『オネーギン』を観てきました(2)

  本日29日のシュトゥットガルト・バレエ団公演『オネーギン』を観てきました。実は、最初に買ったのは今日のチケットだったんです。昨日のチケットは、先週『眠れる森の美女』を観に行ったときに会場で衝動買いしたものでした。

  オネーギンはジェイソン・レイリー、タチヤーナはスー・ジン・カン、レンスキーはマリイン・ラドメイカー、オリガはアンナ・オサチェンコでした。

  ジェイソン・レイリーによるオネーギンの人物像は、私にとってはあまり深みが感じられないというか、ただ単に傲慢な俗物に見えました。

  もちろん、オネーギンは「傲慢」で「俗物」なのだと思いますが、レイリーの演技は、いかにもお約束的に「傲慢で冷たい」オネーギンで、表面的に演じているようにしかみえず、深みがなくて底が浅い印象を受けました。

  ただ、レイリーのパートナリングには、昨日のイリ・イェリネクよりも好感が持てました。ちゃんと相手の女性ダンサーによく注意を払い、その体勢が整うのを待ってから、次のサポートやリフトに移っていました。

  ここでひとつ補足しておきたいことがあります。昨日のイェリネクについての描写を読むと、イェリネクがまるで演技だけのダンサーのように思われてしまうかもしれません。

  イェリネクは踊りも非常によかったです。ただ、「遅れてやって来た思春期パワー爆発しまくり」的な他の若い男性プリンシパルたちと比べて、派手な大技やテクニックを売りにしているのではないらしい、というだけです。少なくとも、英国ロイヤル・バレエ団の大部分の男性プリンシパルたちよりは、イェリネクのほうがテクニック的に全然上です。

  今日の公演で、私が最も注意を引かれたのは、タチヤーナ役のスー・ジン・カンでした。ほっそりした長い手足に白い肌、それがよく映える美しい黒髪を持っています。また彼女はとにかく演技がよく、特に少女時代のタチヤーナと成長してからのタチヤーナとでは、表情も雰囲気もまったく違っていたのには唸りました。

  タチヤーナがまだ少女である第一幕と第二幕では、スー・ジン・カンは自信なさげな、内気らしい、頼りなげな風情です。しかし、大人の女性となった第三幕では、落ち着いた態度で貴婦人らしい華やかな微笑を浮かべていました。第三幕の最後のパ・ド・ドゥでは、明らかに少女時代とは異なる、一人の大人の女としてオネーギンへの愛に悶え苦しむ表情をみせました。

  スー・ジン・カンの踊りもさすがの貫禄というか余裕というか、昨日タチヤーナを踊ったアリシア・アマトリアンほどの身体能力はないようですが、踊りに磨きぬかれたような輝く艶がありました。一つ一つのポーズや動きが安定していて美しく、安心して見ていられました。

  また、スー・ジン・カンは「サポートされ上手」、「リフトされ上手」でもあると思います。昨日のイリ・イェリネク&アリシア・アマトリアンのペアでは、イェリネクがアマトリアンを(時に強引なほどに)引っ張っている印象を受けましたが、今日のジェイソン・レイリー&スー・ジン・カンのペアは、ふたりの踊りのタイミングが合っていて、バランスよく調和している感じでした。

  第一幕最後の「鏡のパ・ド・ドゥ」で、ジェイソン・レイリーが駆け込んできたスー・ジン・カンを受け止めてそのまま振り回すリフト、第三幕のパ・ド・ドゥで、レイリーがスー・ジン・カンを投げ上げて落とし、彼女の両の脇の下に腕を差し込んで受け止めるリフトなどは、あまりの美しさに本当に息を呑みました。

  第三幕のパ・ド・ドゥでのスー・ジン・カンの演技は、非常に見ごたえがありました。威厳ある表情で机に座っていたタチヤーナが立ち上がり、その足元にオネーギンが倒れこんで、それから両腕を広げ、タチヤーナを包み込むように抱きしめようとした瞬間、無表情だったタチヤーナが目を大きく見開きます。

  タチヤーナは目を見開き、こわばった表情で、オネーギンを突き放しつつ踊りますが、次第に目を潤ませ、情熱的な笑いを浮かべて彼と踊るようになります。

  最後に、タチヤーナは自分の感情を無理やり押さえつけて、オネーギンに出て行くよう命令します。オネーギンが逃げ去った後、タチヤーナは天を仰いで、顔をくしゃくしゃにし、口を大きく開けて慟哭します。オネーギンがタチヤーナを失ったのと同じように、タチヤーナもまたオネーギンを失ったのだ、とよく分かる悲痛な表情でした。しかし、彼女は嘆き悲しみながらも、それでも両手のこぶしを固く握りしめます。

  レンスキー役のマリイン・ラドメイカーもよかったですが、彼の踊りを見て、昨日のレンスキー役だったフリーデマン・フォーゲルが、いかにすばらしかったか分かりました。反対に、今日のオリガ役のアンナ・オサチェンコは、昨日のオリガ役だったカーチャ・ヴュンシュよりもよかったです。オサチェンコが踊るたびに、彼女のポーズや動きは美しい、と強く感じました。

  今日はオーケストラの調子が昨日よりもよかったです。昨日も今日みたいだとよかったのですが。

  今日の舞台には、昨日ほど過剰に感動はしませんでしたが、やっぱり『オネーギン』はいい作品だなあ、ジョン・クランコはすごい振付家だなあ、と思いました。
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『オネーギン』を観てきました

  シュトゥットガルト・バレエ団の『オネーギン』(ジョン・クランコ振付)を観てきました。第三幕最後のパ・ド・ドゥでは、久しぶりに感動して涙が出そうになりました。

  とにかくオネーギン役のイリ・イェリネクがすばらしかったです。もちろん私のベスト・オネーギンはアダム・クーパーなことに変わりはありません。ですが、イリ・イェリネクはオネーギンについての解釈と表現が非常にしっかりしていて、彼独自の確固としたオネーギンを踊り演じてみせました。

  まず、イェリネクのオネーギンは、自分は正しい、と信じている人間でした。現に、別にひねくれてもいないし、傲岸不遜なわけでもないし、いじけてもいないし、悪意があるわけでもないし、冷酷なわけでもない。ただ、自分のことを、冷静に判断し、正しく対応できる「大人」だと本気で思っている。つまりは、オネーギンはそれほど傲慢なヤツなのですが、もちろん本人はそんな自分の傲慢さにまったく気づいていません。

