売り場を見るのも楽しみの一つなんです。グッズの種類は少ないけど、Tシャツ、トート・バッグ、携帯ストラップの色使いとかデザインがおしゃれなんですね。今年も携帯ストラップを買ってしまいました。

  トロックスのみなさん、どうかまた来年も日本に来て下さいね
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


アラジン

  今日は新国立劇場バレエの新作「アラジン」の一般発売初日でした。新国立劇場のWebボックスオフィス(もちろん実際はチケットぴあですが)を通じて買いました。一発でアクセス成功、手続きもさくさくと進み、これまで手に入れたことのない良席をゲットしました。

  嬉しくて「ブラボー!」と思いましたが、同時に「そんなに人気がないのだろうか」と心配になりました。でも、試しにふつうのチケットぴあから入って「アラジン」のページにアクセスしようとしたら、「ただいまアクセスが集中して」云々のメッセージが出たので安心しました。

  「アラジン」はバーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督、デヴィッド・ビントリーの振付で、今度(11月末)の上演がもちろん世界初演となります。ビントリーが新国立劇場バレエのために特に振り付ける作品です。今年1月のバーミンガム・ロイヤル・バレエ日本公演「美女と野獣」で、ビントリーが物語バレエでも優れた振付家であると分かりましたから、「アラジン」もきっと見ごたえのある、楽しい作品になることでしょう。楽しみです。

  山本隆之さんと本島美和さんの主演する回を選びました。今回はアラジン役の男性ダンサーで観る公演を決めました。以前に小林紀子バレエ・シアターが上演した「二羽の鳩」(アシュトン版)で、山本隆之さんが「少年」を踊ったのを観たことがあり、背が高くて男前な容姿といい、しなやかで健康的な色気のある踊りといい、私好みだわ~ん、と思ったのです。

  デヴィッド・ビントリーといえば、新国立劇場バレエ団の次期芸術監督に就任する(2010年9月~2013年8月)ことが発表されましたね。この9月から芸術監督就任までは「芸術参与」という役職に就くそうです(詳しくは新国立劇場公式サイトの こちらのページ )。

  ビントリーはバーミンガム・ロイヤル・バレエの芸術監督と兼任する形で就任するそうです。年がら年中、日本にいるというわけにはもちろんいかないでしょうから、こうした形での芸術監督就任が適切なのかどうか、これには賛否両論があることと思います。特に、ダンサーたち個々人と頻繁に、親密に接することができないかもしれない不利な点を、ビントリーはどうやって克服するつもりなのでしょうか。プログラムのダンサー紹介は、バーミンガム・ロイヤル・バレエのように、ビントリー自身がすべて執筆するつもりなのでしょうか。それができたら大したもんですが。

  ビントリーが芸術監督に就任したら、新国立劇場バレエ団のレパートリーがどう変わってくるかも興味のあるところです。私個人は楽しみにしています。イギリスのバレエ系統のレパートリーが増えるのかな、という意味で。

  ですが、どーしても変えてほしくないのは、新国立劇場バレエ団のあのすばらしい群舞です。あの優れた群舞はいったい誰がどう指導して成立し得ているのかは分かりませんが、絶対にあの群舞は壊してほしくありません。あと、「白鳥の湖」をはじめとする基本的な古典作品も上演し続けてほしいです。でもたぶん、ビントリーはあまり極端に個人趣味に走ることはないだろうと思います。

  新国立劇場バレエ団は年末にアシュトン版「シンデレラ」を再演しますね。ロイヤル・バレエのアリーナ・コジョカルとヨハン・コボーがゲストとして出演予定とのことで、こちらも楽しみです(チケットが取れればの話)。  
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


朋の遠方より来たる有り

  昨夜の仕事帰りは、北京から来た中国人の友人、そして同僚の中国人と一緒に食事&お酒を楽しみました。

  ちょっと高級な中国料理店でした。鶏を塩水で煮ただけの冷菜、野菜と鶏の辛味噌炒め、牛肉と西洋セロリの炒め物、野菜の薄餅(春巻きの皮みたいなもの)包み、麻婆豆腐、豚の蒸し餃子、シュウマイ、海老の蒸し餃子、スープなし冷やし担担麺、野菜あんかけスープ麺、胡麻団子など。料理の味は値段相応においしかったです。食後のジャスミン茶もよい香りでした。

  飛行機の北京往復チケットは、今は日本で買うととんでもない値段になっていますが(←もちろんオリンピックのせい)、中国で東京往復チケットを買うとそんなに高くはないそうです。北京市内のホテルの宿泊費は一様に5~7倍に跳ね上がっている状態で、私が去年の秋に一泊260元で泊まったホテルは、今は一泊1680元になっていると聞いて仰天しました。

  オリンピックの時期に北京を訪れる外国人、もしくは北京に住んでいない外地人の中国人(←たいていがすごいお金持ち)向けのこうした商品(飛行機のチケット代、ホテル代など)の値段が暴騰している一方、北京市民の日常生活に関係するものの物価上昇に対しては、中国政府が厳しい姿勢で監視して、オリンピックに便乗した値上げを抑制しているそうです。おかげで、北京市民の生活には大した変化はないとか。

