アダムの誕生日


 


  今日はアダム・クーパー46回目の誕生日です。今年は週末に当たってよかったね。今日は家族でお祝いだろう。

  4月に出待ちをして話したときの印象では、アダムは相変わらず奥さんのサラ・ウィルドーにぞっこんで、子どもたちのことを嬉しそうに話す良きパパでもあったので、彼がすばらしい家族に恵まれて新しい「家」を作ることができたのは本当に幸福なことで、彼の一ファンとして心から嬉しく思う。

  アダムのファンになってから15年もの長い時が流れた。かつて、愛想は良いけれども目が笑っておらず、どこか他人を受けつけない雰囲気があったアダムも、年齢を重ねて年相応の大人になり、妻を愛する夫になり、子どもたちをかわいがる父親になった。態度に余裕ができ、優しいまなざし、暖かみのある声音と口調、久しぶりに見るファンを前にして、「ヘーイ!」と言いながら目を見開いて嬉しそうに笑う。本当に良い人になったなあ。

  アダムの公式サイト、ツイッター、フェイスブックを見てもあまり近況が載ってないが、楽しい誕生日を過ごしていてくれることを祈る。


  そうそう、先週イングリッシュ・ナショナル・バレエの『海賊』を観に行きました。まるで「イギリスのアメリカン・バレエ・シアター」みたいだと感じました。でもロイヤル・バレエやバーミンガム・ロイヤル・バレエとの差別化をはかるには、今のところはああいう路線しかないのかもしれません。タマラ・ロホが芸術監督に着任してからまだ数年ですから、ロホ芸監体制が安定して長期政権を保つことができれば、また方向性が違ってくるかもしれません。

  今回はブルックリン・マック目当てで観に行きました。マックは期待どおりのすばらしさでした。日本にはけっこういると思います、ブルックリン・マックの隠れファン。
  
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新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』(5月6日)‐2


  そうそう、このイーグリング版は、

プロローグ、休憩時間、第一幕・第二幕、休憩時間、第三幕

という構成で上演されます。この作品は上演の割り振りが本当に難しい。第一幕と第二幕をまとめて上演するのでは、オーロラ姫役のバレリーナの負担が半端ないと思うのですが、まあ仕方ないのかな。

  第二幕での村人と貴族が一緒に踊る群舞がやはり見ごたえがありました。八幡顕光さんがさりげなく村人代表で踊っていたり、リーディング・ダンサーが大勢紛れ込んでいたから当たり前ですが、やはり振付の出来そのものも良いんだろうと思います。

  ただ、次の葉っぱ軍団(「森の精」らしい)、あれだけはなんとかならんか。いや踊りじゃなくて、あのミドリムシみたいなド緑のチュチュ。あの衣装にはどーもまだ違和感があります。

  日本はアベノミクス効果で好景気なのか、それとも隠れ不景気なのかどうかは知らんが、この作品の舞台装置には見るからにカネかかってます。背景幕は一切使用せず、セットはぜーんぶハコモノ。プロローグでカラボスが乗って来るデカい蜘蛛も機械仕掛け(足がわさわさ動く。ひえ~)、第二幕でリラの精が王子を眠れるオーロラ姫の許へ導く銀の舟もハリボテじゃなくて、遠隔操作で全方位に動きます。ああいう大がかりな装置が大好きな前芸術監督のデヴィッド・ビントリーが羨ましがるだろうなあ。

  ウェイン・イーグリングは、目覚めたオーロラがデジレ王子といきなり恋に落ちて結婚するのは不自然だという理由で、現在はほとんど演奏されなくなっている『眠れる森の美女』の間奏曲を使って、あの「目覚めのパ・ド・ドゥ」を新たに加えました。初演時に観たときに、なんだかマクミランの『ロミオとジュリエット』の「バルコニーのパ・ド・ドゥ」みたいだな、と思ったのですが、今回もそう思いました。というか、あれは明らかにマクミランへのオマージュですね。二人で踊って、途中で王子のソロがあって、複雑なリフトがあって、最後、極めつけにデジレ王子がオーロラ姫に濃厚なキスをするもん。

  でも、あの目覚めの音楽がないのは、なんだかカタルシスがないというか、ユーリー・グリゴローヴィチの『白鳥の湖』最終幕で、王子がオデットを探して現れるべき音楽になっても、王子がいつまでも現れないときのイライラにも似たもやもやした感じを抱かせます。

  第三幕のディヴェルティスマンは、宝石(エメラルド・サファイア・アメジスト・ゴールド)、青い鳥、長靴を履いた猫、赤ずきん、親指トムの踊りとなっています。最後の親指トムの踊りは、確かイーグリングが八幡顕光さんのために特に付け加えて振り付けた踊りだったと思います。今日も八幡さんが踊りました。

  宝石の踊りでゴールドを踊った渡邊峻郁さんが非常に!!!すばらしかったです。真横に跳ぶ開脚ジャンプの力強くまた美しいことよ。筋肉が強いんでしょうね。王子を踊る日も近いと思われます。それとももうとっくに踊っているのか?

