今日の夕方、月がすばらしい、というメールをもらったので(満月だった昨夜、東京は大雨でした)。李白の「酒を把りて月に問う」。
青天有月来幾時、 紺碧の空に月が昇ってきてからどのくらい経ったか?
我今停杯一問之。 杯を口に運ぶ手を止めて、ちょっと月に尋ねてみよう。
人攀明月不可得、 人間は明るい月によじ登ろうとしてもできないのに、
月行却与人相随。 月はなんと人の後を追うように空を自在に行くではないか。
皎如飛鏡臨丹闕、 空飛ぶ白い鏡は朱の門に迫り、
緑烟滅尽清輝発。 夕暮れの暗いかすみが尽きると清らかな光が射しこむ。
但見宵従海上来、 夜の闇が海からせり上がってきて、
寧知暁向雲間没。 暁の光はいつのまにか雲の間に消えてゆく。
白兎擣薬秋復春、 月の中の白兎は一年じゅう薬をきねでつき、
嫦娥孤棲与誰鄰。 月の中の仙女は独り住まいだが、お隣に「いいひと」はいるのか?
今人不見古時月、 今の人々は昔の月を見ることはないが、
今月曾経照古人。 今の月は昔の人々を照らしてきた。
古人今人若流水、 昔の人間も今の人間も流れる川のように来ては去っていくが、
共看明月皆如此。 みないつもこんなふうに明るい月を見つめてきたのだろう。
唯願当歌対酒時、 どうかお願いだから、歌と酒があるときは、
月光長照金樽裏。 月の光が金の樽の中をいつまでも照らしていてはくれまいか。
……いかにも李白な詩だなあ。
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昨日の夜に日本テレビが映画『オペラ座の怪人』を放映しました。それで思ったのですが、別にわざわざ「豪華キャスト」で吹き替え版など作らなくても、原語のまま放映して、字幕だけ付ければよかったのでは!?と思いました。とゆーか、あの映画を、主音声(吹き替え版)だけで視聴した人はいるのだろうか、と大いに疑問っす。
私は副音声(原語)だけで視聴しました。というのは、歌の場面にはすべて日本語字幕が出ていました。そして、『オペラ座の怪人』はほとんど歌だけで進行していく作品です。だから、吹き替えを聴く必要は最後まで感じませんでした。相変わらずすごい作品でした。
それでも、吹き替えの声はどんなかな、と思って、主音声と副音声を時々ザッピングしました。ファントムの歌声は全然違いました。数年前にこの映画が公開されたとき、多くのミュージカル・ファンに不評だった「ハウンド・ドッグ」風ファントムの歌声は、吹き替えでは舞台と同じようにオペラ風なものになっていました。ファントム役は誰が担当したのだろうか。きっと有名なミュージカル俳優さんかオペラ歌手さんでしょうね。クリスティーンをはじめとする他の役も、きっと日本のミュージカル俳優・オペラ歌手総動員だったに違いありません。
で、子爵たちがファントムを捕らえようとする場面で、NHK教育の『吉田都のスーパーバレエ・レッスン』にチャンネルを替えました。なんと昨日の回は、マクミラン版『ロミオとジュリエット』のバルコニーのパ・ド・ドゥ(ジュリエットのソロからキス・シーンまで)だったのですわ。
この回はすごく面白かったです。踊りではなく、簡単な仕草に見える動き、たとえばロミオとジュリエットのキス・シーンも、サポートやステップはバレエの動きで行なわなければならないと分かって驚きました。ロミオ役の今勇也さんに、キスしている間のサポートの動きはこう、ジュリエット役の伊藤友季子さんにはステップはこう、と具体的に教えていて、「うん、ここ(キス・シーン)は難しいよね」と言ってました。
かと思うと、その前の踊り、ジュリエットが後ろ向きにロミオに飛び込んでいって受け止められ、リフトされたまま一回転した後のジュリエットの動きに対して、ジュリエット役の伊藤さんに、「そこ(両手の位置と動き)はバレエの動きでやらない!」と声をかけていました。演技指導も他の回に比べてすごく細かくて、マクミラン版は大変なんだな~、とあらためて思いました。
それでも、吉田さんが「難しいけど、これはほんとにいいパ・ド・ドゥだから」と何度も力を込めて言っていたのが印象的でした。
最後に模範演技を吉田さんとロバート・テューズリーが行ないました。番組の趣旨からは外れるでしょうけれど、ロミオのサポートについては、テューズリー、もしくはロイヤル・バレエのバレエ・マスター(収録現場はロイヤル・オペラ・ハウス内のスタジオだし)とかに指導してもらったほうがよかったんじゃないか?と思いました。吉田さんも多少はアドバイスしていましたが、実際にロミオを踊ったことのある人のほうが、もっと具体的に教えられるはずです。
ところで、伴奏のピアノはひどかったですね(笑)。一応ロイヤル・バレエ所属のレッスン・ピアニストなんでしょうに。
その後はお風呂に入ったので、結局『オペラ座の怪人』は最後まで観ませんでした。来週はマイケル・ジャクソンの“THIS IS IT”を放映するんだって?これはまたすごいのを持ってきますね。うーむ、やっぱり、これも観なきゃ、ですな。
追記:『オペラ座の怪人』の吹き替えは、すべて劇団四季の方々が担当されたそうです。劇団四季のファンの方々にとっては、吹き替え版のほうが興味津々ですよね。失礼しました。今回の放映はすごいお宝映像(音声)だろうし、1回きりの放映ではもったいないから、CD化してもよいのでは?