  当然、5月に起こった四川大地震も話題にのぼりました。震源地に近い地域の小中学校が次々と倒壊して、大勢の子どもたち、教師、職員が死んだことについて、友人は珍しく感情を露わにして「あれは、中国政府がいかに小さな子どもとその教育とを軽視しているか、ということだ」と怒っていました(北京ではこんなことをレストランで口にすることはできないと思う)。

  私には一瞬その意味が分かりませんでした。ですが、おそらく中国政府は都市における高等教育(高校、大学、大学院)は重視しているが、田舎における初等教育(小、中学校)はさほど重視していないのであろう、と思いました。つまり、都市の高等教育には国の将来を担うエリートたちの育成という意義がありますが、田舎の初等教育は、農民・低収入層の住民・少数民族の子どもに最低限の読み書き、計算、知識、思想などを学ばせる程度の意義しかないからです。

  「鳥の巣(鳥巣)」と呼ばれる、オリンピックの開会式が行なわれるドームについても、北京市民の間ではある噂が流れているそうです。友人曰く、「鳥巣」には「アキレス腱」のように決定的に弱い箇所がいくつかあって、それらの箇所が壊れると「鳥巣」全体が倒壊するそうなのです。いくらなんでも国の威信を賭けたオリンピック・ドームでそんなことがありうるんかいな、と私は思いましたが。

  友人は、「鳥巣」は麦藁帽子のようだ、と言いました。私が「鳥巣」はぐるぐる巻きに縛りつけられているみたいだ、と言ったら、みなは妙に納得していました。「鳥巣」の完成予想図を初めて見たとき、中国政府の中には意外と「やる」人がいるものだな、と私は痛快に感じました。崩れそうな大きなものをぐるぐる巻きにして縛って、それで辛うじて形を保っている、まさにあの国の現状そのものです。

  友人はおみやげに私の大好きな山楂餅(ペースト状にすりつぶしたサンザシを棒状に固め、更に薄切りにしたもの)を持ってきてくれました。彼らと別れた後、電車の中で我慢できずに食べてしまいました。酔った勢いで電車の中で飲食をしてしまい、実にはしたないことですが、ひさしぶりに山楂餅のあの酸っぱ甘い味を堪能しました。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「眠れる森の美女」(4)

  フロリムント王子はティアゴ・ソアレスでした。登場するときのあの赤い上着はやっぱりヘンだよ。ぜんぜん王子にみえません。赤なのに地味です。ついでにいうと、ソアレスも王子にはみえません。族のリーダーかガテン系の兄ちゃんのようで、しいていえばワイルド系王子です。

  3月に観たときも不審だったのですが、狩りご一行の中で、王子の次に偉そうにしている「伯爵夫人」ってなんなんだろねえ。不審なのは、この伯爵夫人のフロリムント王子に対する意味ありげな態度なんです。盛んに王子に目をやり、王子の様子を異常に気にして窺っているのです。

  今回はジリアン・レヴィが伯爵夫人でした。やっぱりこの人は演技がいいです。フロリムント王子は表面的には普通に振る舞っていますが、ふと暗い顔つきになって遠くを見つめたり、目を落としたりします。伯爵夫人がフロリムント王子に近づき、マイムで「あなたはなぜ涙を流していらっしゃるのですか?」と尋ねます。ですが、王子はマイムで「聞かないで下さい」と答え、伯爵夫人を遠ざけてしまいます。王子はみなに狩りに行くよう命じます。伯爵夫人は王子のほうを未練たっぷりに振り返り、最後は憮然とした様子で自分も去ります。

  伯爵夫人がフロリムント王子のことを好きなのは間違いありません。でも、伯爵夫人には夫の伯爵がいるはずです。つまんねえことですが考えてみました。伯爵夫人は、(1)夫はいるがひそかに王子の愛人になろうと狙っている。(2)夫はとうに没しており、それで王子の愛人もしくは妃になろうとねらっている。(3)実はもう王子と関係がある。(4)実は王子の母親である。たぶんこのうちのいずれかでしょう。

  そこへあの音楽が流れて、リラの精が姿を現わします。王子は敬意を表してお辞儀をします。リラの精もマイムで「なぜあなたは涙を流しているの?」と尋ねます。王子はマイムで「なんでもありません」と突っぱねます。ところが、リラの精は両手を自分の胸に当てるマイムをして「あなたは愛を求めているのね」と王子の憂鬱の原因を見破ります。フロリムント王子って、「白鳥の湖」のジークフリート王子みてえ。場面もそっくりだし(森で狩り→王子の憂鬱→美女と出会う)。

  フロリムント王子がオーロラ姫の幻影と踊るシーンでは、生前(?)はあれほど明るい笑みを浮かべ、また闊達だったヌニェスの表情が、一転して静かで神秘的なものになっていたのが印象的でした(もちろん、この場面で明るい元気な表情で踊ってはマズいでしょうが)。