  だから、第一幕と第二幕では、オネーギンはタチヤーナを完全に子ども扱いしており、タチヤーナからの恋文なんぞ、迷惑以外の何物でもないのです。オネーギンがタチヤーナに手紙をつき返すと、タチヤーナは両手で顔を覆って泣き出してしまいます。オネーギンはそれを見て当惑し、「だから子どもには困るんだよ」といううんざりした表情を露骨に浮かべて首を振ります。

  長い年月が経った第三幕で、オネーギンはグレーミン公爵夫人となったタチヤーナに再会します。このときも、オネーギンは年老いた自分のみじめさを恥じながらも、タチヤーナが美しい大人の女性に成長したことに自身の希望を見出したかのように単純に喜び、タチヤーナに求愛します。

  このオネーギンの身勝手さは、イリ・イェリネクのパートナリングにもよく現れていました。イェリネクはパートナリングが非常に上手です。神がかり的に流麗、華麗です。

  ただ、第一幕の「鏡」のパ・ド・ドゥ、第三幕の別れのパ・ド・ドゥを見ているうちに、イェリネクのリフトやサポートは確かに巧みなのですが、どこか無理やりで一方的なように感じられてくるのです。タチヤーナ役のアリシア・アマトリアンが、まだポーズや動きが定まらないうちに、性急に引きずられ、振り回されている感がありました。

  ダンサー的にこれでいいかどうかは別にして、オネーギンの無自覚で善意いっぱいの傲慢さを表現するには、イェリネクのこうしたパートナリングは最適でした。

  タチヤーナ役のアリシア・アマトリアンは、先日の『眠れる森の美女』とはまるで別人でした。表情などでの演技はいまいちでしたが、身体が非常に柔らかく、腕や脚や爪先のポーズや動きで物が言えるダンサーだと思います。そして彼女の腕の動きのしなやかさや巧みさ、リフトされたときなどに、タイミングを見事に捉えた開脚や両脚のポーズの美しさ、回転の鋭さやいつまでもぐるぐると回っている持久力には見とれました。

  第三幕最後のオネーギンとタチヤーナのパ・ド・ドゥは、非常に情熱的で激しい踊りとなりました。踊っているイェリネクの激しい吐息が聞こえてきて、思わず息を呑んでこのパ・ド・ドゥに見入ってしまい、完全に舞台上の世界、迫るオネーギンと、拒みながらも惹かれていくタチヤーナの感情のせめぎ合いに呑み込まれていました。他の観客も同じだったろうと思います。

  レンスキー役のフリーデマン・フォーゲル、オリガ役のカーチャ・ヴュンシュもすばらしかったです。が、今日はイリ・イェリネクとアリシア・アマトリアンの存在感があまりにも大きすぎました。

  スタンディング・オベーションをしている観客も多く見受けられました。それほどの舞台だったと私も思います。

  また観に行きます。今度のダンサーたちはどんなドラマを見せてくれるでしょうか。
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アダム・クーパー来日公演続報(2)

  本日、11月27日発売の『DDD』1月号にも、アダム・クーパー振付・主演『On The Town ~踊る大紐育~』のオーディション情報が掲載されました。

  また、『シアターガイド』12月号第186ページに、『On The Town』の関連記事(ニューヨーク・シティ・センター公演のレヴュー?)があるようです。(後記:レヴューじゃなくて、ブロードウェイの公演案内でした。ごめんなさい。)

  アンコールズ・ジャパン社によると、この作品(ニューヨーク・シティ・センター“Encores!”シリーズ上演版)を同じ形式、同じ演出家(John Rando)で日本で上演するのが、来年9月の『On The Town ~踊る大紐育~』だということです。

  ただし、日本公演の振付はアダム・クーパーが行なうので、シティ・センター公演版とは内容が大きく変わるであろう、とのことです。

  また、『On The Town ~踊る大紐育~』に関する決定事項などは、アンコールズ・ジャパンの公式サイト に徐々に掲載していく予定であるそうです。

  まだオーディション情報があちこちで公開されている段階であるとはいえ、話がだんだんと具体的になっていく感じで、とても嬉しく、またワクワクします。次の更なる新しい展開が楽しみです。

(後記:その後、『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』は事情により公演が無期限延期となりました。詳しくは こちら をご覧下さい。)

  それから。サイト本体を2ヶ月ぶりに更新しました。「名作劇場」に、新国立劇場バレエ団『アラジン』(デヴィッド・ビントリー振付)第一幕を載せました。相変わらず「いったんもめん」な長~い文になってしまいましたが、よかったら読んで下さいね
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バレエ&ミュージカル情報いろいろ(続)

  今日(23日)もバレエを観に行ってきました。今度はシュトゥットガルト・バレエ団のマリシア・ハイデ版「眠れる森の美女」です。夜の部(18:00開演)を観ました。

  相変わらず男子が超元気なバレエ団でした。

  ハイデ版については、互いの味の調和を無視した、雑多な具がたくさん入った闇鍋を際限なく食べさせられている感じで、最後のほうは退屈でたまらなくなりました。

  一つ例を挙げると、ハイデ版ではカラボスがプロローグから終幕まで出ずっぱりです。そして、女性ダンサーではなく、男性ダンサーが女装してカラボスを踊ります。

  男性によって踊られるこのカラボスは、しょっちゅう舞台に姿を現しては、ダイナミックなジャンプや回転を連続で繰り返し、舞台上を縦横無尽に駆け回ります。結果、カーテン・コールでは、オーロラ姫とデジレ王子よりも大きな拍手とブラボー・コールをもらっていました。

  ですが、カラボスのこの派手なパフォーマンスは、無意味で空疎なもののように私には思えました。なんでここまで跳びまくらないといけないのか分からないのです。

  また、カラボスはとかく城郭の上から下を眺めていたりして、登場シーンが実に多いのです。でもそれらの登場シーンが何を意味しているのかも分かりにくかったです。

  結局は、カラボスをここまでフィーチャーする意図はなんなのか、どんな効果を狙っていたのか、何を表現したかったのか、非常に曖昧なままで終わってしまいました。

  プログラムによると、マリシア・ハイデは「私はベジャールやノイマイヤー、キリアンのような本当の振付家ではないと思うの。だから真の意味の新しい創作には自信がない。でも『眠れる森の美女』『ジゼル』『くるみ割り人形』といった古典なら彼らよりよく知ってると思うし、たくさん踊ってきたわ」と語ったそうです。