  ブルーバード・パ・ド・ドゥはなんと小野絢子さんと福岡雄大さん。正直いまいちな出来だったと思います。あの小野さんが2回もかかと落としたし(これらはたぶん福岡さんのサポートミスのせい)、福岡さんの踊りはどこか重くてキレがありませんでした。でも、フロリナ王女のヴァリエーションは、やはりイギリス系統独特の振付です。聡明な小野さんはもちろんロイヤル・スタイルを念頭に置いているのでしょう、きびきびした動きで踊っていました。小野さんの動きは実に艶やかですねえ。磨きぬかれた輝きという感じ。

  福岡さんは、主役じゃないと踊りがどこかおぼつかなくなるんでしょうね。といっても、本人が意識的に手を抜いているという意味では決してなく、福岡さんは主役を踊るべきダンサーなんです。だから主役でないといけない。そういうダンサーはいると思いますし、そういうダンサーがいけないとは思いません。
  
  長靴を履いた猫の中身は中家正博さんだったらしいです。これまたジャンプ力が凄かった。白い猫の中身は若生愛さんで、脚がきれいで色っぽかったです。

  カーテンコールで、長靴を履いた猫と「赤ずきんの踊り」の狼とが、かぶりものキャラ同士仲良くどつき合っていました。新国立劇場バレエ団の長所は、こういう遊び心が許されるところですね。

  オーロラ姫とデジレ王子のグラン・パ・ド・ドゥでも、ムンタギロフは英国ロイヤル・バレエ団のプリンシパルですから、あの3回連続片手リフトも難なくこなして、ガタつくことなくがっつり決めていました。米沢唯さんのヴァリエーションも優雅でたおやかでした。

  旧ソ連系の『眠れる森の美女』とは違い、クラシック・マイムがふんだんにあり、振付の難度が高く、演技重視、舞台装置がゴージャスなイギリス系『眠れる森の美女』はつくづくよいなあ、どうせなら『ジゼル』も『白鳥の湖』もイギリス系にしてくれないかなー、と思いました。

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新国立劇場バレエ団『眠れる森の美女』(5月6日)


  ウェイン・イーグリング版です。イギリス系統の『眠れる森の美女』が好きなので観に行きました。

  演奏は東京フィルハーモニー管弦楽団、指揮は熱き血潮のアレクセイ・バクラン。指揮者としては賛否両論が激しいですが、指揮台の上で「てめえがダンサーかよ!」とツッコミ入れたくなるほどにノリノリで指揮してるの見ると、結局は憎めないキャラの指揮者です。舞台間近の席にいると、時々鼻歌歌ってるのが聞こえてくるんだよねw

  オーロラ姫は米沢唯さん。だいぶ前にNHKで放映された『白鳥の湖』のオデット/オディールを観て、この人は避けよう、と思っておりました。その後、『ドン・キホーテ』なら米沢さんの良さが生きるから大丈夫じゃないか、と思って観に行き(バジルは井澤駿さん)、結果やっぱりこの人は避けよう、と思いました。でも本島美和さんがカラボスを踊るだろうと期待していて、本島さんが出演するなら米沢さんか小野絢子さんが主役の日だろうと思ったので、この日のチケットを買ったわけです。

  ところが、米沢さんの今日のオーロラを見て、なるほど、ワディム・ムンタギロフの出演日との兼ね合いもあるとはいえ、これならファーストでオーロラを2回踊るのも当然だ、と思いました。それほどにすばらしかったです。技術も演技も。動きもなめらかになり、体力の配分も改善されていて(以前はスタミナ切れを起こしていた)、また音楽ときちんと調和がとれた踊りにもなっていました。

  デジレ王子役のワディム・ムンタギロフは鉄板の安全安心っぷりでした。

  リラの精の木村優里さんは、『シンデレラ』で仙女を踊った人かな?とても美しく、優しいときは優しい、厳しいときは威厳ある雰囲気を醸し出していました。木村さんが踊ったリラの精のヴァリエーション(プロローグ)についてですが、あれがイギリス系統の振付です。最後は『ラ・バヤデール』でニキヤが踊る「ヴェールの踊り」と同じというか、ヴェールの踊りよりも難度の高い振りが入っています。アラベスクのターン→パンシェ→ピルエットを連続で複数回くり返す振りです。あれは旧ソ連系統の振付では易しい(だろう)ものに変更されています。このイーグリング版の初演でも、リラの精を踊ったバレリーナは別の振りに変更して踊りました。

  木村さんは振付に忠実に踊ったわけです。つまり、木村さんのヴァリエーションにはもっと大きな拍手が送られてしかるべきだった、ということを言いたいわけです。そうか、木村さんが明日の新国立劇場バレエ団を担うプリマになるわけだね。

  カラボスは本島美和さん。初演時に比べると今回はメイク控え目。でもやっぱり見ごたえがあります。美人だし、演技が上手いし、本島さんにしては(すみません)踊りも超絶に見事でした。鋭くてキレがあり、速い回転も安定していました。本島さんの演技は舞台ごとに違うのがまたすばらしい。初演のときの演技も良かったなあ。まだ記憶に強く残っています。
  

  フロレスタン王は貝川鐵夫さん。「あっウェリントン!」(←『シンデレラ』)と思ってしまった。貝川さんは漂々とした味があっていいよね。

  式典長は輪島拓也さん。こちらは初演時よりもメイクの白塗り度が大幅に増量してバカ殿度がさらにアップ。輪島さんもコメディアンの才能がある演技派。なんだかんだ言って、プロローグから第三幕まで舞台に出ずっぱりな輪島さんなのであった。