  リラの精が王子を伴って乗る銀色の船が面白かったです。自動操縦のようで、途中で止まりはしないかとハラハラした(なにせロイヤル・バレエだから)けど大丈夫でした。また、背景の幕を横に流しながら、同時に船を逆行させて、船が進んでいる様を表現していたのは、いかにも昔の技術といった感じでしたが、非常に効果的で見ていて感心しました。船を下りた後、今回はマクミーカンも妖精の杖を落とさなかったので安心しました。

  これはいくらなんでも無理があるのでは、と思ったのは、フロリムント王子がオーロラ姫を起こすシーンです。フロリムント王子は困惑の表情を浮かべ、マイムで「彼女は眠っています。どうしたらいいのでしょう?」とリラの精に尋ねます。でも、リラの精は自らのこめかみを叩いて「自分で考えてご覧なさい」としか答えません。すると王子は「分かった!」という表情で、自分の指を唇に威勢良く当てます。そしてオーロラ姫にキスをします。「キスすれば起きる」だなんて、何をどう考えればそんな答えが出てくるのでしょう。そりゃあ起きるでしょうけどね(びっくりして)。

  不毛で無意味な考察はやめることにして、第三幕。パ・ド・トロワでは蔵健太君が踊りました。3月に観た彼のブルー・バードはすばらしかったですが、今回はちょっと緊張していたかな?という踊りでした。ところで、このパ・ド・トロワは「フロレスタンと姉妹たち」という題名になっています。このフロレスタンって、どのフロレスタンなのでしょう。フロレスタン24世の息子でしょうか?

  猫の踊りはかぶりものではなく、仮面をつけていたのが救いでしたが、私は基本的にこの手の踊りが好きではありません。赤ずきんと狼の踊りも同様。意味わかんね。

  青い鳥のパ・ド・ドゥはローレン・カスバートソンと佐々木陽平さんでした。カスバートソンのフローリン姫は3月にも観ましたが、あのときとは踊りがぜんぜん違います。大役がダンサーを成長させるものなのか、彼女の踊りはヌニェスと同じ特徴を持つ踊りでした。しなやかな手足の動き、余裕のある優雅な踊りです。すっきりと伸びる四肢がきれいでした。もっとも、私は「シルヴィア」での彼女に好印象を持ったため、この感想は多分に色眼鏡で見たものだと思います(笑)。

  佐々木陽平さんのブルー・バードは、踊りそのものは蔵健太君のブルー・バードのほうがパワーで勝っているように思いました。ただし、踊りのプロフェッショナルさでは佐々木さんのほうが上でした。見せ方も上手だし、踊り全体が艶々していました。

  オーロラ姫とフロリムント王子のグラン・パ・ド・ドゥは、う~ん、なんだかぎこちなくて、スムーズとはいえなかった気がします。タイミングがうまくかみ合わない振りがいくつかありました。オーロラが回転した後、王子がオーロラを逆さにリフトして中腰でポーズをとるところは、ヌニェスの脚が上がるのが常に遅れていました。ヌニェスもソアレスも、それぞれの動きはとてもよかったのですが。

  でも、アダージョでだったかコーダでだったか、回転するヌニェスをソアレスが「ろくろ回し」するところで、ふたりは息の合ったスゴ技を見せました。ソアレスは途中でヌニェスの腰から手を離します。ヌニェスを目立たせるように両手を大きく広げるソアレスの前で、ヌニェスはバランスを崩すこともなく、ぐるぐると回り続けているのです。この技を何回か繰り返しました。

  ヌニェスによるオーロラのヴァリエーションはすばらしかったです。両手をなめらかに揺らしながら徐々に上げていく振りは、一歩まちがえると「阿波踊り」になってしまいます。でもヌニェスの両手の動きはとても柔らかく優雅で、上げた両腕の角度やポーズ、指の開き方も美しくて、とても様になっていました。

  ソアレスのほうはよく分かりません。ダイナミックではありましたが・・・。ブラボー・コールが出たので、「よかったのかな?」と思いかけたのですが、私の心の声に従うと、ソアレスの踊りはわるくはなかったが、そんなによくもなかったと思います。やや粗くて乱暴で力任せで、コントロールが利いていない感じです。もっと柔らかさとかしなやかさがあればよかったです。

  ヌニェスはまさに幸せオーラ全開で舞台に立っていて、観ているほうにもそれがビンビン伝わってきたため、会場は非常に盛り上がりました。カーテン・コールではスタンディング・オベーションをしている観客もいました。カンパニー全体のパフォーマンスからみれば、私はそれほどすばらしい舞台だったとは感じませんでした。でも、ヌニェスが魅力に溢れていたのは確かなことで、観ているほうも幸せな思いにしてしまうダンサーはすばらしいと思います。
コメント ( 2 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「眠れる森の美女」(3)

  プロローグに出てくるリラの精を除いた5人の妖精は、誰が何の妖精なのかほとんど見分けがつきませんでした。でも5人が並んで、そしてソロで踊ると、赤いチュチュの小柄なダンサーと淡い金色のチュチュのダンサーがよかったと思いました。キャスト表を見ると、どうやら赤いチュチュは「歌鳥の精」でイオーナ・ルーツ、淡い金色のチュチュは「黄金のつる草の精」でラウラ・モレーラだったらしいです。イオーナ・ルーツがあんなに小柄だったとは。

  リラの精と5人の妖精が一緒に並んで踊ると、リラの精役のイザベル・マクミーカンがいちばんうまかった(と思う)から、マクミーカンはやはりリラの精が当たり役なのでしょうか?