  でも今回のハイデ版『眠れる森の美女』を見た限り、マリシア・ハイデは「古典」の再振付、追加振付、再演出にも「自信」を持つべきではないだろうと思いました。

  オーロラ姫を踊ったのはアリシア・アマトリアンでした。私は古典を踊る彼女を観るのは今回がはじめてでした。コンテンポラリーを踊る彼女は以前に観たことがあって、アマトリアンが身体的素質に非常に恵まれたダンサーだということは知っていました。

  ですが、全体的な感想を言うと、なんでアマトリアンがオーロラ役なのか理解できませんでした。普通はその役を踊れる能力を持つダンサーをキャスティングするものでしょ?たとえば1箇所や2箇所ミスをしたというくらいならなんでもないですけど、アマトリアンは明らかにオーロラ姫を踊れる能力をまだ持っていないと思います。

  第一幕のローズ・アダージョではバランス・キープがまったくできず、アティチュードで上げている片脚が、あれよあれよという間に下がってくる。最後には身体全体が斜めにかしぐ。あんな悲惨なローズ・アダージョははじめて見ました。

  続いてのヴァリエーションでは、振りをこなすのに精一杯で、時間が押せ押せになってしまい、踊りが音楽とまったく合わない。

  シュトゥットガルト・バレエ団の芸術監督、リード・アンダーソンは、ダンサーを技術だけで判断する人ではないようなので、アマトリアンをオーロラ役に配した他の理由、たとえば音楽性にあふれた踊りをするとか、優れた演技力があるとか、大きな存在感や華があるとか、魅力的な雰囲気を醸し出せるとか、そういった要素をアマトリアンに見出そうとしましたが、結局わからずじまいでした。

  でも、第三幕のグラン・パ・ド・ドゥでのアマトリアンはすばらしかったので、彼女のオーロラ姫へのキャスティングは「これからに期待」的な意義があったのでしょうか。

  会場でシュトゥットガルト・バレエ団の残りの東京公演の「リピーター券」(2,000円割引)が発売されていました。で、つい衝動買いしてしまいました。『オネーギン』をもう1枚。わたくしは悪魔(マーラ)を退けることができませんでした。お許し下さい、ブッダ様(By 『聖☆おにいさん』)。

  やっと本題。今日もらった公演チラシから。

  デンマーク・ロイヤル・バレエ団が2009年5月に日本公演を行ないます。演目は二つで、まずオーギュスト・ブルノンヴィル振付『ナポリ』、公演日は5月15日(金、18:30開演)、16日(土、15:00開演)、17日(日、15:00開演)、次にジョン・ノイマイヤー振付『ロミオとジュリエット』、公演日は5月22日(金、18:30開演)、23日(土、15:00開演)、24日(日、15:00開演)です。

  来日予定のプリンシパルは、シリア・シャンドルフ、ギッテ・リンストロム、グドゥルン・ボィェセン、エイミー・ワトソン、ヤオ・ウェイ、ジャン・リュシアン・マソ、マス・ブランストルップ、トマス・ルンドだそうです。

  主催元はNBSです。チケットは1月下旬発売予定で、料金、配役は追って沙汰する・・・ではなく、「発表いたします」とのことです。

  あとこれはとうの昔に光藍社の公式サイトに掲載されていたらしいですが、2009年1月20日に行なわれる「奇才コルプの世界」の出演者と演目が発表されました。

  出演者はイーゴリ・コルプのほか、

  草刈民代
  ユリア・マハリナ(マイリンスキー劇場バレエ)
  オクサーナ・シェスタコワ(レニングラード国立バレエ)
  ナタリヤ・マツァーク(キエフ・バレエ)
  エリサ・カリッロ・カブレラ(ベルリン国立バレエ)
  ヴィクトリア・クテポワ(マイリンスキー劇場バレエ)
  ヴィクトル・イシュク(キエフ・バレエ)
  ミハイル・カニスキン(ベルリン国立バレエ)
  オグルキャン・ボロヴァ(シンシナティ・バレエ)

だそうです。演目とダンサーは、

  「白鳥」(イーゴリ・コルプ、音楽:C.サン=サーンス、振付:R.パクリタル)
  「デュエット」(ヴィクトリア・クテポワ/イーゴリ・コルプ、音楽:A.コレッリ、振付:D.ピモノフ)
  「道」(ナタリヤ・マツァーク、音楽:J.マスネ、振付:D.クリャービン)
  「レダと白鳥」(草刈民代/イーゴリ・コルプ、音楽:J.S.バッハ、振付:ローラン・プティ)
  「眠りの森の美女」よりグラン・パ・ド・ドゥ(ヴィクトリア・クテポワ/ヴィクトル・イシュク、音楽:P.チャイコフスキー、振付:M.プティパ)
  「海賊」よりパ・ド・ドゥ(オクサーナ・シェスタコワ/オグルキャン・ボロヴァ、音楽:R.ドリゴ、振付:M.プティパ/V.チャブキアーニ)
  「グラン・パ・クラシック」(ナタリヤ・マツァーク/ミハイル・カニスキン、音楽:D.オーベール、振付:V.グゾフスキー)
  「ザ・グラン・パ・ド・ドゥ」(エリサ・カリッロ・カブレラ/イーゴリ・コルプ、音楽:G.ロッシーニ、振付:C.シュプック)
  「シーソーゲーム~ブランコのふたり~」(ユリア・マハリナ/イーゴリ・コルプ、音楽:J.S.バッハ/C.ヴァルガス、振付:R.パクリタル)ほか

とあります。「ほか」と書いてあるので、更に演目が増えるかもしれません。実はひそかに今から楽しみにしてるの。この「奇才コルプの世界」。うふ。
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バレエ&ミュージカル情報いろいろ

  今日(21日)は久しぶりにバレエを観に行ってきました。新国立劇場バレエ団の「アラジン」(デヴィッド・ビントリー振付)です。とても楽しみました。新作だから客足はどうかなあ、と心配していましたが、会場はほぼ満席の大にぎわいでした。よかったよかった。