  リラの精の他に妖精は6人で、最後に踊る「気品の精(寺井七海さん)」の音楽と振りは、私はこのイーグリング版以外では見たことがありません。

  妖精たちのヴァリエーションでは、優美の精の丸尾孝子さん、歓びの精の五月女遥さん、勇敢の精の柴山紗帆さんがとりわけすばらしかったと思います。丸尾さんは安定で堅固、五月女さんは速くて細かい動きがまるでハチドリのよう、柴山さんは動きにメリハリがあって気持ちいいほどポーズをバシバシ決める。

  このイーグリング版を最初に観たときには、さほど優れているとは思わなかったのですが、第一幕の花のワルツの振付はいいですね~。英国ロイヤル・バレエはまだクリストファー・ウィールドンの振付版を使ってるのでしょうか?ウィールドン振付の花のワルツよりもよっぽど優れていますよ。心なしか、男性ダンサーがたくさん踊る振付になっている気がします。これは他の群舞もそうでした。

  そういえば、カラボスが乗って登場する蜘蛛の化け物と、口が耳まで裂けたカラボスの手下たちはナイスでした。あれはインパクト大。

  男性ダンサーたちを平等に活躍させるイーグリングの振付方針(?)は、ローズ・アダージョにも反映されていました。オーロラ姫をメインでサポートする男性ダンサーを決めず、みなに平等にサポートさせていました。ただ、渡邊峻郁さん(ロシアの王子)、ついで井澤駿さん(イタリアの王子)が多くサポートしていたようです。オーロラ姫をめぐって、ロシアの王子がイタリアの王子を出し抜いてドヤ顔する小ネタも面白かったです。こういうとこもイギリス系統の良さだよねえ。  

     
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『雨に唄えば』千秋楽(4月30日)-2


  出待ち?しましたよもちろん。バレエ公演では出待ちはまったくしない私ですが、アダムの出待ちだけはします。


  
  コズモ役のステファン・アネッリさん。舞台上ではハイテンションなコメディアンですが、頭がすごく良い切れ者だとお見受けしました。小柄だけど筋肉がムキムキ。鍛えてるようです。そりゃそうだ、でないと「笑わせろ(Make'em Laugh)!」みたいなパフォーマンスはできませんよね。次はロンドンで『トップ・ハット』に出演する予定だそう。


  
  ドーラ・ベイリー役のロビン・アーサーさん。すごく優しい方で、出待ちしているファンに自分から声をかけてきてくれました。日本は今回が初めてで、いろんなところに遊びに行き、すっかり気に入ったそうです。


  
  R.F.シンプソン役のマイク・ビショップさん。ズバリ箱根の温泉に行ったんだそうで、「ハッコーネ、ハッコーネ♪」と終止ご機嫌に謎の歌を歌っていました(今も耳について離れない…)。こちらもすごく明るくて気さくな方でした。それになんと日本語を話せるようになっていた!と言うと、「No,no,スコーシ!」と日本語で謙遜


  
  第二幕のブロードウェイ・メロディ・バレエで、黒いドレス姿で官能的な踊りを見せてくれたナディア・クートさん。ブロードウェイ・メロディ・バレエでは黒いボブのウィッグ、他の役でもブルネットのウィッグをかぶっているので、「私だと分からなかったでしょ?」 いやいや、あれほど魅力的なんだから分かりますって!背が高く(170以上は確実にある)、とても細い脚が胴体よりも明らかに長い。スレンダーバディ。


  
  リナ役のオリヴィア・ファインズさん。あれ?地声が元々リナとよく似てる?ハイトーンのかわいらしい声でした。おどけて「アイ・カーント…」とリナのセリフをやってくれました。
  

  
  キャシー役のエイミー・エレン・リチャードソンさん。細面で睫毛が長く、切れ長の眼、鼻筋が通っていて、とにかく物凄く美しい方。美女だわ~、と見惚れてしまいました。


  
  リチャードソンさんも日本語をマスターしていて、しきりに「ありがとうございます!」とおっしゃっていました。


  
  ドン役のアダム・クーパーさんw。相変わらずイイオトコだ。

  
  出待ちしていた10代とおぼしき可憐なお嬢さんたちが「かっこいい~!」としきりに言うので、「あの人は45歳、今年46歳で女房子供がいるんだよ~」と教えてあげました(←意地悪)。お嬢さんたちは「えっ!?45歳?あれで?」と呆然。ごめんね~。


  
  長女のナオミちゃんはお母さんのサラ・ウィルドーと同じくバレエを習っているが、長男のアレクサンダー君はストリート・ダンスに夢中なんだそう。「バレエを習わせないの?」と聞くと、「無理強いはできないよ!」とのこと。良いお父さんですな。「アレクサンダー君は今何歳だっけ?」と聞いたら、「あれ?え~と、8歳だったかな?8歳だ」という返事。向こうの人は子供が今何歳とかあまり気にしないものなのかね?


  
  単刀直入に「次の予定は何だ?」と聞くと、「次の予定はねえ~、え~っと?」とすっとぼけやがった。かわし方が上手くなってやがる。ほんとに角が取れて丸くなったな。次はミュンヘンで『メリー・ウィドウ』の振付を行なうんだそうな。


  
  中身は軟らかくなったが、遠目に見ると今もこんな感じ。年とらないカッコいいおぢさん。


  キャストのみなさん、お疲れのところを本当にありがとうございました!!!