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庄司(品川庄司)と(短髪の)レオニード・サラファーノフ(レニングラード国立バレエ)。
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が、あるんだそうです。公演期間は2011年1月13日から2月28日まで。会場は日生劇場です。
なぜか、これの公演チラシが、新国立劇場バレエ団の『シンデレラ』を観に行ったときに会場の入り口でもらったチラシ群の中に入っていました。
日本公演というよりは、日本版公演といったほうがいいですね。キャストは全員日本人(フラメンコ・ダンスは外国人ダンサーが担当する模様)で、セリフや歌はもちろん日本語のようです。公式サイト があるので、詳しくはこちらをどうぞ~。
“Zorro The Musical”は、2008年にUKツアー、同年にウエスト・エンド公演を行ない、その後はワールド・ツアーを行なっていたようです。
UKツアーにはアダム・クーパーが(←なんかすげえ久しぶり~)ラモン役として出演しました。しかし、その後のウエスト・エンド公演に際して大幅な脚本の改訂が行なわれた結果、特にラモン役は歌もダンスもほとんど削られたため、それに不満を持ったクーパー君はラモン役を降板しました。降板といっても、以前のブログにも書いたとおり、クーパー君のほうから降板を申し出るように仕向けられた、というほうが正しいと思います。
“Zorro The Musical”ウエスト・エンド公演でのラモンは、ほぼ演技のみの役となりました。主要キャストの入れ替えは他の役でも行なわれ、ルイサ(ディエゴ=ゾロの恋人)役はUKツアーでルイサ役を担当した新人歌手ではなく、ベテランのミュージカル女優が担当することになりました。
役自体がなくなるということもありました。UKツアーでは、ディエゴがゾロになるのを手助けするジプシーの少年(チャゴ)の役がありましたが、ウエスト・エンド公演ではチャゴという役そのものがなくなり、イネズ(ジプシーの女性)がチャゴの役割を兼任(?)することになりました。チャゴはすごく良い役で、観客にも大好評でしたが、チャゴの人物設定とチャゴの死をめぐる演出は、ウエスト・エンドで上演するには倫理的にヤバい、とでも判断されたのでしょう。
私はUKツアーはもちろん、ウエスト・エンド公演も観ましたが、ウエスト・エンド公演版は、いかにもウエスト・エンドの観客(というよりは批評家)ウケするように作られているのがミエミエで、面白いことは面白いものの、どこか興ざめしたことを覚えています。
今回の日本版公演は、ウエスト・エンド公演版と基本的に同じものでしょう。だから、面白いとは思います。でも、UKツアー版のラモンとウエスト・エンド公演版のラモンは別物といってよいので、私はクーパー君のラモンの追憶(笑)にひたるために観に行くつもりは今のところありません。ただ、あの舞台の雰囲気全体を思い出すにはいいかもしれないね。
そもそも、UKツアーにもいい思い出はあまりないんだよな……。でも、クーパー君に対して、あなたのパフォーマンスは良くなかった、と面と向かって言ったことは後悔してないけどね。あと、これはブログに書いたっけ?彼に手紙も渡したんですよ。そこにはもっとダイレクトに、何がどう良くないのか書きました。
あれはまだ一昨年のことなんだけど、もうずっと昔のことのように思えます。私もよくあんなことがやれたよなあ。それというのも、アダム・クーパーという人が、ファンのおべんちゃらばかりでなく、批判をも受け入れる余裕を持っている人物だとなんとなく分かっていたからこそ、私も言いたい放題、書きたい放題できたんだと思います。うむ、やはりアダム・クーパーは器の大きなヤツだな、と今さらながらに思う次第。
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今日、帰宅したら光藍社からハガキが届いていました。
年明けにレニングラード国立バレエの『ドン・キホーテ』を観る予定で、チケットを早々に光藍社から購入していました。主演はファルフ・ルジマトフ、エフゲーニヤ・オブラスツォーワ(マリインスキー劇場バレエ)でした。
ところが、光藍社からのハガキによると、オブラスツォーワが膝の故障のため出演できなくなってしまったそうです。オブラスツォーワのキトリを楽しみにしていたので残念ですが、仕方がありません。今は治療に専念して、いずれまた日本で、柔らかくて暖かくて優雅なあの踊りを見せてほしいものです。
で、ハガキにはオブラスツォーワの「代役」も書かれていたのですが……。それがなんと、ヴィクトリア・テリョーシキナ!!!