  ビントリーの振付はよかったです。マクミランのように複雑すぎず、アシュトンのように無意味にトリッキーすぎず、中庸を得ているというか、お約束なクラシックの動きばかりではなく、変わった動きも取り入れられているけれど、基本的にはきちんとした端正で流麗な振付でした。

  ただ、作品としては未完成なところも見受けられました。特に第三幕は少し物足りなかったです。アラジンとプリンセスのパ・ド・ドゥは美しかったのですが、それ以前に脚本がまだよく練られていない感じがしました。ラストも盛り上がりに欠けたところがありました。

  ダンサーたちもまだよく踊り込んでいない感じでした。全体的に踊りがぎこちなく、数人のダンサーに関してはミスも目立ちました。キャラクターもあまりはっきりしません。役柄を完全に自分のものにしていたのは、マグレブ人役のマイレン・トレウバエフくらいじゃなかったでしょうか。

  まあまだ初演だから仕方ありません。再演時には改善されているでしょう。

  久しぶりにたくさん公演チラシをもらったので、その中で気になったものをいくつか。相変わらず遅きに失した感がありますが・・・。

  まず、年末に多くのバレエ団が上演する「くるみ割り人形」について。

  井上バレエ団は12月23日(火、17:00開演)、24日(水、18:00開演)に公演を行ないます。会場は文京シビックホール(大ホール)です。王子役はゲストで、なんとあのジーザス・パスター(ヘスス・パストール)。ボーン版「スワンレイク」で、アダム・クーパーとともにザ・スワン/ザ・ストレンジャーを踊ったダンサーです。

  ジーザス・パスターは「スワンレイク」日本公演後の2003年、アメリカン・バレエ・シアターにソリストとして入団したのだそうです。昨年の2007年に退団して、現在はフリーランスのダンサーとして活動する一方、地元のスペインで「自らネオクラシックのカンパニーを立ち上げ、マドリッドを中心に活動している」(公演チラシより)とか。

  いや~、久しぶりにパスターさんの名前を意外なところで発見して、なんだかすごく懐かしい思いになりましたわ~。

  なお、井上バレエ団の「くるみ割り人形」は、振付は関直人、美術はピーター・ファーマーだそうです。

  次は小林紀子バレエ・シアターの「くるみ割り人形」について。公演日は12月27日(土、18:30開演)、28日(日、17:00開演)で、会場はメルパルクホールです。

  金平糖の精は27日が島添亮子さん、28日が高橋怜子さんです。王子役はこちらもゲストで、両日ともアレッサンドロ・マカーリオ(サンカルロ・バレエ・シアター プリンシパル)だそうです。このマカーリオさんについて、私はまったく存じ上げませんが、どういうつながりでこの方を招聘することになったのでしょう。

  それにしても、高橋怜子さんは最近たてつづけに大きな役に抜擢されていますね。

  それからこれは(あくまで個人的に)大ニュースです。小林紀子バレエ・シアターは2009年4月24(金)、25(土)、26日(日)の3日間にわたって、なんとケネス・マクミラン版「眠れる森の美女」を上演するようです。会場は新国立劇場の中劇場だそうです。

  それぞれの開演時間は未定で、チケットも「12月下旬発売予定」としか、公演チラシには書いてありません。あとで電話して問い合わせてみよっと。マクミラン版「眠れる森の美女」なんて、ロイヤル・バレエはもとより、どこのバレエ団も今は上演してないんじゃないですか?これは貴重な機会だと思います。

  オーロラ姫は島添亮子さんで、王子役はアメリカン・バレエ・シアターのプリンシパル、デヴィッド・ホールバーグのようです。今年の8月に小林紀子バレエ・シアターが上演した「ラ・シルフィード」で、ホールバーグはジェームズを踊りました。踊りも演技力も数年前より格段にアップしていたので、来年の「眠れる森の美女」も楽しみです。

  それから、今年に入ってヨーロッパ・ツアーを行なっていた「ウエスト・サイド・ストーリー」が、2009年7月27日~8月9日に日本でも公演を行ないます。会場はオーチャード・ホールです。公演日以外の詳細は未定のようです。あ、「チケットの発売は2009年春を予定」ですって。

  この「ウエスト・サイド・ストーリー」は、今年の夏にロンドンのサドラーズ・ウェルズ劇場で1ヶ月ほど公演をして、見事ソールド・アウト公演になりました。なんでそんなことを知っているかって?この夏に「オズの魔法使い」を観に行って、ついでに「ウエスト・サイド・ストーリー」を観ようと思ったら、全日完売だったんですよ。

  最後は新国立劇場バレエ団の話題に戻ります。まだ遠い先の話ですが、2010年5月1~5日に「カルミナ・ブラーナ」(デヴィッド・ビントリー振付)が再演されます。まだ1年半も後のことだけど楽しみです。  
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アダム・クーパー来日公演続報

  来年秋に上演が予定されている“On the Town”について、昨日、主催元のアンコールズ・ジャパンにメールで問い合わせてみました。そうしたら今日さっそくにお返事を頂きました。以下はその概要です。

  ・株式会社アンコールズ・ジャパンは、ニューヨーク・シティ・センターとの契約により、シティ・センターの“Encores!”シリーズで上演された作品を日本でも上演するために、2008年に設立された会社である。

  ・2009年9月からの公演を企画している。

  ・2009年1月にアダム・クーパーがオーディションのために来日する。それに合わせて、徐々に情報を公開していく予定である。

  ・アダム・クーパーには自分の目で見て出演者を選抜したいという思いがあり、1月にオーディションを行なうことになった。

  ・公演は確実に開催する。期待していてほしい。

  現時点では以上のような状況にあるようです。

  更に詳細を知りたいというみなさんは、アンコールズ・ジャパン社にお問い合わせになってみてはいかがでしょうか。下の記事にリンクしてあるウェブ・ページにアンコールズ・ジャパン社のメール・アドレスが載っています。

  アンコールズ・ジャパン様、早速にご回答下さいまして、どうもありがとうございました。

(後記:その後、『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』は事情により公演が無期限延期となりました。詳しくは こちら をご覧下さい。)
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アダム・クーパー来日公演決定か