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『雨に唄えば』千秋楽(4月30日)


  正月に観に行ったキエフ・バレエ日本公演『白鳥の湖』で、オデット/オディールを踊ったオレシア・シャイターノワがどんなにすばらしかったかについての記事を書こう書こうと思っている中に早4ヶ月が過ぎ、『雨に唄えば』2017年日本公演が始まってしまったのでございます。

  ブログを完全放置していたその陰で、『雨に唄えば』を6回観に行き、更に出待ちも2回したなんて、口が裂けても言えません。

  『雨に唄えば』は、前回の日本公演に負けず劣らずの大盛況で、他の方からお聞きした話では、割引チケットの類が一切出ず、会場内で販売されていたリピーターズ・チケットも定価であったということです。物販も絶好調で、売り切れの品が続出していました(私もいくつか買いました)。いささか理解に苦しむのは缶入りドーナツが完売したという点ですが。

  前回の日本公演と同様、カーテンコールは撮影可だったので、以下に今日の千秋楽の様子を。


  
  この黄色い雨がっぱはかわいいからグッズ化すればよかったのに~?


   
  再び雨が降り出して、「雨に唄えば」を歌いながら踊るキャストのみなさん。

  
  左からコズモ役のステファン・アネッリ、ドン役のアダム、キャシー役のエイミー・エレン・リチャードソン。

  
  リラックスした表情で笑い合う三人。良い笑顔です。

  
  楽日お約束の水のぶっかけ合いが始まる。左はデクスター監督役のマーク・リチャードソン。

  
  
  今度は観客に牙をむくwキャストたち。右はR.F.シンプソン役のマイク・ビショップ。お茶目だのう。水のたまった床に寝そべっているキャストが2人ばかし見えるが、子どもか!

  
  もはや完全にカオス状態www

  
  カオス状態その2。右に見切れているのは観客に水をぶっかけようとしているアダムさん。

  
  倒れているのはエイミー・エレン・リチャードソンか?右はアダム。感極まったのか抱き合うキャストたちも。

  
  退場していく主役三人。ところが…

  
  キャスト全員が捌けた後で、なぜかステファン・アネッリが再び登場し、観客に拍手喝采を促す。「聞こえないよ~?」 その仕草に応えて観客が大喝采。

  
  主役の三人が登場。アダムさんは観客をスマホで逆撮影しながら登場。黄色いケースは物販で売られていたもの。

  
  三人で仲良く肩を組んで今度こそ本当の退場。4週間の長丁場、お疲れさまでした!

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キエフ・バレエ『バヤデルカ』(1月6日)‐2


  第二幕の黄金の偶像はミキタ・スホルコフが踊りました。スホルコフは『白鳥の湖』と『眠れる森の美女』で王子を踊ります。スホルコフはキエフ・バレエでは王子要員なのでしょう。王子要員に黄金の偶像を踊らせるってどうなのよ、と思いましたが、まあサービスというか、ツアー公演なんで人員が足りないんでしょう。

  スホルコフの黄金の偶像は、なんか踊り慣れていない感じでかなりぎこちなかったです。スホルコフが脇に引いた後で中から拍手が聞こえたので、たぶんスホルコフは初めてこの役を踊ったんじゃないでしょうか?スホルコフは翌7日の『バヤデルカ』でも黄金の偶像を踊りましたが、7日の公演では驚くほどに修正してきました。たった1日で踊りが別物になったこの対応力はすばらしいですね。

  黄金の偶像では6人の男の子たち(日本人)が一緒に踊りましたが、この子たちの踊りも大層にすばらしいものでした。脚を前に上げて軽く跳んでは片脚でキープ、横に跳びながらステップを踏む、単なる添え物やガヤじゃなくて、しっかり踊っていましたよ。おばさんとても感動しました。

  ついでに女性コール・ドに触れておきます。この日は惨憺たる出来でした。たぶん新人ばかりだったんじゃないかと思います。見るからに練習不足、経験不足でした。リーディング・ダンサー、たとえば、第一幕のジャンペー、第二幕のパ・ダクシオン、第三幕のヴァリエーションには良いダンサーを配置していましたが、コール・ドはガチャガチャして揃っていませんでした。また、観客の拍手に戸惑って、指揮者のサインを読み損ねて出を間違えたり。

  しかし、これも翌7日の公演では驚異的なほどに修正されていました。前の日には散々だったのに、たった1日置いた次の日には見違えるように良くなっている、そういうことはしばしばあります。ダンサーたちに地力があるから可能なんでしょうね。

  ただ、第三幕の3つのヴァリエーションは、6日、7日の両日ともダンサーによって出来不出来が激しかったです。短い期間にたくさんの作品こなさなくちゃいけなくて、1公演でいくつもの役を踊らないといけなくて、振りをこなすので精一杯なのは分かるけど、これ、単なるヴァリエーションじゃなくて、「影」という役柄の踊りでもあるんだからさー、と思いました。

  ソロル役のデニス・ニェダクは、相変わらず踊り、パートナリング、演技すべてが盤石でした。まず、今回はソロルなのでヒゲを蓄えた精悍な印象のメイクでした。役柄によって雰囲気を変えられるダンサーです。

  演技も良かったです。第一幕で、ソロルはガムザッティとの結婚を承諾してしまいます。その直後、それを知らないニキヤが奴隷と一緒にガムザッティを祝福して踊ります。その間、ニェダクのソロルは踊るニキヤから必死で目をそむけ、ニキヤを決して見ようとしません。

  第二幕で毒蛇にかまれたニキヤがすがるような表情でソロルを見たとき、ニェダクのソロルはニキヤをしばらく見つめ、しかしニキヤへの思いを振り切るようにニキヤに背を向けてしまいます。それを目にしたニキヤは絶望して死にます。

  ガムザッティとのパ・ド・ドゥだったと思いますが、ソロルのヴァリエーションの最後で、ニェダクは見たことのない技をやりました。やや斜めに飛びながら空中で2~3回転し、最後に片脚を前に伸ばして半回転しながら、もう片脚で着地する技です。あれは何という技なんでしょうね?