  リラの精のお付きの騎士は平野亮一君で、おお、やったな平野君、と思いました。妖精のお付きの騎士たちが一斉に踊るところでは、まさに中央で踊っていました。平野君はやはり背が高くてスタイルがいいです。欧米人とまったく変わりないです。ただ、踊りはちょっと重たかったです。動きに軽さやしなやかさがほしいところです。テクニックも他の騎士たちに比べると弱かったです(特に回転系)。あとはリラの精の頭上リフトもグラグラしてました。

  ・・・キャスト表をよく見たら、妖精のお付きの騎士役にはリカルド・セルヴェラ、ヨハネス・ステパネク、ホセ・マルティンがいるではありませんか!「眠れる森の美女」はダンサーが総動員なので、ひょんなところでプリンシパルやファースト・ソリストがさりげなく出てくるのです。なるほど、これでは仕方がないか。

  長かったプロローグが終わると休憩時間です。まだオーロラ姫は出てきません。第一幕が始まっても、編み物女たちの騒動あり、花のワルツありで、とにかく引っ張りまくります。王様、王妃様、貴族たちが「お姫様はどこ?」と探していると、小姓たちの先触れを経て、やっとオーロラ姫(マリアネラ・ヌニェス)の登場です。

  ヌニェスの演技が非常によかったです。元気すぎてしとやかさがない、と思う方々もいると思いますが、ヌニェスはとにかくいつも嬉しそうに、楽しそうに明るく笑い、活発で溌剌とした雰囲気に溢れていて、私は好印象を持ちました。好奇心いっぱいで屈託がなく、人見知りもしない、まして人を疑うことなど思いもつかない少女という感じで、それが見知らぬ老婆の持つ糸車への興味につながっていくと考えると納得がいきます。

  ただ、ヌニェスはやはり思った以上に小柄で、「シルヴィア」を彼女で観なくてよかった、と思いました。

  とはいえ、ヌニェスのオーロラ姫がみなに促されて踊りだすと、やはりプリンシパルだなあ、と思いました。手足の動きが柔らかくてしなやかで、踊りの振りの一つ一つに優雅な余裕があります。

  ロース・アダージョでは、デヴィッド・マッカテリがフランスの王子役でした。オーロラ姫をサポートすることの最も多い役です。人手不足である、マッカテリはプリンシパルであるという理由以外に、マッカテリがサポート・リフト上手であるということからみても、妥当な配役だと思いました。ちなみにヘンテコなとんがり帽子をかぶったスペインの王子はマーティン・ハーヴェイでした。

  感心したのは、ヌニェスは難しい振りを踊りながらも、常に演技していたことでした。常に各国の王子、宮廷の人々、そして両親である王と王妃を見て微笑むか、会釈するか、お辞儀をします。演技することを忘れて、真顔でバランス・キープや回転にひたすら集中しているようなダンサーより、ヌニェスのようなダンサーのほうが私は好きです。

  実は、ヌニェスはテクニカルなダンサーだと思いますが、でも彼女の踊りは完璧というわけではなかったのです。ただ、ヌニェスは見得の切り方が非常に上手です。巧みに、バッチのタイミングで、実にカッコよく見得を切るので、観客は(語弊がありますが)うまく乗せられて大興奮してしまうのです。今回の公演では、ローズ・アダージョの音楽が終わる前、オーロラが王子の手をパッと離して、アラベスクをして静止した直後から拍手が湧き始めました。

  その後も踊りの最中にいくらかミスはしても、最後の見得はきちんと決める、という場面が目立ちました。もちろん、美しく、スマートに見得を切ることは、ダンサーに求められる重要な能力の一つだと思います。

  第一幕の最後、オーロラが死んでしまったと思い込んだ人々が嘆き悲しんでいるところで、空を覆う黒い雲の隙間から光が射し、あの音楽とともにリラの精が現れるシーンにはちょっと感動しました。照明の人、ブラボー!です。  
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「眠れる森の美女」(2)

  フロレスタン王はクリストファー・サウンダース(サンダースじゃないのね)、王妃はエリザベス・マクゴリアンでした。誰が演じてもきれいで上品な王様と王妃様です。ただ、フロレスタン王はカラボスに責められ、リストにカラボスの名前がないのに気づいてリストを床に叩きつけたり、自分もリストを事前にチェックしていたにも関わらず、カタラビュットに全責任を押しつけたり、王宮の庭で編み物をしていたというだけの理由で女性たちを殺そうとしたり、実は癇癪持ちの王様らしいのです。