  前の記事「公演情報すべて確定」のコメント欄にありますように、ふじさんからお知らせを頂きました。ふじさん、ほんとにほんとにありがとうございます!!! 私ではとても気づきませんでした(←超頼りない)。

  『シアターガイド』公式サイトの「マル募WEB」(オーディション情報を掲載したページ)に、『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』に出演するダンサーのオーディション情報があります。

  アダム・クーパーはこの『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』に主演し、同時に振付も担当するようです。「アダム・クーパー以外の出演者は全て日本人の予定」と書いてあります。

  更に冒頭の「『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』ダンサーオーディション開催!」という題をクリックすると、その オーディション情報を記載したページ(画像) が開きます。

  それによると、振付・主演はアダム・クーパーで、更にバレエ・ダンサーの酒井はなさん、ミュージカル俳優の鈴木綜馬さん、岡幸二郎さんがすでに出演予定のようです。

  公演予定は2009年9月17日(木)から26日(土)、公演会場はオーチャードホールとあります。「フルオーケストラで上演」するそうです。

  副題に「バレエ『ファンシー・フリー』による」とあり、また舞台の紹介文には「アメリカン・バレエ・シアターの代表作『ファンシー・フリー』をベースにした人気ミュージカル(1944作)」とあるので、ジーン・ケリー主演の映画版ではなく、舞台版だと思われます。

  アダム・クーパーはオーディションにも参加するそうで、その実技審査が2009年1月19日から21日にかけて行なわれ、第二次審査は「当日アダム・クーパーの振付けによる実技審査」だそうです。

  ただし、「途中随時審査結果を発表する場合もあります」とのことで、これはつまり、クーパー君の気に入った人がいればその場で即合格、ということなのでしょう。

  主催は株式会社アンコールズ・ジャパン(Encores Japan)だそうです。どういう会社また組織なのか、まったくもって分かりません。この『On The Town~踊る大紐育~』が「Encores!Japanシリーズ第一弾」だとあるので、新しい会社なのでしょうか?

  出演ダンサーのオーディション情報の詳細が、ここまではっきり決まって発表されています。また公演予定期間も具体的に出されているからには、おそらく会場(オーチャード・ホール)もすでに押さえてあるでしょう。アダム・クーパーは、サドラーズ・ウェルズ劇場で2009年8月30日まで“Shall We Dance”に出演します。それから日数が少ない(17日間)のが気にかかりますが、スケジュール的に大丈夫なことは大丈夫です。

  以上のことから、アダム・クーパーが来年の秋にこの来日公演を行なう可能性は極めて高いといえます。

  むろん、状況の突然な変化はいつでも起こり得るわけで、観客向けに公演の詳細が発表され、公演チケットが発売されるまで確実ではありません。もう少し調べてみますが。

  ですが、ぜひ順調に事が運んで、来日公演が無事に行なわれるといいですね。

  ところで、言葉はどうするのかしら?英語と日本語のどちらで上演されるのでしょう?

(後記:その後、『On The Town~踊る大紐育(ニューヨーク)~』は事情により公演が無期限延期となりました。詳しくは こちら をご覧下さい。)
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公演情報すべて確定

  アダム・クーパーの公式サイトの“Current & Future Events”に、彼が来年4月にロンドン・コロセウムで行なわれるラッセル・マリファントの作品集に参加すること、および来年7-8月にサドラーズ・ウェルズ劇場で“Shall We Dance”という公演を行なうことが発表されてました。

  マリファント作品の公演の詳細については、イングリッシュ・ナショナル・オペラの公式サイトにある 公演情報ページ が紹介されています。

  演目は現在のところ、“Knot”、“Sheer”、“Critical Mass”、“Two”が予定されているようです。主な出演者はラッセル・マリファント、Dana Fouras(元ロイヤル・バレエのダンサーで、マリファントの奥さんでもある)、イングリッシュ・ナショナル・バレエからAgnes OaksとThomas Edur、ロイヤル・バレエからイヴァン・プトロフ、そしてアダム・クーパー、Daniel Proiettoで、残りの出演者はいずれ発表されるとのことです。

  “Shall We Dance”については、サドラーズ・ウェルズ劇場の公式サイト以上のことは書いてありません。アダム・クーパー以外の出演者はまだ決まっていないようで、今の時点では随時発表とあるだけです。
  まあ、まだ8ヶ月も先の話だしね。

  “Shall We Dance”では、クーパー君は振付、監督、主演の三役をこなすそうです。ただ、これは長い時間をかけて準備してきたプロジェクトだそうなので、やっつけ仕事のいいかげんな舞台にはならないでしょう。

  ともかく、これでクーパー君の上記2公演への出演予定は確実であることが明らかになりました。確かだろうと分かってはいたものの、ようやく最終的な「お墨付き」をもらえたような気分です。

  安心しました

  特に、ラッセル・マリファントの作品をクーパー君が踊るなんて、こんな夢のような話があるでしょうか。想像するだけでゾクゾクします。久しぶりにアダム・クーパーの本領が発揮できそうですね。

  いくらあなたが遠ざかろうとしても、あなたに似合う作品は向こうからやって来るのよクーパー君! 
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アダム・クーパー公演情報

  アダム・クーパーが2009年7月23日から8月30日まで、サドラーズ・ウェルズ劇場で“Shall We Dance?”という公演を行ないます。サドラーズ・ウェルズ劇場の公式サイトに詳細が本日掲載されました( こちらのページ )。気の早いことに、チケットの発売ももう始まっています。

  この作品の副題は“A Tribute to the Music of Richard Rodgers”で、紹介文はだいたい以下のような意味です。

  「リチャード・ロジャースによる諸々の音楽から構成される曲に乗せて、“Shall We Dance”は、真実の愛を見つけるための、ある一人の男の特別な旅を物語るものである。彼のパノラマ的な長い旅は、観客を東洋からロシアの民族舞踊、ニューヨークのジャズ、ウィーンの舞踏会での流麗なワルツを経由して、アメリカの西部まで連れて行くであろう。

  賞を獲得したダンサー、また振付家であるアダム・クーパーによって創案され、そして踊られる、このまったく新しい作品は、タップ、ジャズ、そしてクラシカル・ダンスの生命力あふれる融合によって、あなたをわくわくさせ、そして誘惑する。