  ニキヤ役のフィリピエワは、1970年生まれなのでもう46歳です。それが『白鳥の湖』、『眠れる森の美女』、そして『バヤデルカ』の主役を全幕で踊るというクレイジーなことをやってのけました。

  さすがに無理はせず、ジャンプを3回やるところを2回に抑えたり(第二幕)、パートナーに支えて持ち上げてもらう形にしたり(第三幕)、というふうに、体力配分をうまく考えた振りに変えていました。それでも、ジャンプすると年齢をまったく感じさせない完璧なジャンプをします。

  動きに隙や緩みがなく、音楽にもきっちり合わせてくるところはさすがです。ニキヤの役作りもしっかりしていて、フィリピエワのニキヤは意外にも「強い女」でした。毅然としています。第一幕、大僧正の強引な求愛をはねつける時も、ソロルをあきらめるよう高圧的に迫るガムザッティに対しても、フィリピエワのニキヤはひるむことがありません。あの大きな瞳で、大僧正やガムザッティをまっすぐに見返します。

  最も印象的だったのは、第二幕のニキヤのソロです。大部分のニキヤは、舞台に走り出てきた時点で、打ちのめされて悲嘆にくれた表情をしているものですが、フィリピエワはやはり毅然とした表情で出てきて、怒りさえ感じられる強い目つきのまま踊り始めました。しかし、分かるんですね。すべてを失ったニキヤが、絶望を必死に押し隠し、最後のプライドを奮い立たせて踊っている、ということが。

  テクニックに関していえば、フィリピエワよりも10歳若いイリーナ・ペレン(翌7日にニキヤを踊った)のほうが当たり前なことに高かったわけです。ただ、踊りに隙がない、一つ一つの動きが丁寧、全身を完璧にコントロールしている、音楽にきっちり合わせる、「自分のニキヤ」像がしっかりしているという点では、フィリピエワのほうが上です。

  カーテン・コールでのフィリピエワの表情も印象的でした。なんて説明すればいいのか、呆然とした、疲れ切った、安堵した、晴れ晴れとした、すがすがしい、とにかく、やりきった!という感じの表情でした。

  
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キエフ・バレエ『バヤデルカ』(1月6日)‐1


  新年あけましておめでとうございます~、と言えることに感謝して、キエフ・バレエ2017年日本公演『バヤデルカ』。


 キエフ・バレエ『バヤデルカ』(1月6日於東京文化会館大ホール)


   ニキヤ:エレーナ・フィリピエワ
   ソロル:デニス・ニェダク

   ガムザッティ:イリーナ・ペレン

   大僧正:セルギイ・リトヴィネンコ
   藩主:ウラジスラーフ・イワシェンコ
   トロラグヴァ(ソロルの友人の戦士):セルギイ・イファーノフ

   マグダヴェーヤ:ヴィタリー・ネトルネンコ

   奴隷:ドミトロ・チェボタル
   ジャンペー:マリア・ラブロネンコ、マルガリータ・アリアナフ

   黄金の偶像:ミキタ・スホルコフ
   太鼓の踊り:エリザベータ・ゴギィゼ、ヴィタリー・ネトルネンコ、ドミトロ・チェボタル
   壺の踊り:カテリーナ・チュピナ

   パ・ダクシオン:アンナ・ムロムツェワ、オリガ・スクリプチェンコ、マリア・ラブロネンコ、マルガリータ・アリアナフ

   第1ヴァリエーション:マリーナ・ステパンチェンコ
   第2ヴァリエーション:アンナ・ムロムツェワ
   第3ヴァリエーション:オリガ・スクリプチェンコ


   指揮:ミコラ・ジャジューラ
   演奏:ウクライナ国立歌劇場管弦楽団


  ニキヤがフィリピエワ、ソロルがニェダク、ガムザッティがペレンというドリーム・キャスト。これは観ないわけにはいきますまい。

  マグダヴェーヤ役のヴィタリー・ネトルネンコは、まずナイスバディw 腰を隠しただけの体つきが非常に美しい人でした。動きはしなやかで、ジャンプは軽くて高い。力むことなくふわっと跳び上がって、空中で脚をふわっと180度開く。着地音もまったくなし。さりげなくこういう凄技をやります。何気に良いダンサーです。

  キャスト表を見ていて今気づきましたが、ネトルネンコは第二幕の太鼓の踊りも踊ったんですね。太鼓の踊りが終わったあとに、またマグダヴェーヤの格好をして出てきたんですな。お疲れさまです。

  ミハイロフスキー劇場バレエからゲスト出演したイリーナ・ペレンは、以前にガムザッティを踊ったのを私は見たことがあったかな?たぶんないと思います。だから「ペレンがガムザッティ?うわー、見てえー!」と思ったんでしょう。

  ペレンは美貌、美しい肢体と高度な技術を持ち、(たぶんあまり物事を深く考えないので)肝が太くて物怖じせず、ミスというものをまったくしない頼もしいバレリーナです。しかしその一方で、演技、表現、情感という面では、観ている側が歯がゆくなるほど無頓着というか無関心らしく、どんな役でも無表情で機械的に正確に踊ります。