  ギャリー・エイヴィスのフロレスタンは、上品で優しそうな雰囲気のままで、実に涼しげにこうした冷酷なことをやってのけるので笑えるのですが、サウンダースはエイヴィスに比べると、フロレスタン王のこういう外貌と大きなギャップのある面白いキャラクターを充分に表現できていなかった気がします。

  フロレスタン王は「フロレスタン24世」なんだそうです。徳川家の将軍が265年間で15代ですから、この国は少なく見積もっても400年は同じ王室がずっと国を保ってきたわけですな。パタリロのマリネラみてえ(知らない人ごめん)。

  王妃役のエリザベス・マクゴリアンは、これまた美しくて優しくて穏やかで、夫と違って良識のありそうな(笑)演技でよかったです。夫のムチャな所業や、呪いをかけられたオーロラの行く末を憂えるとき、その表情は細かくて、仕草もたおやかで、女性らしさ、母親らしさに溢れていました。

  王妃の髪型とメイクについては演出が細かかったです。オーロラを生んだときは髪を長く垂らして若々しく、オーロラが16歳になったときには髪型が変わっていて化粧も濃くなっていて、時間の経過をちゃんと表現していました。

  私がひそかに気に入ったのがアラステア・マリオットのカタラビュットでした。なにしろ演技が笑える笑える。カラボスの名がリストにないことに気づいたとき、王宮の庭で編み物をする女性たちを目にしたとき、女性たちから取り上げた編み針を後ろ手に隠して、フロレスタン王に見られまいとする、あわてふためいた演技には爆笑でした。表情がとても豊かな人です。

  カラボスはジェネシア・ロサートでした。これまた美人で妖艶な魔女でした。ジリアン・レヴィの強いアクのあるカラボスには及びませんが、なかなかの怪演でした。カタラビュットに仕返しをするときの意地悪な笑い、妖精たちを脅かすときのなんか笑える手つきがよかったです。オーロラ姫に指先を糸車の先で傷つけさせることに成功した後、衛兵たちに追われて逃げるときの逃げっぷりもなかなかでした。

  ただ、これはロサートのせいではないのですが、強い印象を与えるメイクと衣装の割には、カラボスのやってることは「意地悪ばあさん」みたいにセコいんだよね。オーロラ姫に呪いをかけるマイムにもあまり凄味がなかったし(←これはダンサーのせいかもしれないけど)。「マイム事典」で模範演技をしているモニカ・メイスンと同じくらいはやってほしいです。

  「マイム事典」といえば、リラの精役のイザベル・マクミーカンも、3月に観たときよりは印象が良かったけど、カラボスの呪いを変えてしまうマイムは、穏やかながらも強い威厳をもってやってほしかったです。それに抗うカラボスをたじろがせて後ずさりさせてしまうシーンも、もっと神々しい威厳がほしいなあ、と思いました。

  マクミーカンの他の踊りや演技には、今回も特に強い印象を受けたということはありませんでした。でも大人の女性らしい落ち着いた容貌と表情をしているので、その点はよかったです。リラの精はマクミーカンのしか観たことがないので、他のダンサーと比べようがありません。ですから、マクミーカンのリラの精はあれでも合格点なのかもしれません。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「眠れる森の美女」(1)

  13日(日曜日)の夜公演を観てきました。本当は土曜日のほうがよかったのですが、あいにく土曜日は朝から晩まで仕事で、またまたハラホロヒレハレ~な状態でした。その翌日の昼の1:00から観劇はきついので、夜公演を選んだわけです。

  このように、「眠れる森の美女」は「シルヴィア」と違って、「このダンサーで観たい」ではなく、自分の都合に合わせて消去法で観る公演を決めたのです。だからキャストについては事前に何の思い入れもありませんでした。ですが、全体的な面については、3月にこのプロダクションを観たときの印象があまり良くなかったので、「大丈夫かいな」と心配しておりました。

  全体的な面、というのは、3月にこの「眠れる森の美女」を観たときに、「う~ん、今のロイヤル・バレエには、この作品を上演するのは、ダンサーたちの平均的水準からみて無理なんじゃないかな」と正直なところ思ったのです。

  でも結局、3月に観たときよりは楽しめました。このプロダクションを観るのはこれで2回目だから、「慣れ」みたいなものもあったのかもしれません。

  まずセットは、プロローグの赤ちゃんオーロラが眠るベッド、カラボスの馬車(←鼠が引くけど)、第一幕の王宮の大きな階段、第二幕のリラの精の船、王宮の門、オーロラの眠るベッドなどを除いて、ほとんどが幕です。すごい大量にぶら下げていました。プログラムを読んだら、衣装も含めて美術はみな大昔(1946年版)の復元だということでした。終戦直後だったから、なるべくお金のかからない舞台装置を作ったのかもしれません。なるほど、と納得しました。