  リチャード・ロジャースの名曲は、生のフル・オーケストラによって生き生きとよみがえる。」

  音楽がリチャード・ロジャースで、生オーケストラで、「ある一人の男」とはおそらくアダム・クーパーなのであろうことは分かりますが、でもなんか具体的なイメージがつかみにくいですな~。

  まー、とにかくクーパー君が踊りっぱなしな舞台らしいのは間違いなさそうです。しかしこんなヘンな・・・いや、奇抜で斬新なアイディアをよく思いつくなクーパー君、と感心しますわー。

  ともかく、本格ダンス復帰、おめでとうございます。
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「回転木馬」レビュー

  遅まきながら、「回転木馬」のレビューです。Woking公演(10月20~25日)のレビューが The British Theatre Guide に掲載されています。

  アダム・クーパーの振付についても言及があります。以下に引用・試訳します。

  「アダム・クーパーの振付は、浜辺でのバレエでは見事なまでに美しく、また少年たちが乱闘に熱中している場面では面白かった。しかし、こんなにも優れたダンサー(チャウ注:クーパー君のことを指すと思われる)が、よりダイナミックで個性的なものを生みだそうとしなかったことに、私は少しがっかりした。」

  今まで見てきたレビューと照らし合わせてみると、クーパー君の“Carousel”の振付は基本的にすばらしいものの、いささか典型と無難に流れているところがあるらしいですね。

  でもどのレビューも全体としては褒めていて、それに少し注文をつけているだけという点で一致しているので、クーパー君の振付はやはりよい出来なのだろうと思います。

  私のカンでは(あんまり当てになりませんが)、“Carousel”ウエスト・エンド公演は成功する可能性が高いのではないかと思います。たぶんクーパー君の振付家としてのキャリアにも、大いにプラスになることでしょう。

  ウエスト・エンド公演(11月22日開始)まであと少しです。少し緊張しますね。
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ダンサー・アダム・クーパー

  いつもお世話になっている美鳥さんのサイト 「みとり的バレエの楽しみ」 のブログに掲載されていますが、来年の春、アダム・クーパーがラッセル・マリファントの作品を上演する舞台に出演するようです。

  サドラーズ・ウェルズ劇場の公式サイトに詳細が載っています。会場はロンドン・コロセウム(近年、サドラーズ・ウェルズはロンドン・コロセウムでの興行にも積極的)で、チケットの販売もすでに始まっています。美鳥さんのブログから、詳細情報が掲載されたページに飛んで下さい。

  実は、このことは美鳥さんから個人的に教えて頂いたのです。それで、これはより多くのアダム・クーパーのファンのみなさんにぜひ知って頂きたい、と思いました。

  なぜかというと、最近のアダム・クーパーがミュージカルにばかり出演していることに対して、多くのファンがそれを非常に残念に思っている、と私は感じていたからです。他ならぬ私もその一人でした。

  そのアダム・クーパーが、ラッセル・マリファントの作品、つまりコンテンポラリー・ダンス(バレエといってもいいでしょう)を踊る。もちろん歌わないし、しゃべらないでしょう。これは長年の間、多くのファンが待ち望んでいたことだからです。

  そこで、このブログでもこの情報を載せることにしました。

  アダム・クーパーの公式サイトはまだ正式にこのことを発表していません。でも、仮にもサドラーズ・ウェルズほどの組織が、軽はずみに不確定な情報を載せるとは考えにくい、と私個人は思います。

  ですが、チケットを購入される場合は、アダム・クーパーの公式サイトがまだ正式発表していないことを念頭に置いて下さい。

  ちなみに、来年の夏にもサドラーズ・ウェルズでアダム・クーパーの舞台があるそうです。これも美鳥さんのブログをご覧下さいね。

  ともかくめでたい
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「レッドクリフ」北京語吹き替えについて

  週末でヒマなんで調べてみました。向こう(中国)で上演された「レッドクリフ(中国語題:赤壁)」も、トニー・レオン、金城武の声は吹き替えだったようです。つまり、日本で上演されている字幕版と同じらしいということです。

  映画の大ヒットにともなって、この「吹き替え問題」は大きな興味の的となりました。向こうのメディアのサイトにたくさん記事が載ってました。

  それによると、

  トニー・レオン(周瑜):一部吹き替え。残りはトニー・レオンの地声と吹き替えの声とをミキシング技術によってつなげた(ジョン・ウー監督談)。

  金城武(諸葛孔明):全面吹き替え。金城武の声を担当したのは章劼(偏が「吉」に旁が「力」)という俳優で、『十面埋伏(邦題:ラヴァーズ)』でも金城武の吹き替えを担当した。個人的には、金城武の声と章劼の声は非常によく似てると思う。

  章劼は中央戯劇学院を卒業、中国国家話劇院所属の俳優だそう。映画、テレビドラマ、舞台で活躍している他、北京語に問題のある俳優の吹き替え業も行なっているようです。写真見ると、クールな感じのイケメンだよ。ちなみに身長は180センチ。

  林志玲(小喬):全面地声。彼女は台湾の人だが、北京の学校で北方音の集中訓練をしたという。大陸では、大人の女性が、彼女のような甘ったるい、子どもっぽい声で話すのは嫌われるため、大人っぽい声で話すよう努力したそうな。

  張震(孫権):全面地声。彼も台湾の人。どうも両親か祖父母が大陸の浙江省の出身らしく、彼の北京語には少し台湾の特徴があるものの、基本的に問題ないらしい。てか、孫権は呉の人間だから、浙江(←昔の呉)方言の入った南方音で話すのは、むしろ役柄に合っている。

  中村獅童(甘興):(なんと)全面地声。やや日本語のクセがあるが、やはり問題はないそう。リスペクト!偉いぞ中村獅童!

  張豊毅(曹操):(もちろん)全面地声。彼は大陸の俳優なのでまったく問題なし。それどころか、「曹操の身分や時代に合わないセリフがあったので、監督(ジョン・ウー)に変更できないか相談した」という。さすがの余裕と貫禄。

ということです。

  金城武の声が吹き替えになったことについては賛否両論です。「金城武の甘ったるい声には心配していたので、吹き替えにしてよかった」という意見、「日本人の中村獅童でさえ地声なのに、なぜ金城武の声を吹き替えにしたのか?」という意見など様々です。

  その中で最も笑えた意見。「金城武の声は魅力的なのに、吹き替えの声のせいでゲイの諸葛孔明になってしまった。」 そんなにナヨった声だったかなあ?