  しかし、そんなペレンはガムザッティにぴったりです。都会っ子(サンクトペテルブルクの生まれ育ち)でドライな性格っぽいペレンは、素でやればそのままガムザッティになるからです。

  で、案の定、ペレンのガムザッティは最高でした。美しく、権高な態度と高慢な表情、冷たい目つき。身分の低いニキヤを嘲笑い、王女である自分に絶対的な誇りと自信を持っている。強い目つきでニキヤをじっと見据えながら、どんどんニキヤを追いつめていくペレンちゃんは最高に美しかったです。が、ソロルがニキヤに愛を誓ったと知るや、とたんに「どうしよう?どうしたらいいの?」という動揺した表情と仕草になり、自分がかけていた首飾りにふと手が当たって、反射的に首飾りを引きちぎってニキヤに差し出します。このへんのペレンちゃんの演技はすごく良かったです。

  どーでもいいことですが、第二幕のガムザッティの衣装はペレンちゃんの自前だったようです(もしくはミハイロフスキー劇場から借りた?)。純白のチュチュ。

  打ちのめされたニキヤが踊っている間、ニキヤが毒蛇に咬まれて苦しんでいる間も、ガムザッティは冷たい表情を保ったままニキヤを見つめています。バレリーナによっては、わざとソロルとイチャイチャしてみせてニキヤに見せつける演技をしたり、驚く演技をしたりしますが、ペレンちゃんのガムザッティは、もはやニキヤなんぞ歯牙にもかけていないようで、一貫して無関心、無表情でした。このほうが逆にリアリティがあったりします。 

  第二幕のコーダでのペレンは、イタリアン・フェッテが凄かったです。あの長~い脚をぐわっと上げて長~くキープ、回転してまた長~くキープ。

  ガムザッティはペレンの当たり役になってしかるべきだよなあ、と思いました。なんでペレンのガムザッティを今まで観たことがなかったんだろう?と不思議なくらいです。

  その2に続きます。

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そろそろ先行販売です


  こんにちは。またまたお久しぶりでございます。

  明日(11月5日)から、PARCO等で来年の『雨に唄えば』日本公演(公演期間:2017年4月3日〔月〕から2017年4月30日 〔日〕まで)のチケット先行販売が始まります。

  詳しくは PARCO STAGE でご確認下さい。 『雨に唄えば』日本公演オフィシャルサイト もできてます。コンテンツはまだ何もありませんが。

  主催と企画は前回の日本公演(2014年)と同じ各社のようです。安心ではないかしら?

  チケット代も前回公演時から据え置きというのも嬉しいところ。


  最近のバレエ公演のチケット価格は急激に高騰していますね。そろそろついていけなくなりそうです。これからもどんどん値上げしていくのでしょう。海外の有名バレエ団の来日公演のS席チケットが30,000円を超えたら、もうその公演は観ません。というより、観られません。

  今日は新国立劇場バレエ団の『ロミオとジュリエット』を観に行ってきました。新国立劇場バレエ団のチケットも高騰の一途をたどっていますなー。以前は新制作でなければS席でも10,000円前後で観られましたが、今は全幕物はS席12,000円越えが当たり前になりました。

  今日の『ロミオとジュリエット』の舞台そのものは、実にすばらしい出来でした。自前キャストオンリーで、あそこまで高いレベルで上演できるようになったんですね、新国も。

  ただ今日は、観客のおそらく半分か、ひょっとしたらそれ以上が学生(小学校高学年か中学生~高校生)で、とにかくうるさくて参りました。興味のないものを強制的に観劇させられるのは、特に子どもにとっては苦痛でしかないでしょうから、友だちとおしゃべりすることくらいしか楽しみがなかったのはよく分かるのですが。

  また、なまじ舞台の出来が良かっただけに、この公演を観たい人が観られず、観たくない人が観させられるのは不合理じゃないかとも思いました。

  いかん、愚痴になってしまいました。『雨に唄えば』のチケット、これから各社で先行販売がどんどん始まるものと思います。みなさま、お買い逃しのありませんように~。
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「バレエの巨匠たち」(8月6日、プログラムC)-2*建設中



 「牧神の午後」(「ニジンスキーの肖像」より)

   ファルフ・ルジマトフ、カテリーナ・カザチェンコ

  これは以前にルジマトフとユリア・マハリナで観たことがあります。だいぶ前の話です。もう10年くらい前?

  不思議なことに、今回のほうが見入ってしまいました。以前にこれを観たときは、たぶんニジンスキーの原振付の「牧神の午後」をまだ観ていなかったと思います。だからルジマトフのこの改訂版を観てもピンと来なかったのでしょう。でも今回の上演を観て、ルジマトフの改訂版がニジンスキーの「牧神の午後」の雰囲気を受け継いでいて、しかし違う作品に創りあげていることがよく分かりました。

  ルジマトフの「牧神ポーズ」もビシッと決まってカッコよかったです。カザチェンコもセクシーでした。でも今回は、ルジマトフはカザチェンコのドレスの首のホックを外すだけで、上半身をがばっと脱がしてはいませんでした。マハリナのときは思いっきり脱がしてましたが。