みなさまご存知のとおり、テリョーシキナはマリインスキー劇場バレエのプリンシパル・ダンサーです。去年末のマリインスキー劇場バレエ日本公演、今年の10月に行なわれたボリショイ&マリインスキー・バレエ合同ガラに、テリョーシキナはともに参加しました。その柔軟な身体能力、揺るぎない高い技術、豊かな表現力、そして節度をわきまえた優雅さと端正さは、まだ記憶に新しいところです。
光藍社の公式サイト にもこのキャスト変更の情報が掲載されています。オブラスツォーワのメッセージと医師の診断書(←毎度のことながら、私はここまでするのはやり過ぎだと思うのですが)、テリョーシキナのプロフィルが載っています。
それによると、テリョーシキナがまだ無名の新人のころ、ルジマトフはテリョーシキナとともにレニングラード国立バレエの公演に参加したり、また彼女を自分のガラ公演に参加させたりして、彼女と共演したことが度々あるそう。今回、テリョーシキナがオブラスツォーワの代わりに急遽出演することになったのは、ルジマトフが声をかけてくれたおかげなのだろうと思います。
テリョーシキナのキトリは観たことがない(実際、日本では全幕を踊ったことがないらしい)ので、非常に楽しみです。
それにしても、キャスト変更をわざわざハガキで知らせてくれるなんて、光藍社は相変わらずとても親切で良心的です。なぜか観客に対して上から目線な、日本の一連のプロモーターとは大違いです。
光藍社は
日本のプロモーターの星
ですわ~。
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シンデレラ:小野絢子
王子:山本隆之
義理の姉たち:マシモ・アクリ、高木裕次
父親:石井四郎
ダンス教師:グリゴリー・バリノフ
仙女:本島美和
春の精:西山裕子
夏の精:西川貴子
秋の精:高橋有里
冬の精:厚木三杏
道化:八幡顕光
ナポレオン:吉本泰久
ウェリントン:市川透
王子の友人:芳賀望、江本拓、菅野英男、古川和則
指揮:デヴィッド・ガルフォース
演奏:東京フィルハーモニー交響楽団
小野絢子さんのシンデレラが観たくて行ってきました♪マシモ・アクリさんが義理の姉役で出演だったのも嬉しい限り。
小野さん、山本隆之さん、アクリさん、本島美和さん以外のキャストは、11月27日の公演と同じだったせいか、前回より余裕をもって観ることができ、気づいた点も多かった気がします。
2年ぶりのマシモ・アクリさんの義理の姉(上の姉)は、期待どおりの面白さでした。大仰な身振り手振りだけでなく、「シッ!」という大きな息づかいも用いていて効果倍増だったし、おかしな表情も笑えました。特にガラスの靴を履こうとするときの超横柄な態度と超乱暴な仕草はいつ見ても最高です。
アクリさん演ずる上の姉はすっげー横暴な性格ですが、それでも妹(下の姉)を気にかけて大事にしているのが分かって、この二人(義理の姉たち)は仲がいいんだな、と自然に思えるほどでした。
下の姉役の高木裕次さんもアドリブ(?)の演技が見事でした。ヅラが脱げたナポレオン(吉本泰久)が、慌てふためいてヅラをかぶりなおすところで、吉本さんがかぶりなおしたヅラの位置がヅラ、いやズレていたため、高木さんが優しい手つきでそっと直してやっていました。下の姉のナポレオンへの愛を感じました(笑)。これに会場は大笑い、拍手まで起きました。
四季の精の踊りは、素人目に見てもどれも難しいものばかりですが、春の精を踊った西山裕子さん、夏の精を踊った西川貴子さん、冬の精を踊った厚木三杏さんは、いずれもすばらしかったです。秋の精の踊りは高橋有里さんが踊りました。私はどうもこの秋の精の音楽と踊りは理解不能です。音楽については、なんであの音で終わるのか不思議だし、振付も音楽に合っているとは思えません。これぞ模範的な秋の精の踊り、というものがあったら、ぜひ観てみたいものです。
厚木三杏さんの冬の精の踊りはいつ見てもうっとりします。鋭く、充分にためをおいて、静かで安定しており、音楽にきっちり合わせて踊るのです。
この日の仙女役は本島美和さんでした。大人っぽいメイクで美しかったです。ですが、踊り(仙女のソロ)にはぎこちなさを感じました。