  金城武と監督のジョン・ウー(呉宇森)の不仲が原因で、金城武は自身によるアフレコを拒否した、という噂もあったようです。金城武はこの噂を否定して、単にスケジュール的に間に合わなかったため、と説明したそうです。

  聞くところによると、金城武の北京語は、発音矯正後の林志玲(小喬役)の北京語よりもはるかにきれいだという話です。

  ですが、更に聞くところによると、金城武は北京語での日常会話はまったく問題ないものの、時代劇特有のセリフのしゃべりかたがどうも苦手なのではないかということです。

  真偽のほどは分かりません。ただ、スケジュールが立て込んでいたとしても、なんとかアフレコする時間を作れなかったのか、また、時代劇のしゃべりかたが苦手だとしても、それを克服する努力をしてアフレコにチャレンジできなかったのか、と思います。

  とどのつまりは、金城武自身がアフレコをしなかったのが実に残念です。
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「レッドクリフ」を観てきました

  「行列」、「立ち見」と観る気の失せるような噂を聞くほど大ヒットしているらしい「レッドクリフ」ですが、友人から近場で穴場(←空いている)な映画館を教えてもらい、ついに観てきました。友人の言ったとおり、大規模な映画館で設備も最新なのに、客席はガラガラでした。おかげでゆっくりと楽しめました。渋谷、新宿、有楽町、品川あたりの映画館だとこうはいかなかったでしょう。

  と~~~っても面白かったです!!!わたくし的にはです。以下は一部ネタバレありなので、これから「レッドクリフ」をご覧になるみなさんはご注意下さい。

  この映画は、無心で観るほうがいいと思います。なまじ「三国志」に関する自分の知識と照らし合わせながら観てしまうと、どうしてもアラを探すことになってしまい、結果として不満が残るのではないでしょうか。超大型エンタテイメント作品として素直に楽しむほうが得策です。

  曹操率いる大船団が長江を下り、その岸辺を別働隊が進軍していく様子を上空から俯瞰したシーン、また曹操軍と周瑜・劉備の率いる連合軍が戦う前哨戦のシーンは大迫力でした。

  特に感心したのは後者の合戦のシーンです。単なる乱闘の描写ではなく、全体としてどういう作戦に沿って双方の軍が行動して、その結果どうなっていくのかが分かって面白かったです。合戦シーンは長かったですが、合戦の過程を段階を踏んで具体的に描いているので、観ていて退屈しませんでした。このときも両軍全体を俯瞰する手法を用いていて、これのおかげでより分かりやすかったです。

  元来、大陸の映画も香港の映画もアクションは得意中の得意です。それにハリウッド仕込みのCG技術が加わったおかげで、迫力があって、しかも「なるほど、今の戦況はこうなのね」とうなづけるような、見事な合戦シーンになりました。

  ストーリーは基本的に「三国志演義」に沿っていましたが、改変も多くありましたし、原書にはない、新しく創作されたエピソードも取り入れられていました。ただ、「話を面白くするならこうしたほうがいいだろうな、いや、むしろこうしたほうが絶対的に面白い!」的な改変や創作がほとんどで、私個人は自然に楽しめました(ただし、ごく一部の創作エピソードには、「んなアホな」とツッコミを入れたくなった)。

  衣装もステキでした。「三国志」の登場人物の多くには、「お決まりの衣装」というのが各自あるのですが、「レッドクリフ」は昔ながらのこうした「お約束」にはあまりこだわっていませんでした。

  特に金城武演ずる諸葛孔明の衣装はよかったです。諸葛孔明といえば、昔ながらの鉄板「お決まりの衣装」があるのです。その格好で出てこられたらどうしよう、金城武といえど(いやむしろ金城武だからこそ)絶対に噴き出してしまう、と危惧していましたが、大丈夫でした。諸葛孔明は「お色直し」が何度もありました。白を基調とした衣装で、どれもみんなカッコよかったです。

  諸葛孔明の初登場シーンも意表を突いたもので、しかも印象的でした。

  また、孫権を劉備と連合して曹操に対抗するよう説得するため、諸葛孔明は呉にやって来ます。孫権は宴席を設けて諸葛孔明を歓待しますが、諸葛孔明は戦場を駆け回ったその足でやって来たため、服が土ぼこりだらけらしく、羽扇(←諸葛孔明のトレードマーク)で盛んに土ぼこりを払います。そのたびに彼の服から大量の塵が舞い上がります。塵埃が舞い上がるその都度、諸葛孔明はニッ、と笑います。金城君のニッと笑う表情が超キュートでした

  諸葛孔明は登場シーンが多い割にはセリフがあまりないので、金城君は表情だけで演技しなければならなかったのですが、いつも非常にいい表情をしてました。特に目の演技が印象的でした。飄々とした雰囲気と同時に、思慮深い感じがよく出ていました。

  周瑜役のトニー・レオンは、私はあまり印象に残りませんでした。彼にしては珍しく、表情が乏しくて、周瑜という人物の性格があまりはっきり出ていない気がしました。

  「レッドクリフ」での曹操は、昔ながらの典型的悪役な曹操でした。ですが、曹操役の張豊毅の演技は見事というかさすがというか、ありきたりなキャラクター設定にも関わらず、周瑜役のトニー・レオンよりもよほど印象に残りました。

  孫権の妹である尚香役の趙薇も、大きな目を活用した強い目ヂカラと溌剌とした雰囲気が魅力的でした。周瑜の妻、小喬役のリン・チーリンはすごい美人なのですが、旦那役のトニー・レオンと同様、演技のほうはちょっと印象が弱かったです。

  思わぬ拾い物(といっては失礼ですが)だったのが、孫権役のチャン・チェンでした。戦うべきか否か、主戦派と降伏派の板ばさみになって苦悩する表情、「自分は父や兄には及ばない」という劣等感を吐露するときの表情がすごくよかったです。ちなみに、前出の友人は趙雲役の胡軍がカッコよいと言ってました(確かにおいしい役どころだと思うけど~)。