  あとはやはり録音とはいえ、ドビュッシーの音楽の力は大きいと思いました。


 「イン・ザ・ミドル・サムホワット・エレヴェイテッド」より

   カテリーナ・マルコフスカヤ、マクシム・チャシェグロフ

  シルヴィ・ギエムとローラン・イレールだったかマニュエル・ルグリだったかが踊ってる映像が残ってるパ・ド・ドゥ部分です。

  去年に上演された日本の某バレエ団によるクソみたいな踊りとは比べ物にならないほど良かったです。でも非常に言いにくいんですが、マルコフスカヤ、あのレオタードが似合ってない…よね?アナスタシア・マトヴィエンコ、イリーナ・ペレン、カテリーナ・カザチェンコ、エレーナ・フィリピエワの後にマルコフスカヤを見ると、踊り以前に体型が気になってしまったというか。また30年前にギエムが踊っている映像と比較しても、ギエムって身体能力ばかりでなく、時代に先駆けた体型の持ち主でもあったんだなというか(←今さら)。

  向こう10年くらいは、このパ・ド・ドゥは日本で上演しないほうがいいかもしれません。


 「アイス・メイデン(氷の姫)」より

   イリーナ・ペレン、マラト・シェミウノフ

  旧ソ連時代の1927年に作られた作品だそうですが、いやすばらしい!旧ソ連のバレエ独特のアクロバティックなリフトがてんこもりなパ・ド・ドゥでした。シェミウノフがペレンを目を疑うような難度の高いリフトで持ち上げていきます。消防署の出初め式や秋田の竿燈まつりをイメージするとよいと思います。

  ペレンとシェミウノフのパートナーシップは完璧。やっぱり夫婦だとこういう踊りのときにはいいですね。強い信頼関係がないと無理だもんね。

  ペレンは淡い水色の全身レオタード。その身体のラインが美しいのなんの!周りの観客もペレンの肢体のあまりな美しさに目が釘付けになったようでした。

  この「アイス・メイデン」(どうも「アイアン・メイデン」と言ってしまうw)って、全幕残ってないの?日本で上演すればいいのに。このパ・ド・ドゥもまた観たいし、全幕も観たいわ。


 「瀕死の白鳥」

   エレーナ・フィリピエワ

  フィリピエワの両腕のうねりっぷりが人外。美しかった。フィリピエワの腕が螺旋状にねじれていくたびに客席から自然と湧き起こる拍手。周囲から「うわあ…」、「すごい!」という声が聞こえてくる。「瀕死の白鳥」はそういう演目じゃないんけどなあ、と思ったけど、でもすばらしいものを目にしたら感嘆の声を漏らし、拍手するのは自然な反応。劇場で「マナーをわきまえている通な観客」を気取ることほど野暮なことはない、とすぐに思い直す。

  フィリピエワの腕のうねり、本当に美しかったです。


 「トゥオネラの白鳥(Black Swan)」

   ファルフ・ルジマトフ

  「瀕死の白鳥」の後に持ってくるとは粋ですな。ルジマトフは黒の衣裳で、ロットバルト、カラボス、「火の鳥」のカスチェイ、デーモン小暮閣下などのようでした。メイクは映画「ブラック・スワン」でのナタリー・ポートマンみたいでした。

  腕をまっすぐに上に伸ばして、手首から先を直角に曲げたポーズをしょっちゅうしていて、それがまるで鳥の翼のようでもあり、長い頚のようでもあり。でも踊りとしては印象に残るというほどではありませんでした。メイクと衣裳が強すぎて踊りの邪魔をしている気がしました。


 「海賊」よりパ・ド・ドゥ

   デニス・マトヴィエンコ、アナスタシア・マトヴィエンコ

  マトヴィエンコもパートナリングが上手いよね~。妻とはいえ、トゥで立つと自分と背丈がさほど変わらなくなるアナスタシア・マトヴィエンコを、グラつくことなくがっちり持ち上げてました。

  メドーラのヴァリエーションは、ガムザッティのヴァリエーションとまったく同じものでした。メドーラのヴァリエーションとして、『ドン・キホーテ』の森の女王のヴァリエーションと同じ踊りが踊られるのは見たことありますが、ガムザッティのは初めて観たかな?

  コーダでは、デニス・マトヴィエンコがなんと3連続で540をやりました。お祭り男(?)の本領発揮です。その後もマトヴィエンコ独特の電光石火かつむじ風のごとき怒濤のマネージュ。観客が沸きました。アナスタシア・マトヴィエンコの32回転では手拍子が起きました。これも内心いいのかな?と思いましたが、すべてシングルで回っていましたから、テンポが乱されることはなかったでしょう。最後はデニス・マトヴィエンコがこれまた豪快な連続ピルエットを披露しました。


 フィナーレ

  全員が順番に出てきて、自分たちが踊った作品の一部をくり返して踊る、よくある形式のフィナーレでした。おかしかったのがルジマトフ。ブラック・スワンのキャラとポーズを崩さず、カーテン・コールでも上に伸ばした腕に顔を付ける鳥さんポーズのまんま。でも口元にはニヤリとした悪戯っぽい笑みを浮かべていて、なんかユーモラスでした。ルジマトフなのに。

  拍手は止むことがありませんでした。その理由は分かりました。みなさんルジマトフのピルエットが見たいんです。しかし、ルジマトフは知らん顔をして相変わらずブラック・スワンのままです。しかし、わざとじらすように、面白そうな笑みを浮かべています。事情が分かっているマトヴィエンコが、まず自分が超絶技巧を織り交ぜたピルエットを見せました。回転しながら片脚を徐々に下ろしていって、ゆっくりとスピードダウンして止まりました。マトヴィエンコがルジマトフのほうを見やります。「さあ、あなたの番ですよ?」という感じで。