  柱などを描いた幕は、重厚に見えるように不透明(光に透けない)な絵の具を使ったりして工夫したそうです。3月に観たときには「幕ばっかりでなんだかビンボくさいな」と思いましたが、今回はあまり気になりませんでした。これはやっぱり「慣れ」というものでしょうか。

  衣装も基本的には1946年版の復元だそうですが、すべてを復元することは資料的に不可能だったそうです。また復元はピーター・ファーマーが担当したせいでしょう、ファーマーがデザインする衣装の特徴、淡い色彩の紗のような薄手の布、刺繍がメインで柄物は少ない、などが強く反映されているように思えました。

  衣装はとてもきれいでした。オーロラ、妖精たち、宮廷の人々の衣装はみなパステル・カラーを主な色調としていました。またフロレスタン王や王妃の衣装は、厚みと光沢のある布地に刺繍が入ったり柄がプリントされたりしているものでしたが、色はやはり淡くて刺繍や柄の模様も上品でした。

  その中で異色なのが式典長(カタラビュット)のド派手カラフル縞々ちょうちんブルマー衣装+巨大羽根飾りつき帽子と、カラボスの黒レースに紅や紫の飾りの入ったドレスです。舞台でいちばん目立ってたのはこの二人です(笑)。

  カタラビュットといえば、オーロラ姫の命名式招待客リストにカラボスを入れ忘れ、カラボスにセコくてアホな仕返しをされます。その仕返しが、イギリス人はやっぱりこのネタが好きなのね、というお約束的ギャグでした。ロイヤル・バレエ(関連)の公演で、いったい何度目にしたことか。

  ちなみに、そのときのフロレスタン王の仕打ちはあんまりです。最初、カラボスはフロレスタン王が自分をリストから外したと思って王に詰め寄りますが、王はあっさりとカタラビュットを指さして「オレじゃない、悪いのはアイツだ」と言います。王様なら一応は家臣を庇うとかするもんじゃないのかな~。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


悔しい!!!

  今日は朝までウィンブルドン男子シングルス決勝、ロジャー・フェデラー対ラファエル・ナダルの試合を観ていました。雨で2回サスペンデッドになり、またフルセットでエンドレスの延長戦にもつれこんだので、試合終了は日本時間の今朝の5時近くでした。おかげで寝不足です。

  でも、寝不足でもいいのです。もし、フェデラーが勝ってさえいれば!もう少しだったのに、最後はスタミナ切れしてしまったように見えました。ナダルにブレークされて、そのままナダルがサービス・ゲームをキープしたので、ナダルの優勝となりました。

  私は心の広い人間じゃないから、言わせてもらうわよ(←どっかの占い師みたいだな)。すごい悔しいです。

  ナダルなんか、ひたすらベース・ラインから打ちまくるだけだったじゃない。ネット・プレーなんてほとんどしなかった。こんな乱暴にずっと踏みつけられ続けて、サーフェスの芝と地面はかなり傷んでしまったことでしょう。

  おまけに、ナダルがポイントを決めたときにやる、あからさまなシャウトとガッツ・ポーズは、テニスというスマートなスポーツにはふさわしくありません。

  フェデラーは違います。彼は試合中、どんなときでも冷静な表情を崩しません。ポイントをとってもほとんど何のリアクションもしません。静かな表情を変えないまま、さっさとベース・ラインに戻ります。たまに試合に勝ったときにだけ、抑えつけていたものが爆発するようにシャウトするくらいです。

  フェデラーがショットするときの写真を見るといつも驚かされます。彼はいつものあのクールな表情で、自分のラケットのガットが跳ね返した瞬間のボールを常に凝視しているのです。いったいどれほどの動体視力を持っているのかと思います。

  話題性も見ごたえもなかった女子シングルス決勝で対戦したあの2人のように、男子テニスもブレインレスのパワー一辺倒の時代が来るのでしょうか。

  でも、フェデラーはまだまだ活躍するでしょう。フェデラーに続く世界ランク第2位のナダルをはじめとする男子選手たちとのポイントの圧倒的な差(1,000ポイントもある)が、フェデラーが他の選手とは明らかに一線を画する優れた選手であることを証明しています。フェデラーは今年、持病から来る体調不良に苦しんでいるそうですが、全米オープンでの活躍を祈りたいと思います。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「シルヴィア」(2)

  アミンタ役のデヴィッド・マッカテリは、今日は踊りが不調のようでした。乱暴で荒々しさに過ぎて、力任せに勢いだけで踊っている感じでした。

  ですが、パートナリングは非常にすばらしかったです。マッカテリにリフトされたりサポートされたりしているとき、シルヴィア役のローレン・カスバートソンのポーズや踊りはひときわ美しく輝きました。

  マッカテリはあまり表情を変えませんが、でも朴訥で不器用な感じを保ちつつ、一生懸命にシルヴィアに愛を訴える演技はよかったです。

  オリオン役のギャリー・エイヴィスも相変わらずの怪演でした(笑)。3月に観たときにも感じましたが、踊りは荒々しいながらも、きちんと計算された荒々しさで、どの動きも非常に安定していました。エイヴィスの踊りは今日のマッカテリよりもよかったです。