  中村獅童(呉の武将、甘興役)も意外と(といってはなんだが)よかったですよ~。表情が豊かで眼光も鋭く、いかにも気性の激しい猛将といった感じでした。

  私は字幕版を観たのですが、金城武が撮影時に北京語をしゃべっていたのは間違いないです(唇の形からみると)。ですが、彼の声は他人による吹き替えだと思います。声音が違いますし、発音もいかにも大陸の俳優がしゃべっているような、典型的な北方音の北京語で、台湾の北京語ではありません。

  中村獅童はセリフがけっこうありました。中村獅童の場合は、おそらくは短いセリフは本人の地声、長いセリフは他人による吹き替えではないかと思います(自信なし)。もしすべてのセリフが吹き替えなら、よほど中村獅童と声音の似た中国人に担当させたのでしょう。もしすべてが中村獅童の地声なら、すごいぞ中村獅童!です。

  エンドロールをくまなく見ましたが、吹き替えを担当したキャストは書いてありませんでした。

  セリフは古くさい時代劇用語や言い回しは少なく、ほとんどが平易な現代口語を用いています。こうした点も斬新なのかもしれません。日本でいえば、大河ドラマ「新選組!」で、沖田総司が現代日本の若者コトバでしゃべっていたようなものでしょうか。

  「レッドクリフ」の欠点をひとつ挙げるとするなら、それは「三国志」をあらかじめ知っている人でないと、登場人物のセリフやエピソードが示す意味が分からない、ということです。

  後の展開につながる伏線的なセリフ、エピソード、シーンがふんだんにあるのですが、意味があまりに曖昧すぎて、また印象が弱すぎて、あるいはあまりに唐突でワケがわからないといった感があって、伏線の役割を果たしていないのです。

  監督のジョン・ウーは、観客は「三国志」の内容をある程度は知っているもの、と前提しているのでしょう。大陸、香港、台湾ならその前提は間違っていないでしょうが、日本では必ずしもそうではありません。「三国志」をまったく知らない観客でも楽しめるようにする、という配慮が少し欠けている気がします。

  本編前に上映される日本語の「事前説明」や、本編にしつこく出てくる「説明字幕」も、そのことを証明していると思います。

  でも、「レッドクリフ」は予想外に面白かったです。前編は流れ的に「基本ストーリー紹介」、「主要な登場人物紹介」的なものになってしまいましたが、これで後編への期待がいっそう高まろうというものです。後編が楽しみです。
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現在のクーパー君

  アダム・クーパーの公式サイトがちょっとですが更新されてます。それによると、クーパー君は休暇も終えて、現在はレスターのCurve theatreで、“Simply Cinderella”の準備に取りかかっているそうです。

  少し気になる記述はといえば、「2009年に向けたエキサイティングないくつかの“prospects”がある」という文でしょうか。“production”ではなく“prospect(見込み、見通し)”と曖昧な言い方をしているのが気になりますが(何度もこの手の言い方で期待を持たされては肩すかしに終わってきたからね)、まあ楽しみにしていましょう。

  ちょっと時事。アメリカの大統領選挙、オバマさんは圧勝でしたね。もっとも、私がアメリカの市民だったら、やはりマケインさんよりはオバマさんを選びます。オバマさんの実力は未知数だけど、マケインさんが大統領になったら、今の状態は変わらないし、ひょっとしたらもっとわるくなる。でもオバマさんが大統領になったら、もしかしたらなにかが変わるかもしれない、と思うでしょうから。

  オバマさんには、アメリカのごく一部の人たちが自分のおカネのために狂態を演じて、結果的に世界全体のあらゆる人々に大迷惑をかけることになった、いわゆる「金融危機」みたいな、アホな事態を二度と引き起こしてほしくありません。

  日本と違って、アメリカの人々には、自分が希望を託すことのできる政治家を大統領に選ぶ権利がある。本当にうらやましいことです。
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アリーナ・コジョカル降板

  新国立劇場の公式サイトが、アリーナ・コジョカルが怪我のために「シンデレラ」を降板することを発表しました( ここ )。

  コジョカルが踊るはずだった日の公演には、オランダ国立バレエ団のプリンシパル、ラリーサ・レジニナが出演するそうです。ヨハン・コボーのほうはとりあえず従来の予定どおりに出演するようです。

  それにしても、1ヶ月以上も前に予想がついたであろうことの公式発表が遅すぎたことは否めませんね。

  アリーナ・コジョカルが年内のロイヤル・バレエの公演を降板したとき、ただちにコジョカル側に「シンデレラ」に出演可能かどうか問い合わせ、もし降板するという返事が来たならば、そのことだけでもとりあえず発表する、そして代役が決定したら再び発表する、という手順を踏むのが、良心的な対応だと思うのですけれど。

  コジョカルのシンデレラが観られないのは残念ですが、彼女の復帰のめどが今はまだ立っていないところをみると、彼女の怪我の程度はかなり深刻そうです。とにかく今は休んで治療に専念してほしいです。そして、またあの輝くような笑顔で舞台に復帰してほしいです。

  コジョカルに代わってシンデレラを踊ることになったラリーサ・レジニナの写真と略歴も、新国立劇場の公式サイトで紹介されています。レジニナの写真を見てちょっとびっくりしました。顔つきがコジョカルになんとなく似ています。狙ったのでしょうか。

  レジニナはロシア(サンクト・ペテルブルク)出身で、ワガノワ・バレエ学校を卒業した後、マリインスキー劇場バレエに入団し、ソリストにまでなったダンサーだそうで、94年にオランダ国立バレエにプリンシパルとして移籍したそうです。

  レジニナが所属するオランダ国立バレエ(Het Nationale Ballet, The Dutch National Ballet)の公式サイトは こちら です(英語版があります)。

  ざっと見たところ、意外にイギリスと関係のあるカンパニーらしいです。91年から03年までは、ウェイン・イーグリングが芸術監督を務めており、コンテンポラリーではクリストファー・ブルース、アシュレイ・ペイジなども作品を提供しているようです。

  また、英国ロイヤル・バレエ、イングリッシュ・ナショナル・バレエからも、ダンサーたちがゲストとして招聘されているようです。

  カンパニーのレパートリーには確かに「シンデレラ」があります。どの版なのかは書いてありません。でも、ゲストとして呼ばれるからには、アシュトン版なのでしょうか。

  ラリーサ・レジニナがどんな踊りをするダンサーなのか、私はまったく分かりませんが、公演を楽しみに待ちたいと思います。  
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