  その瞬間、ルジマトフの顔から笑みが消え、いきなりがっ、とピルエットの構えに入りました。構えた瞬間、ルジマトフの雰囲気とその周囲の空気が一気にがらっと変わったのが凄かったです。ルジマトフも年齢を感じさせない豪快で大きな動きのピルエットを披露しました。総立ちになっていた観客はもはや総ヒステリー状態。いやー、面白い人だよね、ルジマトフって。

  なぜか休憩時間なしの110分という公演で、密度の濃い楽しい時間を過ごさせて頂きました。

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「バレエの巨匠たち」(8月6日、プログラムC)-1*建設中


  リハビリがてらゆっくりいこうかい。マトヴィエンコ&ルジマトフ「バレエの巨匠たち」プログラムCです。会場は東京国際フォーラムC。


 「ウィスパー」

   デニス・マトヴィエンコ、アナスタシア・マトヴィエンコ

  デニス・マトヴィエンコを見て、一瞬誰このおっさんと思いました。衣裳が野暮ったい。アナスタシア・マトヴィエンコはブルーのドレス。白い長い美脚に見とれました。振付はつまんなかったです。


 『眠りの森の美女』よりグラン・パ・ド・ドゥ

   カテリーナ・チュピナ、ミキタ・スホルコフ(キエフ・バレエ)

  両人とも純白のキラキラ衣裳で美男美女。やっぱクラシックはええなあ、と思いました。でも両人とも踊りは発展途上。アダージョはガタガタ。スホルコフはパートナリングを精進しましょう。チュピナちゃんはスタミナつけましょう。今後に期待。


 「Escape~終わりなき旅~」

   ファルフ・ルジマトフ、デニス・マトヴィエンコ

  御大ルジマトフ登場。上半身裸なんだけど、何このすごい筋肉。ゴールドジムサンクトペテルブルク店とかで鍛えているんでしょうか。最初の「ウィスパー」ではなんか精彩がなかったマトヴィエンコが激変、キレのよい動きでダイナミックな踊りを見せます。ルジマトフはまるでマトヴィエンコに挑むように、これまた迫力ある動きで踊ります。ルジマトフがどんどんマトヴィエンコに詰め寄っていくような雰囲気でした。男二人ならではのマッチョな振付で、マトヴィエンコがルジマトフをリフトしたり、見ごたえ充分な踊りでした。

  舞台には白いポリエチレン製(?)の大きな布が舞台上に敷きつめられていました。二人の動きによって起こる風でポリエチレンが舞い上がります。ルジマトフがポリエチレンを両手で高くかざした瞬間に、ルジマトフの後ろから白い照明が当てられました。ルジマトフの姿が白い幕の内側で影となって浮かび上がります。その前に立つマトヴィエンコ。演出も照明もすばらしかったです。この二人が踊るならまた観たい作品です。

  踊りが終わって二人でお辞儀をするところで、ルジマトフがなぜか丸いサングラスをかけて一瞬ジョン・レノン化してたんだけど、あれはお遊びだったのかな?幕が下りてまた出てきたときにはサングラスはかけていませんでした。


 「Blind Affair」

   イリーナ・ペレン、マラト・シェミウノフ

  なんとイワン・ワシーリエフの振付作品だそうです。ペレンとシェミウノフは黒い目隠しをしていました。ペレンちゃんはやっぱりスタイル抜群。ほっそりした、しかし均整の取れた身体のスタイルと美脚に見とれてしまいました。あとやっぱりテクニックが半端ないです。回転とかではシェミウノフのサポートが必要ありません。自分で勝手にぐるぐる回ってます。

  でも、振付には特に見るべきものはなかったです。


 「カルメン」

   エレーナ・フィリピエワ、ドミトロ・チェボタル

  曲はロジオン・シチェドリン編曲の「カルメン組曲」よりアラゴネーズ。でもアロンソ版ではなく、セルゲイ・シュヴィドキという人の振付だそうです。コンクール用に創作された小作品で、「カルメン」とストーリー上の関係もないようです。

  フィリピエワは背中が大胆に開いた黒いロングドレス、チェボタルは上半身裸に黒いロングスカートでした。踊りと関係ないですが、フィリピエワの衣裳はいわゆる「肌襦袢」がなかったです。生の背中、肩、腕でした。で驚いたのが、フィリピエワがすごく筋肉質な身体になっていて、ルジマトフと筋肉の付き方がそっくりに見えたことでした。特に背中。

  フィリピエワは終始鋭い目つきで笑顔を見せずに踊り、踊りが終わっても表情を変えることはありませんでした。男前モードのフィリピエワでしたが、アラゴネーズなら、やっぱりアロンソ版の冒頭シーン、カルメンのソロを見たかったなあ。フィリピエワのカルメン、超絶カッコよかったから。


 「タンゴ」より

   デニス・マトヴィエンコ、アナスタシア・マトヴィエンコ

  マトヴィエンコ夫妻が冒頭で踊った「ウィスパー」とこの「タンゴ」は、ともにエドワード・クルグの振付です。ほら、「レディオとジュリエット」の振付家。

  「ウィスパー」は少し退屈でしたが、この「タンゴ」はコミカルな作品で楽しかったです。マトヴィエンコは明るい陽性男だと思うので、ドロドロした陰気な作品よりはこういう陽気な作品のほうが合っていると思います。激しくケンカしていた二人が、しかめっ面のまま肩と腕組んでタンゴを踊るところが面白かったです。


  (その2に続く)

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