  エイヴィスのパートナリングも相変わらずしっかりしていました。第一幕と第二幕で、オリオンはシルヴィアに迫って、激しい勢いでシルヴィアの腕をつかみ、抱えて振り回します。でも荒々しいけれど鋭いなめらかな踊りで、エイヴィスがカスバートソンをしっかりサポートしているのが分かりました。

  カスバートソンがすばらしかったのは、マッカテリとエイヴィスががっちりと脇を固めたおかげでもあると思います。

  エロスはジョシュア・トゥイファでした。彼はソリストだそうです。第一幕は白塗りだったので顔つきがよく分かりませんでした。でも、第二幕でエロスがシルヴィアを助けに来たときに、エロスは背中に白い羽根をつけ、金髪巻き毛のヅラをかぶり、ギリシャ風の白いヒラヒラ衣装を着て登場します。この普通なら赤面ものの超ナル入ってる扮装がすごい似合っていて、しかも顔も美青年だったので、不覚にもときめいてしまいました。

  でも、第一幕と第三幕で、なんでエロスが「銀河鉄道999」の鉄郎みたいな長いマントとつばひろの帽子という衣装で出てくる必要があるのか、いまだに理解できません。あと、第一幕でエロスがマントの裾を上げて、足先を細かく動かす踊りは、確かにダンサーの足技を見せようという意図の下に振り付けられたであろうことは想像できるのですが、やっぱり笑えます。

  残念だったのは、トゥイファの踊りでした。エロスは第三幕でやっとまともに踊ります。トゥイファの踊りにはがっかりしました。動きは重たく、ジャンプは異様に低く、どこか怪我でもしてるのかと疑ったくらいです。

  第三幕では、山羊を踊った崔由姫、テレプシコーラを踊ったシンディ・ジョーダン、ペルセフォネを踊ったカロリン・ダプロットがよかったです。踊りでダントツなのは崔由姫でした。細かくて複雑で超高速な足技が見事でした。また、ジョーダンは踊りが優雅でしかもダイナミックでした。ダプロットは踊りというよりは、しっかりと夫のプルートを嫌う演技をしていた(ペルセフォネは無理にプルートの妻にさせられたので)のに感心しました。

  それから、第三幕では平野亮一君が青いギリシャ風ヒラヒラ衣装を着て踊っていました。彼は顔が小さく、背が高く、脚が長く、体型では欧米人にまったく劣りません。すごいカッコいいです。今はまだファースト・アーティストですが、ぜひ精進して上がってきてほしいです。

  第三幕、怒りに狂ったオリオンがダイアナの神殿の前に乗り込んできます。オリオンはシルヴィアをアミンタから引き離し、アミンタはオリオンと闘います。シルヴィアはダイアナに助けを求めて、神殿の中に駆け込んでいきます。門の中から現れたのはダイアナでした。ダイアナは威厳ある表情で傲然とオリオンを見下ろし、オリオンは怯えて地面にへたり込んでしまいます。

  ダイアナ役はラウラ・モレーラでした。モレーラのダイアナはすごい迫力でした。目をむいてオリオンを睨みつけ、ゆっくりと弓を引くと、躊躇もなくオリオンを射殺します。次には腕を上げて拳を振るい、騒動を起こしたシルヴィアとアミンタに向かって怒りを露わにします。モレーラのダイアナは本当に恐かったです。さすがはベテランのプリンシパルです。

  ロイヤル・バレエの群舞には端から期待はしていなかったので、動きが合っていなかろーが、列がズレまくりだろーが、特に気になりませんでした(笑)。でも、第三幕のディオニュソスの祭り、そしてシルヴィアとアミンタのパ・ド・ドゥの終わりでの群舞は非常にきれいでした。やればできるのになー、それなのに、この人たちはなー、と思いました。

  前にも書きましたが、「シルヴィア」は音楽が非常にいいです。終演後、口ずさんでいる人がいて、私もつい小さな声で口ずさんでしまいました。

  ロイヤルの上層部、指導陣が勢ぞろいで観ていました。休憩時間にはジョナサン・コープがたくさんの観客につかまってサインをねだられていました。芸術監督のモニカ・メイスンももちろんいました。

  ロイヤルの関係者たちは、ローレン・カスバートソンの踊りの見せ場にはブラボー・コールを飛ばしまくっていました。終演直後には「デリシャス!」とか言っているのが聞こえました。身びいきもあるのだろうけど(あるべきだろうけど)、やはりローレン・カスバートソンの出来は良かったのでしょう。

  デマチの様子も見てみました。ローレン・カスバートソンはたくさんのファンに囲まれて、嬉しくもびっくりしていたようでした。てことは、他の観客もカスバートソンのパフォーマンスを高く評価したということでしょう。