初日には本来の調子が出てなかったらしい道化役の八幡顕光さんは、この日は絶好調でした。特に、貴族たちが走り出てきてマズルカを踊る前の道化のソロでは、回転は竜巻のように速くて迫力があり、また後ろ向きに跳んだ瞬間に開脚するジャンプがえらいこと高くてダイナミックで、小柄な八幡さんが物凄く大きく見えました。
王子役の山本隆之さんは、たたずまい、立ち居振る舞いや雰囲気は品が良くて威厳があり、王子らしかったです。それに、あのとおりのイケメンだしね。演技も表情がありました。でも、どーしても思い出してしまう、2年前に観たヨハン・コボーの、シンデレラに恋してしまった王子の生き生きした表情とキラキラ目を。
山本さんの踊りは、ボリショイ・バレエのアルテム・シュピレフスキー化してました。原因はおそらく、山本さんの現在の体重がバレエを踊るのに適した数値ではないことであると思われます。踊りによくない影響が出る以上は調整したほうがよいと思います。
小野絢子さんのシンデレラは非常にすばらしかったです。
私は小野さんの演技や踊りに、一貫して知的な雰囲気を感じていました。役をよく考え解釈して、すみずみまで計算し尽くしている、という印象を受けました。これはすばらしい長所ですが、「知的だな」、「よく考えて計算しているな」ということを観客に覚られなければ、もっとよかったと思います。もっとシンデレラになりきるというか、役柄に没入できれば、更にすばらしくなるに違いありません。
また、個人的には「そこはもっとゆっくり踊ったほうがいいのに」とか、「そこでもっとバランスをキープして」とか思うステップや動きを、速いスピードでさっさと片づけてしまうところがやや目立ちました。シンデレラという役にしては、踊りが鋭すぎるというか、メリハリが利きすぎるというか。
小野さんの踊りは一言でいえば「強靭」で、技術は驚くほど安定しており、非常にパワフルでした。あまりに凄すぎて、王子役の山本さんが追いつけないほどでした。……正直に書きますが、今の山本さんは、小野さんのパートナーを務めるには力不足です。
山本さんのパートナリングの技術が、小野さんをサポートし切れていませんでした。シンデレラと王子のパ・ド・ドゥを観て、山本さんには申し訳ないですが、「小野さんがこれほど踊れているのにもったいないな」と思いました。
演奏(東京フィルハーモニー交響楽団)はよかったです。この10月のボリショイ&マリインスキー・バレエ合同ガラの演奏をした、あのけったいなオーケストラに比べれば全然マシ。
めったにしないことですが、幕間にオーケストラ・ピットを覗いてみました。そしたら、休憩時間にも関わらず、ピットに残って次の幕の演奏の練習をしている団員の方々が一部いました。そういう姿を見てしまったら、悪口も言えなくなりますね。
よく、オーケストラの団員はバレエ公演の演奏を見下していて、わざと手を抜いた演奏をする、とか耳にします。そういうオーケストラの団員がもし本当にいるとしたら、その人は演奏家として以前に、人間的に問題があると思います。こういう人は演奏家としても大成できないでしょうね。
これはオーケストラに限った話ではないです。私の同僚の中にも、「自分は本来ならこんなつまらない仕事をやるようなレベルの人間ではない」という気持ちを隠そうとしない人はいますよ。じゃあ、自分本来の高いレベルの仕事ができる新しい職場に移れば、とか私は思うのですが、これがずっと居座り続けてる(笑)。
話がそれましたが、バレエ公演であっても、観客はオーケストラを無視しているはずはなく、ちゃんと音楽を聴いているのです。バレエは音楽とセットのものなのですから。だから音が外れれば興がそがれるし、演奏に一体感がなく、パート同士の音がずれると苛立ちもする。だから、もしバレエ公演の演奏では手を抜いているという団員の人がいたら、そういうことはやめて下さい、と言いたいわけです。
まとめ。やっぱり『シンデレラ』は、このアシュトン版がいちばんよいなあ。
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