  白いノースリーブのワンピースを着たカスバートソンは、舞台から一転して初々しくて可愛らしく、快く、そして我慢強くサインや写真撮影に応じていました(私もサインをもらいました。てへ)。彼女も日本のファンによる独特の洗礼を受けて、これでスター・ダンサーの仲間入りです。
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )


ロイヤル・バレエ日本公演「シルヴィア」(1)

  平日は相変わらずハラホロヒレハレな状態で、ブログの更新ができませんでした。「ルジマトフのすべて2008」も、仕事が終わった後、這うようにして観に行きました。他のバレエ団の公演ならバックれたかもしれませんが、ファルフ・ルジマトフは今のうちにしっかり観ておかないといけません。でも観るだけで精一杯で、ブログに感想を書く余裕がありませんでした。感想は後ほどまた。

  ブログを更新できない間に、サイト本体のアクセス数が29万を越えました。見て下さったみなさん、本当にどうもありがとうございます。

  そして、ようやく日中は一息つけた昨日の夜は、英国ロイヤル・バレエ日本公演「シルヴィア」を観に行きました。

  タイトル・ロールのシルヴィアには当初、プリンシパルのゼナイダ・ヤノウスキーが予定されていましたが、ヤノウスキーが妊娠したために、ファースト・ソリスト(プリンシパルに昇格することが決定したそうです)のローレン・カスバートソンが踊ることになりました。また、アリーナ・コジョカルが怪我のために「眠れる森の美女」を降板したのにともない、ローレン・カスバートソンが急遽、オーロラを踊ることになったことは以前の記事に書いたとおりです。

  ローレン・カスバートソンは、最初はシルヴィア役にキャスティングされておらず、また以前にシルヴィアを踊ったこともないということでしたので、正直な話、あまり期待はしていませんでした。

  でも、チケットはキャストの変更前に購入済みでした。また、カスバートソンはロイヤル・バレエでは久しぶりのイギリス人(デヴォン出身)トップ・ダンサーであり、しかも生粋のロイヤル育ち(ロウアー・スクールからアッパー・スクールに進学し、卒業とともにロイヤル・バレエに入団)で、しかも上層部からかなり期待されているようなので、「まー、あまり期待はできないだろうけど、どんな感じかな」という軽い気持ちで観に行ったのです。

  ところが、ローレン・カスバートソンは、私の予想を良い意味で見事に裏切ってくれました。彼女のシルヴィアは、私の期待をはるかに上回る出来でした。

  第一幕の冒頭、シルヴィアが妖精たちを引き連れて現れるシーンの踊りでは、いくつかヒヤリとさせられるミスがありました。しかし、それはテクニックの未熟さからきているミスではなく、緊張からきているミスだと分かるものでした。最初でのミスを引きずることなく、カスバートソンはシルヴィアのソロの難しくて複雑なステップを順調にこなしていきました。

  私が何よりも感心したのはカスバートソンの演技です。カスバートソンの演技は非常に自然でした。登場したときには誇り高くて威厳があり、また自信に満ちた高慢な表情でエロス像やアミンタを嘲笑し、愛の矢を受けた後は哀しげな、辛そうな顔で死んだアミンタに近寄っていとおしげにその手を取り、オリオンに誘拐された時には色っぽい目つきでオリオンを見やり、最後にアミンタと結ばれると、女性らしい和やかな暖かい表情でアミンタと抱き合います。

  カスバートソンの踊りは、やはりまだこのシルヴィアという役を踊り慣れていないのが明らかでした。時には振付を追いかけるので精一杯で、音楽に乗る余裕がなかったようです。また、振りをこなそうとするあまりか、回転しているうちに体の軸が斜めになったり、ポーズ全体が崩れてしまうこともありました。

  ただ、そうしたところが見られたのは主に第一幕で、第二幕以降はすっかり落ち着きました。第二幕のオリオンを誘惑する踊りでは、カスバートソンのしなやかでうねるような美しい両腕の動きが印象的でした。

  カスバートソンが本領を発揮したのは、第三幕でのアミンタとのパ・ド・ドゥです。少し硬さはあったものの、肝心なところはほとんどミスなくビシッと決めました。第三幕でのシルヴィアの踊りはクラシックな振りがメインなのですが、ダンサーの真の力量が最も明瞭に出るであろうこの種の踊りで、カスバートソンがあれほどの踊りを見せたのには驚きました。

  ついでにいうと、彼女は身体的な素質と能力にも非常に恵まれているようです。脚は非常に高く上がりますし、よく開きます。背は高く(170センチ弱)、脚が長いです。また、プログラムのプロフィルの写真は写りがよくありませんが、実はかなり美しい人です。顔がとても小さくて色が白く、直線的な眉と切れ長の瞳を持っています。メイクのセンスもよかったです。

  あまり期待していなかった公演でしたが、結果的には将来が非常に楽しみな若いダンサーの初シルヴィアを目にする、という貴重な経験をすることができました。思わぬ拾い物(といっては失礼ですが)でした。  
コメント ( 0 ) | Trackback ( 0 )